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1:後輩は性奴隷……4
投稿者:
悠
後輩は性奴隷……4‐1
「あざっス」 4月も折り返し地点を迎えたその日、俺は深夜バイトに入っていた。 シフトしていた人が就活で入れなくなり、これを機会に一度経験してみないかと清瀬さんからの提案があったためだ。 深夜独特の仕事をメモしながら通常通りの接客をし、気付けば日付が変わろうとしている。 客も完全に退き、小休止のために事務所に入った。 「でや?」 「いやぁ、まだ何とも言えないッス」 などと言い合いながら、互いに一服を始める。 この後の流れを聞いていると、女性の客が入店してきた。 他愛もない話をしながら、カメラの映像越しに客を目で追う。 女性はパスタや飲み物を籠に入れ、レジの方へやって来た。 「あざーすっ」 とレジに出たのも束の間、俺はその女性を鮮明に認識した途端に動けなくなってしまった。 ぱっちりした二重の瞳。 ぷっくりとした、瑞々しい唇。 「……おい」 と清瀬さんに声を掛けられ我に返った俺は、慌てて籠の中の物をスキャンしていく。 が、向こうの女性が微動だにせず、俺を見ているのがひしひしと伝わってきていた。 「…………ゆ、ぅ?」 ドクンと胸が高鳴る。 胸元から下がった名札を見て、俺だと気付いたようだ。 と言うことは、この女性は、間違いなく……。 「朱音(あかね)……なのか?」 まさか、こんなところで……。 女性はコクンと頷いた後、あっと気付いたようにお金を差し出す。 俺は機械的にそれを預かり、お釣りとレシートを渡した。 朱音はぎこちない動作でそれらを財布に突っ込むと、逃げるように店を出ていった。 その間が一瞬だったような、時間が止まったような不思議な感覚に襲われ、暫く呆然と立ち尽くしていた。 ところが、あろうことか朱音が引き返してきたのだった。 「これ、要りません」 とレシートを俺に渡し、また、店を出ていった。 不要ならば外のゴミ箱に捨てれば事足りる。 案の定、返されたレシートの裏には、電話番号とアドレスが記載されていた。 どうするべきか……。 夜勤の残りの時間も、朱音のことが頭から離れなかった。
2010/04/23 17:39:26(gRRbolBG)
投稿者:
悠
後輩は性奴隷……4‐2
長かった短かったような初夜勤を終え、崩れるようにベッドへ身を投げる。 時刻は7時半。 今日は1日何もない。 結衣にも夜勤と言ってあるため、彼女の姿はなかった。 あの後、清瀬さんはしばらく朱音との関係を聞いてきたが、俺は上手く誤魔化していた。 彼が言うには、朱音は夜勤の時間帯では常連さんらしい。 まさか、そんな数時間の差で擦れ違っていたとは。 上原朱音。 彼女は同い年で、中2から高2の間まで付き合っていた元カノだ。 最初で、今のところ最後の恋人である。 俺たちは将来を見据えた付き合いをしていた。 しかし、俺のせいで関係が崩れてしまったのだった。 忘れもしない、高2の夏。 俺は……朱音を妊娠させてしまった。 隠し通せる訳もなく、朱音の両親にこっぴどく叱られた。 無論、おれは責任を取るつもりでいた。 でも、それはあまりにも若輩者の考えだったんだ。 その後、彼女との関係は強制的に絶たれ、夏休みが終わるまでに、朱音は引っ越していってしまった。 それでも俺は彼女が忘れられずにいた。 今の通っている大学も、進路を意識し始めた高2の春の時に一緒に行こうと約束した所だった。 例のレシートを取り出す。 迷う必要はない。 俺は朱音を待っていたんだ。 また会える、この日を。 そう、迷う必要なんて……。 煙草を一本取り出す。 携帯を机に置き、煙を吐きながら天井を見上げた。 朱音はどうなんだ? 彼女も、俺と会う日を待っていたのだろうか? たしかに連絡先を教えてきたのは事実だ。 でも、それは……。 それは……………………? 携帯を手に取る。 自分が微かに緊張しているのがわかった。 少なくとも、俺はこの日を待っていたんだ。 そして、この機会を逃すともう二度とないかもしれない。 でも……俺には……。 いや、迷う必要は……ない。 俺はメールを起動させると、レシートの裏のアドレスを慎重に打ち込んでいった。
10/04/23 18:05
(gRRbolBG)
投稿者:
悠
後輩は性奴隷……4‐3
昼下がり、俺は学校近くの公園に出向いていた。 すっかり葉桜になった木々を眺め、微かな緊張を緩和させる。 朱音にメールし、しばらくやり取りした後、ここで落ち合うことになったのだ。 携帯を開くと、デジタルの時計が2時を示すところだった。 「悠……?」 その声に空気が張り詰めるのを感じた。 振り返ったそこには、外見は変わったものの、柔らかく温かい雰囲気を漂わせる彼女がいた。 「あ、あかね……」 彼女はぎこちない笑顔を浮かべながら歩み寄り、隣に座る。 ライトブラウンの、内側に巻いた長い髪がふわりと揺れて、シャンプーのいい香りが鼻孔をくすぐった。 「ひ……久し振りやね」 「あぁ……」 聞きたいことは一杯あったのに、いざ本人を前にすると頭が真っ白になってしまう。 「どうしてた?」 「いや、普通に……」 普通って?と自問しながら、苦笑を噛み殺す。 そよ風が吹き、木々がざわめいた。 「……子供はどうした?」 暖かい陽気に包まれているはずなのに、とてつもない寒気に襲われる。 しかし、俺は聞いておかなければならない。 「おろした」 意外と早い返答だったものの、先程よりもトーンが低い。 「そうか……辛い思いをさせたな」 俺の言葉に、朱音は何も返さなかった。 期待していたわけではないが、無言だとやはり辛い。 「俺にも供養させてもらえへんか?」 「……うん。今度、行こ?」 「あぁ。約束な」 幾分かは明るくなったものの、空気は重いままだ。 話題が話題なだけに仕方のないことだが。 俺は俺にできる形で、亡くなった我が子を見届けないといけない。 朱音のことを想い続けているとか、そんなことはもっと後に切り出すべきことだ。 「そう言えば、何処に通ってんの?」 無理に振る舞う朱音の心境を汲んで、 「ほら、一緒に行こうって言ってたとこ」 と答える。 「え?一緒やん」 「ウソ!?マジで!?」 「ホンマホンマっ。学部は?」 「経済学部……朱音は?」 「あぁ……私は社会福祉やわ」 成る程。 大学は一般道を挟んだ造りになっており、大きく2分されている。 学部で教室が割り振られるシステム上、もう一方の敷地に入らずに卒業することも珍しくない。 俺と朱音の学部では通う敷地が違ったため、今まで出会うことがなかったのだろう。 そんな運命に悪戯に、俺は面白いように翻弄されていたのだった。
10/04/24 20:25
(cfQ/yI4C)
投稿者:
悠
後輩は性奴隷……4‐4
目が覚めると、日はどっぷりと浸かっていていた。 朱音に気を遣わせるのも悪い気がして、早々に自宅に引き上げたのだった。 夜勤明けだったこともあり眠りに誘われ、今に至る。 暫くボーッとしていたが、インターホンにけしかけられ、渋々身を起こした。 「結衣!?」 ドアを開けたそこには、何処か落ち着かない結衣の姿があった。 「……寝てました?」 「あ、いや……ついさっき起きた」 と言いつつ部屋の中へ招き入れる。 明かりを点け、何時ものように炬燵へと潜り込んだ。 「どこか悪いんですか?」 「え?なんで?」 「今日見掛けなかったので……」 「あぁ、それな」 今日は授業がなく一日ゴロゴロしていたことを伝えた。 何処か強張っていた結衣の表情が解れていくのがわかる。 それを見て、心配してもらっていた嬉しさと同時に申し訳なさが胸を過った。 「……ご飯は食べましたか?」 「いや?」 「あの、スーパーに行って食料を買い込んできたんですっ。何か作りますね」 「へ?あ、ありがと」 確かに、結衣は大量の食材が入ったスーパーの袋を持っていた。 そこから何個か取り出し、あれこれ考えたように首を傾けている。 「あの……残りはどーすんの?」 「もちろん、持って帰りますよ?」 あ、やっぱそーなんだ。 天の施しかと期待したが、そんな甘い話があるわけもない。 今日の分を作ってもらえるだけでも有り難く思うことにした。 キッチンに立つ彼女の後ろ姿を見ながら、不思議な感覚を覚えていた。 それは、先程過った、あの感覚に似ている。 どうして俺はあんなことを……。 それに、今日一日のことに関しても、本当の話しをすることに躊躇いを覚える自分がいた。 そして気付いてしまった。 結衣との関係が崩れるのを恐れていることに。 それは多分、結衣を朱音と上手くいかなかったときの保険的な意味で認識し始めていたからだと思う。 もし朱音との関係が以前のようなものにならなかったとしても、性欲を吐き出す存在は確保できるというどす黒い考えがあったからだろう。 俺はこの時、そういう存在として結衣を捉えていた。 いや、そう捉えようとして自分を誤魔化していたのかもしれない……。
10/04/24 21:05
(cfQ/yI4C)
投稿者:
しょー
続き読みたいっす
10/05/02 01:04
(Ol7he.6T)
投稿者:
悠
しょーさん、ご感想ありがとうございますm(_ _)m
10/05/02 12:39
(ZU8CFWyG)
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