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もうひとつの夏休み
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ロリータ 官能小説   
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1:もうひとつの夏休み
投稿者: いちむらさおり
つまらないものを書くのが私の趣味のひとつでして。
世間はすっかり秋の装いですけど、よろしければ一読ねがいます。
 
2012/09/30 22:39:22(FcWZd8Ct)
12
投稿者: 笑う性るすまん
ID:69921919
つまらないと謙遜されてますが、素晴らしいです。
遥香の正体が気になります。
エロス(ヰタセクスアリス?)×ミステリー!続き期待してますよ!!
12/10/09 22:31 (FFDXdhBi)
13
投稿者: いちむらさおり




「外国の新聞も読んでみよっか?」

「英語はまだちょっと苦手なんだよなあ、俺」

 萌恵と理人が手を黒くしながら新聞の銘柄を吟味していると、
「遅くなって、ごめん。トイレが混んでた」
と帰って来るなり言い訳をする博士。遥香と二人きりであんなことやこんなことをしているうちに、およそ一時間近くは経過しているはずだった。

「なに言ってるの。まだ五分も過ぎてないよ?」

 自慢の腕時計をかざして萌恵が言う。

「それって本当?その時計、壊れてない?」

「ちゃんと動いてるよ。だって、ほら」
と萌恵が視線を向けた先には大きな掛け時計があり、それは間違いなく正確な時刻を指していた。萌恵の腕時計の時刻とも一致している。

「変だなあ。一時間くらい経ってると思ったのに」

「変なのはハカセだよ。そんなことよりさ、『子ども会議』はじめようぜ」

 リーダーシップを発揮して、理人が新聞記事のひとつを指差し、
「今日は、これ」
とみんなに言った。



 夏特有の気まぐれな通り雨が過ぎていった朝、理人と萌恵は湿った歩道を図書館に向かいながら、帽子の下でむずかしい顔をしていた。ついさっき、河合家の肝っ玉母さんから博士の様子を聞いたかぎりでは、その症状が健太郎のときとよく似ていたからだ。

「変だよな」

「変だよね」

「昨日はあんなに元気だったのにさ」

「ボッチくんの夏風邪がうつったのかも」

「ひょっとして……」

「なあに?」

「うちの姉ちゃんが言ってた、女の幽霊にでも遭ったのかな」

 蒸し蒸しする沈黙がおとずれる。

「夜ならまだわかるけど、昼間に幽霊が出るなんて聞いたことないよ」

「だよな」

 四人いたメンバーも理人と萌恵の二人になり、この企画は一時休止したほうが良さそうだなと理人は思っていたが、萌恵のほうは案外退屈している様子もない。
 根っからの勉強好きな性格ももちろん、理人に対する特別な気持ちも少なからずあるわけだったりする。
 小学生とはいえ、恋愛感情の芽生えは男子よりも女子のほうがずっと早く、女同士の共通の話題といえば『理想の男子の条件』などなど、大人顔負けである。

「さっきから人の顔ばっか見て、なんだよ?」

「べつに見てないよ」

 二人は図書館のいつもの席に距離をおいて座り、いつもと違う雰囲気を察しながらも、それぞれの新聞に視線を落とす。

「ちょっとだけ別行動にしようか?」

 理人が小声で言った。

「そうだね」

 萌恵も同感のようだ。

 少年探偵団て、きっとこんな気分なんだろうな──なんて勝手に盛り上がって、理人は建物内すべてのトイレに不審な点がないか捜査することにした。
 一方の女探偵の萌恵は、この図書館に関連する事件や事故が過去に起きていないかを調べるために、視聴覚ルームの端末を使って古い新聞記事を検索してみようと思った。
 二人が二人ともそれぞれに思うところがあるから、スーパー小学生の名推理が実を結ぶのも、もはや時間の問題と言えた。

「ここのトイレだけ、なんか匂うなあ」

 二階にある男子トイレ……の隣の女子トイレの出入り口、そこだけ他とは違う特別な匂いがすることを理人は突き止めた。それはどこかで嗅いだことのある花の匂いだった。

「幽霊の匂いかな」

 正体不明の香りは廊下にまで漂い、さらにそれを辿って進んで行くと、洋風なかんじの金具が付いた白いドアが目の前にあらわれた。プレートには『第四書庫』と表示されている。
 おかしいな。『第四』なんて縁起のわるい数字、ふつう使うかなあ──と疑問に思いながら、理人はそのドアノブに右手を伸ばした。



 端末の使い勝手がいいのか、それとも萌恵が賢いのか、どちらにしても探し物はすぐに見つかった。
 二年前の七月二十日の朝刊に、図書館の女性職員が館内の書庫で倒れ、そのまま病院に搬送されたことが書かれている。何かの発作で気を失い、発見当時はかなりの高熱が出ていたらしい。
 彼女のその後の容態までは記述されていないから、無事に回復して退院できたのか、あるいは最悪の結果になってしまったのか、そこまではわからない。

「今井遥香さん。二十五歳。この人の顔、どこかで……」

 白黒写真の彼女の顔を凝視したまま、萌恵は顎に手をあてて考え込んでしまった。

「どこかで……」



「ここは一般の人は立ち入り禁止だよ」

 突然の来訪者に驚く様子もなく、大人の彼女は柔らかい表情で小さな彼に告げた。

「すみません。間違えました」

「きみ、根室理人くんだよね?」

「え……?」

どうして名前を知ってるんだろう──。

「お姉さん、誰?」

 理人の警戒心が彼女にまでつたわる。

「私は、今井遥香。ここの職員だよ」

 書庫の床を指差しながら遥香は言った。もう片方の手には文庫本が収まっている。日課で読んでいる、女性向けの官能小説だ。

「理人くんは、ほかの二人と雰囲気が違うね。なんでだろう」

 ほかの二人とはおそらくボッチとハカセのことだろう、と理人はすぐにひらめいた。
 この女の人は何か知っている。ていうか、すべてを知っている気がする。

「僕の友達、健太郎と博士のことだけど、図書館に来た次の日に熱が出ちゃって病気なんだ。お姉さんは何か知ってる?」

 正義のヒーローになりたがる理人の気持ちが、遥香にもよくわかった。わかった上で、答えをはぐらかすような微笑みで少年を見つめ返す。
 理人は直球勝負で質問をぶつけてみた。

「お姉さんは、幽霊なの?」

 我ながら寝ぼけたセリフだなと思いつつ、それ以外に言葉が浮かばない。

「ふふっ……。だったらどうする?」

 とても好感の持てる笑顔が返ってきたので、理人は完全にペースを乱されてしまい、赤面した。

「健太郎くんと博士くんがしてくれたみたいに、きみも私とエッチなことしてみる?」

「……?」

「大丈夫。ただのお医者さんごっこだから」

 そう言って遥香はうなじあたりを探ってシュシュをほどき、長い髪を左右に振り払った。
 彼女のペースに流されちゃいけないとわかっているのに、魂を吸い取られる感覚というのか、いつまでも子どものままではいられない自分がいることを悟る理人。そして思いついたことがある。

「あの……、お姉さんのこと、写真に撮ってみてもいい?」

「もしかして、幽霊なら写真に写らないって言いたいんでしょ?」

「うん。いいよね?」

「それはいいけど、携帯電話もないのにどうやって撮るの?デジカメ?」

「知らないの?いまどきみんなこれで撮ってるんだよ」
と理人がリュックから取り出したのは、巷で流行している携帯型ゲーム機だった。どうやらこれにカメラ機能が付いているらしい。
 ジュニア市場ももはや盗撮天国になりつつあるなと、遥香は背中にゾッとする悪寒を感じた。と同時に、それが興奮材料にさえなってしまう。冷たくて熱くて、どうしようもなく身体が疼く。

「撮るよ?」

「オッケー」

 理人がゲーム機を操作した瞬間、シャッター音らしきメロディーが遥香の耳の奥で鳴った。



つづく
12/10/11 01:07 (H3RP25ua)
14
投稿者: いちむらさおり




「どう?私の姿、ちゃんと写ってる?」

「悔しいけど、ちゃんと写ってる」

「じゃあ、疑惑は晴れたわけだね」

 彼女に肩を抱かれ、理人は口を尖らせてゲーム機を畳んだ。背面からの熱が指につたわってくる。

「きみのお願いは聞いてあげたんだから、今度は私の番ね」

 そう言って遥香は今度こそ着衣を一枚脱いで、シャツ越しのほっそりした身体の線を嫌みなく披露した。出るところは出て、くびれるところはしっかり締まっている。

「幽霊じゃ……ない」

 当てが外れて無気力になりかけた理人だったが、彼女が放つ花の匂いに誘われて、今そこにある未知の領域に鼻を近づけていった。そうして顔面が柔らかい場所に着地すると、まずは深呼吸した。

すう……、はあ……。

 果物の甘い香りとも言えない大人の匂いが胸いっぱいにひろがる。

「お姉さんは何をされても平気だから、好きなように甘えていいよ」

 そんなことを囁かれて、しだいに異性に目覚めていく理人。遥香に誘導されている自覚もないまま、気がつけば彼女は着衣を乱してブラジャーとショーツを晒し、理人の指がその敏感な辺り一面をいじくりまわしていた。柔らかいのを通り越して、もはや彼女自身が溶けてしまっているような感触さえある。

「あん……。上はもっとつよく……、下はもっとやさしく……。んくん……」

 『病弱な転校生』を思わせる謎めいた翳りのある人だ──と理人は未熟ながらに思っていた。なぜなら理人は、子どものフリをした大人だったからだ。遥香もそれを見抜いている。

「女の子の扱い方を……、きみはどこで覚えたの?」

 そんな彼女の問いかけに、理人は愛撫で返答する。そこに何かの文字を書いていくみたいに、下着の上に指で線をひいて、とめて、はねて、はらう。
 その度に意識をさらわれる遥香の眼は、遠くを見ているようで、けれどもじつは理人の指の行き先を追っていた。胸の先端、膣の入り口、クリトリス、それらをいたずらする少年の指使い。

「もう……いい……いく……くふ、いっちゃ……」

 遥香がエクスタシーに達しようとした瞬間、理人の指が止まった。

「どうして泣いてるの?」
と理人。
 彼女は涙ぐんでいた。快感がそうさせていることに気づいたとき、頭の中が熱くなった。自分の行動に責任を持とうなどと考える理性もなく、遥香は下着を脱ぎ捨て、乳房と女性器を露出した。
 少し大きめのニキビみたいな可愛らしい乳首が二つ。女性の身体の一部とは思えないほど、ぐにゃぐにゃと貝割れした皮膚と、皮が剥けた小豆。

「こっちも泣いてるね」
と理人が見つけたのは涙じゃなくて、豊かに溢れ出す愛液だった。さらによく見ると、遥香の体内から一本の白い糸がひょろっと顔をのぞかせている。

「ねえ、これなあに?」

「引っ張ってみたら……わかるよ……」

 わけがわからないまま理人はその糸を摘んで、ゆっくりゆっくり引き抜いていく。見るものすべてが珍しい年頃だから、彼女の中から出てくる物が赤くなくても、それはそれで納得できてしまう。
 穴の両側を広げながら、白い塊がスルリ……スルリと這い出てきて、ぽとんと床に落ちた。

「うわ。出たよ」

「なにが……出たのかな?」

「これって、麦茶のティーバッグみたいなやつ?」

「タンポンっていうの。女の子が使う生理用品だよ」

「ふうん……」

 理人は生返事をして、それを振り子のように揺らしてみせる。
 遥香は生理日ではなかったから、タンポンが吸収しているのは彼女の興奮状態を示す体液であって、経血ではない。水分で重くなったタンポンの下から液が垂れて、おもしろいようにそれが糸を引いて飛び散る。
 その様子を見ているだけで、自分の性欲も左右に揺さぶられているようで、遥香は見境なく異物が欲しくなった。

「理人くん……、おねがい……、入れて……」

 言い終えずに彼女は慣れた手つきでオナニーをはじめた。
 理人がその様子を撮影する。メモリーカードがいっぱいになるまで、何度も何度も遥香を撮りつづけた。

「あん……撮っちゃだめ……、はあうん……やめて……」

 口では拒否しているくせに、かならずどれかの指が膣をこじ開けて、愛液の太い糸と細い糸がネバネバと絡み合っている。
 きっとボッチとハカセもこれとおなじ体験をしたから、翌日に変な熱を出して寝込んでしまったのだろう。免疫があるかないかの違いかもしれないな──と理人は思った。

「私のバッグを……開けてみて?」

 遥香の声は震えていたが、理人にはじゅうぶんつたわった。彼女の傍らに置いてある女性物のバッグを開けてみると、分厚い手帳と文房具、さまざまな化粧道具に化粧品、その他用途不明なものがいろいろと入っていた。

「なんでもいいから、ここにちょうだい」

 遥香は器用な指を生かして陰唇を左右にめくり、プライベートルームに招き入れるように両脚をM字に開いた。

 数分後──。

 遥香は身悶えていた。アニマル型のクリップで乳首を挟み、肝心の膣には大小さまざまな異物が束になって入っている。
 ペン、スティックのり、携帯用スプレー、マスカラ、それにヘアブラシ。異物同士がカチャクチュとひしめき合って、彼女の子宮を突いている。

「あぐ……うぐん……。ああんいく……いく……いくいく……」

 足の指で床を引っかいたり、乳房を揺らすほど呼吸を荒げたりして、遥香はあっという間に絶頂した。
 そうして書棚に背中をあずけて痙攣を沈めていると、理人がまた異物たちを膣に立ててくる。

「はぐうっ!」

 天使のような顔をして、悪魔のようないたずらをつづける少年。
 遥香はまた逝った。失禁した実感もある。苦悶と快楽が入り混じった表情をしているに違いない──と我が身を心配した。

「僕に遊ばれて、楽しい?」

 彼女は激しい吐息の中で、なんとか肯定の仕草をした。意識も危ない。もうだめかもしれない。けれども身体は逝きつづけている。
 窓の外から洩れてくる蝉の鳴き声は、七日間ある命のうちの何日目の鳴き声なのだろうか。そんなことを考えながら、遥香はふたたび果てていった。



つづく
12/10/12 00:29 (ZpHJgB.n)
15
投稿者: いちむらさおり




 夢から覚めたような感覚を引きずったまま、理人は図書館のあちこちをウロウロしていた。そうして萌恵を見つけたとき、彼女は視聴覚ルームの端末の前で考え事をしていた。

「モエ」

「あ、マサトくん」

「何かわかった?」

「うんとね、二年前の七月二十日の朝刊記事にね、こんなのが載ってるんだけど」

「どれどれ」
と理人は萌恵の横から割り込んで画面を見てみる。二人の腕が触れているので、萌恵は恥ずかしそうに横目を送る。
 しかし、理人のその表情は驚きに満ちていて、いまにも何かを叫びそうな雰囲気だった。顔が少し青い。

「この記事、どう思う?」

 萌恵は尋ねてみたけれど、理人からの返事はない。

「どうしたの?マサトくん、なんか変だよ?」

 もう一度だけ訊くと、理人はようやく口を開いてくれた。

「いま、何時?」

 萌恵は腕時計を見て、
「十時をちょっと過ぎたところだよ」
とつたえた。それを聞いて理人はますます気持ちが悪くなった。萌恵に別行動にしようと言ったときから、まだ二十分も経っていなかったからだ。
 遥香との出来事はおそらく、一時間以上にもおよぶハードなものだったはずで、それを考えると計算が合わない。

「ごめん、今日は帰る」

 そのセリフだけを残して、理人は視聴覚ルームを出て行ってしまった。
 寂しい空気に包まれたまま立ち尽くす萌恵。そしてひらめいた。
 当時、二十五歳の今井遥香という女性が発見された『第四書庫』の場所に行ってみようと、職員の一人に尋ねることにした。

「場所は教えてあげるけど、中には入れないからね」

 そう言った職員の表情はどこか浮かない感じがしていて、妙に印象に残った。
 萌恵が書庫のドアの前までたどり着いたとき、空気に花の匂いが差し込む感じがあった。

この匂いは、もしかして──。

 そんなふうに誰かの存在を察した瞬間、目の前のドアが勝手に開いて、中から綺麗な女性が出てきた。思った通り、今井遥香だった。

「こんにちは、比留川萌恵ちゃん」

 いきなり自分の名前を言い当てられて、思わず胸を押さえる萌恵。ちょっぴり驚いたけど、心臓はちゃんと動いている。

「新聞、見たんでしょ?」
と遥香。たぶん二年前の新聞のことを言っているのだろう。

「うん、見た。だけど、お姉さんがここにいるってことは、病気が治って退院できたってことだよね?」

「もう昔の話よ」

 『イエス』とも『ノー』ともとれない曖昧な返答で、歯切れが悪い。
 どうぞ、とドアを半開する遥香のそばを通って、萌恵は書庫の中へ入った。この人には聞きたいことがたくさんある──。
 部屋の中は古い洋館の書斎みたいな落ち着きがあって、メルヘンの世界に憧れる年頃の萌恵は、無邪気に
「うわあ」
と感嘆する。

「素敵な部屋でしょ。女の子なら誰でも好きだと思う」

 遥香は少女のような笑顔でそう言った。

「本がいっぱい」

「どれでも自由に読んでいいからね。だけどあなたたち、図書館に来たのは勉強のため?それとも、もっと別の理由?」

「それはその……。最初はみんなで新聞を読もうってことになって。そうしたらボッチくんとかハカセくんが病気になっちゃって。何か変だよねってマサトくんと二人で話してたんです。それで──」

「学校で噂になってる『幽霊説』が浮上してきたわけね?」

 言おうとしたことを遥香に言われて、萌恵は軽く頷くだけにした。

「それ、半分当たってる」

「え?」

 血の気が引いていく音が聞こえそうなくらい、萌恵はその場で凍りついた。涼しいのを通り越して、肝試し的な恐怖さえ感じる。半分幽霊で、半分人間とでも言いたいのだろうか。

「あの子たちみんな、普通じゃ体験できないことが経験できたって、すごく喜んでた」
と遥香はしゃべり出した。男子三人の顔が萌恵の脳裏に浮かぶ。

「まだ小学生だとか、もう小学生だとか、生きてくために学ぶこと自体に年齢や性別は関係ないの。何かにつけて親が物事の良し悪しを決めつけて、こそこそ隠したり無闇に禁止してしまうから、子どもはいつまでたっても大人になれない。身体は成長していくのに、心だけが未熟なまま置いてけぼりにされている。……ちょっと話が難しいかな?」

 遥香が萌恵の目線に合わせて屈むと、少女は無言で首を横に振る。

「萌恵ちゃんは女の子だけど、どんなことだって男の子には負けたくないでしょ?勉強も、恋愛も、それから大人の世界も」

 大人になんかなりたくない──なんて感情的なセリフを言ってやりたいのに、結局は何一つまともな言葉が出てこない。目の前にいる人物が幽霊と人間のハーフなら、自分は大人と子どものハーフかもしれない、萌恵はそう思った。

「健太郎くんと、博士くんと、理人くん。あなたが好きなのは、理人くんだよね?」

「ちがう」
と萌恵は頬を赤らめる。自分の気持ちは誰にも知られたくない。たとえ相手が幽霊だとしても。

「彼がここで私とどんなことをしていたのか、何を見たのか、あなたにも教えてあげる」

 あくまでもお姉さん目線を変えずに、遥香は萌恵のすぐそばで、自らの胸を服の上から撫でまわしはじめる。
 金縛りみたいに、萌恵はそこから動けない。ただじっと遥香の行為を見ているしかなかった。

「ここをこうすると、とっても気持ちがいいんだよ」

 着衣をシワにしながらバストを揉む遥香の片手が、そろそろと萌恵の胸部に伸びていく。そこはまだ発育途中の薄い膨らみしかなくて、ロリータ趣味でもなければ見過ごしてしまうだろう。
 大人の大きな手のひらが、少女の小さな木の実に触れる。その一瞬、萌恵は肩で息をした。明らかに胸のあたりが熱くなっていく。
 早熟な心と未熟な身体のバランスが保てなくなって、全身がぼうっと空中に浮かんでいるみたいだった。

「好きな男の人に愛されるためのレッスンだから」

 萌恵の胸をやさしく撫でながら、遥香は自分のスカートの中に手を入れて、そのまま下着を脱ぎ捨てた。
 そして隠しておいた男性器型の玩具を手に取り、さっきまでショーツを被っていたその部分へ、一直線に入れていく。



つづく
12/10/15 11:57 (vCj38od8)
16
投稿者: いちむらさおり
最終話



ちゅぷ……ぐちゅん……。

「んんふっ……んん……」

 怖いくらいの快楽に突かれて、軽蔑の眼差しでバイブレーターを見つめる遥香。

それ以上入ってこないで。精子も出ないくせに、いたずらに私を気持ち良くさせないでよ。そこばかり責められたら私、もう、だめ、やだやだ逝く、バイブで逝く。最低、だけど気持ちいい。

 脳内に分泌した妄想が、しだいに遥香自身を飲み込んでいく。それが次に伝染するのは、ほかの誰でもない萌恵だった。
 健康的な脚にもほんのり色気が差して、デニムのミニスカートに巻かれた太股がせわしくよじれている。
 膣にバイブレーターを挟んだまま、遥香は少女のスカートを捲った。そこに黒いスパッツが覗く。
 一応、女としての身だしなみは意識できているようでも、股間の丸みはすっかり一人前のそれになっていた。

「きっと素敵な気分になるから、安心して」

 遥香はそう言って萌恵の蕾に指を這わせた。

「……!」

 初めて迎える他人の指に、初めてとは思えない温もりをおぼえる萌恵。どちらかと言えば気持ち悪いはずなのに、繰り返しなぞられているうちに、そこがグズグズと湿ってくるのがわかる。

「やめて……」

「ほんとうに……やめていいの?」

「いやだ……大人……いや……」

「それならいいわ。理人くんはもう私と済ませてあるのに。萌恵ちゃんはそれでいいんだよね?」

「いやだ……それもだめ……」

 こんな気持ちにさせられたのは、萌恵にとって初めての経験だった。好きな人に好きだと言えないもどかしさを見透かされ、同時に胸や下腹部をまさぐられているのだから、こんなに恥ずかしいことはない。

「大人になったら、好きな人とたくさんセックスできるし、好きじゃない人とやらなきゃいけないこともあるかもしれない。けど……、それが大人の常識なんだもん。いつかはあなたも大人になっちゃうんだから、これは誰にも止められないことなの」

 それだけ言って、遥香は快感で歪んだ眉間にあきらめを浮かべて、膣の最深部にまで玩具をしゃくり上げた。

「は……は……はぐう……いい……いく……い……いきうう……」

 全身はハニーローストみたいに甘く焦がされ、肌という肌が汁っぽい。
 遥香の吐息に大きなハートマークが付くと、萌恵の吐息にも小さなハートマークがあらわれた。

「ああん……」

「ううん……」

「だめもう逝く……」

「私の……エッチ……」

 そうして遥香の意識が果てたあと、心地良い残尿感をおぼえた萌恵もとうとう、気を失った。



 自分の名前を呼ぶ声がして、萌恵は目を覚ました。

「比留川さん、起きて。……萌恵さん、だいじょうぶ?」

 誰かに身体を揺さぶられて、うっすらと眼を開けていくと、そこには輪郭のぼやけた女性の顔があった。

「よかったあ……」
と安堵のため息が聞こえて、徐々に焦点が合ったとき、彼女がクラス担任の大橋美希であることに気がついた。

「先生……」

「こんなところで昼寝してちゃだめじゃない」

「ああ……そうだ私。いつの間に眠ってたんだろう」

きょろきょろと周りを見渡してみて、萌恵はある異変に気づく。

「あの人……いない」

「あの人って?」

「ゆうれ……じゃなくて、図書館のお姉さん。今井遥香っていう女の人」

 その名前を聞いて、美希の表情がわずかに真顔になった。そして萌恵はつづける。

「大橋先生はどうしてこんなところにいるの?」

「学校の図書館に持っていく本を選ばせてもらったりとか、まあ、いろいろとね。それに──」
と美希は遠い目をして、
「友達に会いにきたの」
と肩を落とした。しかし表情は明るい。

「その友達の名前っていうのがね……、今井遥香」

 萌恵は、なるほど納得した。彼女は幽霊じゃなくて、現実に存在する人だったということになる。

「でもね、二年前にその子に不幸があってね。……遥香、……今はもういないんだ」

「え?うそ!」

「大学時代の友達の中でいちばん仲が良かったから、とっても悲しくて、いっぱい泣いちゃった」

「でも私、さっきまでその人と……」

「比留川さんには見えたんだね。彼女の姿が」

「私だけじゃない。たぶん健太郎くんと、博士くんと、理人くんも見てるはずだよ」

「先生も小さい頃は、お化けとか妖精とか、そういうのが見えていたんだと思う。だけどだんだん大人になるにつれて、人の顔色をうかがったり、まわりの空気を読んだりしなくちゃいけなくなって、見えてたものが見えなくなってった。逆に大人になって初めて見えてくるものもたくさんあって、それはまあ、比留川さんが大人になったときにわかるから。ね?」

 やさしい口調と、いたわる眼差しを忘れないように、教師は生徒にそう話した。
 わかるような気もするし、やっぱりまだわからない部分が多い気がして、自分が大人になるのはもっと先の話だろうなと萌恵は思った。

 いけない、と美希は思い出したように小声で呟くと、本の列からはみ出している一冊の文庫本を気にとめて、その背中を指でかるく押してやった。押し花のしおりが挟んである、特別な思い入れのある小説だ。
 その花の匂いは今なお枯れることなく、あの頃のままのフレッシュな思い出を、いつまでも忘れないでいて欲しいと告げているようだった。



 理人がその話を萌恵から聞かされたのは、最後に図書館へ寄った日から二日後の朝のことだった。先の二人とおなじく、理人も原因不明の熱を出して寝込んだのだが、翌日にはすっかり元気になったと言う。
 そしてようやく四人が顔を揃えて、それぞれが体験した出来事を話すために、近所の公園に集った。

「あれは幽霊じゃない」
と言ったり、
「あんな綺麗な幽霊はいない」
と赤面したり、
「きっと先生の冗談だよ」
などと異議ばかりが飛び交う。

「あ、そういえば」

 理人が突然立ち上がると、すぐそばの木から何匹かの蝉がおしっこをしながら飛び立った。

「俺、幽霊の写真、撮った」

「ほんとう?」

「いつの間に」

「見せて、見せて?」

 みんなからの好奇の声にあおられる中、理人は携帯型ゲーム機の画面を膝の上で開いた。
 電源を入れると、静止画データのアイコンをタッチする。あの日に撮影した画像が確かに保存されていた。
 その中の一枚を画面いっぱいに拡大した途端、そこにいる全員の息を飲む音がした。

「なんだよこれ……」

「マサトくんのエッチ……」

「幽霊よりヤバいよ……」

 そして最後に理人が、
「この画像……、絶対おかしいよ……」
と険しく言った。あの図書館の第四書庫で遭遇した人物は今井遥香と名乗っていたはずなのに、そこに写っている女性は果たして……、クラス担任の……大橋美希だった。
 真夏の太陽に負けないくらいの衝撃が、四人の眼の奥にまでビシバシと迫ってくる。
 そのとき、
「何かおもしろいものでも撮れたの?」
と思わぬところから声をかけられて、みんなが一斉にそちらを向く。もちろん知っている顔だった。
 その人物は、健太郎、博士、理人、萌恵の順に目を配り、透き通るような笑顔でこう言った。

「あの図書館できみたちが体験したことは、ほかの誰にも言っちゃだめだよ。もしも、この中の一人でも約束を破ったら、そのときは……、ひょっとしたら……」



 その夏、比留川萌恵は初潮を迎えた。



おわり
12/10/15 12:12 (vCj38od8)
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