瑞希くんと口論になって家を飛び出した
車に飛び乗り行くあてもなく……さまようしか無かった
人気のないところに車を停めて大きくため息をした
思ってもない事を口から出してしまった
悪いのは私だ
この前
仕事の前の時間に胡桃ちゃんと一緒に話していた時
胡桃ちゃんと瑞希くんが2人で買い物に行ったという話しになった
胡桃ちゃんはすごく嬉しそうに話した
彼女は瑞希くんが好きだ
前から知っていたし……
それでも瑞希くんは私を好きだからと安心していた
裏切る事はないと信じているし
……でも、なぜか
猛烈な嫉妬を覚えてしまった
頭の中が、それに支配されてしまった
カメラを構えても集中できず
仕事にならなかった
その日は西野くんにさんざん叱られて
プライドも傷ついた
それまで毎日していた瑞希くんとのエッチも拒んでしまった
なぜか、どうしようもなくイラついてしまう
ここまで自分が嫉妬深かったのかと思い知ったのと、
情けない気持ちが日に日に増し
瑞希くんに当たってしまった
さらに深くため息をついて
ハンドルに頭をぶつける
何やってんだ、私
瑞希くん、ごめん
どんな顔して戻ったらいいのか分からないよ……
結局、朝まで車でさまよって
仕事場まで向かった
瑞希くんになんて言おう
どんな顔して、会えばいいんだ。
車から降りてまたため息
ため息ばっかり……
「姉さん」
後ろから声がして
振り向くのが怖くてなにもできず、立ったまま
「姉さん……」
瑞希くんが私の前に来た
ほほえんでる。
泣きそうになる私
心が張り裂けそう
なんで彼に当たってしまったんだろう
口を開いた
真っ先に出たセリフ
「「ごめんなさい」」
瑞希くんと同じタイミングで言ってしまった
その偶然に私と彼はキョトンととして
そして二人は自然と笑いあった
何も言わず手を繋いで歩いた
ああ、やっぱり……
やっぱり、私にはこの子しかいない
絶対にこの子じゃないとダメだって。
「姉さん、当たる前にためこまないでね」
「え?、、」
「図星?」
ニヤニヤ笑う彼
少し成長した彼
なんだか、頼もしく思えた
分かってたんだ全部……
撮影スタジオで大型の機材が運びこまれている
今日は大仕事だ
仲直りできて良かった
彼と喧嘩したままなんて嫌だし
しゃがんでカメラの準備をしていたら
「危ない!」
声がして、気づいた
大きな機材が倒れて私に向かってくる
……怖くて動けなかった
「姉さんっ!」
ゴツっ
重い音
倒れてる瑞希くん
スタッフの悲鳴。
あまりにも一瞬だった
瑞希くんの頭から血が出ている
「救急車を!」
私は叫んだ
こういう時なんで冷静でいられるんだろ
瑞希くん、死なないで
お願い、お願い、
君とまだ生きていたいの
……お願い
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