7月の下旬。
なにもかもを溶かしてしまいそうな太陽の光が、少年の部屋へ差し込んでいた。
元々二人部屋だった、広い部屋の真ん中で、少年はアイスキャンディーをくわえて寝そべっていた。
雑に物が積み重ねられている学習机には、まだ白紙の宿題。
風鈴が心地よい音をたてて、夏の暑さの中に涼しさを感じさせてくれる。
しつこく鳴き続ける蝉の声も、少年の心を踊らせる。
今日はなにをして遊ぼうか。
起き上がり、小走りに茶の間へとむかった。
古くさい黒電話のダイヤルをまわす。
今日も行くよな?
少年はそう質問し、返事を得るとすぐに受話器を置いた。
「いってきまーす。」
少年の元気な声が響く。
台所のテーブルでうたた寝をしていた母は、ずれた眼鏡をなおして、家計簿をつけはじめた。
畦道を走って、小さな雑木林へと急いだ。