その日、社内イントラに記載された辞令に彼の名があった。
ん?
本社勤務?
部長?
おやおやおや・・偉くなっちゃって・・。
もう鼻も引っ掛けてくんねーな・・。
顔、合わせても何話していいか分かんねーし。
そんなことをボンヤリと考えていた数日後、私は彼と喫煙室で、、受動ナントカ法は施行前だった、、遭遇してしまう。
「よっ。久しぶり・・。」
「・・ども。」
微妙な沈黙が喫煙室を満たす。
こんな時に限って二人きりだ。
二人は黙ってタバコを吹かす。
喫煙室に入ろうとしては、私と彼がいることに気付いて踵を返す人が何名かいた。
・・だよなー。
かつての『七不思議』のひとつだもんなー。
「「・・タバコ・・吸うんだ・・?」」
奇しくも同じ質問を同時に口にする私と彼。
おっと・・タメグチきいちゃったい・・。
・・『部長様』だぜ・・?
「・・吸うん・・です・・ね・・。」
一応、訂正。
彼は苦笑いを浮かべていた。
「・・変わんない・・ね・・。」
「・・そぉ・・・です・・か・・。」
二十代前半から三十代半ばだぜ・・?
・・・変わんないわけねーだろ。
乳も垂れてきたし、化粧のノリも悪い。
「んじゃ。」
「ん。」
そんな会話を経て私は喫煙室を後にする。
驚いていた。
十二歳違うから・・
四十八歳・・か・・?
・・老けた・・な・・。
年齢相応の変化ではない。
『何か』があったからこその変化、だ。
『何か』・・それは明らかだ。
私には分かる。
仮に他の誰が分かんなくても。
『奥さんの死』だ。
彼の受けたダメージを想像すればする程、あの瞬間、心が踊った自分を許せなかった。
私は自分を責める。
誰が許しても自分で自分が許せない。
・・ちっくしょー・・。
仕事する気になんねーよ・・。
あ、それはいつもだ・・。
・・呑みに・・行っちゃおっか・・な。
ちょっと早いけどフレックスだし・・。
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