いつも通りの朝…。
いつも通りに玄関の新聞受から、朝刊を引き抜くと居間のテーブルに広げる。
計った様なタイミングで、妻が珈琲を入れると開かれた新聞の横に置く。
『コーヒー、置きますね。』
『ああ、ありがとう。』一面の記事を流し読み、数枚めくると地方版のお悔み欄に目を落とす。
父母が他界し、家の慶弔事はぼくの役割となっていた為、お悔み欄を見る事が日課となっていた。
何人かの葬儀日程が書かれた一覧に、見覚えのある名前を見かける。
【○○美映子 65歳 喪主:長男…住所…】
年齢も住所も古い記憶のままであった事から、亡くなられた人が美映子本人である事は、容易に確信出来た。
『もう、三十年にもなるのか…。』三十年前を思い出し、懐かしくも恥ずかしい複雑な感情が沸き起こる。