私の名前を呼ぶ声に、振り返ると、田中と吉川が立っていた。通りの向こう側で、頻りに手を振っている。
「母さん知ってるよね。大学時代の同級生の田中と吉川だよ。」
「ああ、うちにも何回か泊まった子達ね。田中君は、面白い子だったから。よく覚えてるわ。」
二人が、こちらに近づいて来た。母は、二人を意に介さず、私の指に絡めた自分の指を離すどころか、逆に強く絡めて来た。仲睦まじい私達の様子に、田中が少したじろいだようだ。
「いやあ。お母さん田中です。ご無沙汰しています。」田中が、頭を掻きながらそつなく挨拶をした。続いて吉川も。
「こちらこそ。健一が日頃からお世話になっております。お二人ともお元気でしたか?」
母が、流石に元教師らしく、深々とお辞儀をして丁寧な挨拶を返した。さっき迄息子にちん○を嵌められて喘いでいた女と思われない上品さで、我が母ながらウットリしてしまった。
「いやあ、素敵なカップルが歩いているんで、見とれていたら。健一なんで驚いちゃって!年齢差は、あっても絵になってましたよ。」と吉川。
「うらやましいですよ。うちなんか、ママに敬遠されて、二人で出掛けることなんか、ありませんから。」田中が、二人の様子を探るように、私と母を交互に観察している。
「お褒めいただいて有り難うございます。私と健一は、本当に仲が良いんですよ。姉がいるんですけど、嫉妬しちゃって。。こうやって外出する時なんか、恋人同士のようにしてるんでございますのよ!」すっかりザアーマス口調の母は、二人に見せつけるように、身体を密着させて来たので、さすがに恥ずかしくなって来た。あんまり、余計なことを言うなよ!って、思ってしまった。
「あれから大分経つんですけど。お母さん、若返りましたよ。お世辞抜きで。。健一に、色々と親孝行してもらってますね。」
田中の言いたいことは、よくわかる。
「僕も、ママともっと仲良くしなきゃ。今日は、あてられましたから。」と田中は言い残して、吉川と二次会に行く。。と去って行った。二人の後ろ姿を見送りながら。
「田中は、母さんに昔から憧れてたんだよ。知ってた?」と私。
「うん。何となく。でもメガネかけたオバサンに、何でだろうって思ってたわ。田中君なんて粋な男の子は、若い娘が似合うのにね。」母が、首を傾げた。
「さあ、食事を済ませたら。早く帰ろうか?友枝!」通りの真ん中で、母のほっぺたにチューした。
「早く帰って、どうするの?」母も私にチュー。。。
通行人が、若者とメガネ掛けた老け顔のオバサンの人目を憚らないイチャイチャに、ギョッとしたように振り返ったりした。
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