5 もう一組の母子
弘樹は高鳴る鼓動を抱えながら、母の寝室のドアを勢いよく開いた。
しかし、目に飛び込んできたのは整然と整えられた無人の空間だけだった。
『……いない? 嘘だろ、由佳さんは確かにここで待ってるって……!』
急激に血の気が引いていく。
「母さんが心変わりした?」「それとも···俺は、あの親子に、完全にからかわれた??」
二つの疑念が、冷たい汗となって背中を伝う。
『もしかしたら···俺の聞き違いか、由佳さんの言い間違い···?』
縋る(すがる)ような思いで、隣にある自分の部屋のドアをゆっくりと開く弘樹。
「は……っ!」
そこには、淡い光が差し込む中、小さく身を縮めて弘樹のベッドに腰掛けるさとみの姿があった。
彼女が身に着けていたのは、洗濯したての弘樹のオーバーサイズなスウェットだった。その裾から覗く白い足が、小刻みに震えている。
「お母さん……ここに、いたの?」
弘樹が震える声で問いかけると、さとみはゆっくりと顔を上げた。その顔は緊張でこわばり、瞳には今にも溢れそうな涙があった。
「……由佳さんには、あっちで待つように言われたけど……。でも、私···初めての時は、弘くんの部屋が良かったの……」
その消え入りそうな、それでいて覚悟に満ちた告白を聞いた瞬間、弘樹の中で、母への愛おしさと、男としての欲望が溢れ出した。
「……母さん」
さとみの肩がびくりと跳ねた。弘樹のスウェットを着た彼女は、驚くほど小さく見える。
弘樹は黙って歩み寄り、彼女の隣に腰を下ろした。
「弘くん、本当にごめんね。今までずっと、弘くんの気持ちに答えてあげられなくて···」
「ううん。謝るのは僕の方だよ。 一昨日、母さんが僕を受け入れようとしてくれたのに······。 あの時、僕···どうすれば良いのか分からなくなっちゃったんだよ···」
弘樹が母の細い肩を抱くと、さとみは拒むことなく、むしろ吸い寄せられるように弘樹の胸へ額を預けてきた。スウェット越しに、彼女の激しい鼓動が伝わってくる。
「……母さん··· 僕··· ずっと好きだった······」
「……うん···」
さとみは頷きながらそれだけを言うと、弘樹の首に両手をまわし、息子の肩口に顔を埋める。
弘樹が顎でさとみの側頭部を起こしにかかる。それは母への、「こっちを向いて···」の無言の要求だった。
息子の甘い指示を理解したさとみが、ゆっくりと、弘樹の肩から顔を起こす。
ここで自分が顔を上げれば、次に何が起こるかを、さとみは十分に理解していた。
顔を上げたものの、彼女の目は閉じられ、美しい唇が微かに震えている。
その震える唇を、弘樹は自分のそれで、優しく覆っていく。
時間にすれば、それはほんの数秒だったかもしれない。でもそれは、弘樹が何度も夢に見た、母さとみとの口づけだった。
舌を絡め合うこともなく、ゆっくりと二人の唇が離れる。それでも、二人の呼吸は大きく乱れ、さとみは再び息子の胸に顔を埋める。
「······母さんの唇って··· こんなに柔らかかったんだね···」
「···恥ずかしい······」
さとみは、それだけ答えるのが精いっぱいで、息子の胸に顔を埋めたままのその言葉は、弘樹がようやく聞き取れるほど不明瞭だった。
息子との初めてのキスは、さとみを混乱させていた。
憧れていた男性と、ようやく唇を重ねることができた感激。
『とうとう弘樹と···。』という、人生最大の、禁断の扉を開いてしまった背徳感。
「弘樹の唇って···こんなに温かく、ねっとりとしていたのね···」という、これまで想像もしていなかった生々しい感触。
さとみは、窒息しそうなほどの息苦しさを覚え、「自分の別の心臓が取り付けられてしまったのではないか」と感じるほど、鼓動は極限に達した。
それと同時に、「私、失禁した?」と不安になるほど、自分の股間が瞬時に、激しく湿っている感覚が、さとみを慌てさせる。
「母さん··· ちゃんとこっちを向いてよ···」
弘樹はそう言いながら、さとみの後頭部を優しく撫で、美しい顔を自分の方に向ける。
顔を上げたさとみの両目は、依然として閉じられたままだったが、二つの瞼は緊張で震えていた。
『きれいだ。この美しい母が、何の抵抗もせずに俺のキスを受け入れた···。あの親子が言ったことは、嘘じゃなかったんだ。』
目の前で起きている事実が、弘樹に自信をみなぎらせ、彼の中の『男』に火を点ける。
弘樹は迷うことなく、再び母の唇を覆う。最初のキスが、緊張と優しさが溢れた、最初の一歩だとすれば、このキスは、「今からは女として扱うからね」という、母に対する息子からの宣告だった。
薄くて美しい唇を割って、弘樹の舌が、初めてさとみの口の中に入っていく。
覚悟をしていたはずなのに、さとみの肩が、ビクンと明らかに弾んだ。
『弘樹が私の口の中に、舌を入れている···。そして···私は今、何の抵抗もせずに、それを受け入れている。幼い我が子と若いママがするようなキスではなくて··· 明らかに男と女のキスを···』
息子の首に回された母の両手に、力がこもる。
しかし、さとみの舌の動きは鈍かった。だがそれは、母親としての遠慮や迷いなどではない。
もう何十年間も、こんなキスをしていなかったさとみには、自分がどう返せばよいのかすら、分からなくなっていたのだ。
『母さんは嫌がってなんかいない。どうすれば良いか分からないんだ···』
離婚後も、一切、男の影はなく、自分のためだけに懸命に働き、尽くしてくれた母。
それを、十分に理解していた弘樹には、母の稚拙な舌の動きの理由が、痛いほど理解できる気がした。
「·····母さん··· キス······ めっちゃ下手だね···」
これは、弘樹から母に対する最高の誉め言葉であり、最大級の感謝と、感動を伝えるための言葉だった。
「······ごめんなさい··· 母さん··· すごく嬉しいのに··· どうすれば良いのか分からないの···」
さとみは、荒い息づかいを隠そうともせずに答える。
「大丈夫···。わかってるよ。 ······ 僕···そんな母さんが大好きだよ」
弘樹は、ゆっくりと母の口の中で舌を泳がせる。少しずつではあるが、それに懸命に応えようとする母。
ゆっくりと、二人の唇と舌が溶け合ってゆく。
「母さん。 ちょっとだけ舌を出してみて···。」
弘樹に言われるまま、さとみの薄桃色の舌が、可愛いらしい唇から顔をのぞかせる。
弘樹はその舌を唇で優しくとらえ、自分の口の中に吸い込むと、自分の舌でゆっくりと愛撫する。
「うぅんんん······」
小さな呻き声を上げながらも、さとみは舌を引き抜こうとはしなかった。
息子に捧げられた母の舌は、息子の口の中でじっくりともてなされ、徐々に柔らかさを取り戻していく。
とうとう、二枚の舌がひとつになって、滑らかに踊りはじめた。
「ぁぁああ···」
弘樹との濃密なキスによって、さとみの体と心が溶けはじめた。
「母さん、ちょっと横になろうか···」
弘樹は静かに言い、さとみの肩を抱いて横になるように促す。仰向けになったさとみは、淡いブルーの下着姿で、緊張からか指先を微かに震わせている。
「弘くん、待って……」
さとみが、自分の上に覆いかぶさろうとしている弘樹の胸に、手を当てて動きを止めた。その瞳には、隠しきれない不安が浮かんでいる。
「私……あなたを産んでから、ほとんどしてないの。……もう20年近くも···。だから、どうしたらいいか……」
彼女は視線を彷徨わせ、弱々しく続けた。
「弘くんが経験してきた若い子たちと違って、私はもう若くないし……。がっかりさせちゃうんじゃないかって、怖いの。だから……」
その言葉は、弘樹の胸を強く締め付けた。20年近くもの間、自分を育てるために女としての時間を止めていた母。その事実が、彼の中の愛おしさと、男としての独占欲を同時に引き出した。
「がっかりなんてするはずないよ。母さんが世界で一番綺麗なんだ。……」
弘樹は彼女の手をそっと退けると、覆いかぶさるように唇を重ねた。深く、熱いキスを交わしながら、ブラジャーのホックを外す。
露わになった白い肌に、弘樹は息を呑んだ。
「ああっ……!」
弘樹の大きな手がその膨らみを包み込むと、さとみは大きく体を跳ねさせた。
恥ずかしさに顔を背けようとする彼女の両手首を、弘樹は静かにベッドへ押し付ける。
「隠さないで。今の母さんを全部見たいんだ」
耳元で囁き、母の胸元に顔を埋める。それは慈しむような優しい動きだった。
息子の舌が、自身の尖端を捉え、そこを吸い上げる。その直接的な刺激に、さとみは、聞いたこともないような甘い声を漏らした。
「ううっ……弘くん···」
20年近く眠っていた肉体が、息子によって目覚めていく。
引け目に感じていた40代の体も、芯から湧き上がる熱に少しずつ溶かされていった。呼吸は浅く、激しくなり、自由になった手で弘樹の背中を強く掴む。
「弘くん……、そこ、だめ……、私···おかしくなっちゃう……ッ!」
母のその言葉とともに、自分の背中に食い込むさとみの指先の感触。それが弘樹の中の「オス」を加速させた。
母を優しく導こうという弘樹の理性は、女へと変貌していくさとみの熱量の前に、もはや限界だった。
弘樹は自分の服を脱ぎ捨て、さとみの足の間に身体を沈めた。
一瞬だけさとみの視界に入った息子の股間。今から自分を貫こうとする息子の昂ぶりに、さとみは息を呑んだ。
猛々しく反り返ったそこにはもう、優しい息子としての面影はなかった。
「お母さん、入れるよ」
「来る··· とうとう弘樹が来るのね······」
息子の先端が、母の入り口に触れる。さとみの緊張は頂点に達した。
弘樹は、さとみの両脚を割り、くびれた腰を優しく固定すると、ゆっくりと、けれど一気に自身を押し入れた。
「あああああっ……!!」
さとみが仰け反り、裂けるような声を上げる。
20年もの間、閉ざされていた場所が、息子によってこじ開けられる。思いもしなかった痛みと、それ以上に内側を埋め尽くされる圧倒的な圧迫感に、さとみの意識が一瞬遠のく。
「ごめん··· 母さん··· もしかして痛かった?」
「うん··· ちょっと···。···だって··· 弘くんが··· すごく大きいんだもん······」
「一度抜こうか?」
「ううん··· このままでお願い··· ぁああぁぁッ······ ひろ、くんが……。入ってるの……。私の中に…… 痛いけど···嬉しい······」
涙を流しながら、さとみは弘樹の首にしがみついた。
想像もしていなかった痛みはあったものの、さとみは、自分の初めてを弘樹に捧げている気がして、それを心から喜んでいる自分がいた。
そこにはもう、母親としての遠慮はない。ただ、愛する男を求める一人の女がいた。
「母さん……ッ! 熱い……、すごく狭いよ……!」
長い間のブランクが生む強烈な締め付けに、弘樹も自制心を失う。彼は荒い呼吸のまま、母の体をゆっくりと突いていく。
その衝撃のたびに、さとみは声を漏らし、腰を揺らす。
戸惑っていたはずの身体は、次第に弘樹の動きに応えるように、彼をさらに深くへと招き入れるようにうねりはじめた。
「あぁあああ 嬉しい…… とうとう弘くんと、ひとつになれた……! 弘くん、すごく逞しい……ッ!」
長年の渇きを、最愛の弘樹によって癒されはじめたさとみは、本能のままに息子を求めた。
引け目を感じていたはずの身体は、今や息子の熱に呼応し、貪欲に疼いている。
「あぁああああ······ ひ ろ くん··· すごい......」
「母さん……、母さん……ッ!!」
弘樹は、自分を求めて乱れる母の姿を瞳に焼き付けながら、自身のすべてを母の奥深くへと叩き込み続ける。
これまで悩み、迷い続けていた、親子という境界線は、この熱い密室の中で、激しい息遣いとともに溶けて消えていった。
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