4 二人の母と、二人の息子
夕刻から降り始めた雪が激しさを増し、外の明かりに美しく照らし出されている。
部屋に備えられている内風呂は、特別室というだけあって立派なものだった。その湯気に霞む中、由佳は佑馬の腕の中にいながらも、その視線はどこか遠く、浴槽の縁をなぞる、湯の揺らぎを見つめていた。
いつもなら愛おしそうに自分を見つめ返してくれるはずの瞳が、今はどこか冷めた様子で、寂しげだった。
二人だけでいるときに、由佳がこんな表情を見せたのは、初めてのことだった。
佑馬はその沈黙を、「由佳が自分たちの関係に対して後悔しているのではないか」、「もしかして、終わらせたいと考えているのか···?」と不安になった。
「……ねえ、ママ。何を、そんなに考えているの?」
佑馬の問いかけに、由佳は小さく肩を揺らす。
「もしかして、僕たちの関係が……もう苦しくなったとか……。清算したい、なんて思ってるの?」
不安に震える佑馬の声。
「……逆なのよ、佑馬。 さとみさんたちのことを考えれば、考えるほど··· さとみさんはまだ若いから、もしかしたら、息子さんの赤ちゃんを産めるのかな? なんて考えちゃうの......」
由佳はゆっくりと視線を上げ、濡れた手で佑馬の頬に触れた。その指先はわずかに震えている。
「······それって···どういう意味?」
「···あなたを愛しすぎて…… こんな歳なのに···私··· 最近··· 時々··· あなたの子供が欲しいなんて思ってしまうときがあって···そのタイミングでさとみさんの話を聞いたから、私もさとみさんの年齢だったら··· なんて、つい······」
それは、息子と愛し合う47歳の女性が吐露した本音であり、さとみの若さを眩しく、そして疎ましく思ってしまう強烈な自己嫌悪だった。
母が言葉にした、あまりに切実で、容易には解決できない胸の内。
佑馬は無言で、自分の腕の中で震える母の肩を強く抱き寄せた。安っぽい言葉で慰めるのは、彼女の苦しみを汚すような気がしたからだ。
「ママ……」
佑馬は、彼女の濡れた髪に顔を埋め、熱い吐息をその首筋に落とした。
「子供なんて、いらない。……俺はただ、ママがずっと一緒にいてくれるだけでいいんだよ。他には何もいらないよ。」
由佳の瞳から、一筋の涙が頬を伝い、湯船へと落ちる。
「佑馬……、ごめんなさい……。あなたはまだ若いから、自分の子供だって授かれるのに······。 でも、そんなふうに言ってくれて···私、嬉しい……」
浴室の高い湿度の中、二人の肌が吸い付くように重なり合う。
由佳は、自分のポーチの中にある、小さな錠剤のシートを思い浮かべていた。
それは「産まない」ための薬であり、同時に、一生、女として佑馬を愛し続けるための、二人だけの暗黙の合意事項だった。
「ねえ、佑馬。……私、やっぱり、これからも薬は飲み続けるわね。それが誰にも知られずに、あなたと、こうしてずっと……愛し合うためだもの」
その言葉は、子供を諦めるという悲しい宣言ではなく、二人の永遠を刻むための誓いだった。
雪の夜の静寂を破るように、二人の熱い吐息が、ゆっくりと、深く溶け合っていく。
湯船から上がり、濡れた体のまま、二人は吸い寄せられるようにベッドへと倒れ込んだ。
由佳の瞳に、もう迷いはなかった。
「子供を産めるかもしれない若いさとみ」への嫉妬も、年齢という容赦ない現実への絶望も、先ほど流した涙と一緒に湯船に溶かしてきた。
今、自分を抱きしめているこの腕。自分のすべてを肯定してくれる最愛の男性の鼓動。これさえあれば、他に何もいらないと、由佳は思った。
「……佑馬。もっと、きて··· 強く抱いて……」
由佳は自分から脚を絡め、佑馬を深く招き入れた。それは母としての慈しみなどではなく、生涯、「息子の女」として生きるという宣誓に他ならない。
方や佑馬は、込み上げる熱い感情を抑えきれずにいた。「清算したいのか」とまで疑った自分が恥ずかしかった。
母は、二人の子供が欲しいと本気で望むほど、自分を愛してくれていたのだ。
母の真意を知った安堵と、彼女の痛々しいほどの願望が、佑馬の愛をいっそう深く、熱いものに変えていく。
「ママ……愛してる。大好きだよ……っ」
佑馬は何度も彼女の耳元で囁き、貪るように口づけを繰り返した。
この夜、佑馬の胸に溢れた感情は、「母を支配し、激しく攻めたい」という、いつもの激しい性の衝動ではなく、お互いの存在を隅々まで確かめ合いたいという、ただ純粋な思いだった。
いつも以上に、母の胎内を確かめるように、佑馬はゆっくりと、大きく動いてゆく。それは決して、母に快感を与えるためでなく、互いの決意の再確認であった。
「いいのね……、これでいいのね……。私は、あなたのもの……。死ぬまで、あなただけの、女なんだから……」
泣き出しそうな笑顔で、そう告げた由佳の眼差しは、ゾクゾクするほど妖しい光を放っていた。
雪の夜の静寂の中、二人の吐息と肌の触れ合う音だけが部屋に響く。
この夜の、二人の濃密な愛と性の共鳴は、明け方まで続いた。
1月2日 朝
外には、昨夜の激しい雪が嘘のように、眩いばかりの銀世界が広がっていた。
特別室の広いベッドの中で、由佳は佑馬の腕に抱かれ、穏やかな充足感の中にいた。昨夜、すべてを吐露し、彼だけの女として生きる決意をした彼女の表情からは、憑き物が落ちたような、清々しい艶っぽさが漂っている。
「……おはようございます。朝のお茶をお持ちいたしました。」
そう言って、さとみが部屋に来た。
努めて明るく振る舞おうとしているが、その表情は明らかに冴えない。目の下に薄く影を落とし、由佳や佑馬と視線を合わせるのを避けるような、ぎこちない仕草だった。
由佳は佑馬に目配せをし、気を利かした佑馬が洗面所に立ったのを確認して、さとみに声をかけた。
「さとみさん……。顔色が良くないけれど···。 どうかなさった?」
その問いに、さとみの唇がわずかに震える。彼女は堪えきれなくなったように、伏せ目がちに声を絞り出した。
「……私、ダメでした。自分から『あなたの気持ちを受け入れたい』とは……どうしても、口に出せなくて···」
さとみの話によれば、昨夜の空気は決して悪くはなかった。
息子・弘樹がいつものようにじゃれついてきた時、さとみは勇気を出して、一人の「女」としての眼差しを彼に返したのだという。
「一瞬、視線が合って……空気が変わったのは分かったんです。息子も、何かを感じ取ったような顔をしていました。でも、私はそこから『あなたの気持ちを受け入れる』とは、どうしても言えませんでした……。彼も、私の様子をどう判断していいか迷ったみたいで。結局、それ以上は何も……」
それ以後は、昨夜の夕食から、今朝のさとみの出勤前まで、二人の間には重苦しい時間が流れたという。
「お二人には、せっかく背中を押していただいたのに···。……私も、息子の胸に飛び込みたいと思ったのですが···。でも、やはり、私から誘うことはどうしても……」
さとみの焦燥と、純真な迷い···。由佳には、さとみのその気持ちが、痛いほど理解できた。
巷に溢れている道徳観や世間体。結ばれた後の二人の将来、そして、この先ずっと、つきまとうであろう、「誰かに知られるのではないか···」という不安。
現実的に考えれば考えるほど、様々な不安が一斉に、さとみに襲いかかってくるのだ。
『私たちの場合は、それを佑馬が、すべて取り払ってくれた。私はただ、佑馬の激しさと情熱に、すべてを委ねただけ···。』
「さとみさんのその気持ち··· とてもよくわかります。 だって、この私がそうでしたから···。」
「私、明日は仕事が休みなんです。今日帰ってからも、明日のお休みも··· このままでは、いつものように息子と楽しく過ごすことすら、できなくなりそうで......」
さとみの声は震えていた。
この時、二人の会話を洗面所から聞いていた佑馬が、洗面所から顔を出し、きっぱりとした口調で言葉をはさんだ。
「息子さんの気持ちは別として··· さとみさんは、本気で息子さんと結ばれたいと思っているんですか?」
佑馬の強い口調に、一瞬、ひるんだ様子のさとみだったが、気を取り直してすぐに言葉を返した。
「はい···。正直に申し上げますと···。 実は私··· 何年も前から自分の気持ちに蓋をしてきました。ですが······息子が思いを伝えてくれてからは···もう、自分の気持ちも溢れてしまっていて···。そんなときにお二人と出会って······ 今はもう、心の底から息子の女になりたいと思っています。」
さとみは、潤んだ瞳で佑馬をまっすぐに見ながら、はっきりと言い切った。
「わかりました。さとみさん、明日はお休みだとおっしゃいましたよね?」
「はい···。」
さとみも由佳も、佑馬の真意を測りかねて、二人で同時に、立ったままの佑馬を見た。
「さとみさん···明日は息子さん、ご在宅なんですよね。よろしければ、明日、ここをチェックアウトしてから、さとみさんのお宅にお邪魔しても良いですか?」
「え···? 佑馬··· さとみさんのお宅にお邪魔して··· あなた一体、どうする気なの?」
突然の佑馬の言葉に、慌てた様子で由佳が口を開いた。
「大丈夫だよ。もちろん無茶なことはしないさ。ただね··· やっぱり、こういうことは、男の方がしっかりしないとね。」
佑馬は、意味ありげな笑顔を見せる。
「はい。明日は終日、ようやく二人になれるので、一緒に初詣に行くことになっています。」
「では息子さんに、知り合いの親子が、旅行帰りにちょっとだけ立ち寄るので、お茶を1杯だけ飲ませると言っていただけませんか?」
「はい。私はかまいませんが···。」
さとみはそう言うと、心配そうに佑馬を見ている由佳に視線を向けた。
「あなた、そんなことして、本当に大丈夫なの? そんなことしたら···さとみさんも迷惑なのでは?」
「だから無茶はしないって···。 母を愛する息子同士で、ちょっと話をするだけだよ」
佑馬はそう言うと、自信ありげな表情で、二人の母親を交互に見た。
「今日、僕たちは、朝食が終わったら午後まで出かけてくるんですが、さとみさんが帰る前にもう一度話せますか? その時にはスマホを持ってきていただいて、連絡先を交換しましょう。」
「はい。承知しました。お二人がお戻りになったら、もう一度こちらにお邪魔します。」
さとみはそう言うと、やや緊張した面持ちで部屋を出る。
「あんなこと言って、本当に大丈夫なの? もし、何かあったら、あの親子は、この先ずっと······」
さとみが部屋を出たのを確認して、由佳が心配そうに口を開く。
「大丈夫だよ! ママたちが、息子に愛されている母親同士で分かり合えるように、俺も、息子さんの気持ちが手に取るように分かるんだよ」
佑馬が、根拠のない言葉を口にする人間でないことは、由佳が一番知っていた。
昼間の観光を終えた二人が、部屋でくつろいでいると、その日の仕事を終えたさとみがやってきた。
連絡先を交換し、翌日の待ち合わせ場所などの打ち合わせを終えると、佑馬がさとみに問いかけた。
「立ち入ったことを伺いますが、さとみさんは、いつ頃から息子さんを男性として意識しはじめたんですか?」
答えにくい質問ではあったが、さとみはためらうことなく答えはじめた。
「それは自分でもはっきり覚えています。あの子が高校3年生になって間もなく、息子に初めての彼女ができました。お恥ずかしい話ですが、私はその時、何も手につかなくなるほどの嫉妬に心を焼かれたのです。その交際は、半年あまりで終わりましたが、その時の私は「彼が、自分の元に戻ってきた」という、本当に幸せな感覚になりました。この時にはっきりと自覚しました。」
このやり取りをきっかけに、さとみは···
別れた夫は、高校時代の先輩で、交際が始まって1年後に妊娠が発覚し、いわゆる『授かり婚』だったということ。
結婚した夫は浮気性で、結婚後も浮気を繰り返していたことや、息子の高校卒業とともに、息子の強い勧めもあって、さとみから離婚を切り出したこと。
息子・弘樹は現在大学3年生で、奨学金をもらいながら真面目に勉学に励んでいること。
息子も父親を嫌っていて、離婚後は父とは完全に絶縁していること。などを話してくれた。
「お互いに···浮気者の夫を持つと苦労しますね···。」
さとみの告白を静かに聞いていた由佳が、最後にひと言、ポツリとつぶやいた。しかし、その表情は、過去の不幸な結婚生活とは比較にならないほどの、大きな幸せを手に入れている女の余裕に満ち溢れていた。
1月3日 午前。
由佳と佑馬は、宿の情緒ある空間から、さとみの住む現実的な生活の場へと足を踏み入れた。
2階建てのこじんまりとした借家。1階には小さなソファーと食卓、4脚の椅子が置かれたリビングがあり、2階には親子それぞれの寝室がある。
「仕事でお世話になっている、由佳さんと佑馬さんよ」
さとみに紹介された息子・弘樹は、礼儀正しい笑顔を浮かべた。佑馬よりは少し小柄だが、清潔感のある容姿と誠実そうな眼差しは、まさに絵に描いたような好青年であった。
「……今日はお休みを邪魔してごめんなさい」
由佳が微笑むと、弘樹は「いえ、母がいつもお世話になっています」と、丁寧な挨拶を返す。しかし、その瞳の奥には、母と深い交流があるらしいこの「親子」に対する、かすかな警戒と好奇心が混ざり合っていた。
ひととおりの挨拶が済むと、さとみが、あらかじめ打ち合わせていた口実を切り出した。
「弘樹、10時から近くのランジェリーショップで新春セールがあるの。由佳さんにアドバイスをもらってきたいから、ちょっと行ってくるわね」
「えっ、なにも今日行かなくても……」
戸惑う弘樹を置き去りにするように、2人の母親はそそくさと家を出た。
リビングには、2人の息子だけが残された。
佑馬は小さなソファーに深く腰掛け、弘樹は食事用のテーブルの椅子に座っている。窓から差し込む冬の柔らかな日差しが、かえってこの沈黙を際立たせていた。
「隠しても仕方ないから、正直に話すね」
佑馬が静かに口を開いた。
「実は俺たち、お母さんの宿の客なんだ。……そこの露天風呂で、俺と母が愛し合っている音や声を、偶然お母さんに聞かれたんだよ」
弘樹の表情が、一瞬にして凍りついた。彼が懸命に、何を言われたのか理解しようとしているのが、佑馬にも分かった。
「母と俺は4年前から男女の関係なんだよ。浮気ばかりしていた父を追い出して、生涯、2人だけで生きていくって決めてる。……弘樹さん。君もお母さんのことが、一人の女として好きなんだろ?」
「え……っ、母さん、そんなことまで喋ったんですか……!」
弘樹は激しい羞恥と怒りで、握りしめた拳を震わせた。しかし、佑馬は動じない。
「違うよ。お母さんが俺たちに話したのは、お母さんも君のことが好きだからなんだよ。」
「え··· そうなんですか??」
「うん。君の想いを受け入れたいけれど、そうなれば、君の将来を壊してしまうかもしれない……そう思って、一人で苦しんでたんだよ。元日に帰ってきたお母さん、いつもと様子が違ってなかったかな?」
「……あ……」
弘樹の脳裏に、あの瞬間の記憶が蘇る。じゃれついた時、母が自分に返した、妖しく艶めいた瞳。
「……母さんも、僕を……?」
「うん。だけど、お母さんには『母親』としての理性が、どうしても邪魔をするんだよ。だから、ここは男である君が行かないと、一生後悔することになるよ」
ここまで言うと、佑馬は体全体を弘樹に向け、一気におどけた様子で言葉を続けた。
「……実を言うとさ、俺、中学の頃から、母を想ってオナニーしてたんだ」
唐突な告白に、弘樹が呆然と佑馬を見る。
「情けないだろ? でも、それぐらい母が魅力的に思えたんだよ」
佑馬はいたずらっぽく笑う。
「……そりゃあ、僕も……僕も同じですよ」
弘樹が力なく笑うと、重苦しかった空気が一気に解けた。2人の間に、奇妙な連帯感が生まれる。
「でも、実際に母さんにどう迫ればいいか分からなくて……。結局、子供みたいにふざけてじゃれつくのが精いっぱいだったんです」
弘樹が自嘲気味に呟いた。
「失礼だけど、女性経験はあるの?」
弘樹のもどかしさを汲み取るように、佑馬が静かに尋ねる。
「付き合ったのは1人だけです。でも、それ以外にも母さんを思い出しながら、別の……正直、誰とでも寝るような女とやったこともあります。でも、どっちのセックスも、終わってみれば空しいだけでした」
その告白に、佑馬は深く頷いた。
「それは、俺もまったく同じだったよ。他の誰としても、心の中にある母の面影が消えることはないんだよな···」
「母さんとしたいと思う自分は、精神的におかしいんじゃないかって悩んだ時期もありました。佑馬さんは、そう考えたことはないですか?」
弘樹の切実な問いに、佑馬は真っ直ぐに応えた。
「もちろんあったよ。一般的には、近親者同士は愛し合わないように脳が設計されているらしい。でも俺たちは、その壁を突き破った。そう考えると、俺たちは『選ばれし者』なんじゃないかと思うんだよ。それだけお互いに、魂の深いところで求め合ってるってことだよね」
「選ばれし者……」
「そう。単なる性処理の相手や、セフレみたいな関係じゃない。もちろん弘樹さんにも、世界でたった一人の女として、生涯お母さんと添い遂げる覚悟があるんだろ?」
「……もちろんです。他の女性なんて、俺には絶対に考えられません」
弘樹の瞳から迷いが消え、鋭い「男」の光が宿った。
これからの具体的な作戦を練ろうとした矢先、玄関のドアが開いて、二人の母親が帰宅した。
「どう···? 男同士の話は盛り上がってるかしら? すごく素敵な下着が買えたので、さとみさんの部屋で、ちょっと試着してくるわね」
由佳は明るくそう言うと、さとみの手を引くようにして、2階に上がってゆく。
2階の自室に入ったさとみは、由佳の前で、購入したばかりの淡いブルーの下着に身を包んでいた。
「本当に綺麗……。弘樹くんがこれを見たら、理性が飛んじゃうわね」
そう言って笑う由佳が、ふとニットの胸元を少しだけ下げて見せた。
真っ白な肌に、生々しく、しかし宝石のように刻まれた紅いキスマーク。
「これ、昨夜のなの……。彼が、旅の記念だって言って······」
誇らしげな由佳の言葉に、さとみは自分の全身が熱くなるのを感じていた。
1階に下りると、由佳は当然のように佑馬の隣に座った。
「ママ、弘樹さんの気持ち、確認したよ。間違いなくホンモノだよ」
「やっぱりそうなのね……素晴らしいわ」
由佳が放つ妖しい魅力と「息子の女」としての色気に、弘樹は圧倒される。だが、同時に思う。自分にとっては、母の方が、何倍も魅力的だと。
「あの··· お二人って、どれぐらいのペースで……愛し合っているんですか?」
震える声で尋ねる弘樹に、2人は顔を見合わせ、幸せそうに微笑んだ。
「特別な事情がない限り、ほぼ毎日かな。……お互いに欲しくてたまらなくなるんだ」
佑馬の瞳が、真剣な「オス」のそれに変わった。由佳もまた、それに応えるように蕩けた瞳で見つめ返す。
二人の表情の変化を見逃さなかった弘樹は、「この二人は、紛れもなく本物の男と女だ···」そう確信した。
次の瞬間、2人は、吸い寄せられるように抱き合い、唇を重ねた。
弘樹の目の前で、音を立てて絡まる舌。由佳から漏れる、喉の奥を震わせるような喘ぎ。佑馬の手が真っ白なニットの中に潜り込み、由佳の豊かな膨らみを情熱的に愛撫しはじめた。
「……んんっ……ああ……っ」
一人の母親が、実の息子の手によって、瞬時に「メス」と変わる。
性経験のある弘樹には、その光景が何を意味するのか、鮮明に伝わった。彼の股間は、これまでにないほど激しく熱を帯び、限界まで昂ぶっていた。
「……お母さんは、ご自分の部屋にいるわよ」
激しい接吻を解き、濡れた唇で由佳が囁く。
「自分がどうすべきか……分かるよね?」
佑馬のその言葉に、弘樹は弾かれたように立ち上がった。
そして、一人の飢えた男として、弘樹は階段を一気に駆け上がっていった。
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