「・・ね。そろそろ・・どうか・・な。」
小柄な少女、、アオイが隣を並んで歩く幾らか背の高い少女、、ミドリに問い掛けた。
問い掛けられた少女は、一瞬だけ戸惑ったような表情を浮かべると小さな溜め息を吐きながら頷く。
「・・うん。いいよ・・。これから?」
提案は承認された。
まるで花が咲いたように嬉しげな笑みを浮かべる小柄な少女。
十四歳になったばかりの中学二年生。
その年齢に相応しく、あどけない笑顔。
これから『仕事』をして、それにより得た僅かな対価で数週間ぶりに『愉しむ』のだ。
アオイの頬が思わず緩むのも詮無いことと言えよう。
対照的にもう一人の少女が、乗り気ではないことは明らかだ。
これからする『仕事』に内在するリスク、そしてその後に控えている『愉しみ』に対する秘かな嫌悪。
だが、正確に言えば『愉しみ』に対する嫌悪よりも、内心、『愉しみ』に期待している自分自身に対する嫌悪の方が、その比重としては遥かに高い。
それぞれの想いを抱きつつ、二人の少女は普段なら使わない最寄りの駅に足を向けていた。