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デリシャス・フィア
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:強姦輪姦 官能小説   
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1:デリシャス・フィア
投稿者: いちむら沙織
まえがき



大学に行けなかった作者が、女子大生への憧れだけで書いた、勝手な想像だけの内容です。
性描写も少なめで、つまらなかったらすいません。
前作の「警鐘」「ひとしずくの排卵」みたいな展開です。
2012/01/13 00:20:58(7ttMdAeM)
2
投稿者: いちむら沙織
1



_ショッピングモールのエントランスはたくさんの人を吸い込み、吐き出してはまた吸い込み、人の流れは血管をとおる血液のように循環して、目的を持った者とそうでない者とがせわしく交錯している。
_ここに来ればたいがいの用が済んでしまうことを考えれば、それだけで小さな街だとも言えるだろう。
_外は生憎(あいにく)の雨だ。
_屋内だというのに外よりも明るく照りつける照明に、つい天気を忘れてしまいがちになる。
_それでも、個性的なショップの「顔」でもあるディスプレイに目を向けてみれば、季節ごとに違った表情を見せるファッションや雑貨やスイーツに至るまでが四季を感じさせてくれている。
_たとえば海の向こうの文化と日本文化が同居している場面を目にしたとしても、やはりそこは日本人の海外への憧れなのか、ふしぎと違和感は感じない。

今年もハロウィンの時季が来たのね。

_そう思いながら立ち止まるが、またすぐにヒールの先を別の方へと向けなおして、昼だか夜だかわからないモールの中を人混みにまぎれて歩き出す。
_ふと携帯電話の背面の小窓に視線をおとす。
_22時を少し過ぎていた。

終電には間に合うか。

_彼女はレストルーム手前の「青い人」と「赤い人」を見比べたあと、とうぜん「赤い人」の方の部屋へと入る。
_監視社会となってしまった現代といえども、さすがに女性のそれを監視カメラで追うわけにはいかない。
_だからこそこの部屋にはなにか特別な匂いがするらしい。
_といっても鼻で嗅ぐ匂いとはまたニュアンスがちがうのだ。
_ある時は、試着室のカーテンの向こうから漏れてくる、着衣が脱げるときに肌をすべる音。
_ある時は、甘い緊張の表情を浮かべて診察を待つ、女性ばかりの産婦人科の待ち合い。
_そんなふうになにげない日常の場面とその人が持つ嗜好の波長とが合ったとき、彼らにしか嗅ぎ分けられない特別な匂いがするのかも知れない。
_彼女たちの意図しないところで誰かが鼻を利かせているとすれば、それは多分そういうことだろう。
_こういうところのトイレはたいてい清潔に保たれていて、彼女が個室の扉を開けたときには、期待を裏切らない空間がそこにあった。
_便座に座ってホッと緊張を抜くと、下腹部を不快にさせていたものが一気に排水されていく。
_と同時に、その音をかき消すために何度か水を流した。
_たしかここに来たときには隣の扉も閉まっていたから、そこに人の気配があってもおかしくないのだけれど……、と物音ひとつたてない隣人に注意をはらいつつ、彼女はバッグの中身をさぐった。
_そしてマトリョーシカ人形を扱うみたいに、バッグの中からポーチを取り出しさらにその中からエチケットポーチを取り出しさらに──といった具合に、いちばん小さなマトリョーシカである生理用品の包みを膝の上でひらく。
_三つ折りの白い吸収シートを剥がして、その粘着面を神経質な手つきでショーツにあてがう。
_が、今日にかぎってこれがなかなか何度やってもうまくいかない。

もうっ、なんなのよ。

_性器を露出したまま口の中で「チッ」と舌打ちしていたときだった。
_彼女の足もとで動くものがあった。
_隣の部屋とを仕切る板の下の部分には、数センチの隙間があいている。
_そこに隣人の影が映っているのだと疑わなかった。
_しかし事態は彼女の思うところとは違っていた。

「きゃあああ!」

_女性の悲鳴というのは、それだけで性犯罪と結びつけさせてしまう要素がある。
_ほぼ密室状態のレストルームで彼女が見たもの。
_それは、仕切り板の下の隙間からこちらを狙う、携帯電話のカメラだった。



「また飲みすぎちゃった……、あいた、痛、痛……」

_起き抜けのパジャマ姿のまま、花織はすっぴんの眉間にシワを寄せた。
_テーブルに散らかった酎ハイの空き缶が、不快なアルコール臭を放っている。

「でこぴーん」

_空き缶のおでこを指ではじき飛ばし、そこに朝刊をひろげた。

「今日から新ドラ始まるんじゃん」

_いつも通りテレビ番組欄から目を通す。
_キャンパスライフを送る上で必要不可欠なことは、「活字を読むこと」と「空気を読むこと」と自分で勝手に決めていた。

「乙女座のあなた、朗報あり?」

_夕べの酔いが残ったままの目つきで星座占いの欄に睨みをきかせていたとき、絶妙なタイミングで携帯電話の着信音が鳴った。

「もしもし?」

まさか朗報?

「お姉さん……今日はどんな下着履いてるの……?おっぱい何カップ……?」

_電話の向こうからは下劣な言葉が返ってきた。

変質者め。

「まったくこんな朝早くから何なのよ、優子」

「おはよう花織。ほらきのうのコンパ、花織、途中で帰っちゃったからさぁ」

「だって音大生っていうから期待してたのに、なんか自分たちだけで盛り上がっちゃってて、女子ほったらかしなんだもん」

「花織が帰ってからもずっとあの調子だったんだから。あの温度差には私もまいったわ。で、どんな下着履いてるの?」

「うんとね、白のローライズ……って言わせる?」

_下ネタ好きの優子とは対照的に、清純を絵に描いたような花織。
_大学に入ったばかりの頃は二人ともなにかと浮かれていたが、三年生になってみるとさすがに「就活」の文字が遊び心にブレーキをかけ始める。
_とは言え「合コンは別腹」だと口をそろえては、コンスタントに異性の人脈をひろげていった。

「ランチ一緒しない?花織のおごりで」

「なんでそうなるのよ。それが金欠大学生に言うセリフ?」

「じゃあいつものカフェで合流ね」

「あん、ちょっと優子、ひとの話聞いてる?」

_すでに通話の切れた携帯電話をうらめしくテーブルに置くと、花織はふたたび朝刊に視線を向ける。
_そしてある記事に目をとめた。

「大型商業施設内の女子トイレで強姦か……。被害者の女性は保護されたが、通報した女性は行方不明……」

_不愉快なものを見る眼差しで最後まで読み終えると、「どうせすぐに捕まっちゃうんだから。リスクの計算ぐらいできないのかしら」と冷めたトーンで息を吐いた。
_いちどカーテンを開けて朝日を部屋に呼び込んだけれど、自分がまだパジャマ姿でいることに気づいてすぐに閉めきった。

「女子トイレで女の子を襲うなんて、どうかしてる」

_そんなことを呟きながらパジャマを脱いでみると、トイレでレイプされた彼女と自分とが重なって、色気のないショーツでも一段と卑猥に見えてくる。

ひとり暮らしの女子大生なのだから、もっとちゃんとしなきゃ。

_花織は、自分の乳房や太ももの肌色がだんだん女っぽく赤らんでくるのを、この時だけは不潔だと思った。
_体中から分泌されているものは目には見えていないけれど、それは確かに異性を惑わせる匂いを出していた。

私ってこんなに女臭かったっけ。

_髪の毛先で上唇をくすぐりつつ、もやもやとしたその香りのつづきを嗅いでいた。
12/01/13 00:33 (7ttMdAeM)
3
投稿者: いちむら沙織
2



_現場は4階建てショッピングモールの2階にあるトイレだった。
_2階部分はフロアのほとんどがレディス向けのショップになっていて、とうぜんトイレの利用客も男性よりも女性のほうが多い。
_しかし時刻が22時過ぎと夜遅かったため、当時は人影もまばらで、1階の食料品売り場に客が集中する時間帯でもあった。
_被害者の女性を最初に発見したのは、市内の大学に通う植原咲(うえはらさき)。
_彼女がその異変に気づいた時、それは自分を盗撮しようと隣の個室から仕切りをくぐって忍び寄る携帯電話のカメラだと思っていた。
_盗撮目的で誰かが女子トイレに侵入するといったニュースもめずらしくなくなっているから、彼女もそれを疑わなかった。
_彼女の悲鳴を聞いて駆けつけた女性スタッフに事情を告げ、すぐに警備員を呼んでもらった。
_あたりは騒然となる。
_警備員が到着する。
_女子トイレの入り口付近で二人の女性がひとかたまりになっている。
_女性スタッフと植原咲だ。
_二人をよそ目に警備員は個室の扉をノックして呼びかける。

……。

_返事はない。
_物音もしない。
_扉に鍵がかかっているのを確認すると、ぺっぺっと両手のひらに唾を飛ばして、クモ男顔負けの身軽さを見せた。
_彼がよじ登った扉の向こうの個室内に、そいつは居るはずだった。
_彼の目がそれを捉えた。
_たしかに誰かいる。
_だが、予想していたような変質者的な風貌とはちがって、一糸まとわぬ美しい女体の持ち主がそこにいたのだった。
_徳寺麻美(とくでらまみ)、20歳。
_植原咲とおなじく市内の大学に通う女子大生だ。
_彼女はほとんど意識のない状態で床面に座りこみ、着衣のない手足をだらりと投げ出していた。
_その左手に握られていた携帯電話が無意識のうちに仕切りをくぐって、それを目撃した咲が盗撮だと勘違いして悲鳴をあげたのだった。
_麻美の体には強姦の痕跡があった。
_つまり被害者は植原咲ではなく、徳寺麻美だったのだ。
_警備員の主導でバリケードをはり、彼は警察に通報するために現場を離れた。
_咲はなにげなく麻美の顔をもう一度見た。

どこか見覚えがある。
おそらく同じキャンパス内で見かけた顔だ。

_なぜだか麻美の携帯電話を手にとって、セーブモードで暗くなった液晶画面を見つめた。
_そして任意のボタンを押す。
_もしかしたら自分を盗撮した画像が残っているかもしれない、と期待していた咲の脳は、その瞬間に目の前の映像をフリーズさせてしまった。
_それは待ち受け画面でも盗撮画像でもなく、受信メールの確認画面だった。
_受信時刻と送信者の下のメッセージが、見る者の神経になにかを植えつけてくる。

『キョウフノサキニカイラクガアル。トリック・オア・トリート』



_これらのことは今朝、花織が読んだ朝刊の記事にも書かれていたのだが、ただひとつ、メールの件に関してはなにも触れられていないのだ。
_なぜなら植原咲が、徳寺麻美の携帯電話とともに行方不明になってしまったからだった。
_デリケートな内容の事件であるために、被害者や行方不明者の実名などはいっさい漏らされていないということだった。



「しばらく合コンはパスね」

_霧嶋優子(きりしまゆうこ)と待ち合わせたカフェで、バジルのきいたパスタをフォークに巻きつけながら岬花織(みさきかおり)は言った。

「パス何回目よ?」

「過ぎた事は忘れることにしているの。そういえばこのあいだ貸した千円、いつ返してくれるの?」

「それも過ぎた事でしょ?」

「死活問題よ」

_やれやれ、と優子は鼻で深呼吸して、カードで膨れた財布の中から千円札をつまみ出し、テーブルの上に置いた。
_花織の左手がそれに伸びたとき、「今朝の新聞て見た?」と今日いちばんの真顔で優子が切り出した。

「新ドラの話?」

「それってわざととぼけてる?ほら、例のアレよ、ショッピングモールで強姦事件があったっていう記事」

「それなら見たわ。あそこって私達もよく行く所だし、シャレになんないよね」

「確かにうちの学生もよく見かけるから、まさか……って事になってたりして」

「ちょっと優子、ほんとにシャレになってないし」

_そう言って花織は周りをうかがって、自分たちの話に聞き耳をたてている者がいないのを確認すると、「男性陣なら何か知っていたりして」と優子に耳打ちした。

小田くんと黒城くんか。
今回のレイプ事件をネタにマスターベーションしている人もいるだろうけど、彼らなら利害なしに何らかの解答をくれるはずだわ。

_優子がそう思うのと、花織がメールを打ち始めるのとはほとんど同時だった。



_小田から直接電話が来るときは、何かやらかそうと企んでいるときと決まっている。
_いつもならメールだけで用件を済ませてしまう、いちおう親友なのだ、と黒城和哉(くろきかずや)は小田佑介(おだゆうすけ)からの着信のコールを聞いた時点でピンときた。

「さっき花織からメールがきたよ。今朝の新聞に出ていた強姦事件に、うちの大学の誰かが絡んでいないか心配しているらしい」

「それは俺も思った。でも悪いな、これからバイトがあるんだ。小田のほうで調べておいてくれないか?」

「俺もそんなに暇じゃないんだが。まあ、研究レポートのほうも煮詰まっていたところだし、空気を入れ換えるかな」

「婚姻届を出すわけじゃないんだからさ、レポートなんて『やっつけ』だよ」

「だな?」

_女子は岬花織と霧嶋優子、男子は小田佑介と黒城和哉。
_だいたいこの四人で行動することが多く、男女の友情以上でも以下でもない関係がそこにあって、なんでもかんでもキラキラ輝いて見えた。

「くだらない事にこそ情熱を費やす価値がある」

_みんなでそんな事を言ったか、言わなかったか、なんにしろ居心地は悪くない。
_大学三年の秋、小田は自宅の一室でノートパソコンと向かい合っていた。
_いつだったか、誰かに「そんなものはナルシストの象徴だ」と嘲笑されたクラシック音楽を聴きながら、やりかけのレポートに見切りをつけて「仕事」に取りかかった。

「レポートだって、俺にとっては婚姻届みたいなものだ」

_独り言をつぶやきながらもその指先と、目線と、若き頭脳はネットワークに導かれて機械的に動作している。
_検索にヒットしたものはどれもこれも小田の興味を湧かせるものとはほど遠く、新聞記事以上の情報は得られない。

「──だろうな」

_小田はいちどコーヒーカップをあおって至福の息を吐くと、別のフォルダからサイトを呼び出して再検索した。
_通称「ディープ(深層)」と呼ばれる検索サイトで、その情報量は通常のそれとはまったく比にならないほど膨大だ。

「どれだけ隠そうとしても、出るところには出るものだな」

_小田の黒眼が収縮してなにかを捉えた。

「被害者女性、徳寺麻美さん(20)、市内S大学二年。ショッピングモール内の女子トイレで全裸の状態で発見、強姦された痕跡あり。目立った外傷はないが検査入院中。第一発見者女性、植原咲さん(19)、おなじくS大学二年。現在行方不明、被害者の携帯電話を所持しているものと思われる……か。なるほどね、花織が心配していたとおりの目が出たな」

_被害者らの実名が出たことで自分の役割を果たせたと小田は思ったが、知らされた名前が自分とおなじ大学の後輩のものだったから、さすがにやりきれない気持ちは隠せなかった。
_花織や優子に忠告する意味も込めて、この事実を彼女たちに告げなければいけないのだ。
12/01/14 23:41 (OBkdNWBO)
4
投稿者: いちむら沙織
3



_花織と優子はラクロス部の部員たちとスポーツジムで汗を流したあと、小田が指定してきた店で他愛のない話で盛り上がっていた。

「優子、それほんとう?私にはよくわからないけど」

「たとえば激しい運動とかしてるとね、知らないうちに処女膜が破けちゃうんだって。痛くも痒くもないらしいけど、それもなんだか女として味気ないよね」

「優子のその基準が理解できないよ」

「そう?」

_低アルコールのカクテルがまわってきたのか、花織の頬はほのかに火照ってほかほかした気分になった。
_陽の落ちた薄暗い窓の外には街の夜景がちらちらと灯って、ちょうどバースデーケーキの蝋燭(ろうそく)のようにビルや歩道を飾っていた。
_店の出入り口のドアベルが鳴って、一人の青年が入ってきた。
_彼はウエイトレスと軽く口をきくと、申し訳なさそうに太い眉毛を曲げて、花織と優子のそばに腰かけた。

「小田くん遅いよ、そっちから呼んでおいてこの扱いは何?」

_先に口をひらいた優子が顎を突き出して小田のほうを覗き込む。

「ごめん、いろいろと調べものがあったものだから遅れてしまって。二人とも、なに飲んでるの?」

「そんなことより、黒城くんはどうしてるの?」

_カクテルで湿らせた唇を微動させて花織が訊いた。

「ああ、あいつは今日バイトがあって来れないんだ。それよりさ、例の事件のことなんだけどさ──」

_小田はウエイトレスにジントニックを注文すると、収穫あり気な目を二人に向けた。

「やっぱりうちの大学の学生が絡んでいたよ。しかも二人ともだ」

「それって強姦された子と、行方不明になってる子だよね?」

_優子が小田の話をあおる。

「そういうことだ。被害者は二年の徳寺麻美で、彼女を発見したのが、こっちも二年の植原咲。で、現在行方不明になってるわけだけど、この二人の名前に心当たりはあるかい?」

_花織と優子は互いに顔を見合わせて首を横に振る。

「俺の記憶違いじゃなかったら、たしか植原咲って子は昨年のミスキャンパスだったような気がするんだよな」

_小田の言葉に花織がひらめいた。

「あの時の子ね。そうそう、私と優子もいいところまで行ったのに、数票の差でその子に抜かれちゃったんだよね」

「あの子の名前、植原咲だったんだ?名前はあんまり覚えてないけど、顔を見ればわかると思うわ。だけど、おっぱいは私のほうが大きいと思ったんだけどな」

「それは俺も認めるよ。だとしたら彼女は優子にはないものを持っていたってことだ」

「私にないものって?」

「女性としての品格さ」

「どうせ私は生まれた時からノー品格ですよ」

_そう言って陽気に笑う優子の魅力は、自分を飾らないところにある。
_すかさず花織がグラスを上げて、「ノー品格に乾杯」と笑うと、あとの二人もそれにつられてグラスを交わらせた。
_さっきまで流れていたジャズに代わって、ボサノバの女性ボーカルが店内に染みわたっていく。
_間接照明だけの明かりを頼りに小田の視線がふたたび彼女たちに向けられ、その口から更なるネタがバラされた。

「ミスキャンパスがどこにいるのかはわからないけど、いろいろ調べていくうちに被害者の徳寺麻美のブログのようなものが出てきたんだ。信憑性に関してはなんとも言えないけど、そこに今回の事件の秘密が隠されているような気がするんだ」

「ただのレイプ事件じゃないってことね、聞かせてもらうわ」

_興味津々に鼻を利かせる優子の隣で、花織は黙ったまま首をかしげる。

『私と彼の関係は異常でした。出会い系サイトで知り合ってすぐに体の関係をもって、最初のうちは普通のセックスだけで良かったけど、だんだん彼のほうがアブノーマルなものを要求するようになって、私はそこに自分の知らない世界があるんだと体の震えをおぼえました。それがはじまりでした。初めて耳にするサディスティックな言葉、初めて目にするグロテスクな器具、初めて感じる屈辱的な快感に私は私じゃなくなっていきました。私と彼の関係が終わる時、それはどちらかが死ぬ時とさえ思うようになりました』

『異常なセックスで飼い慣らされた私は、とうとう自分自身をコントロールできなくなるのです。彼に会えない日は自慰に明け暮れ、部屋の衣装ケースはアダルトグッズで埋め尽くされていきました。ローター、バイブレーター、ディルド、ローション、そして媚薬。その行為はしだいに一人を楽しむものではなく、誰かに見られたい願望を生むのでした。脱皮したクリトリス、貝割れしたラビア、目立ちたがりの乳房、人見知りの乳首。全部あなたに見て欲しいから、私は安全なテリトリーを抜け出して、快感を外に持ち出すことを決めました』

『それは普段と変わらない手順で、フェイスメイクとヘアメイクをして全身のスタイリングで終わります。いつもと違うことをひとつ付け加えるのならば、体にある「仕掛け」を施すということ。AV女優でもない素人の私がそんな「仕掛け」をするということは、それだけ性的に追い込まれていたんだと思います。玄関のドアを開けて最初の一歩を踏み出すまで、その瞬間にはまだ理性が効いていたはずでした。パンプスのつま先が宙を蹴って、かかとが着地したとき、眠っていたはずの体中のホルモンが目覚めてしまったのです。私の仕掛けを見抜いて欲しい、そんな思いで太陽を真上に望みながら人波をもとめて歩き出しました』

『いつもと同じ見慣れた景色はもうそこにはなく、欲望でふやけた視界が私に迫ってきました。駅前のモニュメントそばのベンチに私は少しのぼせ気味に腰をおろし、日常の風景に溶け込みました。駅前なのだから人通りは多い。さり気なく、でも計画的に私の手はバッグの中にもぐり込み、板ガムほどの小さな手触りを確かめて、そのスイッチを押す。低い唸り声が聞こえた。携帯電話をマナーモードにしているわけでもないのに、その唸り声は体の芯に心地良いビブラートをあたえながら、鼓膜にまでつたわってくる。私は一瞬息を止めて、それから息継ぎをするように口元をゆるめた。息継ぎをしないと溺れてしまうから。太ももの内側を擦り合わせて足踏みをしていたら、道行く人の視線が私にささるのがわかりました。私は今、オナニーを見られている』

「これってつまり、その、なんていうか、いわゆるアダルトグッズを着けたまま家の外に出たってことだよね?」

_プリントアウトされた粘着質な文字を見ながら、優子にしてはめずらしく言葉を選びつつ、小田に訊いた。

「だろうな。花織はどう思う?」

「そうね。これがほんとうに彼女のブログだとしたら、『彼』とのあいだにトラブルがあったとか、彼女の性癖が火種になって、起こるべくして起きた事件というか。私から頼んでおいてアレだけど、あんまり考えたくないわね」

_花織は明らかに嫌悪の表情をちらつかせている。
_そしてハンカチを手にとって席を外した。

「花織ってほんとうにこういう話題は苦手だよね。まさかまだ処女ってこともないだろうし」

「まあ、優子のようにはいかないだろうな」

「小田くんなら、私と花織、どっちとエッチしてみたい?」

「そうきたか」と小田は男らしい笑みを浮かべて、「卒業するまでには論文にまとめておくよ」と優子の鼻面をつまんだ。

「あとさ、徳寺麻美のことを探っていたら『魔女狩り』っていう関連キーワードも出てきたんだ。これは──」

「若い女の子をつかまえておいて『魔女』だなんて、まったく無神経な言い分ね」

_トイレから戻った花織が小田の横から割り込む。

「ハロウィンに引っかけたつもりじゃないか?」

「センスを疑うわ」

「俺はまだこのキーワードの先には手をつけていない。ここからは黒城にもアシストしてもらうつもりだ」

_三人それぞれ違う色のカクテルを嗜(たしな)んで、それぞれの思いを酔いにまかせてめぐらせていた。
12/01/16 23:48 (6C/dJ9e4)
5
投稿者: ぽこた ◆ygWHLvxtZ2
続きを楽しみにしています。サスペンス的な?謎解き的な?流れが大好きなので
12/01/18 13:06 (qQ3bqDwP)
6
投稿者: いちむら沙織
4



_夜が更けても街の明かりはうるさいほどギラギラして、昼間に溜め込んだ欲望をここぞとばかりに放出している。
_そんな景色もカーテンを閉めてしまえば静かなものだ。
_部屋干しの下着類から柔軟剤の香りが漂ってくるその部屋では、くびれのある人影がうごめいていた。
_水たまりをいじくるような音と、熱にうなされて乱れた息づかいがベッドの上で跳ねている。
_かるい脱水症状が喉を渇かしても、行為はおさまるどころかますます激しくうねっていく。
_彼女は思った。

私の体、蜜臭い。
私は輪姦されて、調教されて、もてあそばれてみたい。
女の性欲の醜さも知っているから、密かに濡らして慰めることしかできない。
レイプされたあの子が羨ましい。

「ああ……ああ……」と喘ぎ声を高めて崩れ落ちたかと思えば、バイブレーターに膣をねじられてふたたび体が浮き上がる。
_粘膜の深いところにまで媚薬が効いていて、彼女は現実と妄想の境を見失っていた。
_湯上がりの長い髪が背中を撫でまわすたびに、女物のシャンプーの香りが匂ってくる。
_そういう何気ないところにも官能のエッセンスを紛れさせておくのが、彼女の好きなオーガズムの味わい方だ。

イク……、イク……、イったばかりなのにまた……。
あの子にしたみたいに、はやく私を捕まえて、レイプしてください。



_小田は、今回のレイプ事件になにか特別な要素が隠れているような気がしてならなかった。
_そうやってまた検索サイト「ディープ」の世話になろうとしていた矢先に、徳寺麻美を強姦した男が逮捕された。
_25歳でフリーターのその男は犯行を否認しているのだが、徳寺麻美の体内や現場周辺に付着していた体液から男のDNAが出たのだ。

「どうした?女にフラれたような顔してるぜ?」

_学食で揚げ油の匂いを吸いながら息をつく小田の対面で、黒城和哉が肘をついて小田の顔を覗きこんでいる。

「女にフラれるほうがまだマシだ。なんかさ、犯人が別にいるような気がするんだけどさ」

「共犯?」

「集団暴行だとしたらトイレは狭すぎるし、どこか別の場所で襲ったあとにトイレに連れ込んだとか」

「なんでわざわざ人目につきやすいトイレなんかに連れ込むかね。そりゃ考えすぎだ、否認してるみたいだけど証拠は出てるんだし、あとはおまえの個人的な趣味で推理ゲームでもすればいいさ」

「悪趣味だと思うか?」

「わかりやすくていいよ」

_二人は鼻だけで笑って、ようやく目の前のご馳走に箸をつけようとした。

「また二人でなにか企んでるの?」

_小田と黒城のいるテーブルに二人の女子が絡んできた。
_それに黒城が返す。

「優子、学園祭の準備のほうはどうだ?」

「それどころじゃないわよ、ラクロスの試合までのスケジュールだって詰まってるし、平家先生の例の研究会のこともあるのよね。いろいろ縛られすぎちゃって、これじゃあSM行為だわ」

「そうは言っても、あの教授のゼミに惚れたとか、教授に惚れたなんて話はよく聞くし、まあ俺は性格曲がってるから興味ないけどさ」

_そんな会話が飛び交いつつ四人ともがテーブルを囲んで座ろうとした時、「しっ」と花織が唇のまえに人差し指を立てて、みんなに目を配った。
_昼食を終えてこちらに歩いて来る教授連中のなかに、平家洋(へいけひろし)の姿もあった。
_いかにも神経質そうな青白い顔色に、毛筆的な口髭と顎髭をチョンチョンと生やした無精面、それでいて二枚目ときているから女子学生からのウケもいい。
_黒縁メガネの奥の鋭い目つきが花織を捉えると、やや大袈裟に紳士を気取った姿勢でこちらに近づいてくる。

「おや?きみらはいつも一緒にいるようだが、今やっておくべきことを忘れていないだろうね?岬くん」

「はい、次回の研究発表までには良い報告ができるようにしておきます」

_花織は座ったまま上目遣いで言った。

「行き詰まったときには遠慮なく僕に聞いてかまわないからね。それから霧嶋くんのチームは、あの線で進めていけば、海外チームとのディスカッションにも参加させてあげられる」

_平家洋は後ろ手を組み直し、優子の目をキリッと見つめる。

「あれは平家先生の助言のおかげですから、私はほとんど補佐役みたいなものです」

_優子は長い髪を何度も耳にかき上げながら、友好的な笑みをつくった。
_男子二人は平家には目も合わせようとはせず、花織と優子の内心を読むようにそのやりとりを見物していた。
_花織の方は平家に対して何かしらの思いを抱いているし、優子には平家の存在が煙たいふうにしか見えない。
_異性を見る目にはどうやら二通りの色があるようだ。

「残りの日数をただ浪費するだけなのか、それとも有意義に過ごすのか、歴史に名を残した偉人たちの生き様を見つめなおしてみるのも一つの『道』だと言っておこう」

_それじゃあ、と平家は関節の太い手を振り上げて、爽やかな香水の匂いを置き土産にして去って行った。

「せっかくのランチに、イヤミな匂いを盛られちゃったわ」

_そう言って優子が口を尖らせているそばで、花織は紅潮した頬をもてあましている。

「そういえば確か──」と小田の眉がピクリとつり上がった。

「行方不明になっている植原咲も、レイプされた徳寺麻美も、二人とも平家先生の研究チームに籍が入っていたよな?」

「そうなの?」

「ああ、夕べ調べたから間違いない」

「私も優子も他の班のことはあまりわからないから気付かなかった。それじゃあ平家先生と今回の事件がどこかで繋がってるかも知れないって言いたいの?」

「あの色男教授なら関係していても不思議はないぜ。ひょっとしたら植原咲の行方を知っていたりするかもな」

「だとしたら今頃はどこかに監禁されていて、バイブとかローターで好きなように遊ばれているのかしら」

「ちょっと優子、ほかの子に聞こえたらどうするの」

「だって、ミスキャンパスに選ばれるくらいの可愛い女子大生がいなくなったんだから、誰だってそう思うわよね?黒城くん」

「俺かよ。まあ何だ、花織や優子は対象外だとして、彼女がそういうことになっている可能性はあるだろうな」

「どうして私たちが圏外なのよ。頼まれたってエッチしてあげないんだから」

_黒城と優子が唾を飛ばし合っている横で、小田は花織の目を見つめたまま「例の『魔女狩り』ってのもあの教授と繋がってたりしたら、今度は花織たちが危なくなってくる」と瞬きもせずに言う。

「小田くんが思ってるよりも事態は単純かもよ?優子もずっとこの調子だろうし、現代女子は潜在的に肉食系なんだから」

「頼もしいことだ」

_話が尽きない四人のあいだで、カフェテリア式のランチプレートからは空腹を刺激する匂いがのぼってきて、それぞれの胃袋事情に合わせたペースで食欲を満たしていった。



_花織たちが通うS大学の教授である平家洋は、一年から三年までの学生に少人数の研究チームを組ませ、チーム月(マンデー)からチーム金(フライデー)といった具合に、それぞれの曜日にのみ活動させるという特異な試みをしている。
_ひとつのチームに一年生と二年生と三年生とが混在しているので、共通のテーマに対して様々な視点からの意見を交換できるし、社会に出たときの糧として学生個人のキャリアアップもはかれるというのが平家の狙いだ。
_そして今回のレイプ事件の被害者である徳寺麻美の籍はチーム火(チューズデー)に、行方不明になっている植原咲はチーム水(ウェンズデー)、ちなみに霧嶋優子がチーム木(サーズデー)で、岬花織はチーム金(フライデー)にそれぞれ籍を置いている。
_こうして見てみると確かに平家洋の研究チームに所属している人物が二人ともレイプ事件に関係しているというのは、偶然のように見えて、しかし小田の反射神経はそれを見過ごそうとはしなかった。
12/01/18 14:27 (faBagntO)
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