次の日、優は登校していた。
俺は昨日の事をできるだけ意識しないように仲間達に混ざって会話していた。
でも優は違っていた。仲間の中に入るとすっ、といなくなる。目を合わせようともしなかった。
「えっ、昨日好き、って言ったよな…キスしたんだっけよな…」俺は困惑してしまった。でも、告白してキスしたからこそ、恥ずかしいのだろうと自分に言い聞かせていた。
でも頭では分かっていても気持ちはやきもきしてるのが分かってた。
みんなの中で、楽しそうに笑ってる姿を見た時嫉妬に近いものを感じ、イライラが頂点に達してしまった俺は、つい「ガタン!」と机を蹴り、教室を出て行ったのだ。
その後、俺は一切優の方を見なかった。
授業が終わると、みんなに寄り道を誘われても、無言のまま教室をあとにした。
人気のない校舎の裏に行き、ため息をついた。そして自分の行動に後悔していた。
「幼稚だな〜、俺は…」と、自分に呆れたように独り言を言ったのだった。
しばらくして、自転車で家に帰った。
帰る途中も、今日1日の事がフラッシュバックする。俺は前をみながらも、視界に何が入ってるのかを認知していなかったんだろう。
突然、「待って!」と呼び止められた。
そこには、自転車から降りた優が立っていた。優に気づかないうちに通り過ぎてた俺を、呼び止めたのだった。
ここで何してたんだ?
そう思ったが口には出さず、「なに?」と少し冷たく問いかけた。
「怒ってる?怒ってるよね?」優は少し怯えたような表情で俺に近づいてきた。
「なんかさ…普通にしていようと思ってたけど…いざ浩樹の顔見ると思い出しちゃって…」「途中で、気分悪いだろうな、って思ったから、ちゃんとしよう、って思ったんだけど…そしたらなかなか機会なくなっちゃって…ごめんね…ホントにごめん…」
優はそのまま下を向いてしまった。
俺はまだイライラは消えなかったが、優の本音が聞けたので少しだけ安心した。
「いいよ…別に…」とぶっきらぼうに言った。
「あ、まだ怒ってる…」「だから、怒ってねえよ」「ホント?ホントにホント?」
また目をクリッと開いて首をかしげてくる。昨日玄関から出てきた表情と同じだ。
俺はその表情にまたやられたみたいだ。
思わずプッ、と吹き出してしまった。
「何?なんか顔変だった?」と顔に手を当てて戸惑っている。それがまたなんかおかしくて、笑い続けた。さっきまでのことなんかどうでもよくなっていた。
それから俺達は自転車を引きながら途中まで歩いて帰り、次の日に会うことにして別れた。
※元投稿はこちら >>