加奈子は父親の顔をジッと見つめて、次の言葉を待っていた。
亮一はまたも言葉を探し出せず、何やら口ごもるだけだった。
加奈子は努めて明るい調子で「さっき、お父さんは何ていいかけたの?」と言った。
「ああ、うん‥その、すぐに健次じゃないってわかったのか?どうして
…やはり似ていても違いはあるよな…」
「ううん、私鈍いから…。それに髪型も着てる服もまるきりおじちゃんだもん。
お父さん、そんな格好したことないし。まさか…お父さんだなんて思わないよ。」
加奈子はハッとして言葉を切った。また父親が俯くかもしれないと、亮一の様子を確かめた。
そしてさらに続けた。「アノ時も…ちょっといつもと違うかなと感じたけど、
おじちゃん、お父さんに怒られて私とは…もう…だから…何か雰囲気が違うのかなと思った」
と恥ずかしそうに告げた。亮一も恥ずかしかったのか
「じゃあ、なぜ…」と独り言のようにつぶやいた。
「あのね、健次おじちゃんはね、私の事『加奈子』って呼ばないよ。アノ時も
『加奈』としか…。おじちゃんみたいに『加奈』って言ってたのに、アノ最後で
『加奈子!』って…だから、ひょっとしてお父さん?って……」
加奈子は亮一の顔を覗き込んで言った。
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