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1:香澄と俺
投稿者:
優也
(1)
六時間目の授業終了のチャイムが鳴った。生徒は、部活に行ったり帰り支度をしたりしている。俺も、掃除当番の連中の急かすような視線を受け、鞄に教科書などを詰め込む。 「優也」 教室を出ると、珍しい人物が俺を呼び止めた。菊池香澄だ。制服のセーラー服が重くないか……と思えるくらい、華奢な身体をしている。ただ……。テストの成績は、常に学年でトップクラス。将来は、頭脳を使う仕事に就くだろう。 俺と香澄は、高校に入って三年間同じクラスだが、全然接点が無い。俺はキャラクターが薄く、これと言った友達も居ない。香澄も、休み時間は難しい本ばかり読んでいる浮いた存在だ。今まで、会話らしい会話はしたことが無い。 それには、もうひとつ理由がある。香澄は、インド留学から帰ってきたばかり。まあ。霊感がある……とか言っているから、そっち系の仕事に就くのかな……と周りは言っている。 「何だよ?」 「ちょっと来て」 キョトンとした俺を促して、さっさと歩く香澄。この手の女は、怒らせるとあとが怖い。俺は、仕方なくあとに続く。やって来たのは、生徒指導室。 「いいのか? 勝手に入って」 「大丈夫。すぐ終わるから」 勝手に札を使用中にして、俺を引っ張り込んだ香澄。俺に、右手を差し出す。 「はい。握手」 「えっ! 何で?」 またもキョトンとした俺を、香澄が促す。 「いいから。それだけで、ことは足りるから」 訳が分からないまま、鞄を左手に持ち替え、右手で握手に応じる。途端! 目眩に襲われた俺。目を閉じて何とか踏ん張り、落ち着いてから目を開けた。 「えっ!」 俺は、ビックリした。俺と対峙しているのは、制服のブレザー姿で鞄を左手に持っている俺なのだ。状況を確認する。俺は、香澄のセーラー服を……じゃなくて、俺と香澄の身体が入れ替わったのだ。 何だ? キョトンとしている俺に、俺の身体に入っている香澄はニコッと笑う。 「成功! やったぁ!」 「やった……じゃないだろう! 何なんだ! これは」 俺の声で喜ぶ俺の身体に入っている香澄と、香澄の声で罵る香澄の身体に入っている俺。 「じゃあね。バイバイ」 狼狽える俺に構わず、俺の身体に入っている香澄は指導室を出て行った。
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2014/12/11 15:46:26(WhtIdhc3)
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