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輪廻
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:近親相姦 官能小説   
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1:輪廻
投稿者: ThirdMan
日頃はたんなる疎林としか思われていない護国山も、山肌が桜色に染まり出すこの時期になると、にわかに脚光を浴びて、もの珍しそうに上を見上げながら歩く人々で街道もにぎわう。
舗装もされていない赤土の残った道路の両側には、かなりの年月を生きてきたと思われるソメイヨシノの巨木が道路を覆うように立ち並んでおり、春先の土日ともなれば出店なども現れるほどの盛況ぶりを見せる観光の名所へと変わる。
平日の今日は、出店もまばらに点在するだけで、さすがに人の出もそれほど激しくはなかったが、それでもダッシュボード越しに眺める景色から人の姿が消えることはなく、今も、すでに人生をリタイアして、あとの余生は気ままに暮らすだけといった老年のカップルが、京介の乗った車のほうに向かってゆっくりと近づいていた。
夫人のほうは終始にこやかに笑みを絶やさず、隣にいる夫と一緒に歩くことが嬉しくてならないといった顔をしながら、何度も教えるように可憐に咲き誇り始めた桜の枝を指差している。
二人はちょうど京介の車の前で止まり、しばらく上を見上げていた。
今年は例年になく長い冬が続き、遅咲きの桜はまだ五分咲き程度であったが、京介の車の近くに立っているソメイヨシノだけは、日当たりのおかげか、それとも他になにか理由があるのか、立ち並ぶ桜並木の中でも、他の枝に比べて花びらの数が格段に多かった。
ここ一時間ほど、ずっとここに車を停めたままにしているが、京介の車の前で立ち止まったのは、なにもこの老夫婦ばかりではなく、その間も何組ものカップルや家族連れが同じように足を止めては上を見上げていった。
中には、目立つ車両を乗り入れて趣のある風景を壊すなと言いたげに、運転席に座る京介をじろじろと眺める者もいたが、元々は山間部を抜ける道路として利用される場所であるから、車両の通行なども一切規制はされておらず、どこに車を停めたところで他人から文句を言われる筋合いはない。街道とは言っても舗装もされていない山道は、当然駐車禁止の道路標識などもなく、広い路肩を利用して京介と同じように桜の下に停めている車は他にもあった。
ただし、前を見ても後ろを振り返っても、京介のような派手な車両は見あたらない。

「すごいですねえ・・・」

「どうしてここだけ、違うんだろうね」

老夫婦の二人は、車の前に佇んで空を眺めるように上を見上げながら、それまで何人もの人たちが同じように感じていた疑問を口にした。
二人はゆっくりと助手席側に移動してまた立ち止まると、目を細めながら上を眺めていく。
ふと、そのとき何かの物音に気付いたらしい夫人のほうが振り返って、京介のほうに目を向けた。
怪訝そうな顔でしばらく目を凝らしていた彼女は、あっ、という表情を浮かべると、すぐに居心地が悪くなったように夫の袖を引いた。

「行きましょう・・・。」

それだけを言って、夫人は夫の腕を引きながら逃げるように京介の車から離れていく。
突然腕を引かれて、夫のほうは困惑した表情を浮かべ、何事かと夫人に尋ねていたようだが、夫人は後ろを振り返りもせずに急ぎ足で立ち去ってしまった。もしかしたら夫のほうは耳が悪いのかもしれない。
慌てて去っていく二人の様子をバックミラーで確かめながら、さっきまでまさしくこの世の春を満喫していた夫人の顔が、ものの見事に引きつっていたのを思い出して、京介は薄く笑いを浮かべた。

「行っちゃったよ・・・」

頭を撫でながら囁いてみたが、八重は綺麗に整った眉毛を山なりに寄せているだけで、応える元気もないらしい。
赤い唇を開きながら、辛そうな表情を見せるだけだった。
耳を澄まさずともはっきりとわかるほどに、車体の中には春のパノラマには似つかわしくない、いささか不快で不釣り合い音がうるさいほどに鳴り響いていて、耳障りな機械音を消すために、京介は手のひらに握る小さな箱のスイッチを切った。
車内に響き渡っていた激しいバイブレーション音が消えると、八重の身体からふっ、と力が抜けて、京介の股間を心地よく濡らす軟体動物にも少しずつ落ち着きが戻ってくる。
つい先日購入したばかりのバイブは、威力は強烈だが、うるさいほどにモーター音を響かせるのが難点といえば難点である。しかし、それも使い方次第では面白い。
趣味でリフトアップしたサーフはそれなりに地上高があり、隣りに立ったくらいでは中の様子が簡単にわからないようになっている。
だから、あの夫人には八重の姿が見えるはずもないのだが、彼女はダッシュボードの上に置かれたビデオカメラの存在に気付いたのかもしれない。
観光地へやって来きたのだから、その記念を残したいと思うのは当然のことで、京介も多分に漏れず小型で最新のビデオカメラを持ってきていた。
しかし、それは美しい桜並木の景色を録るためではなく、運転席に座る京介たちを記録するためにレンズは車内へと向けられていた。
やや斜め下の方向を捉えるようにカメラの下に台座を置いていたので、角度によっては外からでもディスプレイに映る映像がはっきりと視認できたのかもしれない。
構図を確認するために開いた小さな窓には、膝までズボンを下ろして剥き出しになった京介の股間に顔を埋める八重の姿が映っていた。
長い髪をまとめ上げて細いうなじを見せる八重は、京介の股間で頬を膨らませながら何度も頭を上下させていたので、老婦人には彼女が何をしているのかすぐにわかったのだろう。
人の近づく足音に怯え、話し声に怯え、じっと息を潜めて存在を消し去りたくとも、股間のバイブがそれを許さない。
京介は、振動が止まってからも上下することをやめようとしない頭を撫でつづけた。

「また来たよ・・・。」

向ける視線の先から、今度は肩を組んだ若いカップルが近づいてきて、やはり二人は同じように京介の車の上を指差している。きっとこの二人も車の傍で立ち止まってくれるに違いない。

「ちゃんと、我慢するんだよ。」

股間の疼きを愛しむように頭を撫でながら言って聞かせると、八重は身構えるようにぎゅっと目を閉じて、身体を強張らせていく。
若々しい顔立ちをしているが、それなりに熟成された女である。
子を一人産んで立派に育てた。
分別も良識もある熟母だが、今の彼女は品の良いスカートを腰まで捲り上げて、白桃を二つ並べたような大きな尻をあからさまにさらけ出している。
その尻が、かすかに震えているのがわかる。

「行くよ。」

真っ白な尻から生えたように突き出た黒いバイブは、見るからに凶々しい。そのバイブの底部から伸びた細いコードは京介の手のひらへと繋がっている。
すぐ横まで近づいてきたカップルは、やはり足を止めて上を見上げた。
京介は八重の頭を撫でながら、リモコンのスイッチを入れると、ボリュームを少しずつ上げていった。
胎内深くまで浸食したシリコン樹脂の悪魔が容赦なく暴れ始めると、八重は、ううっ!とひときわ大きな呻き声を上げて、その声を必死に殺そうとするかのように深くくわえ込んできた。
叫んだりはしない。
彼女は、ひたすら堪えることしか知らない。
中間までボリュームを上げると、はっきりと耳に聞こえるほどにモーター音が車内に響き出し、八重の表情から快楽が消える。
並のサイズなどよりはるかに大きな特大バイブは、バイブレーションの音を高めることで自分の威力を他者と八重の肉体に教えていく。きっと男などには想像もつかない殺人的な破壊力があるに違いない。
憐れな八重は、もう舌を使うこともできないと言わんばかりに、痛いほど握りしめていた。
苦しみに顔を歪めきり、息も絶え絶えになって窒息寸前の状態にある。
絶対に許してやらないことを教えるように、頭を撫でていた手のひらで、ぐい、後頭部を押していくと、健気に舌を伸ばして舐めようとする。
すっかり従順になっている態度に満足して、京介はさらにバイブのボリュームを上げていった。
何をしたところで、この人は逆らえない。

「いい子だね・・・。母さん・・・。」

愛しさを教えるように頭を撫でながら、京介の指は、限界までボリュームを上げていた。


2012/05/04 22:53:13(0qvip5ny)
7
投稿者: ThirdMan


京介が何事にもあまり動じることがないのは、最初から答えを持っているからだ。
答えが決まっているのだから、怖がることはない。
しかし、八重の中に宿った命が二つあるのは、さすがの京介にも誤算のようだった。
だが、やはり動じることのない彼は、きっぱりと言い切った。

「たくましく育てなきゃね。俺の子供なら、こんなことで駄目になったりしないさ。それに、駄目になったらなったで、その時はまた新しい赤ちゃんを作ればいいだけのことさ。」

人間として最低なことを冗談めかして言っているのが、八重には少しだけ恐ろしかった。
だが、それを怒るつもりにもなれなかった。
八重にしたところで同類である。
京介の子供が産みたいばかりに、彼のシナリオに乗ろうとしている。
自宅近くにある河川敷に来ていた。
ふたりは、1キロほど手前にある橋の袂で車を降りて、ここまで歩いてやって来た。
長い突堤は、頂部が遊歩道になっていて、昼間は散歩やジョギングをする人たちでそこそこ賑わったりするが、外灯のひとつもない河原は、夜になるとまったく様相を変えて、暗い河の流れしか聞こえない不気味な暗黒地帯へと変貌する。
夜中にこんな所へやってくるのは、よほどの変わり者か変質者くらいで、その変質者がここ数年、度々女の子に悪さをして問題になっているのを京介は覚えていた。
現に今も巡回のパトカーが赤色灯を回しながら、通り過ぎていったばかりである。
二人は葦の密生した藪の中に身を潜めていた。

「やっぱり、怖いよ・・・」

八重は、河川敷を吹き抜ける強めの風に長い髪を巻かれながら、今にも泣きそうな顔をしていた。

「あきらめなよ母さん。そんなに痛くしないからさ」

対して京介は、口元に笑みまで浮かべて、いかにも楽しそうである。
ここ数年の間に、この河川敷で犠牲になった女の子の数はすでに10人を超え、死亡者こそ出していないものの、その手ひどいやり口は、誰一人として被害届が出せないほどに悲惨なものであった。
強姦は親告罪であるから、被害者からの訴えがないと警察は捜査に乗り出せない。
しかし、だからといって放置してしまうほど日本の警察は甘くはない。
昼夜のパトロールを強化して、この地域は特別警戒区域にも指定されている。
それほどに、夜間のこの辺一帯は危険地帯なのである。
この事件を利用しようと思いたったのは、京介の父、京太郎がこの案件に個人として取り組んでいる警察官の一人だったからである。
京介は、酔った父によく話しを聞かされていたから、どのような事件が起きていたのか知っていた。
そして、八重と関係を持ってからは、いつか利用してやろうと企んでいた。
八重が強姦されて子供を身籠もってしまえば、それは犯人の種であり、京介に疑いは向けられない。
八重は強姦のショックで精神に異常を来し、その犯人の子を堕ろすことを拒んで産んでしまう。
それが、京介の考えたシナリオである。
犯人の手口は巧妙で、ここ数年捕まっていないことからも、相当な知能犯であると推測できた。
捕まることがないのだから、ならば、犯人の強姦者リストに八重の名前が加わったところでなんの問題もない。
もっとも、八重の強姦が公になることはないことも京介は知っていた。
父が、ひた隠しに隠そうとすることは明白だったからだ。
警察官は、近親者に対する事件に対しては、組織一体となって立ち向かう傾向が強い。
いつ、明日は我が身になるかわからないからだ。
だから自分の家族を守るために同僚たちの家族も懸命に守る。
しかし、それは強盗や傷害、殺人などの重犯に対してだけであり、性犯に対しては、少なからず及び腰になる。
特に強姦などは重犯であっても親告罪になることから、どのような状況で、どのようなことをされたのか同僚たちに赤裸々に話さなければならないことになり、それを嫌って泣き寝入りする場合が多い。
この河川敷で犠牲になった女の子には、父、京太郎の同僚の娘もいた。
彼女は繰り返し暴行された挙げ句、二度と妊娠できない身体にされ、未だに精神に異常を来して病院から出られないでいる。
にも関わらず、彼女の事件は起訴されていないし、捜査もされていない。
彼女自身のみならず、父親も告訴しなかったからだ。
気の毒には思ったが、同僚たちはみな心のどこかでホッとしたという。
裁判を維持するための資料は膨大であり、つぶさに事件の詳細を警察は把握しなければならない。
同僚の娘にそれを求めるのは酷であったし、進んでやりたがる仕事でもなかった。
おそらく、八重が強姦されても状況は同じになる。
京太郎は、八重を問い詰めないし、告訴もしない。
それどころか事件発生の事実さえ、公表はしない。
おかげで八重のお腹にいる京介の子供は、無事に産まれてくるというわけだ。

「そろそろ始めようか?」

これから八重を追い詰めて強姦ごっこをやる。
長年、警察官として犯罪者や被害者を数多く見てきた京太郎に、中途半端な演技は通用しない。
だから、本気で八重を強姦する。
京介は、そのつもりだった。
八重のお腹にいる子供が気掛かりではある。
だが、ここで駄目になるのなら、そういう運命なのだ。
八重が妊娠した事実は、次をも期待させる。

なるようになれ・・・。

それが京介という男の根底にある思考なのだった。

「じゃあ、行くよ・・」

京介は、八重を睨めつけた。
精悍な顔が、たちまち邪悪な相に変わる。
八重は足を震わせた。
京介は息子には違いない。
その息子の性奴隷にされた。
どんなに泣いても、京介はあきらめることだけはしなかった。
力ずくで八重に君臨し、そして、泣きじゃくる八重のすべてを征服していった。
口にしたことは、必ず実行する。
それで今までどれだけ泣かされてきたことか。
レイプすると言ったら、必ずレイプされるのだ。
そして、そこに手加減はない。

「逃げろ・・・」

暗い双眸が八重を見つめていた。
その瞳の中にある、あまりにも禍々しい淀んだ光に、八重の本能が訴えた。
いきなり振り向くと、八重は脱兎のごとく駈け出した。

殺される・・・。

あの男は京介ではない。
目の前にいたのは、この辺り一帯に出没する強姦魔だった。
八重には、そう思えてならない。
震える足で、必死に走りつづけた。

京介は、引きつった顔を何度も振り返らせながら、葦の藪を逃げていく八重を見送った。
ズボンのポケットに手を入れていた。
その手には、刃渡り10センチほどのバタフライナイフが握られている。
もちろん、違法品である。
公表されていないが、河川敷の強姦魔は獲物にした女の子たちに、ナイフで記念の印を残していた。
乳房の谷間に、血染めの十字模様を描くのである。
犯人しか知り得ない秘密。

母さんにも綺麗な十字架を作ってあげるよ・・・。

京介は、ポケットからナイフを取り出すと、その柄を開いていった。

「レッツ、プレイ・・・」

長身痩躯の肢体が、獲物を求めて躍るように闇の中に駆け出した。


12/05/08 23:31 (xDBTXwxA)
8
投稿者: ThirdMan


暗闇の中を泣きながら走りつづけた。
女の足だから、それほどの速さはない。
おまけに逃げるのを邪魔するように密生した葦が、前に進めようとする足に絡みつく。
何度も転びそうになり、萎えそうになる足を叱咤しながら、八重は走りつづけた。
次から次へと涙が溢れだして止まらなかった。
恐怖が、唇を震わせる。
さっきまで一緒にいたのは確かに京介だった。
でも、あれは京介じゃない。
凶々しい化け物だ。
八重には、なぜかそう思えてならなかった。
怖くて何度も振り返った。
何度目かに、はるか後ろに立っていたはずの京介の姿が消えていた。

くる・・・。

もう、後ろを振り返ることはできなかった。
振り返ったが最後、化け物に変わった京介がたちまち襲いかかってくるような気がしてならない。

「やだぁ・・・もう、やだぁ・・・・」

八重は走りながら、声を出して泣いた。
可愛らしい女性だった。
小顔の丸顔は、まったくと言っていいほど年齢を感じさせず、彼女の実年齢を聞いて驚く者は多い。
背丈はそこそこあったが、身体は細く、しなやかに伸びた足は綺麗にまっすぐと上へと伸びていた。
痩せてはいるが、胸やお尻はそれなりにボリュームもあり、前から見ても、後ろから見ても飽きない体をした八重だった。
キュートと言うより、コケティッシュといった印象が強いが、化粧をすれば、見事に化けて熟した女の顔にも変わる。
しかし、普段はどちらかと言えば子供っぽい表情をすることが多かった。
京介が大人になってからは、いつも子供扱いされてきた。
それを喜んでしまったのは、たくましく育った息子が傍にいてくれることが嬉しくてならなかったからだ。
嬉しすぎて、京介に許してしまった。
傍にいて欲しいあまりに、許しつづけて性奴隷にまで墜とされた。
今は、闇に染められた河川敷をその息子に泣きながら走らされている。

「怖いよ・・京ちゃん、怖いよぉ・・・」

泣きながら京介に訴えた。
誰に言うともなく、口をついていた。
最後に頼るべきは、やはり京介しかいなかった。
八重の根底には、ずっとそれだけがある。
耳に聞こえるのは、緩やかな河の流れと、かすめていく風を切る音、そして、咽び泣く自分の声だけだった。

「ひぃっ!!」

ガサリと、すぐ横で何かが動き、八重は悲鳴を上げて咄嗟に走る方向を変えた。
その瞬間、何かが自分の脇を走り抜けた。
不意に、その人影は立ちはだかるように目の前に現れた。

「きゃ!・・・うぅぅ・・・・」

悲鳴を上げるよりも早く、その人影に口を塞がれた。
もの凄い力だった。
あっという間に背中に回り込まれ、背後から羽交い締めにされて八重は身動きが取れなくなった。
必死に藻掻きながら、足をばたつかせようとしたところで身体が宙に浮いた。
両足が浮いたと思ったら、そのまま地面に叩きつけられた。
母親の本能がそうさせたのか、咄嗟にお腹をかばっていた。
両手でお腹を抱え込むようにしたから、八重は顔から地面に叩きつけられてしまった。
額に鋭い痛みを覚えて、意識が混濁した。
朦朧としているところを仰向けにされ、お腹をかばう両手の上に影が乗ってきた。
お腹に馬乗りになった影は、おもむろに髪を鷲掴みにしてきた。
月はなかったが、夜空は明るかった。
その明るい夜空を背景にした影の表情は、闇の中に溶けてまったくわからなかった。

「きょ、京・・ちゃん?・・・」

八重を見おろしながら、ぎらつく瞳を向けているのだけは確かだった。
しかし、その影が何者であるかは、まだ朦朧とした意識の中では判然としなかった。
影は、八重の問いかけに応えなかった。
引っこ抜こうかとするように、鷲掴みにした豊かな髪を乱暴に揺さぶった。

「い、痛い・・」

頭頂部の鈍い痛みに呻いたときだった。
不意に頬に激しい衝撃を受け、八重はまた意識が飛びそうになった。
憐憫の情など欠片もない、容赦のない力だった。
影の振り上げた手が、立て続けに八重の頬に向かって打ち下ろされた。

「あぎっ!・・・ひっ!・・・やっ!!・・・」

抗おうとしたが無駄だった。
影の腕は何をしたところで止まらず、自分の頬を打つ音を幾度も聞かされながら、それは八重から抵抗する気力がなくなるまでつづけられた。
ぐったりとなって声も出せなくなると、ようやく振り上げた手は止まった。
涙に視界が歪んで、影の姿さえもはっきりとはわからなかった。
ぼんやりとした意識は、自分がどこにいるのかさえもわからせない。
死んだように横たわっていると、おもむろにシャツを引き裂かれた。
これから陵辱が始まるのだった。
あっという間に八重のシャツはボロ切れになった。
ブラも引き千切られ、胸を露わにされた。
待ちきれないように影が掴んできた。
握り潰さんばかりにきつく乳房を掴んだまま、スカートの中に手を入れてきた。
ショーツも呆気なく引き裂かれて奪われた。
そのまま、ぐっ、と秘部に指を差し込まれ、八重は咄嗟に足を閉じようとした。

「い、いや・・・」

震える声で懸命にそれだけを言った。
影の動きが止まった。
また頬を打たれる。
瞬間的にそう思った。
影は打たなかった。
代わりに八重の目の前で、手にしていたものを開いていった。
ナイフだった。
影は、いつの間にか手にナイフを握っていた。
開いた刃先を見せつけた。
打たれて熱を持った頬にゆっくりと冷たい刃先を押しつけた。
歯がカチカチと震えた。

どうしてナイフなんか・・・。

理解できなかった。
影がゆっくりと身を乗り出してきて、顔を近づける。
まだ闇に溶けたままの影の顔は、はっきりとわからない。

「死にたくなければ、おとなしくしてろ・・・」

冷たい声で影が言った。
いたぶるように冷たい刃先を八重の頬に滑らせた。
八重は、はっ、となった。

声が違う・・・。

滑舌の悪い、くぐもった声だった。
背筋に冷たいものが走り抜けた。
正体はわからない。
しかし、八重に跨っているのは京介ではない。
ここには、八重と京介しかいないはずだった。
でも、目の前にいる男は京介じゃない。
恐怖にたちまち肌が泡だった。
身体中が震えて、叫び出しそうになっていた。
喉の奥から飛び出そうとするものを必死になって堪えた。
叫んだ瞬間に、あのナイフは八重の肌に突き立てられる。
その恐怖が八重を黙らせた。

「叫んだら、殺すぞ・・・」

八重は目をむきながら、何度も頷いた。
男はナイフを持たないほうの手で、八重の細い首を握ってきた。
五本の指が、両側から首を徐々に圧迫していく。
恐怖に声も出せなかった。
わずかに力を込めた手で細首を握ったまま、男は上半身を振り返らせると、今度はナイフでスカートを切り裂いていった。
縦に何度も裂かれて、スカートはのれんのような長いだけの布きれに変わり果てた。
河原を吹き抜ける風に、わずかに残っている性毛が頼りなげにそよいだ。
何も隠す物がなくなったそこに、男は面白がるようにナイフを押し当てた。

「や、やめ・・・」

震える声を出した途端、首を握った手に力が込められた。
どうすることもできなかった。
八重の性器にナイフを押し当てたまま、影は器用に片手でズボンのベルトを緩めると、「動いたら殺すぞ・・」と脅してから、立ち上がった。
八重を跨ぎながら急くようにズボンを脱いでいき、下半身だけ裸になってしまうと、足の間に身体を入れた。
両足が肩に担ぎ上げられた。
熱を孕んだ肉塊を自分で握りながら、八重の秘裂に擦りつけた。
そのまま先が潜り込んできて、それは止まることなく胎内の奥深くまで一気に入ってきた。

12/05/09 23:00 (Zx1Ickpt)
9
投稿者: ThirdMan
八重が帰ってこない。

京太郎は、壁に掛けられている古めかしい時計を眺めた。
これで、この時計を眺めたのは何度目になるのか。
11時を回っていた。

遅すぎる・・・。

もう一度、携帯電話を聞いてみた。
もしかしたら着信に気付かなかったのかもしれない。
期待したが、ディスブレイに現れた待ち受け画面はいつものままだ。
着信を告げる表示はない。
また壁の時計を眺めた。
ずいぶんと秒針の動くのがゆっくりに感じられる。
針の進む音だけが、やけに大きく耳に聞こえた。

どこへ行った・・・。

京太郎は、ほぞを噛む思いで待ちつづけた。


今朝、家を出るとき、八重に病院へ行けと言った。
夕べのことを思い出して出掛けに、行けよ、と京太郎が言ったのだった。
八重は、「わかりました」と応えた。
「いってらっしゃい」と、いつもの笑顔で送り出してくれた。
特に変わったところはなかった。
いつもと変わらぬ八重だった。
夕方になって帰ってみると、家に灯りが点いていなかった。
昼間、忘れ物をして、買い物にでも出掛けたのだろうと思った。
少しそそっかしいところがあって、よく忘れ物をする。
そんなところも、あいつの可愛らしさのひとつだった。
1時間が過ぎても、帰ってこなかった。
心配になって携帯電話から連絡をしてみたが、呼び出し音が鳴るばかりで応答がない。
5回ほど呼び出し音が鳴ると、留守番電話サービスに変わった。

「どこにいる?」

それだけのメッセージを入れて電話を切った。
いずれ気が付けば、向こうから電話が掛かってくる。
安易にそう思っていた。
しかし、いくら待てども八重からの連絡はなかった。
もう一度電話をしてみたが、やはり応答はない。
京介を思い出した。
あれは京介を猫っ可愛がりしている。
いくつになっても子離れができない。
ここのところ、何度も京介のアパートに足を運んでいた。
仕事に慣れたのはいいが、忙しくなりすぎてまともなメシを食っていない、などと里帰りしたときに京介がぼやいたものだから、心配した八重が土日になるとメシを作りに行くようになったのだ。
まったく困ったものだ。
いい加減自立させてやらなければ、京介だって結婚もできない。
あいつだって子供ではないのに・・・。
京介に何かあったのかもしれなかった。
心配性の八重のことだから、京介のこととなったら、些細なことでも脇目もふらずに一目散に飛んでいってしまうことだろう。
念のために京介にも電話を掛けてみた。
しかし、京介も呼び出し音が鳴るばかりで、携帯電話は繋がらなかった。
最近、部署が替わったばかりだと言っていた。
新しい所属先の番号はまだ聞いていなかった。
それにしても、二人とも電話が繋がらないとは・・・。
それから二度、八重と京介に電話を入れてみたが、やはり二人からの応答はなかった。
恥を忍んで、近くに住む八重の妹にも電話をしてみたが、やはり来ていないという。

「何かあったの?・・・」

義妹は、不安そうに訊ねていた。
これまで八重が騒ぎを起こしたことは一度もない。
嫌な胸騒ぎがした。
京介が電話に出ないことは、たまにあることだからそれほど心配ではない、
忙しいあいつは、携帯電話にも出られないほど、仕事に打ち込んでいることがよくある。
勤め人だし、職場には上司や同僚もいることだから、何かあれば、すぐにでもこちらに連絡が来るだろう。
だから、あいつは心配ない。
問題なのは八重だ。
今まで一度として、京太郎に無断で家を空けたことがなかった。
たとえ予定が狂うような手違いがあったとしても、必ず途中で京太郎に電話を掛けてきた。
その連絡が、ない・・・。

まさか・・・。

あってはならない不安が胸をよぎった。
ずっと頭の隅にこびりついている顔があった。
慌てて玄関の靴箱から安全長靴を取り出すと、足を突っ込んでいた。
靴紐を結びながら頭の中にあったのは、あの河川敷だった。
居ても立ってもいられなくなった京太郎が、捜索のために家を出たのが8時過ぎ。
それから2時間ほど河川敷を中心に八重の姿を探してみた。
結局、彼女は見つからなかった。
途中、警ら中のPC(パトカー)を捕まえて、それらしき人物を見かけなかったか訊ねてみたが、やはり彼らも、見ていない、と応えた。

「アタリ(人員捜索)を掛けますか?」

顔見知りの二人は、不安そうな面持ちで言ってくれたが、京太郎は断った。

「ちょっと二人で夜風に当たっていたら、はぐれてしまったんだ。大騒ぎするほどのことじゃない。心配させて悪かった。もう、家に戻っている頃かもしれないから、俺も戻ってみるよ。巡回お疲れさん」

それでも心配した二人は、「何かあったら、すぐ人を出しますから連絡して下さい」と言い添えてから、その場を去った。
二人の気の良さに感謝はするが、頼めるはずはなかった。
身内の失踪など恥以外の何物でもない。
それに、妙に勘ぐられて、同僚たちに痛くもない腹を探られても困る。
そんなのはごめんだった。
PCを見送ってから、本当に戻っているかもしれないと、京太郎は淡い期待を抱いて家に帰った。
やはり八重の姿はどこにもなかった。


12時を過ぎた・・・。
これ以上は待てない。
八重は、何かの事件に巻き込まれた可能性が高い。
体面など気にする余裕はもはやなかった。
これ以上待つことは八重の命に関わるかもしれない。
そう考えたら携帯を開いていた。
素直で優しい女だった。
いつも明るく、朗らかな笑顔を京太郎に向けてくれる。
あの笑顔を失いたくはなかった。
いざ覚悟を決めても、踏ん切りがなかなかつかなかった。
今年の夏には定年になる。
勇退だ。
だが、京太郎の最後は、定年に花を添えるどころか、このままでは泥をかぶって終わる。
公僕として奉職した三十数年は、物笑いの種で終止符を打つのだ。
手にした携帯を手のひらに弄びながら、時間が少しずつ過ぎた。

いよいよ、だめか・・・

仕方なかった。
諦めて、携帯電話から署に連絡を入れようとした、そのときだった。
カラカラと、引き戸の開く音がした。
玄関の引き戸だ。
京太郎は慌てて立ち上がると、居間を飛びだした。

「八重か?!どこに行っていた!!」

玄関に向かう廊下を小走りになりながら怒鳴っていた。
さっきまで心配していたのが、帰ってきたとわかるや、嘘のように怒りが込み上げてくる。
子供ではないのだから、連絡のひとつもいれればいいものを。
こっぴどく叱ってやろうと思った。
どうせならば、しばらくぶりに裸に剥いて、折檻でもしてやろうかとも考えた。
これまでも八重に男の気配を感じたことがないわけではなかった。
まれに八重は、京太郎以外の男の匂いを持ち帰ってくる。
男がいるのかもしれないと薄々は気付いていた。
それを問い質さなかったのは、京太郎にも責任の一端があるからだ。
身体の関係を持たなくなってから久しい。
だが、できないわけじゃない。
どうしても、八重では駄目なのだ。
あの可愛らしい顔を見てしまうと、なぜかできない。
しかし、今日ならば怒りにまかせて折檻するのも面白いと思った。
裸にして問い詰めてやる。

「どこに行ってたんだ!心配しただろう!」

玄関は廊下の突き当たりを曲がったところにあった。

「やっ!・・・」

角を曲がったところで、八重、と怒鳴りつけようとして京太郎は思わず息を呑んだ。

「八重?・・・」

目の前に幽霊が立っていた。
ぼんやりと虚ろな表情をしながら、八重が玄関に佇んでいた。

なんということを・・・。

あまりの悲惨な姿に目を背けたくなった。
顔の半分を額から流した血で赤く染め、もう半分を山姥のようにボサボサになった長い髪で隠しながら、ぼんやりと佇む八重は、まさしく幽霊が立っているとしかいいようがなかった。

「お、おまえ・・それは・・それはいったい・・・いったい、どうしたんだ?・・・」

震える声で、そうは聞いてみたものの、答えなど聞かずとも八重に何が起こったのかは一目でわかる。
通した袖のおかげでわずかに残っているだけで、ボロボロに引き裂かれたシャツは、ふくよかな乳房の膨らみをほとんど隠していなかったし、泥だらけになったスカートは切り裂かれて、白い内股が露わになっていた。
唇の端からも血は流れていて、ぼんやりと佇みながら何もない空間に目を漂わせているだけの八重は、痴呆のようにその唇を薄く開いているだけである。

「八重・・」

京太郎の視界が歪んだ。
八重の白い胸に赤い筋で十字模様が刻まれていた。
乳房と乳房の間、そこに縦に長く伸びた傷があり、やはり乳房の上を横切るように赤い筋が伸びている。

「八重ぇ・・・」

泣きながら手を差し伸べてみても、八重は応えるどころか、眉毛のひとつも動かしはしない。
壊れている・・・。

「八重ぇ!」

叫んだところで、八重は唇を薄く開いて無表情のまま立っているだけだ。
三和土を下りて抱きしめていた。

「八重!、八重!」

耳元で叫んでみようが、揺さぶってみようが、八重はまったく反応を示さない。

誰が、こんな真似を!・・。

血の涙を流しながら、京太郎は脳裏に顔のない男の姿を思い浮かべていた。
河川敷の強姦魔が現れた。
しばらくおとなしくしていたのに、あいつは我慢できなくなって八重を襲ったのだ。
きっとそうだ。
しかし、なぜ・・・・。

疑問はすぐに憤怒に変わった。

敵は取ってやる・・・。
お前をこんな目に遭わせた奴は、必ず俺が殺してやる・・・。

定年が近いといっても、現役の警察官である。
妻を陵辱されて、下を向いてしまうほどおとなしくはない。
壊れた人形となってしまった八重を抱きしめながら、その日京太郎は、必ず犯人を見つけ出して殺してやると、腕の中にある最愛の妻に誓ったのだった。

12/05/10 00:15 (57Ym0mW1)
10
投稿者: ThirdMan

2時間前・・・・


開いた足の間に、腰が入っている。
緩慢なリズムで動いていた。
深く入ってくると自然とお尻が浮く。
ぐいぐいと奥まで押し込んできて、それは、ちょうど一番深いところで止まる。
不思議と計ったようにそこから先は入ってこない。
奇妙な気持ちよさがあった。
膣は十分に濡れていた。
おかしなもので、八重の意志など無視して勝手に濡れてしまう。
確かに気持ちよさはある。
濡れてもいる。
でも、快感と呼べるほどの陶酔感はない。
恐怖心のほうが、はるかに強かった。
分厚い手のひらが顔半分を塞いでいた。
影は横にした手のひらに体重を掛けて八重の口を覆っている。
叫ばないようにしているというよりは、逃げられないようにしている。
たぶん、それが正しい。
チリチリと灼けるような胸の痛みがずっとつづいていた。
八重は奥歯を噛みしめた。
最初は首からお腹に向かっていた。
今は、右から左へ流れている。
影は一切しゃべらず、熱心な彫刻家のように八重の白い肌に記念の烙印を刻み込んでいた。
腰を動かしながらの作業に均一さはない。
わずかにナイフが深く入り、八重は痛みに身を捩らせた。

「動くな・・・。」

叱咤するくぐもった声が頭上から落ちる。
八重に命令するときだけ、影は口を開く。
他は何も話さない。
三流ドラマの悪役みたいな卑猥なことも言わない。
八重の胸を刻みながら、ひたすら犯すだけだ。
影は、一生懸命八重を犯していた。

気持ちいいの・・・?

ぼんやりと頭上の影を見上げていた。
顔は闇に溶けたままで、まったく表情はわからない。
目鼻のない黒い能面のようだった。
表情がわからなくて当然だ。
顔を隠すために頭からストッキングを被っている。
これでは、わかるはずがない。
口が大きく開けないのだから、声がくぐもるのも当たり前だった。
胸を横切っていく灼けつく痛みは、しばらくして終わった。
影は満足したように八重を見おろしながら、ナイフを畳むと、今度は犯すことに専念したようだった。
膝の裏を掴んで押し拡げ、ぐっと自分の腰に体重を掛けてきた。
動きに力強さが加わり、それまでの単調な往復運動から、円を描くような腰使いに変わる。
しばらく押し開いた部分を楽しむよう眺めていたが、それにも飽きると八重の頭の横に両手を付いてきた。
身を乗り出して八重を見おろす影は、あたかも声を出せと言っているようだった。

「ああ・・・う・・うん・・あはぁ・・・」

望み通りに声を出した。
大きなものが膣を塞いでいる。
腰の使い方に覚えがある。
影が本腰を入れていくと、胸の痛みよりも下半身の疼きのほうが強くなった。
影は八重の身体を知り尽くしている。
八重にも、もうわかっていた。
頭の痛みはつづいているし、耳鳴りはずっとやまずに、打たれた頬は熱を孕んで厚ぼったく腫れたままだ。
おまけに胸まで斬られて傷ものにもされた。

「あっ!・・いいっ・・・気持ちいい・・・」

こんなに酷いことをされても、まだ堪えようとする自分がいる。

「気持ちいいよ・・・・気持ちいいよ・・・」

喘ぎながら、眼前にある影の顔に腕を伸ばした。
影が被っているのは、おそらく八重のストッキングだ。
駅近くの駐車場に車を停めたとき、脱がされてそのままになっていた。
車の中に置き忘れたものと思い込んでいたが、京介がこっそりと隠し持っていたらしい。
八重のストッキングを頭から被り、別人になりすまして八重を襲っている。
それは八重を震え上がらせるための彼得意の演出だったのかもしれない。
でも・・・そうではないかもしれない。
殴打しているときの京介に憐憫の情はなかった。
母親の肌に恐ろしいナイフを突き立てもした。
震える八重の胸をあっさりと切り裂いた。
尋常な感覚の持ち主ではない。
おそらく京介には二つの顔がある。
ひとつは、どんなにひどく虐めても、必ず最後は八重を可愛がって大事してくれる京介の顔。
そして、もう一人の彼は、きっと八重が想像もできない冷酷な顔を持っている。
京介には、他人には理解しがたい激しい衝動が潜んでいるのかもしれない。
ナイフで斬りつけられながら、浅く斬ろうとしていることに気付いて、八重も気が付いた。
殺すつもりなら無造作に斬りつける。
柄に届くほどナイフを肌に突き立てれば、それで終わる。
刺そうとしたのだ・・・。
京介は無造作に斬りつけるつもりだった。
両手に握ったナイフを高く振り上げ、真下の八重に振り下ろそうとしていた。
状態を伸び上がらせながら、振り上げた腕の間から顔を覗かせた京介は笑っていた。
表情など見えなくとも断言できる。
きっと京介は何かに取り憑かれたように唇の端を吊り上げながら笑っていたのだ。
たまたま河川の水面に何かが跳ねて大きな水音がした。
それで正気に戻った京介は、踏みとどまった。
あれがなかったら、今頃八重はこの世にいなかったのかもしれない。
確かに京介は、八重を殺そうとしていた。
八重でなくても、いいのかもしれなかった。
八重は、伸ばして腕で影の顔に手を触れた。
愛しむように頬を撫でながら、弾力のある薄生地に爪を立てた。

「京ちゃん・・・京ちゃん・・・」

影の腰は、欲しがるように深く抉っていた。
腰から下が溶けそうになっている。
この子にあげたときに、地獄に堕ちてもいいと思った。
夫の鼾をすぐ傍に聞きながら、最後はこの子に責め殺されたいと願いさえした。
京介は、八重の願いに応えようとしただけだ。
この子は、何も悪くない。
悪いのは、私なのだ・・・。
ほんの少し爪先に力を入れただけで、弾力性のある薄生地はあっさりと裂け目を拡げていく。
指で掻きむしりながらさらに拡げていくと、裂け目の下から懐かしい顔が現れた。

「京ちゃん!・・」

ついさっきまで一緒にいたはずなのに、ずいぶんと会ってなかった気がする。
京介は、八重を見おろしながら笑っていた。
いつもの優しい笑みだった。
八重は夢中でしがみついて、我を忘れたように唇を重ねていた。

「気持ちいいだろう?母さん・・・」

唇を離すと、京介が耳元で囁いた。
首の下に彼の腕が入っている。
ヒリヒリと痛む胸の上に、温かい身体が乗せられている。

「気持ちいいよ!京ちゃん、気持ちいいよ!!」

精一杯の力でしがみつきながら、八重は声の限り叫んでいた。


「まったく、すごいね。」

京介はズボンを穿きながら眺めていた。
八重は力尽きたように横たわっていただけだった。
膣から精液が溢れている。
精液はアナルからも噴き出していた。
京介に3回犯された。
短い時間のあいだに、3度も八重の中に射精したのだ。
どういうわけか、この子は外でするのを好む。
外でするときは、異常に興奮もしている。

「ずいぶんと血が出てるね。」

ズボンを履き終えると、頭の上に屈み込みながら、確かめるように八重の額に掛かった髪を除けた。
額から血が出ているのは気付いていた。
しかし、その血もほとんど乾きかけている。
乾いた血のせいで頬の辺りに引きつるような感覚があった。

「リアルだよ、でも、そんなに切れてはいないかな?」

自分でしておきながら他人事のように言う。
八重にもわかっていた。
まだ痛みはあったが、すでに血は止まっている。
京介に浅い傷だと教えられて、あらためてホッとした。
やはり女だから、顔に傷は作りたくない。

「これに当たったんだね。」

辺りを見回していた京介が、傍にあった石を拾うと、それを八重に見せてくれた。
こぶし台の石は、表面にべっとりと血が付いていた。
妙だと思った。
こんなに出血した覚えはなかった。

「大丈夫?」

尋ねる京介に、かすかに頷いてみたが、身体にまったく力が入らず、しばらくは動けそうになかった。
口を開くことさえも辛い。
横になった身体が冷たかった。
水はけの悪い河川敷は、土質が泥濘化していた。
衣服はすぐに水を吸い取って、下半分が濡れていた。
暴れた八重と京介の足跡が、そこら辺に散らばっている。
強い風が吹いていたせいもあって、ほとんど半裸に近かった八重は、すぐに寒さに震えるようになった。

「ほら、帰ろう。」

京介は手にしていた石を放り投げると、八重の腕を取って抱え上げてくれた。
足下が定まらず、京介により掛かっていなくては立っていることもできなかった。

「いいよ、迫真の演技だ。」

いい気なものだ。
誰のおかげでこんな目に遭っていると思っているのか。
京介に抱えられながら、遊歩道に向かって数歩歩いてみたが、とても1キロ先の車の所までは歩けそうにない。
そんな無理をしたら、本当にお腹の子が流れてしまう。
まだ、無事でいるのが奇跡なくらいなのだ。
八重の辛そうな表情を見て、京介もあきらめたようだった。

「車を取り入ってくるからか、ここで待ってて。」

こんな真夜中の薄気味悪い河川敷に一人取り残されたくはなかったが、仕方なかった。
京介はその場に八重を座らせると、「すぐに戻ってくるから」と安心させるように笑顔を向けてから、軽快に河原を駈けていった。
八重は、うずくまるように膝を抱えて、葦の藪の中に身を潜めていた。
風が強く、葦のざわめく音がうるさいほどに聞こえる。
ここは強姦魔がよく出没すると噂になっているところだ。
数年来、騒がれているが、未だに犯人は逮捕されていない。
ここ久しく噂を聞いていないが、今ここでばったり出くわしたりしたら、八重は恰好の餌食になってしまうだろう。
そんなことを考えたら、背筋が寒くなった。
そう言えば・・・。
強姦魔のことを考えていたら、ふと妙なことに気が付いた。
いつも強姦事件が噂になっていたとき、京介は実家に帰っていたような気がする。
強姦など、自分とは縁がないものと思っていたから今まで気が付かなかった。
今夜、京介に強姦の真似事をされて当事者となり、事件のことを親身に考えたとき、どうしてか京介の顔が頭に浮かんだ。
豹変した京介は、憐憫の情など欠片もない力で八重を殴っていた。
この事件を調べている夫は、被害者女性の救われない窮状を嘆いていた。
子細は教えてくれなかったが、彼女たちも相当な暴力によって乱暴されたことだけは確かなようだった。

まさか・・・。

無理に考えを封じ込めようとした。
そんなわけはない。
あの子に、そんな酷いことができるわけがない。
しかし、額の痛みが八重にそれを強く否定させてくれない。
息子を疑っている自分に気が付いて八重はたじろいだ。

嘘よ、そんなこと・・・。

無理に否定しても、どうしても心にわだかまりが残る。
風が強い。
見上げる夜空には、雲が勢いよく流れていた。
聞いてみるべきか・・・。
そんなことを考えていたときだった。
八重の視界に、きらりと光るものが目に映った。
流れの速い雲のせいで、月が顔を出そうとしていた。
遮る物がなくなった月の光に、見る間に周りが明るくなっていく。
八重は目を凝らした。
わずか数メートル先にそれはあった。
細いチェーンのようなものが光っている。
ネックレスだった。

どうしてこんな所に・・・

八重は、這うように四つん這いになりながら近づいた。
そして見てしまったのだ。
葦の藪の中に無造作に転がされ、血塗れの顔を歪めさせながら見開いていた女の目を。

「きゃああああああっ!!!」

それからは、よく覚えていない。
どこをどう通って戻ったのかも、わからない。
気が付けば玄関に立っていた。
夫の京太郎が八重を抱きしめながら泣いていた・・・。

12/05/11 00:33 (FQLH5e8y)
11
投稿者: ThirdMan


ぼんやりと開いた視界の中に見慣れた家具を認めて、そこが仏間であることに気が付いた。
畳の上にはやわらかい布団が敷かれており、どうやら夕べ夫は、八重を寝室に運ぶのを諦めて、この仏間の中に来客用の布団を用意してくれたらしい。
切り裂かれた衣服はすっかり着替えさせられて、いつもの着慣れたパジャマに袖を通していた。
慣れ親しんだ匂いに安堵感を覚えもしたが、下着も替えられていることに気付いて少しだけ複雑な気持ちになった。
わずかな性毛が残っているだけの赤子のようにされた性器を、夫はどんな気持ちで眺めていたのだろう。
タオルで丁寧に拭ってくれたのか、京介に汚され抜いた股間やお尻の狭間にも、特に気にするような不快感はなく、顔に掛かっていた血も綺麗に拭き取られていた。
夕べ切った額には手厚く包帯までも巻かれており、胸にも大きなガーゼを何枚も当てた丁寧な処置がなされている。
相変わらず優しい夫に申し訳ない気持ちにもなったが、同時に彼がどんな態度に出てくるかと考えると気が重かった。
そろそろと周りを見回してみたが、その夫の姿はなく、家の中はしんと静まりかえっている。
どのくらい寝ていたのだろう、と壁の時計に目を向ければ、針は10時を少し過ぎたところだった。
この時間ならば仕事に出ているのかも知れないとも考えたが、こんな状態の八重を残して仕事に出掛けてしまうような夫ではなかった。
どこに行ったのだろうと不安な気持ちのまま、八重はしばらく布団から出ることができなかった。
ぼんやりと天井を見つめながら、そう言えば、京介はどうしたのだろう?と愛しい息子のことを思い出した。
車を取りに行くと言ったまま、それから彼の姿を見ていない。

あれから、京ちゃんはどうしたのかしら?・・・・。

頭の中に霞が掛かったように記憶がぼやけてよく思い出せない。

確か、河原を駆けていくのを見送って、それから・・・

必死に思い出そうとしているうちに、ぼやけていた記憶がはっきりとしてきて、不意にその光景は脳裏に蘇った。
途端に、ぞわぞわと冷たいもの背中を這い上がってきて、歯がカチカチとなる。
どうしようもないまでに身体が震え、ものすごい吐き気に八重は口元を押さえた。
はっきりと思い出していた。
血塗れの顔を苦悶に歪め、すべてを呪うかのように目を見開いて女は天を見上げていた。
生にしがみつこうとしたのか、はたまた、犯人を逃すまいとしたのか、枯れ枝のように曲がった指が必死に何かを掴もうとするかのように宙を掻いていた。
足はあらぬ方向に曲がり、大きく開けたロからは、だらりと舌まで出していた女が死んでいるのは明らかだった。
その女の剥いた目玉が記憶の中で、ぎろり、と八重を睨んだ。

「ひ・・・きゃあああああああっっっ!!!」

八重は声の限り叫んでいた。


沈鬱な面持ちで車から降り、玄関に向かって歩いていたところに、突然、家の中から八重の引き裂くような悲鳴が聞こえた。

「ど、どうした!?八重っ!?」

慌てて玄関を駆け上がり、仏間の障子を開いて中に入っていくと、そこに寝ていたはずの八重の姿がない。
布団がもぬけの殻になっていた。

「八重!八重!」

辺りを見回すと、点々と吐濡物のようなものが床に落ちていて、それが廊下へとつづいている。
不安な気持ちで跡を辿っていくと、それはトイレまでつづいていた。
取っ手を握って開けようとしたが、中から鍵が掛けられていて開かない。
中からすすり泣く声が聞こえた。

「八重!開けろ!ここを開けるんだ!」

「いや!来ないで!来ないでぇ!いやぁー!」

どうやら錯乱しているらしいとわかって、京太郎は舌打ちした。
無理もなかった。
河川敷の強姦魔に酷い目に遭わされたのだ。
どれほどのショックがあっただろう。
しかし、その犯人がまさかあいつだなんて・・・。

「八重!ここを開けろ!俺だ!京太郎だ!わかるか!?お前の夫の京太郎だ!」

中から鍵と一緒に取っ手を押さえているらしく、まったくドアは動かない。

「いやあっ!!来ないでっ!来ないでぇっ!!!」

苦々しい思いを振り切り、妻を取り戻すことに努めてみたが、八重は激しく泣きながら叫ぶばかりで、まったく応えようとしなかった。
何度出てこいと言ったところで話しを聞かず、大きな声で叫ぶばかりで埓があかない。

「いい加減にしろ八重!京介が警察に捕まったんだぞ!こんな事をしてる場合じゃないんだ!」

いい加減、業を煮やした京太郎は、伝えるべきか伏せるべきか悩んでいた事実をドア越しに言い放った。
連絡を受けたのは、今朝の7時を過ぎた頃だった。
朝早くから済まねえな、で始まった気の合う同僚からの電話は、実はお前さんの息子が、とさも言いづらそうな話に変わり、申し訳ねえが、こっちへ顔を出してくれ、と最後は半ば強制的な出頭要請で終わった。
八重を残していくことに不安はあったが、内容が内容なだけに無視するわけにも行かず、八重が深い眠りにあるのを確かめてから家を出た。
京太郎が署に辿り着いた頃は、まだ京介の身分は関係者であったが、日の出とともに始められた鑑識の現場保存の際に押収された凶器と思われる血塗れの石から京介の指紋が検出されると、すぐさま被疑者へと切り替えられた。
京太郎は関係者となり、前夜からの行動とここ最近の京介の行動について簡単な調書を取られた。
妻の具合が悪いのを理由に、一時帰宅したのがついさっきである。
強姦のショックを受けている八重に、さらに追い打ちを掛けるような事実を伝えることに躊躇いはあったが、状況が状況なだけにやむを得なかった。
しかし、八重に聞かせるタイミングを計りかねていただけに、ちょうどよい機会だったのかも知れない。
トイレの中から聞こえていた泣き声が止んだ。
しばらく待っていると、カチャリと鍵を外す音がして、向こうからドアが開いた。

「どうして?・・・どうして京ちゃんが警察に捕まったの?・・・」

八重には、やはり自分のことなどよりも京介のほうが大事らしい。
顔が青ざめていた。
化粧などしなくても十分に美しい女だが、放心したように顔を青ざめさせている今はそれが見る影もない。
目は赤く腫れていて、顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。

「お前も知っているな?この近所で起こっていた例の強姦事件だ。あの犯人として、夕べ京介が捕まった。現場に戻ってきたところを逮捕されたんだ・・・。」

「現・・場?」

咄嵯に、血塗れの女が転がっていた葦の薮を思い出した。
あの女の目が脳裏にこびりついて離れず、思い出しただけで喉の奥から叫び声が飛び出しそうになる。
必死に堪えた。

「嘘よ・・・京ちゃんは、そんなことはしないわ・・・そ、そんなの嘘よ・・・・。」

あの子に限って、そんな大それたことなどできるはずがない。
しかし・・・。

「俺も嘘だと思いたい。だが、証拠があるんだ。」

「証拠?」

「ああ・・・。」

「どんな、証拠なの?・・・」

そんなもの、あるはずがない。
夕べ京介は八重とずっと一緒だった。
八重の胸を切り裂き、好き放題弄んでいた。
他の女にかまっている時間などあるはずがなかった。
証拠などないことは、八重が一番よく知っている。

「石だ・・・。」

京太郎が重々しげにロを開いた

「石?・・・石って?」

「凶器に使われた石だ。その石から、京介の指紋が出た・・・。」

言い終えて、京太郎は辛そうに目を伏せた。

石ですって?・・・。
石・・・・・・・・。
いし・ ・ ・ ・・・。
あっ!

八重は思い出した。
京介が拾ったあの血塗れの石だ。
八重の額を割ったものだと京介は思い込んでいた。
あの石は、八重に見せてくれたあと確か・・・・放り投げたのだ!
あの子は無造作に放り投げてしまった。
だから指紋が・・・。

「あれは、ちが!・・・」

そこまで言いかけて、咄嵯にロをつぐんだ。
なんて言えばいい?
どうやって説明する?
京介と一緒だったのがわかってしまう。
何のためにあそこに二人でいたのか、夫に知られてしまう。

「何が違うんだ?」

怪訝な目を向けていた。

「い、いえ‥あ、あの子のはずがないという意味で、その違う、と・・」

「俺だってそう思いたいさ」

夫は疑わなかったようだった。

「だったら、早くあの子を!」

夫は、県警に勤める警察官だ。
この人なら、京介の無実を証明することなど容易い。
鑑識課員だった。
三十数年の警察官人生の実に三分の二以上の年月を、夫は鑑識課員として勤務してきた。
最後は課長というポストまで辿り着き、後進に道を譲るという形で今年の夏に定年する。
定年後は、とある大学の客員講師に雇われることがすでに決まっていた。
彼の鑑識課員としてのこれまでの実績を高く評価してくれた大学があり、是非にと破格の待遇を提示して彼を呼んでくれたのだ。
それほど京太郎の鑑識課員としての腕は確かだった。
京太郎には、八重の言いたいことがわかったらしかった。
彼は暗い目を八重に向けた。

「捜査からは、はずされたよ・・・お前にだって、わかるだろ?」

加害者が親族であった場合、情実を避けるために近親者は捜査からはずされる。
警察官の常識だ。
ましてや京太郎は鑑識課員だった。
証拠の特定をする者が容疑者の近親者では、ねつ造や隠蔽などをやられかねない。
捜査に参加できるはずがなかった。
だから、今朝も出頭要請があるまで、京太郎には連絡が来なかった。

「じゃあ、あの子は?・・・あの子はどうなるの?・・・」

八重が、震える声で聞いた。

「心配するな。このままみすみす手をこまねいたりはせんよ。あいつにそんなことができないことは一番俺がよく知っている。」

そうだ、京介のことならば誰より俺が一番よく知っている。
八重よりも、あいつのことなら俺のほうがわかる。

「取り敢えず手は打ってある。だがその前に、お前にも聞かなければならないことがある。」

京太郎は、震える八重の両肩に手を掛けると、真摯な眼差しで見つめた。

「夕べ、お前に何があった?それを全部俺に話せ。それがわからないことには何もはじまらん。辛いだろうが全部俺に話してくれ。それが、京介を助ける近道になるんだ。」

ぐっ、と痛いくらい肩を掴まれて、八重は京太郎を見上げた。
頷くしかなかった。
しかし、頷いたところで、本当のことなど言えるはずがない。
どんな答えを返すべきか、八重は夫の強い眼差しに晒されながら、これからつくべき嘘を必死になって考えていた。

12/05/11 21:37 (FQLH5e8y)
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