目を開けると私の腕の中にいたはずのアンナちゃんがいない
あわてて周りを見回した時バスルームの扉が開いた
「あ、おはようございます」
「おはよう」
一安心してアンナちゃんと入れ替わりでバスルームに入り、大きな鏡に映った自分の体を見て
アンナちゃんと同じように所々充血していることに初めて気づいた
〈カナさん〉
『お義母さん・・・』
〈酷いことになってるわね あの連中許せないでしょ?〉
『勿論です でも思い出したくもないです・・・』
〈私は怒ってるのですよ 特にあの男 私も三十年間教壇に立ちましたからね〉
『それよりもアンナちゃんの事が・・・』
〈そうですね、アンナちゃんから目を離さないでくださいね〉
『お義母さんも』
〈私は用事を思い出したので暫く会えないかもしれません〉
『え? お義母さん 今は傍にいてください』
〈カナさん、アンナちゃんのことは任せましたよ〉
『お義母さんっ』
その日からお義母さんの声を聞かなくなった
アンナちゃんも私もできるだけ「いつもどおり」を装いながら過ごす日々
アンナちゃんの仕事終わりに合わせて一緒に病院に行った、行為から検査可能になるまでの日数が短い性病の検査もした
それでもまだ安心はできない 一番気がかりなのはアンナちゃんが何度も膣内に射精されてしまったこと
タカシがお腹の中にいることが分かったときは嬉しかった それは愛し合ってできた子だから
でもアンナちゃんは・・・
彼女はいつも通り振舞っているけど時々不安そうな表情を見せ、私はその度に抱きしめた
気休めにもなっていないかもしれないけど、私にできることはそれしかない
そして今日もアンナちゃんの帰りを待ちながら夕食の支度をする
〈あら、今夜の御飯もアンナちゃんの好きなものね 栄養のバランスも考えなければいけませんよ〉
『お義母さん!』
〈そうそう、あの飲み屋にいた方達ですけどね〉
『その話は聞きたくありません・・・』
〈変な病気は持っていなかったそうですよ ノブヒロさんが色々調べてくれました〉
『ほんとうですか?』
〈はい それにね、写真とか撮られていたそうですけど、それもノブヒロさんが処理してくれましたよ〉
『そうですか』
〈ノブヒロさんは老体に鞭打って頑張ってましたよ〉
『お義父さんはもう死んでるじゃないですか・・・』
〈ふふっ 軽口を言えるならとりあえずは大丈夫そうですね そうそう、あの飲み屋にいた方達ですけど〉
『もうその話は結構です』
〈あら、カナさんには特別に話そうと思ったんですけど〉
『聞きたくありません どこかで顔を合わせるかもしれないと思うと外に出るのが恐くて・・・ たぶんアンナちゃんも・・・』
〈そのことなら大丈夫ですよ アンナちゃんにはもう話しましたけど、あの方達と顔を合わせることはありません この先ずっと〉
『どういうことですか?』
〈私たちは悪霊ですからね〉
『あ・・・それは前に私が言った・・・ ごめんなさい、言い過ぎました』
〈いいんですよ、それぐらい 家族ですもの それよりアンナちゃんに生理が来ましたよ〉
『本当ですか!?』
〈もうすぐ帰ってきます〉
「ただいまー」
アンナちゃんの声が聞こえた 久しぶりに聞く明るい声
「お義母さん」
アンナちゃんが私に近づいてくる
「あの・・・ 生理きました」
その言葉が耳に入ってきた時にはアンナちゃんを抱きしめていた
私たち以外の人の気配がする、誰かが帰ってきたのかもしれない
「お義母さん タカシくんが・・・」
今はそんな事どうでもいい
「わかってるわ でも もう少しだけ」
「うん」
〈ひとまずは良かったわね〉
『はい、ありがとうございました お義父さんにもお礼を』
〈それはカナさんの身体で ですよ〉
『ですよね・・・』
※元投稿はこちら >>