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麻莉子
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:強姦輪姦 官能小説   
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1:麻莉子
投稿者: 綺愛蘭
気まぐれでハンドルネームを変えてみました。
時間の許すかぎり、読んでみてください。
2012/12/07 14:08:53(M2zqImRn)
7
投稿者: 綺愛蘭




 目覚まし時計のアラームが鳴るよりも先に起きて、その小さな勝利に満悦するのが私の日課になっている。
 おそらく今日の勝者も私だろうという思いで目を開けてみると、焦点が合わないながらも、部屋の中が明るすぎることに疑問を抱いた。
 どうやら照明を消さずに眠ってしまったようだ──というふうに記憶を処理してみたけれど、事態はそんなに甘いものではなかった。

「おはよう」
と男性のものと思われる太い声が聞こえ、私の頭の中に立ち込めた濃い霧を晴らした。
 私が目だけでそちらを窺うと、背中をこちらに向けてテレビを見ている人影があった。
 それをすぐに受け入れることができず、私はまだ自分が夢から覚めていないのではないかと考えた。

「もう起きてこないんじゃないかと思ったよ」

 テレビ画面を見たまま男が言う。
 その背中に声をかけようと喉を開きかけたとき、私はようやく自分の置かれた状況を認識する。
 口が開かない。そしてそこに貼り付いているのが粘着テープらしいということもわかる。ついでに両手、両足にもおなじテープが捲かれていて、私はウサギ跳びをするときの格好でベッドに横たわっていた。

「だいじょうぶ、君にはまだ何もしていないから」

 そう言って男は何かを思い出したようにまた口を開き、
「薬品を嗅がせて、手足をテープで捲いたから、何もしていないというのは嘘になるか。そこは訂正するよ」
と首だけでこちらを振り返った。
 ──この世でいちばん恐ろしい光景を見た気がした。
 感情が失せた目、それでいてすべてを見透かしたような鋭さが棲んでいる。口には意志の強さが滲んでいて、顎の発達した輪郭が西洋人を思わせる、それはモンスターともいうべき人相だった。
 年齢はまだ三十にも届いていないだろう。しかし今日まで出会ったどの人物の顔と照合してみても、誰一人として一致する者はいない。

「んんん、んん……ん?」

 あなたは誰?と閉じたままの口で私は訊いた。しかしそれは言葉にならない。

「言いたいことがあるだろうけど、それは後でゆっくり聞いてあげるよ。いま君に騒がれるわけにはいかないからね」

 そう言って口の両端を微妙に歪めて笑う男。

「僕がどこの誰なのか、自分はどうして拘束されているのか、僕がどうやってこの部屋に侵入できたのか、僕の目的はいったい何なのか、……だよね?」

 耳の奥に張り付くイントネーションで、私の思いを彼は言い当てた。
 私はまた上体を起こそうと試みるが、どうしてなかなかうまく力が入らない。
 意識ははっきりしているのに、脳からの信号が全身につたわらず、神経が遮断されているような感覚さえある。
 そんな私を嘲笑い、侵入者はふたたび言葉を発した。

「君のことなら何でもわかってるさ。それとね、さっき嗅いでもらった薬が君の体内にまだ残留してるだろうから、もうしばらくは指を動かすこともできないと思うよ」

 男の口臭が漂ってきそうで、私は瞬きして鼻をしかめた。おなじ空気を吸っているのも気持ち悪い。

「いいね、いいね、そのリアクション。僕だって、君に好かれたくてこんなことしてるわけじゃないからさ。どんどんやろうよ、そういう表情」

 何が可笑しくて笑っているのかわからないくらい、目の前の彼は大げさに白い歯を覗かせている。
 いつまでもこのままでいいわけがない。形勢逆転のチャンスは待つのではなく、こちらから行動を起こして呼び寄せなければならないだろう。
 着衣は脱がされていないみたいだから、隙を見て逃げ出すことだってできる。
 ただし、彼の言う薬の効果が消えて、運動神経がもとに戻ってからの話だ。

「何かを企んでいる目だな。どうだ、違うか?」

 彼に言われて、私はぎくりとした。裸にされているわけでもないのに、見られちゃいけないところまで見られている気分だった。

「だから言っただろう、君のことはよく知っているって。右の乳房に黒子(ほくろ)があることも、陰毛をハート型に剃っていることもね」

 嘘でしょ──と私は吸い込んでいた息を止めた。背すじの体温だけが奪われていく。

「君が薬で眠っているあいだに見たわけじゃない。だけどね、僕がいつどこで君の秘密を知ったとか、そんなくだらないことにこだわっている場合じゃないよ。だって君はこれから……僕にレイプされるんだから」

 そんなことは言われなくてもわかっているつもりでいた。けれども声にして『レイプ』と告白されてみて、欲望の矛先が今まさに自分へ向けられたのだと感じた。
 緊張した沈黙が訪れた。しかしそれも長くは続かない。
 彼は点けっぱなしのテレビ画面に向き直り、
「面白そうな深夜番組がやってたから、ひとりで視てたんだよ」
と無機質な声で言った。
 ベッドに寝転がされたまま、私もそちらを窺う。深夜番組だと言うからには、閉め切ったカーテンの向こうにはインディゴブルーの夜空が広がっているのだろう。
 この部屋に時計はない。液晶テレビの四角いディスプレイには映像が流れていた。
 おそらく来年の今頃には業界から姿を消しているであろう芸人らが、流行語を意識した軽快なトークを繰り広げているのだと思っていた。
 だけど収録映像にそういった明るさはなく、音声にしても大人しい印象がある。

「ある一人の女性の私生活に密着した、ドキュメンタリー番組だよ」

 男は、真顔と微笑のあいだくらいの表情に変わった。果たしてその真意は映像にあった。
 OL風の若い女性が、どこかの個室にいるところが放映されている。
 カメラアングルが明らかにおかしい。斜め上から被写体を狙った映像の下に、おなじ人物を別の角度から撮った小さなワイプ画面が見える。

「トイレの中だよ」
と彼は言った。
 やっぱりそうだと私は思った。
 アダルトビデオの中には、こういうジャンルのものまで出回っているのかと、私は変な感心をしてしまった。
 次の瞬間、メイン画面とワイプ画面が入れ替わり、盗撮されている女性の顔がはっきりした。
 素人に扮した女優さんが、いかにもそれらしく演技しているに決まってると疑わなかった。
 しかしその適度に熟れたルックスを目の当たりにした私は、今度こそ救いようのない絶望と羞恥を味わうことになる。

「ここに映っている女性は、間違いなく君だよ。……さすがに驚いたようだね。そう、これは深夜番組でもなければ、アダルトビデオでもない、僕のオリジナルソフトなのさ」

 女性は盗撮されて当然だという口振りで、彼はDVDデッキを指差す。自慢のコレクションとでも言いたいのだろう。
 怒りを通り越した言いようのない思いが、胸の谷間の内側あたりに暗い影を落としているみたいだった。

「このトイレじつは、君が今日、会社の帰りに寄った公園、フェーマスパークの多目的トイレなんだ」

 もういちいち驚かされるのも面倒臭い。
 男とは、サプライズを仕掛けるのが好きな生き物だと、どこかで聞いたことがある。
 逆に女は、サプライズに酔わされるのが大好きだったりする。
 だけどこんな下品なサプライズは、どうにもいただけない。盗撮映像の中の私は、落ち着かない様子でスカートをたくし上げ、パンティストッキングとショーツを膝まで下げて便座に座った。
 まさしく数時間前の自分がそこにいた。

「無防備な女性の姿って、ほんとうに興奮するよ。それが君みたいな美人ならなおさらだ」

 彼のテンションが上がれば上がるほど、私のテンションはどこまでも沈んでいく。思い切り睨んでやりたいのに、目に力が入らない。

「君の部屋は禁煙だったかな。まあいいや。ちょっと一服させてもらうよ」

 言い終える前に男は、シャツの胸ポケットから煙草とライターを取り出し、そのうちの一本を口にくわえて目をきょろきょろさせた。灰皿の代わりになりそうな物を探しているらしい。
 ああ、これでいいや、とでも思ったか、彼はカップボードからティーカップを持ってきて、自分のそばに置いた。そして煙草に火をつける。
 煙たそうに眉根を寄せたまま、まどろんだ色の煙を吐く彼を見ていたとき、何故だか私は懐かしい人物を思い出していた。ビートルズが好きだった昔の彼氏だ。
 その人もこんなふうに煙草を指でもてあそび、こんなふうによく眉間を狭めていたのだ。

「なんだ、君も吸いたいのか?」
と招かれざる客は言った。
 私は呻き声を出してそれを否定した。
 男が吐き出す煙は部屋中をゆったりと漂い、嫌煙者である私の鼻腔を刺激しはじめていた。
 あまり嗅いだことのない匂いだったので、私はちょっぴり意外な気がした。それでも不快なことに変わりはない。
 そのあいだにも、私の盗撮映像は相変わらず垂れ流されている。
 このイライラは生理のときよりも酷い。それでいて身動きができないから、別の意味で欲求不満が積もり積もって、結果、重量オーバーになってしまう。
 だから私の心はいま、ぺちゃんこのライスペーパーみたいなのだろう。

「ところでさ」
とティーカップの中で煙草を揉み消しながら男がしゃべった。

「君はどんなふうにオナニーするんだ?」

 そう尋ねてくる彼のいやらしい目つきは、生まれつきなのかもしれない。
 私のことは何でも知っているんじゃなかったっけ──と言ってやりたい気分だった。
 そうして先程から再生されている盗撮動画を停止させると、男はリモコンを操作して別のサムネイルから動画データを呼び出した。
 それが再生されるとすぐに、液晶画面いっぱいに若い女性の痴態があらわれた。



つづく
12/12/11 18:00 (rx4GT1/3)
8
投稿者: 熟便器
続き読みたいです( ´△`)
12/12/11 20:10 (tHcst24Y)
9
投稿者: 綺愛蘭




 自分の意思なのか、それとも誰かに指示されたのか、映像の中の彼女は可愛らしい顔を歪めて自慰行為に耽っている。
 片手は服の上から胸をまさぐり、もう片方の手はショーツの中であやしく蠢いている。

「ここに映っている彼女も君とおなじ、どこにでもいる普通の女の子だよ。まあ、合意の上で撮らせてもらったんだけどさ」

 私はぞっとした。合意の上だろうが何だろうが、こんなものを所持している時点で気持ち悪い。

「こういうのはどうだろう」
と男はふたたびリモコンを操り、別の動画を私に見せびらかしてきた。
 さっきとはまた違ったタイプの女の子が両脚を大きく開き、自らの局部に人工的な異物を挿入している。
 それが女性用玩具のバイブレーターだということを私は知っている。サイズもかなりのものだ。彼のオリジナルソフトだから、もちろん無修正である。
 女性器の中心を貫く異物は、その乱暴な動きで彼女の体と脳を狂わせていた。

 ひい、はあん、ふうん──という熱く甘い吐息も聞こえる。

 たぷん、たぷん、とぷん、ちゃぷ、ちゃぷ──と出し入れするたびに粘液がはじけ飛ぶ。
 白い糸を引いて、バイブレーターに化粧を施していく。
 絶頂してしばらくするとまたすぐに自慰行為を再開し、あっという間に上りつめる。
 苦悶の表情の中にも、快感に満たされた笑みを見せる彼女。
 彼はこんなふうに次々とスライドショーを繰り返し、私はそこに映った淫らな光景を惨めな思いで見つめていた。

「次は君のオナニーシーンがここに加わるわけだ。わかるよね?」

 私は喉の奥で男に怒鳴ってみた。耳の鼓膜がぴりぴりするだけで、やはり声にはならない。

「そういえば、こんなものを拾ったんだけど、見覚えはある?」

 そう言って彼は服のポケットから小さなビニール袋を取り出してきて、それを親指と人差し指で摘んでゆらゆらと振った。中には白い布切れのようなものが入っている。

「君の会社の女子トイレ、そこのサニタリーボックスの中に捨てられていたんだ。ここに、君のおりものがべったりと付着しているんだよ」

 ほら、ほら、と手にしたそれをどうしても私に見せたいらしい。汚物入りのビニール袋は少し汗をかいている。

「勘違いしないでくれよ。言っておくけど、僕が女子トイレに入って拝借してきたわけじゃない」
と念を押して、
「僕には仲間がいる」
と彼は付け足した。

仲間──。

 それはいつも私のそばで息を潜めていたのかもしれない。
 仕事の休憩時間にお茶菓子を差し入れてくれたという、他部署のにんげん。
 公園のトイレの外で犬に吠えられていた、ちょっと残念な人物。
 コーヒーショップに一人でいた、イヤホンの男性客。
 私のハンカチを拾ったと主張する、パーカーの青年。
 こうやって思い返してみると、怪しい気配はつねに私の背後にいて、堂々と私のプライバシーを盗んでいたのだ。

だめだな、私──。

「僕の仲間が誰だったのか、だいたいの見当はついてるみたいだね。友達は大事だよ。君の親友の歩美ちゃんも、そう言ってたっけ」

 電話の盗聴なんて朝飯前なのだろう。私と歩美にしか知り得ない情報を、彼はあっさりとした口調で語り出した。
 私は何度も驚き、何度も目をまるくした。

「こんなやりとりも、そろそろ飽きてきたなあ。君の声も聞きたいし、ちょっとだけ自由にしてあげるよ。ただし──」

 彼は舌舐めずりをしながらベッドまでやって来て、どこから持ち出したのか、アウトドアにも使えそうな奇形のナイフを手に、私の胴体にまたがるなり、
「──変な気を起こしたときには、レイプだけじゃ済まないからな」
と脅迫してきた。念仏や読経のような低い声だった。
 心臓が高鳴る。萎縮するはずのない子宮のあたりが、しくしくと痛む。
 男はナイフの刃を私の頬に押し当て、そのまま上を向かせると、口を封じていた粘着テープを一気に引き剥がした。

「うぐっ」

痛いってばもう──。

「その唇、吸い付きたくなるよ。だけど粘着テープのせいで、少しだけ赤く腫れちゃったね。猿ぐつわにしておけば良かったかな」

「……」

「なに?」

「……して……さい」

「よく聞こえないな」

「……ゆるしてください」

 私はなんとかそれだけ言うと、ごくりと生唾を飲んだ。

「許すとか許さないとか、そういう話がしたいわけじゃない。これじゃあ僕が君に酷いことをしているみたいじゃないか。心外だね。レイプで気持ちいい思いをするのは加害者だけじゃない。被害者にだって、それなりの充足感をあたえてあげているつもりさ」

「レイプを正当化するなんて……」

「口答えする君もなかなか可愛いね。それにその鼻にかかる声、まじで勃起しそうだよ」

 最低な会話だ。こんな目に遭わされる覚えはない。

「どうしてあたしなの?」

「最初に言ったと思うけど、君のことは何でも知っている。仲間にも色々と調べてもらったからね。だけど、ほんとうの目的は別のところにある」

「……それって、……お金?」

 私の問いに答える気なんて彼にはないのだと思っていた。

「後で教えてやるから、とりあえず一回、やらせろ!」

 男の物凄い形相がすぐ目の前に迫っていた。
 殺される──と咄嗟に思った。

「殺さないで!何でもするから、それだけは!」

 私は少し大きな声を出していた。

「しい、ずう、かあ、にい、しい、ろ!」

 彼の言い回しに殺意を覚え、私はすぐに大人しくした。気に入らないことがあると、言葉遣いが変わるタイプらしい。
 彼はナイフを構えた。銀色の牙のような切っ先がこちらを向いている。
 私は痛みに備えて目を閉じ、全身を緊張させた。

誰か助けて──。

 次の瞬間、痛みとはまったく無関係な出来事が私の身に起こった。手足を拘束していた力が不意に緩むと、全身から緊張が抜けていった。
 彼は私の体に切りつけたのではなく、手足の粘着テープを解いてくれたのだ。

「薬の効果はもう消えているんじゃないか?そこに立ってみろ」
と男はベッド脇の床のほうを顎で示した。
 言う通りに指先を動かそうとしたら、縛られていたときの痺れがまだ少し残っているのか、なんとか関節が曲がる程度だった。
 それでもどうにかベッドの上を這って、カーペットを敷いた床に足を着き、いつの間にか両脚で立てるまでに回復していた。
 彼はナイフをちらつかせながら胡座(あぐら)をかいている。

「いいだろう。じゃあ次は服を脱いでもらおうか」

 私は頷く代わりに着衣のボタンに指をかけた。爪の先がボタンに当たって、かちかちと鳴っている。私の指は震えていた。

「こう見えても僕は気が短いんだ。早く脱げ」

 鋭利な刃が空を切る。
 傷を付けられたくない一心で、私はもつれる指を使って上から順番にボタンを外していった。
 前をはだけさせて、うつむき加減に服を脱ぎ落とす。
 部屋の中が暖かいせいか、体温の変調はほとんど感じられない。
 ブラジャーの代わりにカップ付きのインナーを着ていたので、恥ずかしい部分はまだ見られていないはずだった。

「下も脱げ」
と彼の視線は私の下半身を舐めている。
 私は一度だけもじもじしてみせたが、それは彼の機嫌を損ねる以外の意味を持たないだろうなと思い直し、履いているゆったりめのジャージパンツを下ろしていった。
 足首のあたりまで手で下げたところで、あとは行儀悪く足だけで脱いだ。私のショーツは見世物となった。

「なかなかいい眺めだ。僕に見られる気分はどうだ。興奮するだろう?」

 私は前髪をいじりつつ、目を隠す素振りをした。

「恥ずかしいわけがないよな。顔と体には自信があります、って君の顔にちゃんと書いてあるよ」

「……そんなこと」

 私は居ても立ってもいられなくなり、露出した肌のあちこちを手でさすったりして気を紛らわせた。

「布一枚きりじゃ落ち着かないか。それとも、ホルモンが騒ぐか?」

「そんな言い方、やめて」

「……口、……胸、……尻、……股、……ぜんぶ犯してやるからな」

 下品な言葉を私に浴びせた男は、
「いい物やるから、そこに四つん這いになれ」
と上から命令してきた。
 私がそれに従うと、彼もしゃがんで目線の高さを合わせてくる。息がかかるその距離に、私はキスをされると思った。

「煙草」
と彼は言った。

「……え?」

「僕がさっき吸っていた煙草だよ」

「……それが何?」

「ただの煙草だと思うか?」

 彼の意図がまったくわからない。

「どういう意味?」
と訊き返しながら、さっき嗅いだ煙にチョコレートのような甘い匂いが混じっていたことを私は思い出していた。

「キラービーだよ」
と男から告げられ、私はますます混乱した。

「脱法ハーブと言ったほうが馴染みがあるか」

「……それってまさか?」

 夕べの地下鉄の中吊り広告のことを私は頭に浮かべた。たしか、女子高生レイプ事件のことも書いてあったはずだ。それも彼の仕業なのだろうか。
 とりあえずそのことは口にしないでおこうと思った。

「君が賢い女性だということは知っているけど、さすがにハーブについての知識はないだろう。教えてやる」

 そう言うと男は人差し指を立てた。



つづく
12/12/12 23:21 (kxI5Ndn4)
10
投稿者: 綺愛蘭




「ハーブに使われる植物の断面を顕微鏡なんかで調べると、ちょうど蜂の巣状のハニカム構造になっているらしい。そこに『キラービー』と呼ばれる名前の由来がある」

 雑学を披露したことにより、彼の表情は少しだけ気取って見えた。

「ついでに言うと、似たようなハーブに『クイーンビー』というのもある。『キラービー』が男性向けの煙草型なのに対して、『クイーンビー』は女性用の錠剤型だ。それがこれさ」

 男は手のひらを出してきた。そこにサプリメントのような黄緑色の錠剤が二つ乗っている。どうやらこれを私に飲ませるつもりらしい。

「……こわい」

 見つめながら私は呟いた。

「安心しろ、人体には無害だ。ただちょっとだけ気分が良くなるだけさ。覚醒すると言ったほうがイメージしやすいかもしれないな」

「……ほんとうに毒じゃない?」

「僕は人の死に興味はない。君がいなくなったら、たくさんの人が悲しむだろう?僕だって悲しくなるよ。これでも女性には優しくしてきたつもりさ」

 こんな状況を自らつくっておいて、よく言えたものだ。
 脱法ハーブに手を出した人間が社会からどのような制裁を受けるのか、私には想像もできない。でもいまは彼に従うほかに道はなさそうだ。
 私がハーブの錠剤を受け取ると、男は冷蔵庫を物色しに行き、飲料水のペットボトルを持って戻ってきた。

「それを飲んだら、朝まで一緒に楽しもうぜ」

 私はもう一度だけ、どうしようか考えてみた。そこから導き出された答えは、やはり悪魔の囁きでしかなかった。
 ぐっと目を閉じ、錠剤を口にふくんだ。味はしない。そしてペットボトルの水をぐい飲みすると、後悔の念がじわじわと胸に立ち込めてきた。

私はもう終わりだ──。

「ちゃんと飲んだのだろうな?」

 彼の問いに私はこくんと顎を引いた。

「ほんとうかどうか確かめてやるから、口を開け」

 そこまでやらせるかと思いつつ、私は四つん這いのまま口を開いて舌を見せた。
 それはあっという間の出来事だった。
 男が私の下顎をぐいと掴み、
「お利口さんだ」
と微笑すると、彼のジーンズのファスナーを下ろす気配と同時に私の口内に何かが押し込まれた。

「……かはう……んんっ?」

 男のいきなりの行動に私は驚いた。
 すぐ目の前にベルトのバックルがあり、その下の開いた窓からは陰毛がはみ出している。彼の肉体の一部が私の口の中にあった。
 逃れようとする私の首を強引に元へ戻し、男はさらに腰を突き出してきた。

「ちゃんとくわえてないと、このナイフが血に染まるよ?」

 舐めるような口調で彼は言った。
 そうして半ば諦めかけた私を襲ってきたのは、胃液が逆流しそうな感覚だった。

「……はぐっ……おええうう……あぐんんん」

 少し涙目になりながらも、胃袋を刺激する不快感に私はなんとか堪えていた。

「噛むんじゃないぞ。わかってるな?」

 見下した言い方をされて、私は男の目を見返した。

「僕のことが憎たらしいだろう?愛情のかけらもない男のものをしゃぶれるなんて、貴重な経験じゃないか。そうだろう?」

 口元からよだれを垂らしながら私は渋い顔をした。この生臭い液体を一滴たりとも体内に入れるわけにはいかないからだ。
 ぶよぶよしていて、皮が厚くて、生温かい。そんな彼の汚物は私の口の中で大きく成長し、ついには手に負えないほどにまで勃起していった。
 もっと舌を使え、先を舐めろ、音をたてて吸うんだ、などと注文をつけてくるところは、わがままな不良少年のようにも見える。
 家庭環境や人間関係に不満があり、その捌け口として私を利用しているだけなのだろうか。
 それともただ恋愛が苦手なだけで、自分一人では処理しきれない性欲を満たすために、思い通りにできそうな女性を手当たりしだいに乱暴しているのか。

「僕のことを詮索するのは勝手だが、そんなことより、この状況から逃れる手段を考えたほうがいいんじゃないのか?まあ、できればの話だけどさ」

 行為の最中だろうがとにかくよく喋る男だ。そんな印象を抱きながら私は何度か咽(む)せた。
 硬くなった男性器の先端が喉の奥を突いているし、そろそろ顎が疲れてきた。しかし悪夢はまだ始まったばかりだ。

「これはフェラチオなんかじゃないぞ。イラマチオっていうんだ。後で君の子宮を嫌というほど突いてやるから、僕の存在を舌の上に記憶しておくんだな」

 おら、おら、と腰を振る男の揺れに合わせて、私の唇は淫らに濡れて音を鳴らす。頬の内側や上顎から歯の隙間にまで、わけのわからない体液が粘着して膜を張っていた。

「……ふぐう……んぐんぐん……ちゅむちゅむ……むふっ」

 呼吸もままならない私。

「いいぞ、その調子だ。可愛い顔して、案外いい仕事するじゃないか」

 男の語尾が熱くなってきた。そして私の髪を撫で、頭を抱擁し、奇妙な腰使いをしながら吐息を漏らしはじめた。

「……たっぷり出してやるからな。……はあはあ……よく味わって、……舌で転がして、……ぜんぶ飲み込め。……うっ……一滴残らずだ」

 男はここに出すつもりだと私は理解した。視界の外では凶器が鋭い光を放っている。
 どうすることも出来ないまま、私は汚らわしい男性器を口でしごきつづけた。魚肉を練り固めたような舌触りに、私の我慢も限界を超えていた。

どうして男はいつも……。
どうして女はいつも……。
もう嫌だ──。

「……おおっ、……おおお出すぞ、出すぞおお、うらあ、うらあ、うっ……」

 吠えて、呻いて、彼はとうとう下半身の動きを弱め、また大きく一振りすると、そのまま目を閉じた。
 私の口の中で射精を果たした瞬間だった。
 唾液が重たくなった感覚がある。吐き出す素振りを見せれば、彼は私を許さないだろう。

「こうしておいてやる」
と男はゆっくり腰を引き、ようやく私の口を解放してくれた。
 目と鼻の先で、浅黒い肉棒は上を向いたままぬらぬらと光り、その先端部と私の唇とを繋いでいるのは、精液滴る白い糸だった。
 彼は顎をしゃくり、「飲め」というサインで私を促す。
 嘔吐する覚悟で私はそれを喉に通していった。どろっとした液体は喉にしつこく、生臭く、体に悪そうな味がした。そうして胃に溜まっていくのだろう。
 二度、三度と歯を食いしばり、私はそれを飲み干した。

「……けほけほっ、……うっうん、……んんっ」

 このまま寝込んでしまえたほうが楽なのかもしれないけれど、その権利も奪われている上に、彼の性欲はまだまだ衰えてはいないようだった。

「君みたいな大人しい美人が、僕の精液を飲んだ。こんなに興奮することはないよ」
と男。
 そうして汚れたままのそれをジーンズにしまった。

「それじゃあ次はどうしてやろうか」

「あの……」

「なんだ?」

「ええと……その……」

「入れて欲しいのか?」

 言うか言うまいか私は迷っていた。切り出すきっかけもなかったし、それをストレートに告白したとしても、彼はかならず何らかの条件を提示してくるだろう。
 いろいろ考えた挙げ句、
「ちょっと……お手洗い……」
と私は小さな声で言ってみた。そして相手の反応を窺う。

「それは僕の気配りが足りなかった。すまない」

 明らかに紳士を演じている風に男は詫びてきた。きっと腹の中は『黒』に違いない。
 そんな彼を横目に私がトイレに向かうと、予想通りの行動を彼はとった。

「一人じゃ心細いだろう」
と私の背後で男がにやける。
 何も言い返せない空気が漂っていた。
 私はトイレの扉を開け放ち、便器のそばに立った。



つづく
12/12/15 00:46 (LEHYxNRl)
11
投稿者: 綺愛蘭




 男は正面にいる。ずっと手放さないでいるナイフが、男の体の一部のように見えた。
 はあ、と諦めの溜め息をつき、私はショーツを下ろしていった。下腹部に気温を感じる。

「盗撮したとおり、陰毛はハート型に揃えてあるようだね。リアルで見ると余計に萌えるよ」

 息を荒く吐き出す男の視線を浴びたまま、私は膝の上で握り拳をつくり、いきおい良く放尿した。恥ずかしい音が便器に注がれていく。

「出てる、出てる。溜まってたんだな、おしっこも、あっちも」

「あっち?」

「君の性欲だよ」

 うっかりオウム返しをしそうになった私は、その言葉をすぐに飲み込んだ。
 性欲──などと下劣な言い方はしたくない。

「終わったようだな」
と私の股間を上から覗き込んで彼は言った。そしてトイレットペーパーを引こうとする私の手を制して、
「拭く前にすることがあるだろう」
と自分の手を伸ばしてきた。その指が『ビデ』のスイッチを押す。
 私は数秒のあいだに心の準備をしなければならない。シャワーノズルに狙われた陰部が、ざわざわと粟立ってくるのがわかる。直後に冷たい刺激があった。

「……んっ!」

 声を噛み殺す私。

「鼻の穴が膨らんでいるよ。まさか、気持ちいいのか?」

 そう男に指摘され、私は俯いた。どんな気持ちでいるのか、悟られるわけにはいかないからだ。

「もっと強くしてやろう」

 彼にスイッチを操られるまま、陰部を洗浄する水圧はさらに強力になっていく。

「……あん!」

 私のこの声は、完全に彼に聞かれてしまった。腰が浮き、お尻は落ち着かない。

「これならどうだ」

 今度はノズルが前後に動き出した。下半身の震えが上半身につたわり、目の前に白い錯覚がちらつき始めた。

「ホルモンが騒ぐか?ミトコンドリアを感じるか?」

 男の言っている意味がまったく伝わってこない。それは多分、彼に飲まされたハーブの成分が、私の体に悪さをしているからだろう。
 だんだん変な気分になってきた。そうして興奮状態が高まった私は──。

「もういいだろう」
と言って、男はシャワーを切った。
 私はへなへなと脱力し、すっかり火照った頬を撫でながら、長い吐息をつく。陰部が切なく疼いている。
 今度こそ自分で拭こうとトイレットペーパーに目をやると、彼はまたしてもナイフを持っていないほうの手を伸ばし、
「僕がやる」
と言った。

「やめて」

「やめないよ。僕の好意を踏みにじるつもりか?」

「……だって、……そこはあたしの」

「本音が溢れ出している、そう言いたいんだろう?」

 私は奥歯を噛んだ。治療の跡が少し痛む。
 男はトイレットペーパーを多めに巻き取ると、それを私の両太もものあいだに差し込んだ。間もなく、紙の繊維の感触が肌にあたった。

「……いや、……ううん」

 汚れを吸って、水に溶け、それはすぐに役に立たなくなった。

「びしょびしょに濡れてるね。交換しよう」

 男は新しいトイレットペーパーを手に取り、ふたたび私の陰部に押し当てた。

「……やめ……て」

 彼の太い指が私の柔肌をやさしく揉んで、花びらをめくるように指先を擦り込み、閉じた女性器の入り口を好き放題にもてあそんだ。
 私の口と鼻からはもう吐息しか出なくなっている。

「いくら外見を綺麗にしているつもりでも、ここだけはぐずぐずに仮面が剥がれているもんだな」

「……いやなの、……やめてください」

 嫌がる私を無視して、彼はしばらくその行為を楽しんでいた。
 一秒経過するたびに、私の理性はその色を変えていく。一秒前の自分がネガティブカラーとするなら、一秒後の自分はポジティブカラーに変化しているということだ。
 それはつまり、レイプを受け入れつつある気持ちの表れなのだろうか。

「ないと思うが、一応確認しておこう」

 意味深なことを言う男。いったい何が「ない」と言うのか。
 トイレットペーパーの、私の裸に触れていた面を凝視したあと、
「これは何だ?」
と彼は私に答えを求めてきた。嫌な予感がした。
 さらに男はその部分の匂いを嗅ぎ、自らの舌を密着させ、
「あれだけ嫌がっておいて、この有り様だ。女っていうのは、ほんとうに掴み所のない動物だな」
などと、差別とも取れる言葉を口にした。
 膣が熱い。熱くてたまらない。

「この匂いと味と粘りなら、間違いないな。君もただの女ということだ」

 愛液──とは言わないのも、彼なりの計算なのかもしれない。

「そんな君のために特別ゲストを準備してある。こっちに来るんだ」

「あの……、まだ下着が……」

「空気を読め」

 私は下唇のかたちが歪むほど口を閉じ、両足からショーツを抜いてからトイレを出た。上は肌着一枚、下は何も着けていない格好だ。
 男は大きなスポーツバッグを持参していた。有名メーカーのロゴがプリントされていて、かなり愛用しているらしく、所々に汚れや傷が目立つ。

「気に入ってもらえると嬉しいんだがな」

 彼はスポーツバッグの中身を手に取っては床に並べ、おなじ作業を五、六回繰り返したところで手を休めた。
 私はそれらを一瞥し、
「これ……って、……まさか」
と手で口を覆った。

「どれもこれも可愛いデザインばかりだろう?こういう道具を考えたのが女性の脳だというんだから、世の中どうなってんだか」

 言いながら男はその中の一つを手にした。卵が二つ付いたピンクローターだ。
 スイッチを入れると同時に、二つの振り子は微振動の唸りを上げる。

「そこに尻を着いて脚を開け」

 男が唾を飛ばす。
 指示通りに床に座ったところで私は静止した。命も惜しいけれど、それとおなじくらい女を捨てるのも惜しい。

「反抗的だな。それとも迷っているのか?」

「もう許して」

「僕は何人もの女性をレイプしているんだ。そして彼女たちが最後に何て言ったと思う?」

 私は聞き耳を立てた。

「こんなの初めてだと嬉し泣きしていたよ、涎を垂らしてね」

「そんなの有り得ない」

「残念ながら有り得るんだよ。それが人体の摂理だからね」

 私は首を横に振った。とても信用する気にはなれない。

「それじゃあ話の角度を変えよう。手持ちのカードならいくらでもある」

 彼の目つきが粘度を増す。
 私は半裸のまま身構えた。

「アリスがどうなってもいいんだな?」

 その台詞を聞いた瞬間、私は耳を撃ち抜かれた気がした。

「噂の歌姫、有栖川美玲。それともこう言ったほうがいいかな。君の双子の妹、鮎川玲奈(あゆかわれな)がどうなってもいいのか?」

「玲奈に何をしたの?」

「まだ何もやっちゃいないよ。これからの君の態度しだいで、彼女が芸能活動をつづけられるかどうかが決まる。わかるね?」

「そんなの酷い」

 彼の言う通り、このところ人気を加熱させつつある有栖川美玲のほんとうの顔は、一卵性の双子である私の妹、鮎川玲奈なのだ。
 街中で誰かに声をかけられることもしばしばあるが、それはやはり有栖川美玲と間違えているからであって、私という人間に興味があるわけじゃない。
 いま目の前にいるレイプ犯の目的がどこにあるのか、ようやくわかってきたような気がした。

「ついでだから僕も名乗っておくよ。僕の名前は」
と彼は息を吸って、
「朝丘拓実(あさおかたくみ)だ」
と身分を明かした。
 私は頭の中でその名前を復唱してみた。そして、
「そんな名前の人、あたしは知らない」
と言ってやった。
 これまでの流れからいくと、彼がこの時点で自分の名前を明かしたのにも、何か理由があるに違いない。

「がっかりさせないでくれよ。僕らはこれからお互いの性器を交えるんだから、もっと情熱的にいこうじゃないか」

「知らないものは知らない」

「まあいい。胃で溶けたハーブが血管を通って、そろそろ君の子宮内膜に生理反応を起こさせるだろうからね。と言っても月経とは別だ」

 ピンクローターが私に向かってくる。

「産むために精子を欲しがり、受精するために肉棒を欲しがる。君もきっとそうなるだろう」

「変なこと言わないで」

「さっきも言ったけど、君はいま、とても大切なものを天秤にかけている。自分自身か、双子の妹か、どちらを犠牲にするんだ?」

「玲奈には手を出さないで」

 この言葉に彼は納得したようだ。そしてナイフをテーブルに置くと、ジーンズとボクサーブリーフを脱ぎ捨て、私に迫ってきた。



つづく
12/12/16 12:47 (busfHltW)
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