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後日、徹が県警から聞いた話では、実は半年ほど前から県警は「性愛教」における麻薬取引捜査を進めていたという。
わが国では警官は麻薬の囮捜査は原則として認められていない。
が、潜入捜査は可能だった。
何人かの私服警官や麻薬取締官(=通称マトリ)が数ヶ月前から信者として潜入していた。
徹が性交した弥智代は実は巡査部長だった。
長期間の信者として潜入し、マトリと共に麻薬の動きを掴んでいた。
教祖やウラマーの信用を利用し、その日は徹の監視役を買って出た。
翌朝6時がガサ入れ予定だったが、徹と奈美子が動いたことで緊急性が生じた。
殺人未遂の現行犯逮捕を目的として県警が予定を早めたのだった。
弥智代は徹が307号室を出ると「212号室から脱出する可能性がある」と言ってウラマー達をそこに集め、そこから徹達の跡を追わせた。
が、弥智代の目的は別にあった。
既に警官が「性愛館」内部に40人ほど入り込んでいた。
212号室のドアから「性愛教」内部に警官を導くため、ウラマー達をその場から遠ざけておく必要があった。
地下から3階までの全部屋が開錠され、加奈子を含めた信者達は全員無事に救出された。
最後に警官達が乗り込んだのが1階の大浴場だった。
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