12月も終わり頃。
私は実家に帰る夜行バスに揺られていた。
クリスマスはデートやバイトで忙しく過ぎて、年末は休みが取れたので実家で年を越すことにしたのだ。彼氏の行成(ゆきなり)はちょっと残念そうにしていたけれど…お正月料理やお年玉の誘惑に負けてしまった。
父とはあれから全く話していない。元々連絡を取り合うのは母だし、用事がない限りメールや電話なんてすることはなかった。もちろん父からも音沙汰はない。
あの日の出来事は、なかったことにした方がお互いのためだと思う。けれど…彼氏とエッチする時、必ず思い出してしまうのだ。オナニーも何度もした。そして終わった後は罪悪感に襲われる。自分が汚れている気がしてならなかった。
はぁ……、と、何度目になるかわからないため息をつき、ガラス越しに自分の顔を見つめる。
父はどう思っているのだろう…。
普通に接することはできるだろうか。
こんなに緊張しながら実家に帰るのは初めてだった。
次の日の早朝、バスは地元の駅に着いた。歩いてすぐの実家に向かう。この時間はまだ父が家に居るはずだ。
「ただいまぁ」
「あ、お帰り~。疲れたでしょう。バスでは寝れた?」
母が出迎えてくれる。
「ん~あんまり…」
居間に入ると父が新聞を読んでいた。
「…ただいま」
「おぉ、お帰り。疲れただろう。少し休んだらどうだ」
父は普通だ。意識してそうしているのか、なかったことにしているのか…
「…そーする。」
「ご飯はぁ?」
「起きたら食べるよ、お母さん」
荷物を持って2階の自室に上がる。ベッドに潜り込むと、懐かしく感じて、自然と眠りに引き込まれていった。
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