姉さんからメールがあって
また飲みなおしちゃったから酔いがさめるまで帰れない、ごめんね
だって
僕はこれでいいと思った
西野さんはあんなに姉さんを尊敬して愛してくれているんだし
大丈夫、きっと幸せにしてくれる
僕はぽっかり胸に穴が空いたまま
震えたまま
朝まで眠る事はなかった
翌日、朝になっても姉さんは帰ってこなかった
僕は学校に行って、いつもどうり笑っていつもどうりいい子でいた
期末テストがあるんだっけ
がんばらないとな
帰宅すると、姉さんがいた
申し訳なさそうな顔をして僕を出迎える
「あ、瑞希くん、おかえり」
「ただいま」
「ごめんねー、昨日は・・・」
「いいんだよ、姉さん」
僕は微笑んだ
姉さんはきっと西野さんと気が合うし
すこしは好意があったはず
本気で嫌だったらもっと抵抗するはずだし
姉さんが僕を抱き締めようとして
僕は避けた
「え?」
「ごめん、汗かいちゃったからさ・・・お風呂入ってくるよ」
「あ、うん・・」
嘘は得意だよ
いつもそうしてきた
僕は本音なんか出さないよ
母さんにそうしなさいって言われたから
みんなに笑顔を振り撒きなさいって
ずっとそう言われたから
シャワーを浴びる
温水なのか冷水なのか分からない
僕は頭から水をあびる
僕は泣いてなんかいないよ
これはシャワーで濡れてるだけだよ
僕は悲しい顔なんか見せないよ
髪を乾かす
鏡に写る僕
きれい・・・なのかな
僕は自分で自分をきれいだなんて思った事はない
台所にたって
料理をする
料理は得意だよ
母さんに教えてもらったんだ
料理ができる子はみんなから好かれるんだよって言われたもん
「瑞希くん、今日の夕飯はなにかなぁ?」
「ん?姉さんの好きなカレーライスだよ」
「わぁ、、よかった・・・ね?瑞希くん?」
「ん?」
「なんか・・・元気ない?」
「姉さん、僕は元気だよ」
そう、僕はいつも元気だよ
そう言いなさいって母さんに言われた
元気を振り撒く子でいなさいって言われた
夕食ができて机に料理をおいていく
「おいしそうだぁ、、」
姉さんのスマートフォンの着信音
姉さんは画面を見て少し苦笑した
「はい・・・はい」
僕は気にせず料理を並べる
姉さんは僕を見ている
「えぇ、わかりました・・・今からそちらに・・・はい」
姉さんは申し訳なさそうな顔をした
「瑞希くん、仕事が・・・」
「あ、うん、わかったよ」
「ごめんね!」
僕は・・・いい弟でいよう
それがいい
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