信州人さん、いつもコメント有難うございます。
続きです。
朝ご飯を食べ終えると、親父さんとお袋さん手に大きな袋を下げ部屋に入って来た。
「健二君。美穂をお願いします。」
二人は頭を下げ、袋から買ってきた供え物と花をテーブルの上に置いた。
「親父さん、お袋さん、有難うございます…。本当に…有難うございます。」
「お父さん、お母さん…。有難う。健二と一緒に…行って来ます。」
娘の人生を台なしにした男。殺しても殺し足りない恨み。そんな思いの親父さんとお袋さんが篤の事を許してくれた事に俺は涙が溢れた。
「ここや!篤は…ここに…!」
親父さんとお袋さんに笑顔で送られ、篤の眠る墓のある寺に着くと、何故か涙が溢れ止まらなかった。
「健二…!ええよ…泣いてええよ!」
美穂も泣きながら俺の手を握りしめた。
「けどね…帰りは笑顔で帰ろうね…。」
「せやな、いろいろ報告して、篤の笑顔思い出して帰ろうな!」
美穂の言葉に二人で笑顔で帰る事を約束し、篤の墓の前に立った。
「篤!久しぶりやな!俺達結婚したで!お前との約束、ちゃんと守ったで!美穂も一緒や!俺達の命の恩人!篤、有難うな!」
「篤、有難う!私、幸せになったからね!今まで一人ぼっちにしてごめんね!でも、これからはみんな仲間だからね…。篤!」
美穂はしっかりとした口調で篤に語りかけ、二人で手を合わせた。
「おーい!仲間も来たでー!篤ー!」
静けさを打ち消す様に声が聞こえ、そこを見ると良太と昨日の仲間達が花を手に立っていた。
「良太…!みんな…!」
「仲間の墓参りや!みんな集まったで!」
良太は俺が帰り際に話した事をみんなに伝え、俺達を待っていたと後で聞いた。
「篤!みんな来てくれたで!よかったな!」
篤の墓はみんなが供えた花で埋まり、そこに篤の笑顔が浮かんで見えた。
「み…皆さん…!こ…これは…!」
みんなが手を合わせているとそこに懐かしい二人の姿が見えた。
「おじさん、おばさん、お久しぶりです。」
「け…健二君…。こ…これは…。」
二人は篤の親父さんとお袋さんで、俺達を見て驚き、みんなの姿を呆然と見ていた。
「おじ様、おば様、お久しぶりです。美穂です。」
「えっ…!み…美穂ちゃん…!本当に…美穂ちゃんなの…!生きてて…生きててくれたのね…!美穂ちゃん…!」
「篤が…篤が…!申し訳ありませんでした…!本当に…本当に申し訳ありませんでした!生きててくれて…!よかった…!」
美穂の姿に二人はその場に泣き崩れ、頭を地面につけ美穂に謝罪を繰り返した。
「おじ様、おば様、頭をあげて下さい。いろいろありましたが、篤のおかげで今は幸せです。みんな篤を仲間だと思ってます。どうか頭をあげて下さい。」
美穂もその場に座り、二人に優しい言葉をかけたが、二人は美穂に縋り付き何度も何度も謝罪を繰り返した。
美穂はそんな二人を抱き寄せ、優しく肩を叩くと、その姿にみんな涙を流し三人を優しく見守っていた。
二人が落ち着きを取り戻し、あらためてみんなで墓前に手を合わせ、花に埋め尽くされた篤の墓を後にした。
「健二君、美穂さん、お時間があれば家に来ていただけませんか?」
「はい。おじさん達に合わなければこっちから押しかけて行くつもりでしたから。」
「そうだったのか…!健二君、美穂さん…有難うございます。」
二人は目を潤ませ安堵の顔を見せ、俺達は篤の家に向かった。
「懐かしいです。良くお邪魔しましたよね!飯も食わせて貰って!有難うございました。」
「三人ともカレーが好物だったからね。健二君のリクエストでいつもたくさん作ってね…。それでお父さんもカレー好きになってね!」
「三人の食欲には敵わなかったよ!でも、そんな姿見るのは楽しみだったよ!今は…カレーも食べる事もないな…!」
「おばさん、久しぶりにカレー食べたくなったよ。作ってくれる?」
「もちろんよ!健二君のリクエストなら張り切って作るわよ!」
「私もお手伝いします。」
おばさんは溢れた涙をハンカチで拭いながら美穂と二人で台所に立った。
カレーを煮込む間、俺と美穂は今までの事をすべて二人に話し、篤はもう一人ぼっちじゃないと伝えた。
「お父さん、よかったね…。」
お袋さんが泣きながら親父さんに声をかけると、親父さんは声をあげて男泣きし、二人の辛かった思いが俺達に痛いほど伝わってきた。
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