金曜日。
貯まっていた有給休暇を取ることにしたサクラ。
朝から家を掃除し、二人、、夫と自分の布団を干し、風呂を沸かす準備を済ませ、買い物に行く。
おっと、手を付けてしまった純米ナントカ酒も補充しておかなきゃ。
昼過ぎに夫から連絡が入った。
夫;家に着くのは二十時くらいかな。
サ;晩御飯、家で食べる?
夫;お願いします。何にするの?
サ;ヤキソバで良い?
夫;楽しみにしてます。
「よっしゃあ!」
気合いが入るサクラ。
全ては予定通りだ。
そして時刻は間もなく二十時。
「ただいまぁ。これお土産。」
「お、ありがとう。何?」
「あっちの漬物。美味かったから。」
「ふーん。お風呂、湧いてるよ?」
「素晴らしい。助かるわぁ。」
入浴の支度をする夫。
思えば出張の都度、夫は何かしら土産を買ってくる。
勿論、当たりもあれば、外れもあった。
だが、少なくとも夫なりの配慮があったのは確かだ。
入浴を済ませたタイミングを狙ってヤキソバを出したサクラ。
「おぉ。いただきます・・。」
取り皿に盛ったヤキソバを口にするや否や、夫は真顔になる。
「何だ、これ?」
え?え?え?え?
焦るサクラ。
「・・めちゃくちゃ美味い!」
・・びっくりした・・・。
黙々とヤキソバを食べる夫。
「そんなに美味しい?」
「えひゃえひゃふふぁひ・・。」
・・口にモノを入れたまま喋りなさんな。
どっかの誰かさんみたい・・。
「いや、でも美味い。何が違うの?」
咀嚼し飲み込んだ夫は、再びヤキソバに夢中になる。
「菜々飯店って知ってる?」
「知らない。どこ?」
「ちょっと歩くけど近く。そこのレシピを教えて貰ったの。」
「へー。今度、行こうよ。」
「あ、え。うん。行こう行こう。」
外食に誘われるなんて・・
・・何年振りだ?
恐るべし、ナナ理論・・。
向かい合って土産の漬物を食べながら、ヤキソバを食べ始めたサクラ。
「あ、これも美味しい・・。」
「うん。何か特産らしい。」
三人前の生麺を使って作ったヤキソバは、あっという間に完食。
どちらかといえば少食な夫にしては珍しい。
しかも、だ。
酔っているわけでもないのに、いつになく夫は饒舌だ。
空になった食器を前に話し込む二人。
だが、さすがに疲れたのだろう。
夫がアクビをし始めたのが十時過ぎ。
「ごめん。そろそろ寝るわ。」
「うん。洗濯物だけ出しといて。」
「はぁい。」
汚れ物を洗濯カゴに放り込んだ夫は、寝室に消えていった。
「よっしゃ・・。」
口の中で快哉を叫ぶサクラ。
順調、順調。
一週間に及ぶ出張だったのだ。
疲れているに違いない。
今日はここまでだ。
食器を洗いながらも、サクラは次のステップの予習に余念がない。
「・・明日の・・朝・・だな。」
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