「うん。それは分かるね・・。」
ナナの唱える三段論法は完全に破綻していたが、そこに至るまでの話に浮ついたところは無い。
二人の中学生は、幼いながらも真剣に交際をしていたに違いない。
「・・・『卒業式しよう』って・・言ったんですよ。」
『卒業式・・しよっか。』
『え?』
『二人で卒業式・・今から。』
相変わらず少年の察しは悪い。
構わず自分の唇で少年の唇を塞ぐ少女。
互いの舌を絡め、互いに気持ちを伝え合う二人は、立ったまま抱き合う。
互いに唇を半開きにして舌を絡め合せている為、唇の端から唾液が漏れ伝う。
漏れ伝う唾液が少女の唇から頬、首筋へと流れていく。
少年が首筋に唇を這わせ、唾液を舐め取られた少女は、躯を震わせながら喘ぐ。
首筋を這っていた少年の舌が、ゆっくりと移動した先は少女の耳朶。
はぁああぁ・・
産毛の生えた耳朶を甘噛みされながら、噛まれた少女は大きく息を吐く。
既に少女は自力では立っていられない。
少年に抱き締められているからこそ、辛うじて崩れ落ちてしまわないだけだ。
少年の左右の手が制服、、セーラー服の裾から潜り込み、インナーのシャツ越しに少女の躯を撫で回す。
右手は前面を。
左手は背面を。
ぁ。
小さく叫ぶ少女。
それもその筈、セーラー服の下を這う少年の指先が、少女の敏感な突起を探り当てたのだ。
ようやく膨らみ始めたばかりの乳房は、触れられると少女が痛がることを知っている少年。
その為、少年は乳房に触れないよう注意しながら、少女の乳首を優しく摘まみ、左右に捻じる。
或いは指の腹で軽く圧迫するようにして、小さな円を指先で描く。
少女は狂い始める。
少年がセーラー服の襟元から覗く鎖骨に舌を這わせたのだ。
絹よりも滑らかな素肌を内側から押し上げる鎖骨。
そこに形成された窪み、それこそが少女の弱点のひとつだ。
あ、そこ・・ぁ。
いつの間にか、セーラー服の上衣、その脇にあるファスナーが緩められ、少年は上衣を捲り上げ、インナー越しに乳首を唇に含む。
唇で乳首を挟み、舌の先で乳首の先端を刺激すると、少女の咽喉から漏れる旋律に複雑な音階が生じる。
三月の末、まだ気温は低い。
にも関わらず、二人の中学生は汗をかいていた。
少女とて攻められてばかりではない。
制服のズボン、そのファスナーを緩め、下着の生地の下にある少年の熱く硬い何かを優しく握る。
硬く尖がったそれは、少女を求めて尖がっているのだ。
一年近くの間、抱き合う都度、それは少女に訴えていた。
少年は自制心故に口にすらしないものの、少年の本能は正直であった。
では少女は、と言えば複数の想い故に判断が出来ないままでいた。
少女は自身の未成熟な躯を恥じていたが、その未熟な躯を求めている少年の本能は、少女の女としての自尊心を満たす。
勿論、明確な論理や分析に基づいているわけでもない。
少女には確信があった。
この少年であれば、純潔を捧げて悔いは無い相手だと。
少女は分かっていなかった。
だが、少なくとも少女自身が『分かっていないことを分かって』いた。
いわゆる、『無知の知』だ。
『分かっていない』のは、女としての自分の躯の仕組みだ。
端的に言えば、破瓜の痛みと妊娠についての畏れだと言って差し支えないであろう。
『痛み』自体が怖いのではない。
『痛み』が原因で性行為に臆病になってしまったらどうしようか。
更には『痛み』に耐え切れず、途中で中断せざるを得なかったら。
そして妊娠、更には避妊に関する知識不足が主たる問題点だ。
最後に社会通念上の問題があった。
勿論、一般的には中学生の性行為が、望ましいわけはない。
だが、現実的には同級生の少なくとも何名かが、その動機は問わないにしても、経験を済ませているらしい。
ただ、少女自身は仲々、踏ん切りがつけられない。
まだ早過ぎるのだろうか。
いつならば早過ぎないのだろうか。
いずれにせよ、これら三つの命題を総合しても、決めるのはナナ自身でしかないのだ。
今しかない。
この相手、この場所、このタイミングを逸したくない。
逸したら後悔する。
決断の時だった。
そしてナナは決断を下したのだ。
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