9 二組の親子と独りの女
3月の湿り気を帯びた夜風が、薄暗い玄関先に吹き込んでいた。
チャイムの音に応えて由佳がドアを開けると、そこには二泊三日の荷物を抱えたさとみと弘樹が立っていた。
二か月ぶりに対面する彼らの姿は、由佳の予想を遥かに超える変貌を遂げている。
「いらっしゃい。遠かったでしょう、弘樹くんもよく来てくれたわね」
由佳はいつもの穏やかな微笑を浮かべて二人を迎え入れた。しかし、その瞳は瞬時に、目の前の母子の「変化と成長」を見抜いていた。
かつては、体から罪悪感を放ち、なんとなく肩をすぼめていたさとみ。しかし今の彼女は違っていた。
背筋はしなやかに伸び、タイトなニットの下で主張する豊かな身体のラインには、確かな「女」の自覚が宿っている。
何より、隣に立つ息子・弘樹の視線が自分の全身を遠慮なく這うことを、当然のことであるかのように、喜んで受け入れている。
「由佳さん……。わがままを言ってごめんなさい。どうしても、あなたに会いたくて···」
さとみの声は以前の震えを失い、どこか『熟れ』を帯びていた。
弘樹もまた、以前のような気後れはなく、同じ立場にある者としての余裕の笑みを由佳に向けている。
「いい顔になったわね、二人とも。……さあ、入って」
リビングへ移動し、微かな沈丁花の香りが漂う中で、四人は向き合った。
由佳の隣に座る佑馬も、二人の変化に期待を込めて、優しい眼差しで静かに観察していた。
「……由佳さん。電話でも少し話した、真壁さんのこと、直接会ってお話ししたくて···」
そう、さとみが口を開いた。弘樹がその細い肩に、優しく腕を回す。
「あの日、リビングで……。真壁さんは、汚いものを見るような目で私を見ました。」
しかし、さとみの語り口は、後悔や怯えを語るというよりも、どこか誇らしげですらあった。彼女の瞳には、異様なまでの艶が宿っている。
「でも、不思議なんです。真壁さんのあの蔑むような視線を感じるたびに、私、自分がどんどん『弘樹だけのもの』になっていくのが分かって……。あんなに恥ずかしいことをしているのに、心の中は、今までで最も澄み渡っていたんです」
一気に話し終えたさとみの頬は、微かに上気していた。その高揚を見つめながら、由佳は音もなく紅茶を注ぎながら、静かに告げた。
「さとみさん。あなたは気づいていないかもしれないけれど。その時あなたが感じていたのは、屈辱じゃないわ」
由佳の言葉に、さとみの肩がぴくッと動いた。
「その、真壁とかいう男の絶望を確認しながら、あなたは確信していたの。誰かにこの関係を見せたことで、自分たちは二度と元には戻れない。その思いとともに、あなたは純粋に『自分は一生、弘樹くんだけの女』であることを、自覚したんじゃないかしら」
由佳は身を乗り出し、さとみの瞳を覗き込む。
「ねえ、さとみさん。あなたは真壁に汚されたんじゃない。真壁という『最悪の観客』を前にして、自分がどれほど弘樹のものになれているかを、あなた自身が証明して見せたのよ。……その瞬間、あなたはこれまで以上に興奮しながら、自分が最高に美しく、輝いていると感じたんじゃない?」
「······」
さとみは無言で、顔を真っ赤に染めてうつむき、唇を噛む。
自分の内側に芽生えていた、恐ろしいほどの「露出の快楽」。それを、この聖母のような友人は、いとも容易く言葉にして突きつけてきた。
「ふふ、いいのよ。それがあなたの、本当の気持ちであり、美しさなんだから」
由佳の柔らかな肯定の言葉と視線に、さとみはうっとりと酔いしれながら、ゆっくりと頷く。
由佳の言葉に、さとみが顔を真っ赤にして視線を彷徨わせる中、それまで沈黙を守っていた弘樹が、低く、どこか熱を帯びた声で言葉を継いだ。
「……由佳さんの言う通りかもしれません」
弘樹はさとみの肩を抱く手に力を込め、由佳を真っ直ぐに見据える。
その瞳には、さとみへの親としての敬愛よりも、一人の女を完全に自分のものにしたという、男の自信がみなぎっていた。
「真壁が僕たちの行為を見て、今にも泣きだしそうな顔をした時……。僕、自分がこの世で一番強い存在になったような気がしたんです。下品なこの男を地獄に突き落として、母を守ったのは僕なんだ。こいつには一生辿り着けない場所に、僕と母さんだけがいるんだって。そう思ったら、もう、興奮が止まらなくなって……」
弘樹の告白は、さとみへの執着と支配欲を剥き出しにしていた。
母親を「女」として他人の前に曝け出すことで、自分が彼女を完全に所有していることを誇示する。その快感と興奮を彼は味わっていた。
その言葉を聞き、由佳は満足げに目を細めた。
「素敵ね、弘樹くん。……ねえ、それなら。その圧倒的な『愛』で、もう一人、教育してあげてほしい人間がいるの」
由佳は、手元の紅茶を一口含み、さも世間話でもするかのような軽やかさで切り出した。
「私の学生時代からの親友でね、冴子という女性がいるの。彼女はとてもきれいだし頭も良くて、自立しているんだけど…『セックスなんて、結局は、一時的な欲求を満たすだけの、ただの結合でしょ···? 体が欲していれば、相手は誰だったかまわないのよ』って、本気で言い続けているの」
由佳の視線が、好奇心に揺れるさとみと弘樹を交互に捉える。
「彼女はね、身を削るような本物の愛やセックスを知らないんだと思う。だけどさすがに、私と佑馬のことは話せないし···もちろん、見せるわけにもいかないし···。だから、さとみさんと弘樹くん、あなたたちのその『純粋な力』で、彼女の理屈を根底から壊してあげてくれないかしら?……もちろん、あなたたちを見守る観客として···」
由佳の口から、予想もしなかった提案がなされた瞬間、さとみは小さく息を呑んだ。
「観客……。由佳さんの、お友達に……見せる、んですかっ?······それって、私たちが愛し合っているところをですよね······」
さとみの指先が、膝の上で泳ぐ。真壁に見られたあの夜の、身を切るような恥ずかしさと、強烈だった弘樹の熱。あの「出来事」を、今度は自らの意志で「再現」しろというのか。
事の重大さに、さとみの理性がブレーキをかける一方で、彼女の身体は別の反応を見せていた。
由佳に図星を指されたばかりの胸の奥が、疼くように熱を帯びていく。
「それは……その。さすがに、恥ずかしいというか……」
言葉とは裏腹に、さとみの頬は明らかに紅潮していた。睫毛が小刻みに震え、潤んだ瞳で、助けを求めるように隣の弘樹を見る。
しかし、息子――いや、自分を支配するその男の顔を見て、さとみは息を詰まらせた。
弘樹は、戸惑うどころか、その瞳には燃え上がるような光が差していたのだ。
「……いいですよ。僕は、構いません」
弘樹の声は低く、ひどく落ち着いていた。
彼はさとみの肩を抱き寄せ、その首筋に顔を近づける。まるで見せびらかすように、鼻先で母親の柔らかな肌をなぞってみせた。
「母さん。真壁の時、あんなにすごかったじゃないか。……由佳さんの親友っていう、その冷めた女の人が、僕たちの愛を見て、どんな顔をするか……。それに、母さんがまた、あんな風に乱れてくれるかと思うと······照れくさいけど、僕···想像しただけで、すごく興奮するよ」
「弘樹、それ、本気で言ってるの……っ? あなたは本当にそれでいいのね······」
息子の剥き出しの欲望に、さとみは抗えなかった。
由佳の期待に応えたいという忠誠心と、息子に「女」として曝け出されることに悦びを感じてしまう自分。それらが混ざり合い、彼女の理性を溶かしていく。
「……由佳さん。私、どうなっちゃうんでしょうね。あんなに怖かったはずなのに、由佳さんの親友に見られることを想像しただけで、なんだか、身体が……」
さとみは視線を彷徨わせ、最後にはすがるように由佳を見つめた。
「ふふ、大丈夫。冴子は、愛に関してはかなりひねくれているけれど、それ以外は信用できる人間だから···。あなたはただ、弘樹くんにすべてを預けていればいいのよ」
由佳は聖母のような微笑を絶やさず、うっとりと二人を眺めた。
その様子を傍らで見ていた佑馬は、不思議な感覚にとらわれていた。
『母の一言で、他人の人生がこれほどまでに鮮やかに狂っていく。』
その残酷なまでの美しさと賢さに、彼は驚き、感心しながらも、「こんなにすごい女性が、俺だけのものなんだ」という誇りと快感を、あらためて味わっていた。
「決まりね。……明日の夜、彼女を呼ぶわ。冴子がどんな顔をするか、今から楽しみだわ」
由佳が静かにカップを置く音が、「これで決定よ」と言わんばかりに、リビングに響いた。
その夜、由佳の家の客間を割り当てられたさとみと弘樹は、消灯した部屋の中で、互いの呼吸が奏でる音だけを聞いていた。
壁を隔てた先には由佳と佑馬がいる。その緊張感だけでも、さとみの肌は粟立つような刺激を感じていたが、明日の夜にはさらに「見知らぬ観客」が加わるのだ。
「母さん、震えてるね」
暗闇の中で、弘樹の低い声がさとみの鼓膜を震わせた。
弘樹の手が、さとみのパジャマの裾から滑り込み、熱を持った指先がその柔らかく豊かな胸をなぞる。
「……だって、弘樹。明日、本当に来るんでしょう? 由佳さんの、その……冴子さん、というお友だちが···」
「そうだよ。由佳さんが言ってた、理屈でしか愛を語れない女···。そんな人の前で、僕と母さんがどんなことをするのか、全部見せてあげるんだよ」
弘樹の指先が、容赦なくさとみの「女」に触れていく。
さとみは短い喘ぎ声を漏らし、息子の肩にすがり付いた。真壁の時は「真壁に対する羞恥や抵抗」だった。
でも今は、由佳に肯定されたことで、その恥部を曝け出す行為が、高揚感にすり替わっている。
「怖い気もするけれど……でも、想像すると、なんだか、変なの。その人が見てるところで、弘樹にこんなふうにされる自分を、私、ずっと考えてる……」
「いいよ、もっと考えて。その人が、僕たちを『親子だ』って知った時の顔。軽蔑するのか、それとも興奮しすぎて、その人の理性が崩壊するのか···正直、僕は、すごく楽しみだよ」
弘樹の動きは、いつもより野蛮で、さとみの反応を楽しんでいるような、男のいやらしさがあった。
彼はさとみの耳元で、さらに毒を注ぎ込むように囁いた。
「明日、母さんが素直に悶えるところを、その人にじっくり見せてやろうよ。母さんが、僕なしではもう生きていけない女になっているところを……」
「あ……、そんな···ああっ……! 弘樹、弘樹……っ」
他人の家に泊まっているにもかかわらず、さとみは激しく身悶えし、息子の支配的で野蛮な性を、喜んで受け入れていった。
恥ずかしいはずなのに、明日「見られる」ことを意識するだけで、身体の奥からは、今まで経験したこともないような濃厚な蜜が溢れ出す。
それは、真壁に見られた時に芽生えた「露出の快楽」が、息子の手によって完全に開花しようとしている証だった。
その頃、隣の寝室では、由佳が読書灯の明かりの下で、静かにページをめくっていた。
壁越しに微かに伝わる、切迫した気配。
由佳は本から視線を上げることなく、隣でじっと耳を澄ませている佑馬に向かって、穏やかに微笑んだ。
「聞こえる? 佑馬。あの二人、もう、明日を思っての前夜祭のようね」
「うん、聞こえるよ……ママ」
佑馬は、自らの身体が熱く脈打つのを感じながら、母の見事なプロデュース能力に、尊敬と興奮を味わっていた。
「明日の夜は、もっと素敵な声が聞ける気がするわ。冴子がどうなるのか、私もゾクゾクするぐらいに興奮している」
由佳はそう言うと、自分から佑馬の唇を求めた。
「ママもやっぱりそうなんだ···。俺もめっちゃ楽しみだよ」
佑馬はそう言うと、当たり前のように体を入れ替え、由佳を組み敷き、母の寝間着を剥がしにかかった。
「あぁああ···佑馬······あなたもやっぱり興奮してる?」
暗闇の中、二組の親子はそれぞれの真理に向かって、深く、深く沈んでいった。
翌日の夜。
由佳と佑馬の家のリビングは、不思議な緊張感に包まれていた。
カチッとしたグレーのタイトスーツに身を包んで現れた冴子は、モデルのようなスレンダーな足を組み、都会的な美貌を崩さずにソファーに座っていた。
彼女にとって、「性とは、ただの生殖本能で、恋愛感情は、時間の経過とともに必ず薄れるもの」だそうだ。
だから、結婚や出産は、人生で最も時間を無駄に使うことの一つだと、彼女は心の底から信じていた。
「急に呼び出してごめんなさいね、冴子。どうしても、あなたに見てほしいものがあって」
由佳が優雅な所作で紅茶を注ぐ。冴子はそれを受け取り、ふっと口角を上げた。
「いいのよ。あなたからの招待なら、どんなに忙しくても優先するわ。……それで? 今日は私に、真理を見せてくれるって言ったわよね。いったいどういうこと?」
「ふふ···。まずは最初に、今から、最近旅先で知り合ったお友だちを紹介するわ」
由佳が静かに微笑むと、隣の部屋から、さとみが姿を現した。
「初めまして、大場さとみと申します。由佳さんには本当にお世話になっています」
高級旅館のベテラン仲居として培ったその仕草は、派手さはないものの、実に堂々としていて、見事なまでの優雅さを放っていた。
冴子の鋭い瞳が、さとみを捉える。
『綺麗な人……。』
冴子は、自分とは正反対の「豊かな肉感」を持つさとみから、自分にはない艶やかさを感じていた。
「初めまして。冴子です」
「冴子。まずは二階の私の書斎へ行きましょう。ぜひそこで、あなたに見てもらいたいものがあるの」
「……見てもらいたいもの?何かしら···」
冴子は、由佳に促され階段を昇っていく。
由佳が書斎の扉を開けると、そこには佑馬が待っていた。
「冴子さん、お久しぶりです。どうぞ、こちらに座って、まずは一杯やってください。」
冴子も何度か入ったことがあるその書斎には、小さなテーブルが置かれ、その上にはワインボトルとグラスが乗っている。
いつもと違うのは、テーブルの前に置かれた大型モニターと、間接照明だけになった部屋が、モニターから放たれる光に包まれていることだった。
由佳、冴子、そして佑馬の三人は、それぞれグラスを手に取る。
モニターに映し出されているのは、さっき会ったばかりのさとみと、見知らぬ若い男性だった。
「え···っ? ここに映っているのは、たしか、由佳の寝室よね···」
何を見せられるのかという様子の冴子が、怪訝な表情で由佳と佑馬を交互に見る。
「まあ、見ていなさい。もうすぐあなたが否定し続ける『愛の本質』が見えてくるわ」
由佳の言葉とほぼ同時に、画面の中の二人が動いた。広いキングサイズのベッドに腰を下ろした弘樹が、さとみの手を優しく取る。
「母さん……。緊張しないで。今日も本当に綺麗だよ」
冴子の持つグラスが、カチリと音を立てた。
「……今、なんて? 母さん……?」
「ええ、そうよ。······冴子。二人は実の親子。男性の方の弘樹くんは、間違いなく、さとみさんのお腹から生まれてきたのよ」
由佳の落ち着いた告白と同時に、画面の中の二人が唇を重ねた。
それは、冴子も何度か見たことがある、アダルト動画のような作り物でも、唇を奪い合うような欲望まみれ浅ましい行為でもない。
互いの存在をすべて認め合い、血縁とタブーさえも、慈しみへと変えた者たちだけが辿り着ける、深く、静かな、接吻だった。
「……冗談でしょう? 由佳···」
冴子は乾いた笑い声を漏らしたが、その瞳は画面に釘付けになったまま離れない。
モニターの中では、弘樹がさとみの頬を愛おしげに撫で、さとみもまた、うっとりと目を細めて息子を見つめ返している。
「いくらなんでも、趣味が悪すぎるわ。……ただの倒錯した遊びでしょう? あの人たちは、何かしら勘違いして、興奮してるだけよ」
冴子はワインを喉に流し込んだ。だが、画面から聞こえる「母さん」という低い響きが、彼女の耳の奥を熱く刺激する。
弘樹の手が、さとみのブラウスのボタンに指をかけた。
先ほどまでの凛とした姿はどこへやら、今のさとみは、息子にすべてを委ねた、ただの無防備な「女」だった。薄手の生地が左右に開かれ、肩から滑り落ちる。
「こんなこと……っ」
冴子の指先が、無意識にグラスを強く握りしめる。
モニターから漏れる、衣擦れの生々しい音。そして、さとみの喉から漏れた「弘樹……っ」という、熱く湿った吐息。
それは、都会でスマートに生きてきた冴子が、どんな男との情事でも経験したことのない、芯から蕩けるような「熟れた女の甘い声」だった。
下着姿になったさとみの、白く、豊満な上半身が露わになる。
自分のようなスレンダーな身体とは違う、柔らかく、妖艶な母親の肉体。その豊かな胸を、若いオスとして熱を帯びた弘樹の指先が、容赦なく、けれど慈しむように、こね上げていく。
「見て、冴子。さとみさんのあの顔。……自分の息子に、一人の女として愛される悦び。あなたの知っているセックスに、あんな表情があるかしら?」
由佳の声が、背後から親友の耳元に絡みつく。
冴子の細い太ももが、無意識のうちに擦り合わされた。
画面の中では、弘樹が母の豊かな胸に顔を埋め、赤子のように、しかし、飢えた獣のように貪りついている。
「あ……あ、弘樹、そこ……っ。すてき··· いいのよ、あなたの好きなようにして……っ」
さとみの喘ぎが、書斎に置かれたスピーカーを通して、冴子の下腹部を直接揺らす。
「……ありえない。こんな···絶対に、いけないことなのに……あんなに、気持ちよさそうにしてるなんて……ありえないわっ···」
冴子の顔は、隠しようのないほど、紅潮していた。言葉とは裏腹に、彼女の身体が、勝手に熱い蜜をたたえはじめている。
モニターに映し出された男女の姿は、自分が知っているどんなセックスとも、まったく次元の違う行為であることは明らかだった。
タイトスカートの中が、じわじわと湿っていくのが自分でも分かった。
「冴子さん。……息、荒くなってますよ?」
佑馬が楽しそうに冴子の横顔を覗き込む。
母と息子が愛し合う姿に興奮していく冴子の姿は、佑馬にとっても、自分たちを肯定されているような気がして、喜ばしいことだった。
だがすでに、このときの冴子には、自分をからかう佑馬に言い返す余裕さえなくなっていた。
彼女の瞳には、もはや「不適切な親子」ではなく、「世間のタブーを破ってまで、自分たちの世界を追求している男女」の姿だけが焼き付いていた。
「……わからない。私··· こんなものを見続けていたら、自分がおかしくなっちゃいそう……っ」
冴子は耐えきれず立ち上がった。画面の前から逃げたいのに、足に力が入らず、その場に立ち尽くしている。そんな感じだった。
由佳は、親友の理性が決壊しそうになっているのを見逃さなかった。
由佳は静かに立ち上がり、書斎のドアに手をかける。
「冴子······わからないなら、近くで『本物』を感じてくればいいわ。……あの二人の熱が、あなたの身体にどんなふうに響くのかを。」
「え……?」
由佳は、抵抗する力を失った冴子の背中を、優しく、それでいて抗いようのない力で押し出した。向かう先は、モニターに映し出されていた、親子が溶け合う、あの寝室だ。
由佳に背中を押され、冴子が足を踏み入れたその世界は、それまで自分が感じたことのないような熱を帯びていた。
モニターでは伝わらなかった、汗と体液が混じり合った濃厚な匂いが、冴子の嗅覚を否応なく刺激する。
「……あ、……ぁあ···こんな......ことって······」
冴子は思わず声を上げて、ドアのそばで立ち尽くした。
ベッドの上では、弘樹が母を仰向けに寝かせ、その脚を大きく割っていた。
下着さえもすべて剥ぎ取られたさとみは、キャリアウーマンの冴子が持つスレンダーな身体とは対照的な、柔らかく、豊かな曲線を描き出している。
「ほらっ···母さん、見て。……冴子さんが来たよ」
弘樹の低い声が、静かな部屋に響く。
冴子はその声に逆らうように、二人から視線を逃がそうとした。しかし、さとみの潤んだ瞳が、彼女を捕らえて離さない。
「……いいのよ、弘樹。冴子さんに、見てもらいましょう。私たちが、どれだけ…愛し合っているか······」
さとみのその言葉は、もはや羞恥を通り越し、ある種の尊さを帯びていた。
冴子は、自身の股間が耐えがたいほどの熱を持ち、熱い蜜がタイトスカートの裏地を汚していくのを感じた。
「······本当に、このまま、おふたりは······その···最後までしちゃうんですか......」
冴子の問いかけを置き去りにして、その瞬間は訪れる。
弘樹が、自身の猛り立った熱を、さとみの最も柔らかな場所に密着させる。
「え……っ、……あ···本当に······っ?」
冴子は目を見開いた。
ゆっくりと、しかし確実に、息子が自分の熱を、母親の胎内へと沈み込ませていった。
肉と肉が密着する秘かな音が、部屋を支配する。
さとみの顔が大きく仰け反り、上を向いたその白い喉元が、激しく震えている。
「あぁ……っ! ひ、弘樹……っ! 弘樹が今日も、戻ってきてくれた···。奥まで入って、……今……また、私の中に... お願いだから、もっと奥まで戻って……っ!」
「母さん……っ、あぁ、……すごく、熱いよ……!」
目の前で繰り広げられる、息子が母の胎内に戻る「逆流」
血の繋がりを遡るようなその光景は、冴子が積み上げてきた論理や理性を、たやすく超えていった。
冴子は、自分の息子を受け入れた瞬間のさとみの顔――まるで、天国に触れたかのような、慈愛と淫欲が混ざり合った表情から、目が離せなかった。
「……嘘。あんな、……こんな幸せそうな顔、……信じられない……っ」
冴子の膝から力が抜け、とうとう、その場に崩れ落ちた。
モニター越しでは分からなかった、肉が食い込む音、さとみの肌が紅潮していく様子、そして弘樹の荒い吐息。
「冴子さん、……僕たちやっぱり異常ですか? ただの、狂った母親と息子に見えますか?」
弘樹が、さとみを突き上げながら、首だけをこちらに向けて真顔で問いかける。
「冴子さん、こっちに来て、母さんが、僕にどんな顔を見せているのか、もっと間近で見てくださいよ」
「あ、はい……ぁぁ……っ」
冴子はたまらず、震える手で自分のスーツのボタンを外しながら、二人の元に歩み寄る。
性や愛を悟りきったと思い込んでいた、先ほどまでのプライドも、冷徹なほど落ち着いていた顔つきも、今の冴子からは完全に消え去っていた。
下着姿になった冴子は、二人が愛し合うベッドのすぐ横にひざまずいた。
ブラジャーの上から、やや小ぶりな乳房を自分から鷲掴みにし、もう片方の手をショーツの中に進める。
冴子のその目は、焦点すらもを失いかけているように思えた。
「···冴子さん······あなたは、なんで下着なの? すべてを脱いで、体も心も、私たちにもっと近づいて······」
「えっ······いいんですか? そんなことをして···私···おふたりの邪魔になりませんか······っ」
そう言いながらも、冴子は、体を覆っていた残り少ない布を、一気に取り去った。
「あぁああ··· 冴子さんの体、すごくきれい··· とってもきれいよ、冴子さん······」
冴子のスレンダーで白い肢体が、間接照明の下で露わになった。
都会的な美貌を誇っていた彼女は、今や一人の飢えたメスとして、汗と体液の匂いが充満するベッドの傍らで激しく喘いでいる。
「……可愛いわ、冴子さん。そんなに震えて……」
さとみは弘樹に貫かれ、身を震わせながらも、ベッドサイドで膝をつく冴子へ、慈愛に満ちた手を伸ばした。
その指先が、冴子の火照った頬をなぞる。幸せに溢れた母親の目が、今、冴子の理性を優しく、そして徹底的に解かしていく。
「さとみ、さん……。どうして、……どうしてそんな美しい顔になるの?……っ。私、……胸が苦しくて、……おかしくなりそう……っ!」
冴子は涙を流しながら、さとみの豊かな太ももに縋り付いた。
実の息子である弘樹が容赦なく、母を熱く突き上げている。その振動が、さとみの肌を通じて冴子の掌へと伝わってくる。
「やっぱりあなたから見ると、私たち……汚らわしい?ほら、見て……弘樹が私を、こんなに……っ、……ああぁっ!」
さとみが大きく仰け反り、弘樹を受け止める。
「そんなことないっ! 美しくて激しいわ··· 私···こんなの見たことない··· 恥ずかしいほど興奮してる······っ こんなの生まれて初めてよ··· あぁぁあああ」
冴子はその光景を目の当たりにしながら、自らの秘部を指で激しく攻めはじめていた。
モニターでは決して分からなかった、肉がはじけるような音や、さとみの喉を震わせる「母親」の喘ぎが、冴子をさらに圧倒する。
「さとみさん、……どんな気持ちなの? 息子に、……自分が産んだ息子にこんな……すごいことをされて……それって、そんなに幸せそうなの……っ?」
冴子は問いかけながら、たまらず弘樹の動く腰に手をかけた。硬く、熱く、母を攻めるために動き続ける息子の腰に。
彼女の指先が、とうとう弘樹の尻の盛り上がりに食い込む。
「……答えて、……教えてっ! 私も知りたい……そのふたりの『愛』のすごさを……私にも、分からせて……っ!」
冴子の絶叫に近い問いに、弘樹がさとみを激しく突き上げながら応える。
「言葉じゃ無理ですよ、冴子さん。……もっと近くに顔を寄せて、母さんの呼吸や声を感じてください」
弘樹がさらに速度を上げると、さとみは狂おしいほどの悦びに身を悶えさせた。
「あぁああああああ 冴子さん、見てっ! すごい······ あぁぁああ弘樹っ··· やっぱりあなたって、すごいわ··· 死ぬまで母さんを離さないでね······っ」
その激しさに同調するように、冴子が自分の中に押し込んでいる指の動きが激しくなる。
「あぁあぁあ 感じる··· こんなの初めて······っ 私イキます··· こんな姿を見せられたら、私もイッちゃう··· おぉおおおおお」
弘樹の尻の肉をつかんだ手に力を込めながら、冴子の身体が大きく、これ以上ないほどに激しく弾んだ。
都会的なプライドも、冷徹な理論も、すべてがこの親子が放つ圧倒的な熱量に焼き尽くされた。
さとみに顔を寄せ、白目を剥いた顔を晒しながら、だらしないほど口を開き、激しく、何度も何度も大きな痙攣を繰り返した。
激しい嵐が去った後の寝室には、どこかに到達できた満足げな吐息と、微かな嗚咽だけが残されていた。
冴子は全裸のまま、ベッドに上半身を乗せ、力なくさとみの太ももに顔を埋めている。
その頬には、涙と、冴子自身も驚くほどの満足げな微笑みが刻まれている。
「……信じられない。私、いったい、どうしちゃったの……」
ようやく顔を上げ、震える声で呟く冴子。しかし、その体はまだ、さとみと弘樹が放った熱の余韻で疼き、スレンダーな身体は小刻みに震えている。
さとみは、汗ばんだ髪を乱したまま、優しく冴子の頭を撫でた。
「いいのよ、冴子さん。それがあなたの本当の姿。……あなたも、ずっとこの熱を、心のどこかで求めていたんじゃないの?それに私も、あなたに見てもらって、天にも昇るような気持ちだった。あなたに認められている気がして、すごく幸せな気持ちだったわ···」
「私に見られて、さとみさんたちも嫌じゃなかったのね……それだったらお願い···。私も……さとみさんと弘樹くんの……その『愛』を、もっと見たい……っ!」
「……いいわよ、冴子さん。そんなに震えて……やっと、分かってくれたのね」
さとみは弘樹に貫かれたまま、恍惚とした表情で、ベッドサイドに膝をつく冴子の頬を愛おしげに撫でた。
「弘樹、……冴子さんにも、教えてあげて。見るだけじゃなくて……私たちがいる、この世で一番、満ち足りた世界を」
母の言葉に、弘樹は無言でうなずく。
彼はさとみの中から自身の熱を引き抜くと、さとみに縋りついている冴子の手を取って、力強く抱き寄せた。
「え……? あ、弘樹、くん……」
冴子が拒む間もなく、弘樹は彼女の細い身体をベッドへと引き上げ、そして組み敷いた。
さとみの豊かな肉体とは違う、無駄のないスレンダーな冴子の肌に、実の母ではない「女」としての、別の匂いを感じ、弘樹の中のオスの本能が昂る。
「冴子さん……理屈なんて、もうどうでもいいでしょう? ほら、僕たちが···あなたを愛してあげますから」
弘樹はそう言うと、仰向けになって抵抗する力を失った冴子の両脚を開き、躊躇なく貫いた。
「あぁあああっ! ……っ、……あ、ぁぁ!」
冴子の口から、絶叫に近い喘ぎが漏れる。
自分の指では決して届かなかった、身体の奥底。そこを、さとみの息子である弘樹が、熱く突き上げてくる。
過去の男ではまったく感じたことのない、野蛮で、けれど圧倒的な充足感と、気が遠くなるような快感を冴子は味わっていた。
「ぎゃぁぁああああ すごい···っ··· こんなの、もう···すごすぎるぅぅうう......」
とてつもない冴子の反応に興奮を隠せない弘樹の攻めが、益々激しさを加速する。
「どうですか? 冴子さん。……僕たちの『熱』って··· なかなかのものでしょう?」
弘樹がさらに激しく突き上げると、冴子の身体はベッドの上で大きく弾けた。
「おおぉぉおおおお······こんなの初めて···っ 生まれて初めてよ··· もっと······お母さんを攻めているときみたいに、私のことも犯してぇえええ··· ぁぁぁああああっ···」
それまでのプライドも、冷徹な理論も、すべてが弘樹から注がれる圧倒的な攻撃に焼き尽くされていく。
「すごい、……すごいわ、弘樹くん……っ! あなたたちすごいっ···私、……私、もうイキそう、……こんなの狂っちゃう……っ!」
冴子が白目を剥いて悶える中、さとみが這い寄り、弘樹に抱かれている冴子の頭を、慈愛に満ちた手で抱え込む。
「そう···それでいいのよ、冴子さん……。すごくきれいよ···私も、見ているだけで興奮しちゃう......そのまま、全部忘れて……っ、あぁああ、もっと、素直になって……!」
さとみ自身も、自分の息子に貫かれる彼女の姿を、目に涙をためながら見つめている。
最愛の弘樹に犯されながら狂う冴子の姿を見ていたさとみが、突然、冴子の唇を奪った。
冴子は、抗うこともなく、激しく弘樹に奥を突かれながら、自ら舌を差し出して、さとみの舌と絡めていった。
「···んんんんん······ ぅぅううううう......」
弘樹に激しく攻められ、一気に上昇していく冴子と、それを見ながら、自分の秘部から溢れる蜜を、指で胎内に押し戻すさとみ。
二人の女の呻き声が、交差しながら部屋の中に響き渡った。
「あぁあああ···さとみさん··· 弘樹くん··· あなたたちって、ホントに最高よぉ······ あぁあああ···私···またイッちゃうぅうううう······」
さとみと弘樹に挟まれ、血の繋がった者同士にしか出せない「濃密な熱」を浴びた冴子は、もはや自分が何者なのかさえ、分からなくなっていた。
そしてまた、この日何度目かも分からないほどの、人生で最も深い絶頂に、冴子は全身を焦がしていった。
三人が汗まみれで絡み合い、獣のような熱気で部屋が満たされたその時、カチャリとドアが開いた。
すべてを書斎で観察していた由佳と佑馬が、ゆっくりと入ってくる。
全裸で弘樹の太いものに貫かれたまま、冴子は体を隠すことさえ忘れていた。
乱れた髪を直そうともせずに、涙でボロボロになった顔で親友を見上げる。
「……どう? 冴子。あなたがバカにしていた『愛の行為』は···」
由佳のいじわるな問いかけに、冴子は力なく首を振った。
「……あ……っ。全然違う……こんなの、すごい……っ。私、バカだったわ……っ」
由佳は、まるで慈愛に満ちた母親のような顔で冴子の言葉を聞くと、迷いなく、佑馬の首に抱きついた。
そして、冴子の目の前で、ねっとりと音を立てて、息子と深く舌を絡ませる。
「え、……由佳、あんたたちも……なの……?」
ショックを受ける冴子の前で、佑馬が床にゴロンと仰向けになった。
由佳は、自らスカートをたくし上げ、隠していた秘部を冴子の目の前に突き出す。
「よく見てね。これが、あなたがまったく気づいていなかった、私と佑馬の、本当の関係よ」
由佳は下着を脱ぎ捨てると、呆然とする冴子に見せつけるように、佑馬の反り立った塊の上へ、ゆっくりと腰を下ろした。
ドチャッ、と、生々しく濡れた肉の音が響く。
冴子の鼻を、さとみ親子から漂う、ムワッとした男女の匂いと、由佳から溢れ出したばかりの愛液の匂いが、同時に襲う。
「あぐっ……あ、ぁ……っ!!佑馬······」
親友が、自分の産んだ息子を、一番奥まで飲み込んでいく。
由佳たちが繋がっている部分は、冴子のすぐ目の前で、激しい摩擦によって白く泡立っている。
天井を向いて、声を上げて震える由佳の顔は、いつもの凛々しさの欠片もない。ただ息子のすべてを欲する、欲情した女の顔だった。
「はぁあああ……佑馬ぁ……っ。今日も、ママを壊して……っ。いつものように、もっと、もっと中で暴れて……っ!」
腰を激しく振りながら、由佳が下品な音を立てて絶頂を貪る。
その姿は、さとみ親子の情熱的な姿とはまた違う、慣れ親しんだ者同士の『熟練の交尾』だった。
「そんなに……由佳……中、かき回されてるの……? そんなに、気持ちいいの……?」
「当たり前でしょ……っ! 自分の血を分けた男に、中をグチャグチャにされるのよ……? ここが本当の天国なのよぉっ!」
学生時代から完全だと思ってきた親友の、あまりにも狂った姿を見て、冴子の股間が、再び激しく疼きだした。
あまりに激しく達した冴子を休ませようと、動きを止めていた弘樹を、今度は自分から求めて冴子が腰を動かはじめる。
「冴子さん、今度は自分から腰を動かしはじめたわね。それは愛? それとも……ただ、卑猥なメスになりたいだけ?」
さとみの意地悪な問いに、冴子はもう答えられない。ただ、目の前の由佳を真似るように、弘樹の首にしがみつき、弘樹の熱い塊を、さらに奥まで求めている。
「……わかんない……っ。でも、もっと欲しい。少しでも二人の愛に近づきたいの······っ! 私も、お母さんたちみたいに狂わせてっ!!」
そう言うと、冴子はついに、弘樹の唇を求めて舌を伸ばしていった。
隣には、さっきまで激しく腰をぶつけ合って、親子で愛を叫んでいたさとみと弘樹。
床には、息子に胎内をかき回され、白目を向いて悶え狂っている由佳と佑馬。
二組の親子による「愛に溢れた禁断の交尾」の檻の中で、冴子のプライドは完全に消し飛んだ。
「弘樹···、冴子さんもあなたのキスが欲しくなったみたい。 私はかまわないから、その方にも、あなたの激しいキスを味合わせてあげて···っ!」
母に促され、弘樹も冴子に向かって舌を差し出した。
「あぁあああ 弘樹くん···。 お願いだから···私にも···お母さんみたいなキスをちょうだい······」
冴子は弘樹の首を激しく引き寄せると、ものすごい勢いで弘樹の舌を吸いはじめた。
「すごいっ···! めちゃくちゃ絞めてますよ冴子さん···」
弘樹に指摘され、冷やかされながらも、まったく否定せず、繰り返して弘樹の舌を求める冴子。
「···あ、あぁぁあああ……ッ··· 弘樹くん···すごいわっ···!! ······お母さんは、いつもあなたから、こんな愛を受けているのね...... わぁぁああああ」
自分を突き上げる弘樹の塊と、自分を見つめるさとみの勝ち誇った目。そして、すぐ目の前で、息子に奥深くを突き上げられながら叫ぶ親友。
すべてが混ざり合い、冴子は人生で一度もしたことのない淫らな格好で、人生で一番深い絶頂の中へと、真っ逆さまに堕ちていった。
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