優子は顔を赤くしてうつむいている。「まあ、誤解さるても困るから、旦那にはいちいち
言わんだろうけどね‥。」娘が顔を上げ、自分をチラリと見たのを知りながら、意識的に
視線を合わさずこう言った。「あくまでも医療行為みたいなもんだ。……それで男女の仲に
なるわけでもなし。なあ。ハハハ。」「なっ!!…」優子がさらに真っ赤な顔を父親に向け、
声を発した。「なっ、何言ってんの!何言ってんの!」「なーんだお前、むきになって。」
「だって、お父さんがヘンな事…」「だから、そんな事になる訳ないって話しをしてんだろ。」
優子はまたうつむいた。「…で、最初は優子がお願いしたのか?」今度は娘の顔を覗き込み、
じっと目を見て言った。さっき自分と娘がしたような事が舅との間にも日常あり、それが
当たり前、自然の事だというように。父は娘が返事をするまで見つめて待つ気だ。
それに耐えきれず、しばらくして蚊が鳴くような声で言った。「…お義父さんから…。」
よく考えれば父親の持って行き方や態度は、無理があり、強引だ。したたかな娘ならば
口を割ることもなかろうが、根が正直で素直な優子は父親の下手な芝居にも気付かず、
ついに肯定してしまった。
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