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それは その一言から始まった
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:人妻熟女 官能小説   
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1:それは その一言から始まった
投稿者: ケン
『今日 一緒に帰ってもらえない?』
それは、その一言から始まった。

前置きが少々長くなるかもしれません、面倒な方は飛ばして下さい。

その一言の主は 宮本典子52歳。
私、板橋健一51歳と この4月から同じラインで働く事になった同僚。
〔この4月〕と言っても、コロナがいよいよ巷に溢れ始めた年だから2020
だろうか?、その年の9月の ある日の事だった。

それまでは、朝礼や たまに喫煙所で挨拶をかわす程度で、たいして話しをする間柄でもなかった。
が、この4月から同じライン、それも隣りで仕事をする事になった。

そこは某家電メーカーの工場、俺達のラインは 様々な理由で不良品になった物を解体して リサイクルにまわす為の処理をする所だった。

配置換えの初日に
「板橋です」
『宮本典子です』
『喫煙所ではたまに…、でも板橋さん?下のお名前は?』
「健一です」
『じゃぁケンちゃんね、宜しくお願いしますね』
「…こちらこそ…(50過ぎのオヤジにケンちゃんも無ぇだろ?)」
そんな挨拶をしたのを覚えている。

『私、話しはじめると手が止まっちゃうのよ(笑)』
と、自ら言うだけあって 作業中でも まぁ話しの途切れない女性だった。

ラインと言っても〔流れ作業〕ではなく、各自が一台づつ処理をする、さらにはリサイクルにまわす為に材質ごとに分別して なおかつ〔米粒程度の異物〕も残してはならないと言う、結構シビアな内容で、しかもその年から新設されたラインで、ラインリーダー筆頭に皆で四苦八苦していた。

工場全体では、社員が4割、俺達の様な準社員が1割、日本人の派遣さんが1割、あとの4割は外国籍の人達 なかでも 男性なら佐藤ロベルトとか 女性なら伊藤モニカとか言う 南米系スペイン語圏の人達が半数以上をしめていた。

その中の1人 土田パウロからのストーカー行為を相談されたのが〔その一言〕のキッカケだった。

俺達が居る工場には 四隅に喫煙所が有り、昼食後の喫煙は おのずと 自分のラインに近い所となる。
俺と宮本さんも おのずと この4月から同じ喫煙所となり、喫煙所でも作業中でも 身の上話しやら 身の下話し?までする様になっていた。

不思議に思ったのが 土田パウロとラインの近かった宮本さんは以前は同じ喫煙所だったらしい 今とは対角に位置する喫煙所で、が わざわざパウロはこちらの喫煙所に昼食を終えると やってくる、そして しきりに宮本さんに話しかけている。
誰が どう見ても〔それ〕と判る程に、(国民性なのか…?、女房子供も居るって話しだけど…)と俺は思っていた。

宮本典子さん、身長160、スリーサイズは上から (小)(大)(特大)、体重は極秘、と笑いながら自己申告するほど太ってるとは思わないが。
が、この女性 若作りが凄い、髪はほぼ金髪(本人は否定してたが)、作業中にネイルが剥がれて大騒ぎしてた時には逆に〔そんな派手で長いの着けてるからだ!〕と叱られていた。
誰が どぅ見ても確かに〔頑張って〕いる、時には〔味〕がしそうな程のキツイ匂いの香水をつけてくる。
その宮本典子さん、俺と同じ準社員の彼女にはラインリーダーより1つ上のグループリーダーの彼氏がいた。
既に周知の事実だったのだか、昨年度末に〔もぅ同じグループにはしておけない〕と こちらに移されたらしい。

お盆休みが開けた日の事。
わざわざ こちらの喫煙所にやって来たパウロが、宮本さんに何やら紙の手提げ袋を渡している。
国に帰った際のお土産らしい。
『そんな…、悪いわ…』
と宮本さんは拒んでいたが、パウロは強引に手渡し タバコも吸わずに去ってしまった。
宮本さんは 俺の顔を見ながら 苦笑いをしていた。

それから数日した ある日。
『…どうしよう?』
と、相談された。
あの時手渡された紙袋の中には、Diorの香水とTIFFANYのネックレスとGショックが入っていたらしい。
『香水は、以前同じラインで働いていた外国籍の女性にあげてしまった、が ネックレスと時計はもらえない、返した方が良いよね?』
と言うものだった。

「香水はあげちゃったんでしょ?」
「返すんなら その香水も返してもらって、揃えて返さないと…」

『開けちゃったんだって、香水』

「…なら、香水だけ貰う、って事にならない?パウロからしたら」
「同じの買ってでも揃えた方が良くない?」

『…だよね?、どうしよ?』

「・・・・・」

『…言ったんだよ、私には彼氏も居るし 、知ってるでしょ?、貴方の気持ちには応えられないよ、って』

「納得しないだろうね…」

『…だよね?』
『でも返す…、もらえないもの…』
『香水も同じの探して…』

で、返そうとはしたけど、やっぱり受け取らなかった。
なので、今度は逆に強引に手渡して、逃げる様に帰って来たらしい。

そんなこんなで、9月に入った ある日の作業中。
『あれから ずっと待ってるのよ…』
『ほら、あそこの帰り道の喫煙所でタバコすいながら…』
『私のあとを歩いてきてみたり』
『前を歩いて何度も振り返ってみたり…、で、私が止まると また歩きだしたり…』

「それ、ストーカーじゃん?」
「毎日待ってんの?」

『…うん』

その喫煙所とは、たまたま 俺も宮本さんもパウロも駐車場の関係で 同じ入退場門を使っている。
パウロの待ってる喫煙所は 違う建屋専用の 帰り道にある喫煙所だった。

『もう怖くて…』
『・・・・・』
『ケンちゃん?、今日 用事とか有る?』

「ん?、…特に無いけど」

『一緒に帰って貰えない?』

「佐山さん(宮本さんの彼氏)は?」
「知ってるの?」

『話したけど 一緒は無理だって…』

「了解は?してるの?」

『俺は無理だから 何も言えないって…』

「彼女がストーカーされてんのに?」

『・・・・』
『だめ?』

「俺と帰るの了解してるなら…いいよ」

『…うん』
『一緒に帰ってくれるの?』

「…ドア出た所で待ってるよ」

『ありがとう!』

これが宮本さんとの始まりだった。


 
2023/04/10 00:13:19(9oQMbilg)
2
投稿者: ケン
仕事終わり、社員通用口から出て、壁に背中を預け、スマホを見るともなしにイジりながら宮本さんを待った。

「お疲れ!」
『お疲れ様でしたぁ』
「ん?、どうした板橋?」
皆 それぞれに声をかけては 俺の前を通りすぎてゆく。
そこにはパウロの姿も有った。

さらに10分程待っただろうか?
『じゃぁね、また明日ぁ』
宮本さんが同僚の外国籍女性に手を振っていた。
『ゴメンね、待たせちゃって』
『…お願いします』
と頭を下げている。

2人並んで歩き、『居るよ、たぶん…』そんな話しをしながら角を曲がると、案の定 喫煙所にパウロがいた。
が、並んで歩く俺を見たとたん、煙草を消すパウロの手が止まった。
そして ややひきつった顔で こちらを見ている。
俺は あえて談笑しながら横切った。

『ね、居たでしょ?』

「居たね」

『歩いてる?後ろ』

「そんなの分かんないよ、振り向くのも不自然でしょ?」

『そぅだけど…』
『怖いよね?』
『何 考えてんのかしら?』

「アピールしてんじゃないの?、彼なりに」

『…だって、言ったのよ!、彼が居るって、貴方も知ってるでしょ?、って、それなのに?』

「それも 片思いの1つなんじゃないですか?」

『そんなぁ!』

「…無かった?」
「好きな先輩に彼女が居た…、なんて事。それと同じなんじゃん?」

『そりゃぁ、まぁね…』
『でも あの歳で?』
『あり得ないでしょ?』
『奥さんだって居るのよ』

「恋は何とか…って言うからさ」
「失礼を承知でハッキリ言っちゃうとさ、佐山さん 離婚協議中だったでしょ?付き合い出した頃、戸籍上は まだ妻帯者だったんだよね?」
「たいして変わんないと思うけど…」

『・・・、事実上は破綻してたわ!』
『でも何で?、何でケンちゃん そんね事まで知ってるの?』
『ね?、何処まで知ってるの?』

「何処までって言われてもねぇ…?」
「宮本さんの彼氏を悪くは言いたく無いけど、どうなんだろ?」
「塚本と付き合ってんの知って、塚本呼びだして、女房が居るのに何やってんだ!ってヤキ入れて別れさせて、その相手に今度は自分から告って、まだ妻帯者なのに…」
「ゴメンね、俺、こういう性格だからさ、で その彼女がストーカーされてんのに一緒帰る事もしてくんないんでしょ?」

『塚本くんの事まで知ってるんだ』
『・・・・・』
『噂どおりの人ね、ケンちゃん』

「噂って?」

『良く言えば 裏表が無いって言うの?』

「悪く言えば?」

『平気でズカズカ…、かな?』
『嫌ってる?佐山さんの事』

「ゴメン。好きだの嫌いだの言うほど関心がないんだ、佐山さんにもパウロにも…」
「…どっち?駐車場」

『こっち』
横断歩道を渡って右手を指さした。

「俺も こっち」

『どこ?』

「後ろ、幼稚園の」

『じゃぁ、そこ曲がるのね』
と次の交差点を指さしている
『私は まっすぐ』
『ありがとね、ケンちゃん』

「いいよ、車まで行くよ」

『何で?、悪いわ…』

「関心が有るから…かな?」
「宮本さんには…」

『あらっ、どっちの関心かしら?』

「今日も いい匂いしてんなぁ?、とかね…」

『皮肉じゃないよね?』

「うん、違うよ」
「今は いい匂いしてるよ」

『今はって!、それを皮肉って言うの!』

そんな話しをしながら車まで着いた。
『ありがとう!ケンちゃん』
『ゴメン、戻らせちゃうね』

「そんな事ないよ、ほら そこのフェンスの横 抜けられるハズだから」
「で、駐車場ぬけて、道路わたれば…、でしょ?」

『あっ、あそこなんだ?』

「気をつけてね」

『ありがとう』

俺は 宮本さんの車を見送った。


翌日、『今日もお願いして良い?』
と言われ、昨日と同じ様に宮本さんを待った。

『お待たせ』
『ゴメンね』
宮本さんが手を振って やって来る。

仕事中は いっさいパウロの話しはしなかった、で、聞いてみた
「そぅ言えば 返してたよね?パウロに」

『うん、返したよ』
『何で?』

「って言うかさ、おかしいでしょ?、こんなご時世に帰国なんて」

『そぅ言えば そうだよね?』
『行けたとしても、帰ってこれないよね日本に…』
『どぅしたんだろ?アレ』

「まぁ、何処かで探したんだろうね」

『だよね、じゃ・・・』
宮本さんの言葉が止まった
『…何で!?』
『何で今日も居るの?』

今日もパウロは喫煙所に居た。

「毎日 こうやって一緒に帰ってんの見れば諦めるでしょ?そのうち」
「可愛いもんじゃん、あぁやって必死にアピールしてんだよ」

『もぉ!』
『私は笑い事じゃないんですけど!』

「大丈夫だって!」
「用事が無いかぎりは 毎日 ご一緒させて頂きますから…」

『ホントに?』 
『ありがとう』

そんな毎日を繰り返した。
パウロも毎日 喫煙所に居た。
そして 10日ほど過ぎた頃には 2人の事が社内で噂になっていた。

『ゴメンね ケンちゃん』
『私のせいで変な噂になっちゃって』
『でもね、由美ちゃんには言ったの、こういう訳で一緒に帰ってもらってるって、お昼に』
『心配してくれてたから、由美ちゃん』
『ケンちゃんは?、何か言われたりしたの?』

「うん」

『何?』
『何て言われたの?』

「典(のり)ちゃんと付き合いだしたのか?、って聞いてきた奴も居たね」

『で?、何て答えたの?』

「スッピン見たくてさ、毎日帰りに待ち伏せして口説いてんだけどさ、なかなか落ちてくんないんだよ、って」

『何それ???』

「何それって、そのとおりだから そのまんま答えただけ だけど?」
「だいたいさ、もし 俺と宮本さんが付き合ってんなら まず佐山さんが黙ってないでしょ?、塚本じゃ無いけどさ 呼び出されんでしょ?俺も」
「佐山さんが 何のアクションも起こしてないってのに、そんな事にも気付かないんだよ あいつら」
「そんなモンだよ、噂なんて」

『そんなモンだよ…ってさ、それは そぅかもしんないけど…』

「そんなモンだって」

『でもさ・・・』 
『見たいの?スッピン、私の』
『口説かれてたの?私』
『それとも 塗りたくってるって言いたいの?』
『口説いてくれる様な事 言われた覚えも無いんですけど』

「塗りたくってるなんて 思ってません、思ってないけど、スッピン見たいのは本当です」
「って、これじゃ口説いた事には なんないかぁ…?」

『何か バカにされてる?私』
『いい歳こいて ストーカー ストーカーって騒ぐな、って思ってる?』
『そぅなの?』

「あのさ、そんな事思ってたら 噂されてまで ご一緒しませんて」
「言ったでしょ?、関心が有るからだって。そのとおりだから そのまんま答えたって、言わなかった?」

『訳わかんない!』
『そのまんまなの?』
『ホントに そのまんまなの?』

「そ!」
「額面どおり その まんま」

『もぉ!頭いたい』
『ホントに訳わかんない!』
『煙草 付き合って!、良いでしょ?、帰っても1人なんでしょ?』

「1人ですけど 何か?」
「宮本さんは良いの?、娘さんは?」

『私の事は いいから!』

「なら、コーヒー買ってこ」
「何でも良いの?」

『一緒に行くわよ、私も』

コーヒー片手に 宮本さんの車に乗りこんだ。




23/04/10 23:17 (/Rf4Q6QR)
3
投稿者: ケン
「ありがとう」
「俺 電子タバコじゃ無いけど良いの?、灰とか」

『大丈夫、気にしないで』
『灰皿、ドアの下の方にない?』

「ありがとう」

宮本さんの助手席で さっそくタバコに火をつけた。

『でも ケンちゃんて ホントに分かんない人ね?』
『鼻歌うたいながら仕事してるし』
『そのくせ 何でも そつなく こなすし…』
『リンダが はずせなくて困ってる時だって、スッて行って サクッとやってあげて』
『カッコいい!とか 思わず言っちゃった、聞こえたでしょ?』

「えっ?」
「そう言う事は もっとハッキリ言ってくんないと!」

『聞こえなかったの?、聞こえてなかったんなら言うんじゃなかった』
『聞こえて無かったんだ…?、そうなんだ?、すぐに また鼻歌うたいながら はじめてたもんね?』
『でも ヨッちゃんも言ってた、板橋さんて頭も良さそうだし、何でもこなすし…って』

「…あれで性格も良ければ…って?」

『そこまでハッキリとは 言ってないけどさ…』

「性悪だからね、俺」
「でもアレだ?、ヨッちゃんってことは〔よしゆき〕って読むんだ佐山さん、てっきり〔かつゆき〕だとばっかり思ってた俺」

『そ、知らなかったんだ?』
『関心が無いんだもんね?』

「はい」

『でも、そんなに性格悪いかなぁケンちゃん、リンダの事もそうだし、鋏が切れなくなったら研いでくれるし、この前なんか交換してあげてたよね自分のと…、相手が誰でもさ、分け隔てなんかしないで…』
『周りが言うほど悪くないと思うんだけど私、むしろ優しいって言うか…』

「優しいって程でもないと思うよ」
「ただリンダみたいに 頑張って何とかしようとしてるの見るとさ、この方が簡単だよとか、切れなくて戻らない鋏をさ 両手で広げて戻したりとかさ、面倒くさいじゃん そんなの」
「面倒くさいのキライだし、疲れんのもキライだし、この方が楽だよって。頑張ってそうな人にはね」

『みんな ハーハー言ってんのに、汗も かかないもんねケンちゃん』

「汗かくのもキライだしね」
「でもアレだよ、濃厚接触の汗は別だよ、下で〔マグロ〕にはなんないからさ そこは…」

『何なに?、濃厚接触とマグロとかって、ねぇ何それ?』

「ホントに?」
「本気で聞いてる?」

『…な訳ないでしょ?もぉ!』
『でもアレにはビックリした、毎日1時間まえにボード見に行ったと思ったら もうカウンター打たないんだもん、トータルでプラス1なら良いんじゃんとか言っちゃってさ』
『何台やってんの?ホントは』

「分かんないよ、数えてねぇもん そんなの」
「言ったでしょ?、ピッタリの数字が一番キライだって、毎日必死こいてて出来高が同じなんて あり得ないからさ、マイナスの日が有って当たり前なんだし」

『それはそぅかもしんないけど、皆必死なんだよ、何とか数こなそうと思って』
『私なんか見てよ、鋏だのペンチだのって使い慣れてないから、最近 指の間接が太くなってきちゃって』
『ほら、触ってみて』

宮本さんが ルームランプを点けて 手を俺の前に差し出してきた。

「ホントだ」
「バネ指とか ならなきゃ良いけど」

『そう!、私も心配で』
『ウチに帰っても 包丁とか落としちゃう時も有るもの』

「でもアレだね?」
「柔らかくて気持ち良い手だよね」
俺はそう言って 手を握りながら宮本さんを見つめた。

『そ、そぅお?』
『ありがとね…』
宮本さんが ゆっくりと手を引いた。

「帰りますか?」
「濃厚接触にならないうちに…」

『…そうね』
『ありがとう』
『乗ってって、車まで、ね?』
宮本さんが 俺の車まで乗せてくれて、『ありがとう』と しきりに手を振って帰って行った。

翌日。
「タバコ吸ってから帰りますか?、今日も」

『ゴメン、濃厚接触になっちゃうと いけないからさ、ゴメンね』
『…なんてね、今日はね 帰ってきてるのよ娘が、彼氏連れて』
『だからゴメンね』
『また明日ね』
『ありがとう』

俺は言われるまま 宮本さんを見送った。

そして、また その翌日。
『一緒に暮らしたいって』
『今度の土日で荷物運ぶんだって』
と、少し淋しそうしていた。

「同棲って事?」
「良いんじゃん?、ガスも電気も携帯も 払わないと止められるって分かるだけでも。ママの苦労が分かるでしょ少しは。淋しくはなるだろうけどさ」

『…うん』
『そうだね』

そんな話しをして分かれて 迎えた月曜日、仕事が始まるなり 宮本さんが話し始めた。

『金曜日にさ、しばらく走ってから気付いたんだけど、後ろに居たのよ、きっと奴よ』
『ナンバーまでは分からなかったけど車と色は奴のと同じだった、信号待ちで確認したから』
『そしたらさ、煽ってくるのよ右に寄ったり左に寄ったり、パッシングまでしてきたのよ』

「何処かで待ってたって事?」

『だと思う』
『どうしよ?』

「佐山さんは?、何だって?」

『車種と色が同じだけだろ?って』
『証拠もないのに…、って』
『それでも彼氏?、って言っちゃったわよ!』

「そう…」
「まあ いいや」
「何か考えるよ、帰りまでに…」

で、だした答えは、俺の車に宮本さんが乗って、俺が宮本さんの車で あとに続く。
途中、パウロが煽ってきたら 俺が降りてく。
って言う事にした。

宮本さんには 俺の車で いつもどおりの道を帰ってもらい、俺が そのあとに続いた。
信号を幾つか曲がり、やがて信号も無い 街灯も少ない 広域農道を走りだした時、いきなりミラーにライトが映った。

俺は少し アクセルを踏んだ。
案の定 後ろの車もついてくる。
今朝の話しのとおり、右に左に煽ってきた、そしてパッシングをされた時 すかさずブレーキを踏んで 車を斜めに停めて降りていった。

窓の向こうに ひきつったパウロ。
「開けろよ!」
俺が何度も窓を叩きながら スマホで撮影した。
パウロはスペイン語で何かを叫んで 俺を睨みながらバックしだした。
俺は おもいっきりドアを蹴飛ばしてやった、おそらくは 相当凹んだ事だろう。

車に戻り はるか向こうで ハザードを出してる宮本さんの所に向かった。

『パウロだったでしょ?』

「うん」

『何だって?』

「帰ろ」
「まずは帰ろ、帰って話すから」

『…怖いよ』
『帰って もし居たら どうすんの?』

「ビジネスホテルでも探す?」

『それも…』
『着替えも無いし…』

「…でしょ?」
「一端 帰ろ」
「もし、パウロが来てたら警察呼ぶなり、佐山さんに泊まってもらうなり」
「それまでは 居るから俺、車に」
「とかく 一端 帰ろ、佐山さんには 俺が話しするから、ね?」

宮本さんのアパートに着いた。
宮本さんには 先に部屋に帰ってもらって、電話を繋いだまま、俺がアパートの周りをぐるぐると回った。

『…上がってきて、ケンちゃん』
『2階の一番奥』
『車は私の左に停めて、娘のだから そこ、ね、上がってきて』
言われるまま、宮本さんの部屋に上げてもらった。

「…どうする?」
「まずは佐山さんに電話して相談すれば?、警察に頼むとか」

『電話なんかしないわ あんな奴』
『警察にも電話しない』

「動画も撮ったし、あいつのドアにも俺の足跡が残ってるハズだし、証拠なら有るよ、良いの?、電話しないの?それでも」

『…いい』
『ケンちゃん?、泊まってって、今日、お願い、ダメ?』

「大胆発言だね?」

『からかわないでよ!』
『怖いのよ1人じゃ、お願い、ね?』

「佐山さんだと思うけどな、泊まってもらうなら」

『今は言わないで、あんな人の事なんか、少しくらい心配させてやれば良いのよ!ね?お願い』

「バッグには 替えのTシャツや靴下くらいは入ってるから良いけど…」

『なら良いじゃない』
『男でしょ?、こんなに困ってる女性をほっとくの?』
『2日くらい同んなじ格好だって 誰も分かんないわよ、ね?』

「・・・・」
「分かりました」

『ありがと』
『お腹すいたね?、安心したら』
『どっちが先の人?、お風呂とご飯と』

「お風呂って…」 
「Tシャツと靴下は有るけど パンツは無いし…、パジャマだって…」
「反応してるの見られるのも恥ずかしいじゃん?」

『ヨッちゃんのじゃ失礼だしね』
『タオルと毛布は有るから、ヨッちゃんのじゃないヤツ』
『それとも 一緒に寝る?』

「余計 反応しちゃうよ そんな事したら」
「ピンクレディだか石野真子だか歌ってたでしょ?、俺だって狼かもよ?」

『私だってら嫌よ!見られちゃうものスッピン』
『まぁ良いわ、先に入ってきて』
『その間に 何かご飯作っとく』
『ビールしか無いけどさ、良いい?』

「ありがとう」
「…それじゃぁ」
「って、何処?、お風呂」

『ゴメン!』
『初めてなんだもんね、分かんないわよね?』

『冷凍、チンしただけだけど…』
『ゴメンね、こんな物しかなくて』
『どうぞ』
シャワーを済ますと 既に準備されていた。

「頂きます」

『でも どうしよ?』
『勢いで泊まって貰う事にしたのは良いけど、何処で休んでもらお?』

「良いよ、ソフワァで」
「毛布 貸してくれんでしょ?」

『ホント ゴメンね』
『何から何まで…』
『それと もうひとつお願い、早く寝てね』
『ケンちゃんが寝てから お風呂入るから私、ケンちゃんの事だから』襲ったりは無いだろうけど、恥ずかしいからさ これでも、スッピンみられるの、ね?、お願い』

「はいはい」
「ご馳走になったら すぐに寝ます、薄目開けて」

『薄目開けては 余計ね!』
『じゃ乾杯!』

「はいっ、乾杯!」
「お馬鹿なパウロに!」

『何それ?』
『何であんな奴に乾杯するの?』

「だって パウロのおかげだからさ、俺が今 ここに居るの」
「それと、彼氏らしくない佐山さんにも!、乾杯!」

『はいはい』
『…乾杯』

気疲れも有ってか、俺はすぐに 寝入ってしまったらしい。

翌朝 物音に目が覚めると
『おはよ!』
宮本さんは 既に バッチリとメイクをした顔で微笑っいた。

朝食を囲みながら
『ねぇ、ケンちゃん?』
『今日 課長に話してみる、こんな事が有りましたって、出来れば派遣の担当者にも来てもらって』

「話すって、俺の事は?」

『正直にはなすわ、嘘言ったって、パウロが話したらバレちゃうし、そぅでしょ?』
『ケンちゃんには 迷惑かけちゃうけど、ゴメンね』

「まあ、その方が解決は早いどろうね?」

『でね、お願いがあるの』
『しばらく ケンちゃんちに泊めてくんない?、ダメ?』
『ホトボリが覚めるまでって言うの?、せめてパウロが落ち着くまで、ダメ?、彼女に悪い?、それならビジボとか探すけど』
『着替えも準備しちゃったのよ』
『夕べは狼にもならなかったしさ ケンちゃん、駄目かなぁ?』

「まず、彼女に叱られます、絶対!」

『そっかぁ』
『そうだよね?』

「でも、今は 彼女は募集中なので大丈夫です」
「ただし!、布団は一組しか有りません、来客なんて皆無なので」
「ソファーも有りません!」
「根が狼です、俺」
「それでも良ければ どうぞ」

『はいっ、結構です、お願いします』
『狼は見てくれだけ!、中身は……、何だろ?、とにかく お願いします』

着替えの入った大きなケースを積んで、二台で会社に向かった。
23/04/12 00:58 (ClBcVMNt)
4
投稿者: (無名)
続きをお願いします
23/04/12 08:49 (kQ.a.oPL)
5
投稿者: ケン
4さん、ありがとうございます。
励みになります。
23/04/12 19:37 (E29ZUXEN)
6
投稿者: (無名)
ゼヒ続きをお願いします(*´Д`)ハァハァ
23/04/12 20:38 (fYcJO2Xf)
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