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1:果てなき罠に堕ちて~獣道~
投稿者:
富美代
長い間一緒に仕事をし、互いのことをよく理解しあっている、若くて優しい谷本くんからの、あまりにも突然で予想さえしなかった、長年秘め続けた彼からの告白で、私は彼と熱く激しい一夜を過ごして結ばれました。彼を仕事に送り出した私は、年甲斐もなく、心をときめかせ、
彼の帰りをもう待ち切れなくなるほど、 彼に心を奪われ、愛されることの幸せなに浸っていました。仕事が終わればまた私のところへ帰ってきてくれる彼に、少しでも喜んでもらおうと、私は慌ただしく動きまわり、掃除や洗濯を始めました。 しばらくすると、電話の呼び出し音が鳴りました。掃除機を止めて、受話器を取りました。 「もしもし、山本です。」 「やぁ。…やっぱり、田中のとこのあんただったか。話はもう聞いてくれたかね?花井だよ。」 「は、はい…お、おはようございます…」 私の会社の弱味につけ込み、いつものようにお金にものを言わせて、強引すぎるやり方で私を引き抜こうとする人らしい、大事な仕事の電話にも関わらず、傲慢で馴れ馴れしい口ぶりで、花井さんは話しました。これから会社を移って、社員として働くことになるのでしょうが、やっぱり私は、生理的に花井さんのことは受けないと、改めて感じました。 「急なことで悪いんだが、早く話を進めば、金に困っとる田中も気が楽になるだろうし。これから、ウチの会社に来れるか?いろいろ手続きもあるし、…それに、あんたにゃあ、話しておかなきゃならんこともいっぱいあるからな。ヒッヒッヒッ…」 「…私も構いません。…何時ごろ、どちらへお伺いすればよろしいですか?」 「ワシは何時でも構わんよ。あんたが都合のいい時に来りゃあ。…ただ、込みいった話が山ほどあるから、あんまり遅いと、…今晩あんた、帰れなくなるよ?まぁ、あんたの物わかりが良けりゃあ、早く済むんだが。」 「えっ!?ど、どう言う意味ですか?」 私は、花井さんの言っていることが全く理解できませんでした。それに、あまりにも人を馬鹿にして見下した口ぶりに、苛立ちを感じてムッとしました。 「電話じゃあ話しきれんし、あんたの目で確かめてもらう方が、あんたも諦めがつくだろうから、とにかく、○○○○にある事務所まで来たらいい。」 やっぱり花井さんの言っていることが何だかわからず、話しぶりにますます苛立ちましたが、あまり遅くなると、彼の帰りに間に合わなくなると、できるだけ早く話を済ませて、このいけ好かない傲慢な成金男から解放されたいと、私は思いました。 「…わかりました。今から出かける支度をして、そちらへ伺わせてもらいましす。」 幸いなことに、花井さんが指定してきた事務所は、うちからそう遠くはなく、車で30分もあれば着きそうでした。 「そうかね。じ ゃあ、待ってるよ。一応面接みたいなもんだが、おめかしに時間はかけなくても構わんよ、ヒッヒッヒッ…」 「そ、それってどう言う意味ですかっ?お言葉ですが、あまりにも失礼じゃありません?」 「まぁまぁまぁ…そうカリカリしなさんな。あんたがおめかししたとこで、そんなモンはうちに来りゃあ、関係ないから、ガハハハハッ…」 「し、失礼しますっ!」 さすがに私も、花井さんのあまりの傲慢で、人を人として見ない無礼な口ぶりに 苛立ちをこらえきれず、受話器の向こうで高笑いを断ち切るように、受話器をガチャンと置きました。社長や会社のみんなには迷惑をかけてしまうかも知れませんが、私があちこち回って、自力で融資先を見つけたい、とりあえず、あの成金男の会社へ行き、話を白紙に戻そう、という思いになり、私は急いで身支度を整え、花井さんの事務所へ向かいました。
2012/11/08 08:03:25(aEGIj7Mu)
投稿者:
富美代
花井さんが机の上の私の目の前に、ぽんと投げ落としたものを目にした瞬間、私の頭は混乱し、心臓がドクドクと激しく打ちました。
「つい2、3日前、一人でフラフラほっつき歩いてる中学生がいてな、受験か何か知らんが、えらく荒れた様子でよ。ワシらがココから外に出てくると、ソイツが下に停めてあったワシの車を、ボコボコに蹴っててな。親を引っ張り出してやろうと思ったが、なかなか頑固に口を開かねえから、持ちモン見たらコレが出てきたってわけだ。住所も連絡先ものってるんだが、『あんな恥知らずで汚いヤツ、もう親でも何でもねぇ!あんなヤツの世話になるぐらいなら、自分で何でもやる!』って、エラく抵抗しやがるからよ。とりあえず今は、ワシがソイツを預かっとる。」 私はあの日見たのは見間違えじゃなく、 しかも、今司は花井さんに捕まっていることがわかり、血の気が一気に引いていきました。 「どうした?顔色が悪いぞ?それにしても、ソイツの親の顔が見てみたいよ、全く。もう何日か家に帰ってないのに、どうも思わねぇのかねぇ。ソイツ、母親のこと、『あんな淫乱な変態』って言ってたなぁ。息子にナニ見られたんだか…。 息子がいねぇことをいいことに、オトコでも連れ込んで、ヨロシクやってるんかねぇ?マジメ一筋なオマエはどう思う?」 花井さんは再び、私の横に座り、肩に腕を回して私を引き寄せ、私の顎をつかむと、私は顔を上げられました。 「オマエにもちょうど中学の息子がいるんだよな?」 「…は、はい…。」 「まぁ、オマエみたいなマジメな母親なら、息子もちゃんと利口にしてるんだろ?毎日ちゃんと家に帰って、勉強してるんだろ?」 私は返事ができませんでした。目を閉じて口をつぐむのが精一杯でした。 「コイツ、『山本司』ってんだ。偶然だな?オマエと同じ苗字だ。まぁ、山本って苗字は、世の中にくさるほどいるからなぁ。…コイツ、オマエの息子じゃないよな?」 私は、小さく震えながら、そっと目を開けて花井さんを見ました。花井さんは、 全てをわかった上で、今さら息子と言えない、逃げ場を失った私を追い込んで楽しそうに、ニヤニヤしながら私を見ています。 「車をボコボコにされた上、いつまでも中学生を連れ込んでたら、ワシがとばっちりを食らうハメになるからなぁ。コイツ、何でもやるみたいだしな、ヒッヒッヒッ…」 「えっ!つ、司に何させるのっ!?」 私は、花井さんがよからぬことを考えているに違いないと感じ、思わず司の名前を出してしまいました。 「何だ?やっぱりオマエの息子か?息子がいるから契約できねぇ、って言ってたけど、ちょうどいいじゃねぇか。息子もオマエが帰って来ねぇ方が清々するみたいだし、オマエはウチで朝から晩までみっちり仕事に打ち込めるだろ?」 子供がいることを口実に、拘束時間をできる限り短くしようとした私の思惑は、 私自身で全て台無しにしてしまいました。 「息子も、金さえ置いてりゃあ、オマエが何日か帰ってこなくても、オマエの顔を見なくて済むって、喜んで送り出してくれるだろ?オマエがしっかりカラダを張って稼ぎゃあ、中学の息子も自分で何でもやるだろ?」 そう言うと、花井さんは立ち上がり、携帯で電話をし始めました。 「もしもし、ワシだ。オマエの母ちゃん、ワシのトコで働いてもらうことになったぞ。優しいなぁ、オマエの母ちゃんは。オマエを助けるために、朝から晩まで、カラダを使って金稼いでくれるってよ。ただ、しばらくはウチには帰れねぇからな。金は渡してやるから、それで自分で何とかするんだな。それと、… オマエにも何らかのケジメは つけてもらうから、覚悟しとけよ。」 そう言うと、花井さんは奥の部屋へ入っていきました。
12/11/26 16:54
(R7Uo7oUW)
投稿者:
(無名)
続きを楽しみにしているのですが…。
もう終わってしまうのでしょうか?/ _ ; それでもお待ちしております。
12/12/12 21:06
(KqasDpQL)
投稿者:
(無名)
早くー
続きを!
13/01/10 13:38
(GAh3rfvU)
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