サクラにも覚えがある。
もっとも、サクラは共犯者として、アリバイ作りの片棒を担ぐ役割が主だったが。
『お願い、サクラ。この通り!!」
事後報告を条件に引き受けたことが、高校時代に何度かあったのは確かだ。
あの友人達は今頃、どうしているだろう。
「じゃ、今度はウチに電話しますから。」
そう言って自宅の電話番号をタップするナナ。
「あ。お母さん?あのね・・・」
成り行きにより友人宅で夕飯を頂いた。
泊まっていったらどうかと誘われた。
「うん。・・・うん、分かった。」
どうやら、アッサリと決裁は通りそうだ。
出番が無さそうなサクラはホッとする。
「うん。じゃ明日ね。お休みなさい・・。」
通話を終えたナナは、振り向いてガッツポーズを決める。
良かった、良かった。
「洗い物しちゃいましょう。」
「・・だね。」
とは言え、スキヤキの後片付けなぞ、そんなに手間は要さない。
包丁やザルは洗ってあるし、茶碗と取り皿と箸が二人分、炊飯器の内釜とホットプレートを洗えばお終いだ。
二人で協力した結果、要した時間は食器を拭いて格納まで含め、僅か十五分。
「月曜日、どうしよう・・。」
向かい合ってソファに座った瞬間、遠い眼をしたナナが呟く。
友人に冷やかされることは間違いない。
「めちゃくちゃ良かった、とか言ってみるとか?」
「・・言えません・・。」
ほほう。
「言いたくないならいいんだけど・・」
・・ナナちゃんは、まだなの?
再び、赤くなるナナ。
暫し黙り込んだ後、ナナは呟く。
「・・まだ・・じゃない・・です。」
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