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1:医局秘書
投稿者:
あっくん
序
これは私が数年前に体験した事実をもとにしている。実際とは異なる設定も創作したが、可能な限り私の記憶のなかのイメージを壊さない範囲で行ったつもりである。 私は医師として都内の私立大学附属病院にてながらく勤務していた。30代も半ばを過ぎ、大学附属の総合病院のように条件もあまり良いとはいえない大所帯で働き続けることに疲れを感じ、千葉県の田舎にある同じ大学附属の分院に赴任する希望を出した。家族とは離れ、病院敷地内の官舎での単身生活となるうえに分院の医局の臨床教授は下品な変わり者として有名な男であったが、もともと都会の喧騒が苦手な私にとっては自然溢れる田舎での生活の魅力がマイナスポイントにおおきく勝った。当直のない週末には都内の自宅に1時間半もあれば帰ることもできるし、その気になれば勤務を終えてから帰宅することもできなくはない。もともと不便な田舎での勤務を自ら希望する医局員は少なく、私の希望はすんなりと通り、その翌年の春から分院で勤務することになった。 赴任先の医局は変人と評判の臨床教授の他に私を含めて3人の男性医師と医局付きの医局秘書の女性がひとりといった小所帯で、当時私の申し出にこの変人教授も狂喜乱舞したと人づてにきいた。当然、大歓迎を受けた。病院も総合病院ではあるがアットホームな雰囲気でとても働きやすさを感じた。医局秘書が別の人物であったなら、この病院、この場所での私の数年の生活はいたって平穏な、悪くいえばつまらないものとなっていたことは間違いない。 槌 医局秘書の彼女、美〇子と初めてことばを交わしたのは赴任に先立って医局に挨拶にいったときだった。35歳前後にみえる色白で、長めの黒髪、顔立ちは鈴木京香と井川遥を足して割ったような和風美人というのが適格な表現であると自負している。ネームプレートにいれる写真が必要なので、地下にある病理部にいって顔写真を撮ってきてほしいという要件であった。教授の外来が終わり、医局に戻ってくるまで、まだかなりの時間がありそうな様子だったので、さっそく病理部に向かい、常駐するスタッフに顔写真を撮ってもらうと、すぐにその場でカードキーとしても利用する顔写真入りのネームプレートが完成した。再び医局に戻り彼女に報告すると、今完成したプレートを青い紐のついた透明のプラスチックケースにいれてくれた。私はお礼をつたえながら、「きれいな医局秘書さんもいるし、4月からが楽しみです。」と何の気なしに軽口をたたいたのだが、彼女は一瞬動きをとめた。ほほ笑み返されたもののそれは明らかに硬く、ぎこちない表情にみえた。それが彼女とのファーストコンタクトだった。
2020/08/20 19:24:22(/O/X6858)
8
日曜日の朝は昨夜の深酒が祟って、ベッドを離れたのは昼近くなってからだった。起きてすぐに美〇子とR田のことが気になり、R田からの報告は週明けになるだろうとは思いながらも仕事用のラップトップを開いた。全く期待していなかったが、予想に反してR田からのメールが届いていた。受信日は土曜日だった。心房細動ではないかと思うほどの、息苦しさをも伴う、凄まじい胸の高鳴りを覚えつつ、『報告』と題された添付ファイル付きの受診メールを開いた。 槌 先生 お世話になっております。完全に墜としました。今回はあえて最後まで頂かず、リリースしました。彼女はかなりの好きものの匂いがします。今後が楽しみです。1件目は先日ごちそうになった寿司屋、2件目は近くのバーで飲み、その後〇駅まで歩きました。その道中でスマートフォンアプリで録音したやり取りを添付しました。ご査収の程よろしくお願い致します。 R田 槌 「なにがご査収だ。」と独り毒づきながらも、さすがR田だと感心せずにはいられなかった。またこの時期、私はまだ従来型の携帯電話、いわゆるガラケーを使用していたため、アプリを入れれば簡単にボイスレコーダーにもなるスマートフォンの便利さに改めて関心させられたのを覚えている。官舎の壁は薄いため、はやる気持ちを抑え、しまい込んであったイヤホンを取り出した。イヤホンが機能することを確認したうえで、添付をファイルを再生する。 ザッ、ザッ、ザッっと規則正しく足音と思われる音が聴こえてくる。しばらく足音が続いていたが。R田の声で「この辺の桜も見頃ですね。来週には散っちゃうだろうなぁ。はぁ~あ。絶えて桜のなかりせば、春のこころはのどけからましですよねぇ。」 「俳句ですか?俳句とか全然わからなくて。」 「俳句ではありません。和歌ですよ。古今和歌集のなかの超有名な歌。当に今のような瞬間にぴったりじゃあないですか。」 -まったくR田め、自分が業平の再来だとでもいいたいのだろうか、いちいち話題が鼻につく、バカめ。-とまたもや心中で毒づきながらも、こういったわかりやすい、教養と言う程でもない教養のひけらかしがある層の女性には結構うけることを私ごときの男でも知っている。 「誰か知り合いにみられたらまずいんじゃないですか?」と美〇子の声が交じる。 「嫌なら止めます。」とR田。再び規則正しい足音だけが続く。想像するに手をつないだのだろう。普段のR田の歩き方からすれば、聴こえてくる足音のリズムは明らかに遅く、美〇子の歩調に合わせていると思われた。 「すこしあの公園のベンチでやすんでいきましょう。」 確か寿司屋がある界隈から駅までは川沿いの桜並木のある遊歩道を通っていけた。そして遊歩道が線路とつきあたるあたりにベンチがいくつか並ぶ小さな公園があった。 突然、「えっ、大丈夫です。そんな汚れてしまいます。」と美〇子の声がしたかとおもうと、「どうぞ、お座りください。チーフはお洒落で差しているのではありません、こういうときのためにあるんです。」クスクスとふたりの笑い声が聴こえる。紳士らしく美〇子を直にベンチに座らせることはせず、ポケットチーフを敷いたのだろう。しばしの沈黙、遠くから列車の音が聴こえてくる。 「いいんですか。こんなところを誰かにみられたら。R田さん、こまらないんですか?」 「嫌ならすぐに止めます。はっきり言ってください。」再びしばらくの静寂。 「ん・・・ん。ん、うぅん、ん。」くぐもった美〇子の声が聴こえだす。その合間でR田の胸ポケットに入れたスマートフォンに次第に荒くなる両者の吐息があたり、ゴー、ゴーと音を鳴らす。 「美〇子って呼んでいいですか?」 「ねぇ、R田さん。こんなおばさん相手にからかってません。遊んじゃおって思ってるでしょう?」 「嫌なら止めるよ、美〇子。俺のことも〇人(R田のファーストネーム)でいいよ。」 「もう、いいのかなぁ、わたし。一応結婚もしてるし、子供も・・・んふ・・・ぉふ・・・ん・・・ん。」耳を澄ますと激しく舌を絡めあっているらしく、水面に滴り落ちる湧き水のような音が聴こえる。 「あっ。まって。さっきから人が通るし、これ以上はここでは無理。どこか場所を移して・・・ここでは・・・あん。」再び吐息と何かが触れ合う音。 「あー、雨だ。しかもこんな時間になってしまった。電車もなくなったら大変だし、そろそろいきますか。今日は楽しかったぁ。ありがとう美〇子。」 「えっ、あっ、そうですね。あ、ありがとう。私も楽しかった。」 しばらく足音が続き、駅に到着したのか「じゃあ気を付けて。近々また誘う。メールでいいかな?」 「うん。待ってる。〇人・・・でいいのかな。〇人も気を付けて。」 「おぅ。おやすみ。」 槌 R田のルックスに加えて、話題の引き出しの多さ、スマートなエスコートなどといった数多くの条件が整っていたとはいえ、美〇子のような女性、堅気の人妻がいとも簡単におちてしまうことに女性の恐ろしさを感じながら、気が付くと昨夜の佐〇子との情事の最中よりもはるかに硬く、熱くなった肉棒を激しくしごいる自分がいた。着けたままのイヤホンからは、◇房線下り最終列車到着を報じる構内アナウンスが流れていた。
20/09/04 16:42
(PRnt1VK/)
更新をお待ちしておりました。
ありがとうございます。 R田さんのテクニックがとても素晴らしいですね。 次も楽しみにしてます。
20/09/04 22:20
(SD3CYiNO)
アップさんありがとうございます。R田のモデルになったMRに伝えておきます、喜ぶと思います。近々更新しますので乞うご期待!
20/09/06 08:19
(w.88BJsi)
9
週が明けてからは、なにかと外来フロアをうろついてはR田の姿を探した。他科の医局のある旧棟にも出入りしたが、R田に直接会うことはなく数日が過ぎた。結局、我慢できなくなった私は<状況やいかに>とR田にメールを入れた。R田は私からのメールを予想していたらしく、すぐに返信があった。 先生 お世話になっております。あの後、私から彼女には一切連絡を入れてないです。私の予想では先生のようにそろそろ我慢できなくなり、彼女の方からコンタクトがあるだろうと思いますのでそれを待ちます。彼女はかなりのもんです。久々にのめりこみそうです。こんな機会を与えてくれた先生に感謝、感謝です。R田 R田にこちらの心境まですっかり見透かされていることに一種の不快さを感じながらも頼もしくも感じた。ただR田の想定する通りに事は運ぶのだろうか。飲んだ帰りに成り行きでキスを交わした程度の相手からちょっと連絡が途絶えたからといって、人妻が自らコンタクトをとろうとするだろうか。小説やドラマのようにはいかないと思うぞ、R田。そのときの私はそう考えていた。 何も動きがないまま数日が過ぎたが、その間にこんなことがあった。ある初診担当日、40歳代後半の男性患者が受診した。主訴は不眠、食欲不振、急激な体重減少、夜間を中心に起こる耳鳴。一般的な血液検査、尿検査を施行したが大きな異常はなかった。きっかけとなった大きなストレス要因に心当たりがあるとのことで、平素であれば精神科・心療内科の受診をすすめ、院内紹介状を作成する。だが、その日は再来患者の予約数も少なく余裕があったこともあり、看護師にしばらくはずすようにお願いしたうえで、何があったのかきいた。 その男性は堰を切ったように泣き出したが、少し落ち着くと次のように語ってくれた。 男性は会社員で、妻と大学生になるひとり息子との3人暮らしをしており、これまで家庭を省みず懸命に働いてきたという。ある日、彼はたまには昼前に退社して平日の午後を夫婦水入らずで過ごそうと考えた。日頃の感謝のしるしにと妻の好きな洋菓子店で土産を買って帰宅すると、玄関には息子のものとは思えない男物のブーツ、そして寝室からは妻の嬌声。当然、大変な修羅場となったようだ。その後に種々の症状が出始め、増悪しているとのことであった。特に夜間など周囲が静かになると、そのときの、妻の言葉とは到底思えない卑猥な嬌声が聴こえてきて眠れなくなることが特につらいとのことであった。簡単な睡眠薬や抗不安薬なら処方できるが、専門科で診てもらったほうが良いだろうとすすめ、本人もそれを望んだ。結局は精神科に紹介状を作成することになった。 仕事柄、このような場面にはよく遭遇するが、そのとき私がおかれていた状況もあってか強く心に残っている。この男性患者の妻も、患者本人からみれば貞淑な良妻に映っていたのだろう。美〇子だってそうだろう。都内に残してきている私の妻だって。 その男性患者が受診した当日の午後は教授をはじめとして、私も、そして他の医師たちも余裕があり、医局会でもないのに珍しく全員が医局に集っていた。自然、おのおのコーヒーや緑茶を片手にお互いの近況報告や治療方針に悩む患者の話などの雑談になる。私は視界の片隅で美〇子も我々の会話に耳を傾けていることを確認しつつ、午前中の寝取られ夫の話を出した。それぞれがその人物らしい反応を示したところで、「□□さんは女性の立場からどう思います?」と美〇子に話をふってみた。 「私はなんか想像すらできないです。ただ気になるのは相手の男性はどういう関係の人だったんですかね。」確かに気になるところではある。 「あぁ、きかなかったな。そうですね、さりげなくきけばよかった。」そこで●橋が入ってくる。「その奥さんよりもずっと若いイケメン君だったりするんじゃないですかぁ~。はい!ここで□□さんに質問!もし□□さんの好みのタイプど真ん中の若い男、ん~、そうそうこの前、福山雅治がタイプだって言ってましたよね。彼のような男に言い寄られたらどうしますか?」私は思わず口に入れたコーヒーを吹き出しそうになった。だが美〇子は考える様子もなく即座に答えた。「結婚しているから、いくら相手が福山さんでもないですね。独身の頃だったらついていっちゃうかもしれませんけど。」●橋は一同に「バカ。」と言われ、医局は失笑につつまれた。私の位置からみえる美〇子の笑みを浮かべた凛とした横顔は、子供をやさしく諭す母親のそれだった。
20/09/06 18:39
(w.88BJsi)
10
それから数日後、待ちに待ったR田からメール連絡があった。彼の予想通り、美〇子のほうからメールが来たこと、そしてDデイは4月23日、今週の金曜日と決定したとの報告であった。そして待ちきれずに自分から連絡した美〇子のメールがはりつけられてあった。 〇人、いつ誘ってくれるんですか?初めからそんな気なかったのかもしれませんけど(笑)ゴールデンウィークには主人が一時帰国します。そうなるとお誘いがあっても応じられなくなると思って、メールしてしまいました。ご迷惑だったらごめんなさい。美〇子 美〇子のR田に宛てたこのメールを読むだけで私の愚息は激しくいきり立った。今回は美〇子から休暇届が出ていないことを確認し、指折り数えて金曜日を待った。 金曜日は病棟当番である。私はこの日ばかりは早朝に出勤し、早くから病棟業務をこなした。午前9時半には医局にあがり、美〇子の出勤を待った。やがて美〇子の出勤時刻がくる。ほぼ定刻に医局のドアが開かれた。彼女は七分袖のネイビーのワンピースを着ていた。長い黒髪は後頭部の比較的高い位置で束ねられており、束ねられた黒髪はその位置から毛先にむけてまっすぐに落ちている。普段左手の薬指につけているシルバーのリングはもちろんしていない。ワンピースの裾からのぞく足はダークブラウンにみえるストッキングで覆われており、暗い色のペディキュアをしているが色までは判別できない。差し色に赤い皮ベルトの小ぶりな腕時計をしていた。白衣を羽織った美〇子は先ず、郵便物の確認を行い、各医師個人宛の郵便物を各々のデスクに配った。新聞に目を通す振りをしながら、その姿を目で追った。その日、美〇子が着ていたワンピースはあのときのプリーツの入ったスカートほど薄手ではなかったし、ナマアシでもなかった。従ってあの日のように下着の形がわかるような幸運には恵まれなかった。でもそんなことはどうでも良いと思った。後日、今晩の報告をR田から受ければ全てわかるのだ。今、この瞬間、すました顔で仕事をしながらどんな下着を着けていたかだって。 昼休みをねらって、何かの足しになればとR田にその日の美〇子のいでたちをメールで報告し、最後に今晩の詳細な報告を求むとしめた。<紺色ベースに赤の差し色ですね、助かります、女性は偶然の一致に運命を感じる生き物ですからね。今日は赤ワインの品ぞろえの良い鉄板焼きの店で飲む予定です。報告は動画でできるように準備もしていますので楽しみにしていてください。何よりも僕が楽しいです。>とすぐに返信があった。 動画で報告とはどういうことだろう。まさか初めての情事を撮影させてもらいたいと頼むのだろうか。そんなことをいきなりお願いしたら、上手くいくものもいかなくなるだろう。R田はそんな野暮なことはしないはずだ。気にはなるが、待つ他ないのだと自身を落ち着かせた。ずっと観察していたわけではないが、その日の午後の美〇子はどこか落ち着きがないようにみえた。 その週末は土曜日の当番からも外れており、当直もなかった。ひとり官舎で過ごしていても落ち着かないことはわかっていたので、仕事を終えたら自宅に帰ることにした。佐〇子と会ってもよかったのだが、なぜかその気にはなれなかった。特急電車を利用し、午後7時には都内の自宅マンションに着いた。帰ることを妻には連絡していたが、子供達のお習い事でみな出ており、出迎えてくれたのは愛犬だけだった。シャワーを浴び、冷蔵庫の缶ビールをひとくちやったところでふと考えた。ママ友付き合いや子供の教育に余念のない妻にも美〇子のような隠した一面があるのだろうか。気が付くと妻の衣装部屋と化しているクローゼットの前に居た。下着入れと思われるプラスチックケースの引き出しを引くと、几帳面に収納された色とりどりの下着。淡色系が多く、いたって普通なものばかりにみえたが、一番奥にワインレッドの小さな布袋を発見した。袋を手にとったものの、その中身を確認することに一瞬躊躇した。その次の瞬間、玄関が開けられる音に続いて、子供達の声。慌てて袋をもとに戻し、ダイニングへと戻った。
20/09/08 17:03
(hhVpNEl0)
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