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Purple Panic
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1:Purple Panic
「…何コレ?」
 
 その日は妙な息苦しさに目覚めた朝…。軽い目眩のする気怠い身体を無理矢理にベッドから引きずり起こして着替える事にした。
 時刻は朝7時10分前、まだ学校に充分に間に合う時間だ。

プチ…プチ…プニュ…
「ぅう…肩が重い…」
 まだ半分閉じたままの瞼を擦りながらパジャマのボタンを一ツずつ外していく。
(アレ?こんなに袖余ってたっけ…)
 そういえば途中で変な擬音が入ったような…?

プニュ…プニュプニュ…

 手首に伝わる妙に温かく柔らかな感覚。その正体を確かめるべく落とした視線の先に有った物。あえて例えるならそれは山、深い渓谷を成す二ツの肉の山。

バッ!

 鏡の前で勢いよくパジャマを開くと……そして今に至る。

 な…何でこんな所に……ま、まさかッ!?

・・・・

タタタタ…
「アハハ…アハハハ…」
 ゆ…夢だ、きっとこれは夢なんだ。さも無ければ無いはずの物が有って、有るはずの物が無いなんて…事が。

ピピピ…ピピピ…
「…ッ!?」
 逃避から現実に引き戻すアラーム。午前7時…アイツが…アイツが来る。こんなのアイツに見られたら…。

バタンッ!
「オッス!ちゃんと起きてっか?」

・・・

 蹴り飛ばす様に勢いよく開けられたドア、無言で固まるアイツ、変わり果てた半裸の僕…。

 ……終わった、僕の人生。

「フム…フムフム、我ながら上手くいったみたいだな」
「……ハイ?」

 コイツの名前は麻津度 彩依(まつど さいえ)、鼻に引っ掛ける小さな眼鏡とダブダブの白衣がトレードマークの一応"女"…のはず。僕と同じ歳の筈なのに5年前から全く成長していないツルペタのスットン。生まれてこのかたずっと幼馴染みの筈の僕ですら最近は自信が無い。

 いや、それより何で驚かないんだ?僕がこんな姿になっているというのに…。まてよ?確か彩依の親父さんは何処かの研究所の元所長で現在は行方不明。何でも突き抜け過ぎたのが原因だとか…。

「流石は"オレの嫁"、可愛いじゃん」
「…ハイ?」


「ドンドンおかわりしてね~」
「フム、お義母様のご飯はやはり美味いな」
「・・・」
 何この団欒な食事風景。彩依も一緒にご飯食べてるのはいつも事だけど…。
「ねぇ母さん、何か疑問に思わないの?」
「…?」
 いや、頭の上に?マーク出して首を傾げられても…。見た目どころか性別まで変わってるんですよ、貴女の息子は。
「紫織ちゃん。実はママね、ずっと女の子が欲しいなって思ってたのよ。その願いが叶うなんてママ感激!」
 ぶっちゃけた!このタイミングでカミングアウトされたよ。
「でも本当に凄いわね~」
「任せてくれ。こうなったからには必ずや紫織の"初めて"を奪い、幸せにしてみせる」
「彩依ちゃん…」
 ねぇ…手を握り合って盛り上がってるけど、何かおかしいとは思わないの?
「あ…でも、まだ二人共学生なんだからクレグレも節度は守ってね」
 ちょ…母さん、今渡したリング状に盛り上がった銀色の四角いギザギザは何?公認なの?っていうか、渡すべき相手が違うでしょ!
「……ご馳走さま」
 もう駄目だ。昔から何処かズレた感覚の人だとは思ってたけど、まさかここまでとは…。
 流石に付き合いきれ無くなってご飯もそこそこに自分の部屋に向かった。
「紫織どうした、遅刻するぞ?」
「行ける訳無いじゃないか。大体制服だって合わないし」
「フフフ…こんな事も有ろうかとぉ。ジャ~ン!」
 バッと眼前に拡げられた真新しい制服(女子用)。どうやったらこんな事も有ろうかと思えるんだろう…。
「紫~織~ちゃ~ん、フフフ…」
「う…う…冗談…だよ…ね」

・・・

 まさかのピッタリサイズ。鼻唄を唄う程にご機嫌な彩依に腕を掴まれ学校へと連行される。
「な…なぁ彩依、ヤッパリ行かなきゃ駄目?」
「当然だ。これ程に愛らしいオレの嫁を見せずしてどうする」

 一応もう一回言うけど彩依が女で僕が男だからね(今は女の子になっちゃったけど…)。
 しかし何だか落ち着かない。周りの視線もそうだけどこのスカートって妙にスースーして心許ない。一応短めのレギンスを穿いてるけど、実は…。


―20分程前の自宅―

「無理ッ!絶対に無理だって!」
「ホラ、可愛いでしょ?絶対紫織ちゃんに似合うから」
「オレ的にはコッチがお勧めだぞ紫織」
 もうここまで用意されていたら予定調和としか思えない。専門店のディスプレイそのままに上下セットの布が迫って来る。
「ぼ…僕は"男"だよ!そんなの着けられる訳無い…それじゃまるで変態だよ」
「アラ?今は女の子なんだから逆に男の子の下着着けてる方が…」
 ジリジリと壁際に追い詰められていく。
ダッ!
 一瞬の隙を突いて自分の部屋へと走り出す。
プルン
「……ッ!?」
 胸の先から全身に疾る未知の甘い痺れにガクッと力が抜けてしまう。
「だから言ったじゃない。紫織ちゃんのそれだけ大きいんだからちゃんと女の子用のを着けないと擦れて痛いわよ~」
「で…でも…」
 流石に下着まで着けてしまうと全てが終わる気がする。
「紫織…流石にNBNPはどうかと思うぞ…」
 歩くだけでも揺れて擦れる先っぽが布地越しでも判る程に自己主張を始めてしまうと動けなくなってしまった。
「紫織~」
「紫織ちゃ~ん」

「い…い…イヤァーーッ!!」


 無理矢理パジャマを引ん剥かれ、抵抗虚しく美少女が出来上がってしまった…お陰でこの通り遅刻寸前である。


「急ぐぞ、紫織!」
「ちょ…ちょっと待ってよ」
 急ごうにもスカートがヒラヒラするし、胸が上下に揺れて動き辛いんだよ~。

キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン
「ハァ…ハァ…ハァ…やっと着いた…」
「お早う、我が級友共」
「あ、お早う彩依さん」
「ウッス、麻津…度…」

 シン…と静まり返る教室、クラス全員の視線が僕に集まる。
「お早う、みん…な…」
「エッ?紫織…君?」

 あ"ーーッ!忘れてたー。今の僕は女の子だった。皆に何て説明すれば良いんだ?
 怒涛の如く押し寄せて来るクラスメイトに気圧される。
「か…可愛いー!」
「遂に、遂にやったのか麻津度?」
「チクチョー!実は俺、紫織狙ってたのに~」
 一部不謹慎な握り拳や理解したくない発言が有ったがこの際スルーだ。
「フフフ…さぁ存分に愛でるがいい、オレの嫁を!」

ガラッ
「お前等いつまで騒いでいる、さっさと席につけ!」
 
「…アルェ?」
 順に出席をとる担任が僕を一瞥しただけで普通に名前を呼び続けた。そういえば母さんが変な事を言ってたよな?

《大丈夫、世の中には紫織ちゃんが理解したくない"力"が色々あるから》

 そういえば彩依の家は色んな国に表立っては言えないコネが有るとか…。
ゾクッ…
 その悪寒の正体を知るのは僕には早過ぎるに違いない。


「ネェネェ、本当に女の子になっちゃたの?」
「良いなぁ…胸大きい…」
 昼休み、僕はあっという間に女子に囲まれ質問責めにあってしまい、出遅れた男子達は遠巻きに見詰めるしか無かった。
「あ…あの…ちょっとトイレに…」
 まだ自分自身でも理解出来てないのに説明出来る筈も無く、逃げる様に立ち上がる。
ピラ…
「チェ…レギンスかぁ…」
「ちょ…ちょっと…」
ムニムニ…
「うわぁ…本物だぁ…」
「待っ…やぁ…」
 突然始まる軽いレズビアンショーに男子達の顔はかなりだらし無い事になっていた。
「そこまでだ!紫織に触れて良いのはオレだけだ。それ以上の不埒は許さん」
 諄いようだけど彩依は女子だ。なのに何だろう、この男前っぷりは…。
 
2011/11/01 18:46:45(aOaycoNd)
7
投稿者: たんたんタヌキの○○
【Side Story-2】
 服装なんてあまり気にしてなかったのに母さんが、「女の子になったし、色々気になるでしょ~」とドレッサーを買ってきた。
「という訳でお買い物行きましょ」
「…ハイ?」
 母さんはたまに前説を取っ払って行動しだすんだよね。で、連れて来られたのがレディースショップ。ラブリーからハード、フォーマルからカジュアルとジャンル毎にお店があるんじゃないかと思う。
「ホラ、紫織ちゃんコッチ、コッチ」
 元から僕にセンスなど求めて無いのだろうけど、パパパと手早く集めてくると着せ替え人形の様に宛てては換えて有り得ない程の服をレジに持っていった。
「次はコッチ~」
 もう訳が解らず硬直したまま引きずられて来たのがランジェリーコーナー。
「ちょ…母さん。無理、無理だって…」
 当然だけど周り全てが下着・下着・下着!ついこの間まで男子だった僕には刺激が強すぎる。
「何言ってるの、ちゃんと合ったサイズじゃないとラインも崩れちゃうんだからね」
 で、フィッター(店員)さんから渡されたのが下着試着用のインナー。これって殆ど紐じゃないか~。

「…アレ?苦しくない…」
 今、着けてるのは取り敢えず母さんが用意してくれた物。フィッターさんのアドバイス通りに着けてみると…肩が凝らない!凄く楽!しかもワンサイズアップの盛り上がり。何この魔法…。
「有難うございました~」

「次はシューズ~」
といい出したけどもう流石に荷物が限界なのでまた今度…と相成った。

「ただいま~」
 リビングで一息ついてから自分の部屋へ。空っぽだったクローゼットに買ってきた服を手早く掛けていく。

 で、カーテンを閉めきって鏡の前で始めたのが一人きりのファッションショー。頼まれても無いのに色々ポーズをとって、服を取っ替え引っ替え、揚句に下着姿まで。

 その時、ドアの隙間から母さんがニヤニヤと笑いながら覗いているのに気付かなかったのは失態だった。

 だって普通あんな事になるなんて思わないじゃないか。何で僕がこんな目に…。

 母さんのバカーーーッ!!!!

 
「意に添わぬとはいえ、異性に興味津々なお年頃の多感な男子が偶然手に入れた女の子の身体。しかも何をしようと誰にも文句言われない自分自身、よもや何もしてないとは言わせないよ~」
「特にお風呂とか…体を洗う時のシャワーとか…」

「そうですね~鏡なんて…使ったりしてないよね?」
 
 これはクラスの女子達に言われたセリフ。ハイ、一字一句その通りですよ。
 だって仕方が無いじゃないか。脱げば見えるし、触れれば感じちゃうんだから。
 確かに童顔で、女顔でしたよ?お陰で違和感無くて混乱したよ。

「ちょ…紫織ちゃ…何て格好してるの」
 お風呂から上がって出て来たのはバスタオルで頭をワシワシと拭きながら牛乳を捜すパンツ一丁の僕。
 あ…いつもの癖でつい…。
「もう、紫織ちゃんは女の子になったんだから替えの下着とパジャマを持って来なきゃ駄目じゃない。本当にもう…」
 母さんの言う通りだ。父さんが居たら卒倒ものだよ。ましてアイツが居たら…。
「ぉ…おお…美しいぞ、紫織」
ボタ…
「・・・///」


「ちょ…、何でこんな時間に彩依が居るのーッ!?」
 あまりにも自然に食卓に座っていたから気付かなかった。慌てて自分の部屋でパジャマに着替えてきた。
「ウム、実は夜ばいをかけようと忍び込んだがお義母様に見付かってしまってな。だがお陰で良いものが見れた」
 こ…コイツ、何考えてんだ。爽やかに犯罪宣言してるよ。
「古来、夜ばいは愛する女性への礼儀だそうだ。ならばオレもと思ったのだが何がいけなかったのだろうか?」
 また、クラスの男子情報か。そんなの平安時代の事じゃないか。男子とは一度キッチリ話を着けなきゃいけないな。
「紫織ちゃん、女の子は拳で語らないわよ」
 何故母さんには僕の考えている事が解っちゃうんだろう…?

 取り敢えず彩依を追い出して、自室に戻る。
「全く…何でそこまでして見たいかな?」
 ついこの間までの自分の事も忘れて愚痴ってみる。いざ自分が女の子になってしまうと揺れる度に視線が釘付けになった胸は重いだけで肩は凝るし、下着だって同じ女子からのチェックがあるから変な組合せ出来ない…。男子の時は気にしなくてよかったムダ毛の処理も面倒臭い。中でも…。
「ホント何であんなに興味あったんだろう?」
 着替えの時に鏡に映った下着姿の僕。自分では上からしか見えないから鏡に映る自分は新鮮だった。
「他の人にはこう見えるのか…」
 色んな角度やポーズをしてみると自分が思ってたより胸が大きく、お尻や脚が太いんじゃないかと気になった。
「・・・・」
 カーテンは閉まっているけどキョロキョロと周りを確認してドレッサーから手鏡を取り出し、パンツに手を掛けた。

ドキドキ…
 
 男子達の興味の的、神秘の花園が今ここにある。

 おっかなびっくり顔を逸らしつつ細めた視線は手鏡へ。意外にもそこは他よりも少しだけ濃い肌色の縦筋が一本。いや、ここはまだ扉だ。本当の秘密はその先にある。
クニ…
「うわぁ……」
 いざ見てしまうと結構生々しい。鮮やかなサーモンピンク色の肉の穴。どっちかというと内臓だよね…。
 で、噂の部位の確認。これが大陰唇でこっちが小陰唇かな?で、ここに"男のコ"が入るんだよね?小さいな…本当にあんなの入るの?確かこの上にク○ト○スが…。
 で見つけたのが少しだけ突き出た小さな穴の開いたもの。
「これかな…?」
プニ…
「……ッ!?」
 腰から背中に抜ける衝撃、でもどっちかと言うとオシッコが…あ、これ…尿道なんだ。男子は一緒になってるけど女子はそれぞれ別になってると聞いた事がある。という事は…?
クニ…
「ーーーッ!?」
 な…ナニ今の?さっきのと比べものにならない衝撃!これが…。
「ンン…」
 そ~と、包皮を剥いて唾で濡らした指を宛がう。
「ーーーッ!!!」
 怖いくらいの甘い痛みが全身を突き抜ける。男の子の時とは比較にならない。それでも指を離せなかった。
(だ…駄目、止まらない…)
 ベッドに倒れ込み、いつの間にかブラをずり上げ、オッパイまで触っていた。
(ち…違う、僕が変態なんじゃ無くて…触っていたいるのは…彩依…そう彩依なんだ)
 誰に対しての言い訳かは別として背徳感の責任を彩依に押し付けてしまった。

ピチャ…ピチャ…
 左手で乳房を揉み、指で硬く尖った先っぽを転がしながら、右手はクリを刺激しつつ、入口の形をなぞる様に指を動かす頃には何ともいやらしい水音が聴こえ始めていた。
(うわぁ…濡れてる…本当に濡れちゃうんだ…)
 声を押し殺しながら指の動きが早く激しさを増していく。
(な…何?何かが…)
 頭の中が真っ白になり身体が浮きそうな感じに囚われた瞬間…。
チュプ…
「ーーーーーーッ!!!!!!」
 指が開き始めた入口に滑り込んでしまった。
「いっ……痛ーーーッ!!」
 その瞬間、あまりの痛さに一気に我に返ってしまった。
「ハァ…ハァ…」

 む…ムリ…絶対に無理ッ!!指だってこんなに痛いんだもの。あんなの絶対入る訳無い。きっと僕死んじゃうよ…。

 乱れたシーツを整えてさっさとパジャマを着てベッドに入った。
(彩依の馬鹿……)


―翌日―
「おはよ…」
 力無くグッタリと教室に入る僕にいつも通りにみんなが声を掛けてくる。
「お早う!紫織ちゃん」
「お…お早う…」
ツツツ…
 何気に男子を回避しつつ席に向かう。
「…?」
「オッス!紫織、今日も一段と可愛いな。流石オレのヨ……」
「ーーーッ///!!」
バチーン!!
「来んな、馬鹿ーーッ!!」
「ハハ~ン…」

 こうして感の良い女子二人にバレてしまった。

 ……もう、彩依の所為だからね。
11/11/01 19:13 (aOaycoNd)
8
投稿者: たんたんタヌキの○○
【Side Story-3】

 うわぁ…どうしよう…。
 本当に女の子になっていってる。まさか、僕の方からお口でしちゃうなんて~。
 僕この間まで男だったのに…。いくら彩依が可愛く思えたからって、パクっ…なんて。アレだよ?"男のコ"なんだよ?オチ○チ○だよ?オシッコとかも出る…。
 いや、ちゃんと綺麗にしてあげたけど…。じゃなくて、嗚呼もう訳解らない。
 大体、彩依ってば無理矢理頭を押さえ付けて喉の一番奥を突いて何にも言わずにお口に出しちゃうし。お陰で口の中がヌルヌルするわ、イガイガして絡まるし、しかも少し飲んじゃったじゃないかぁ。
 あの時ちゃんと断れば良かったんだ…。なのに胸で挟んで擦ってあげたら可愛く悶えるんだよ、あれ反則だよね?
 オチ○チ○の先っちょがヌルヌルしだして、すぐ近くでエッチな匂いがしだしたら何か頭がボゥ~として気付いたら自分から…。

 ウワァーーーッ!どうしよう、誰にも相談なんて出来ないよ。こういう時は男子の無神経さが羨ましい。

「ネェ○○さん、お口でしてって言われたんだけど貴女ならどうする?」

 …って聞けるかーッ!

「綺麗なら良いじゃない」
「…へ?」
「でも、お弁当食べてる時には勘弁して欲しい話題かな?」
「な…何で…解っ…?」
 どうやら全部独り言のように言葉に出ていたらしい。
「そっかぁ…お口でしてあげたんだぁ~」
「ああ…私の紫織ンが穢れていくぅ~」
「ちょ…変な言い方しないで!」
 どうやら僕は思った事を無意識に呟く癖があったらしい。道理で母さんも言い当てる筈だよ。

「まぁまぁ、そう怒りなさんな。どう、今度の土曜日お祭りがあるからみんなで一緒に行かない?」
「私のカレシも来るよ~」
「じゃあ、紫織っちはダーリンと一緒だね」
 ダーリンって?
「麻津度君に決まってるじゃない。紫織ンは嫁なんだし」
 エーッ!?いや、ちょっとタイミングが悪いっていうか…。
「仲直りするチャンスでしょ?」
「そうそう、そのまま流れにまかせて脱ヴァージンとか。キャー!」
 好き放題言うなーッ!痛いのは僕なんだぞー!
「有り得なくは無いわね、ウン」

 ―浴衣姿の紫織ンの襟足から覗く白いうなじの後れ毛、いつもとは違う和服の色香。ちょっとだけ背伸びの艶やかなグロス。アイスの冷たい山をなぞる舌に溶けて細い指と口元を汚す白い滴り。

「エッ?エエッ?」

 人気の少ない神社の外れ…提灯の明かりや人のざわめきは遠く、この場には愛する人と二人きり。
 暖かな手がそっと頬に触れ、見つめ合う。
『ここ…汚れてるじゃないか、拭いてやるよ』
と、近付く顔…重なる唇。
 握られた手は動かせず、甘く囁く唇はやがて耳元から首筋へ…。
 着崩れ始めた浴衣からはホンノリ上気した肌があらわになり、そして手が高鳴る胸の併せ目に…

「ちょ…ストップ、ストップ!」
「…どうしたの?」
「紫織っちがオーバーヒートしてる…」

「ふ…ふにぁ~~」


―保健室―
「アンタ達ねぇ…」
 想像力が限界を超えた為、目を回して倒れてしまった。
「アンタ達レベルのガールズトークに紫織がついて来れる訳無いでしょうが」
「いやぁ…まさかここまで純情だとは…」
「男子は幻想の女性像しか知らないんだからあまり素を見せんなよ」
「アハハ…」

 結局、知恵熱状態でそのまま5時限目が過ぎてしまった。

「……あれ?」
「よぉ、目覚めたかい?お姫様」
 また、保健室?何かいつもここに居る気がする。
「…で、クラスメイトじゃ暴走するだけだろうから身の"下"相談も承るよ?」
 ざっくばらんな姐御肌の保健医は男女問わず人気があり、みんなの相談相手にもなってくれている。
「い…いえ、その…何と言うか…」
「お前さんの場合はちょっと特殊だからねぇ。コッチとしても興味があるのさ」
 遠慮は要らないって事か。
「じ…実は…」


「成る程ねぇ…確かに気まずいわな。ある意味、麻津度は欲望に率直なガキだからねぇ」
 そうなんです、だから余計質が悪い。
「なまじ元男だから葛藤はあるだろうね。で、どうだい?麻津度を…、女である自分を受け入れられそうかい?」
 開き直れれば楽なんだろうけど、いざその時になったらどうかは自信が無い。
「女の立場として言わせて貰うなら一時の感情で流されて…てのは賛成出来ないね。女と違って男は年中発情出来る…ってのはお前さんには言うまでも無いが…」
 女は身篭る…それは悦びであり苦しみだ。保健医は真剣な眼差しでそう言った。その言葉に僕は…。


―自宅―
 今日はお祭り当日。結局、彩依を誘えていない。
「紫織ちゃ~ん、浴衣はどっちがいい?ママとしてはコッチが可愛いかなぁ~って思うんだげど~」
「・・・」
 既にお風呂に入って後は浴衣に袖を通すだけ。それでもイマイチ気分がのらない。
「どうするの~?お友達来ちゃうわよ~」
 ラインの出ないフレアパンツに着物用の下着を着けて、沈み気味の気分を変える為に母さんが明るい色の大きめの柄を選んでくれた。髪をアップにして簪を刺す。
 
「うわぁ~、可愛い!流石は私の娘ね~」
 "娘"という言葉に引っ掛かったけど、さりげなく自分の事も褒めてない?
ピンポ~ン
「紫~織~ン」
「お祭り行くよ~」
ガチャ
「あ…」
 メンバーの中に彩依もいた。気を利かせて誘ってくれていたみたい。

「・・・」
「・・・」
 僕の浴衣姿を見てもいつもの「流石はオレの嫁」が無い。互いに目も合わさず、言葉も交わさない。彩依は僕の五歩前を歩いている、小走りすればその手を掴めるのに…。
「何か気まずいね…」
「…ウン」

「ホラ、ちゃんとお嫁さんをエスコートしなきゃ」
 女子が助け舟を出してくれたけど…。
「あ…あの、紫織…腹減って無いか?オレが奢るよ。何でもイイぜ。ホラ、あれなんかどうだ?」
 ギグシャクと指差したのはチョコバナナ。
ボシュ…
「・・・///」
 あのシーンを思い出して顔が真っ赤になる。
「あ…じゃ…じゃあ、コレなんかどうだ?」
 次に指差したのはよりにもよってフランクフルト。
「…ッ!!///」
「……お馬鹿」
 流石の女子二人も呆れて頭を抱えた。

「…もういい!」
 思わず逃げるように走り出してしまった。
「あ…紫…紫織…」
「もっと先に言うべき事があるでしょ!?」
「早く追い掛けなさいよ、馬鹿ッ!」
「あ…ああ」


ズ…ズ…ズ…
 ここは神社の階段を上がりきった最奥の小さな本宮。紫織と彩依として初めて出逢った場所。互いの性別も関係なく無邪気に遊んだ想い出の場所…。その階段に座り、境内を眺める。

「ヤッパリ此処だったか…」
「…彩依」
「近くに寄っていいか?」
コク…
 僕より幾分背の低い彩依は数段上に座った。丁度頭一つ分の差が出来る位に。
「あ…あのさ、紫…織…?」

 僕はある決心をしていた。今の二人の関係を終わらせるべく、二人が出逢ったこの場所で…。ずっと心の奥で燻り、僕を苛み続け、決して口にする事は無いであろう筈の念いを解放する…。
 大きく息を吸い、相手の眼を動かせぬ様に見詰めて…。


「麻津度 彩依、僕は貴方にどうしても伝えねばならない事があります…」

11/11/01 19:16 (aOaycoNd)
9
投稿者: たんたんタヌキの○○
【Side Story-4】

―時は遡り…―

 僅かな荷物を手に一人の男が門をくぐる。
 プレートに刻まれた名前とは程遠いラフな服装。歳の頃はおそらく30台前半、殆ど手入れをしていないような長髪をヘアゴムで束ね、口元や顎には無精髭が生えている。
「本当に宜しいのですか?博士…。中にはまだ…」
 迎えに来た車の運転手らしき女が声を掛ける。
「居るだろうね、某国のエージェントが…」

 麻津度化学生物研究所…表向きは微生物やウイルスの研究をする末端の一機関に過ぎない。だがこの男が請け負っていたのは各国が秘密裏に開発している生物兵器や化学兵器への対抗方法だった。
 それに気付いた某国がエージェントを送り込み、偽装工作で無実の罪をきせ、失脚を謀ったのだった。
「ま、被検体も99%解析済みだし、彼女達は優秀なスタッフだから大丈夫でしょ。万が一の為に"お薬"の手配もしておいたし」

 トランクに荷物を入れ、後部座席に座る。

「これからどうされますか?」
「そうだねぇ~、僕に出来る事は済んだし、取り敢えず暫くは身を潜めて大人しくしておきますか」。あそこじゃ出来ない事も有るし…
「賢明な判断です」

 ギアをローに入れ車が走り出す。

(さて…後は任せたよ、新人研究員クン…)

11/11/01 19:18 (aOaycoNd)
10
投稿者: たんたんタヌキの○○
【Side Story-5】

「麻津度 彩依、僕は貴方にどうしても伝えねばならない事があります…」


「紫織…何を…」
 月明かりに浮かぶ色が失せた瞳を見た瞬間、彩依は言葉を継げられなかった。
「ねぇ、覚えてる?」
「ああ、オレ達が初めて出逢った場所だ」
ニコ…
 あの日、自由奔放な母さんに女の子の格好好をさせられるのが嫌で逃げ出した僕はこの場所で一人泣いていた。
 転んで膝を擦りむき、痛くて、不安で、淋しくて…。
「君、どうしたの?」
 そんな時、僕の前に現れたのが彩依だった。

「これでヨシ!」
 ショートパンツにシンプルなTシャツ、全身絆創膏だらけの如何にもヤンチャそうなその子はペットボトルの水で傷口を洗うとウエストポーチから絆創膏を1枚取り出しペタンと貼ってくれた。

「エグッ…エグッ…あ、ありがとう…」
「ったく、いつまでも泣いてるなよ。可愛いい顔が台なしじゃないか」
「か…可愛い?」
「ああ、この天才科学者(予定)のボクが保証してやるよ」
「でも…」
「ボクを信じろ、お嫁さんにしたいくらいだからな」

 知らない子から可愛いと言われて複雑な気分だった。
「お嫁さん…?それって、好きって事?」
「ああ!」
 間髪入れない気持ちいいくらいの即答。まだ恋愛感情なんて無かったけど、この子と仲良くなりたいと思ったのは確かだった。
「でも…僕、男の子だよ?」
 一瞬キョトンてしたけど、ニッて笑うと腰に手を宛て、胸を張ってこう言った。
「ハハハ、だったら何の問題も無い。ボクは女だからな!」
「エッ…エエーッ!?」


 こんな素っ頓狂な出逢いだったけど、僕達は毎日日が暮れるまでこの場所で過ごしていた。


「送ってくれて有難う」
 その日、何故か彩依は家に帰りたがらなかった。僕の家の前までついて来て、後から思えば少し不自然だった。
「フン、結婚前の嫁を送り届けるのは当然だ」
 この頃にはもう僕の事を嫁と言い始めていた。
「お帰りなさい紫織ちゃん。あら~、ひょっとして麻津度クン家の彩依ちゃん?」
 驚いた事に彩依の両親と母さんは知り合いだったらしい。
「ええ、彩依ちゃんの事は任せて~」
 幼いながらも彩依ん家に何かあったんだと感じとった僕は出来るだけ明るく接しようとした。

「二人とも~ご飯よ~」
 テーブルには山盛りサラダとオムライス、ご丁寧に旗まで立ててある。
「いただきま~す」
「・・・」
 俯いたまま何も喋らない彩依に僕が出来る事は少ない。
「・・・ッ!彩依ちゃん、あ~ん」
 一口分をスプーンで掬い、彩依の口許に持っていく。
「・・・」
「ほら、美味しいよ。あ~ん」
「あらあら~、仲が良いわね~」
「僕は彩依ちゃんのお嫁さんだから。ね~」
 多分あまり深くは考えて無くて口にした言葉。それは少しだけ彩依の心に届いたようだ。ゆっくりと振り向き、少しだけ口を開けた。
「美味しい?」
コク…
「そう、じゃあハイ!」
 二口、三口と彩依の口に運ぶと自分のスプーンを手に取り、口一杯に頬張り始めた。
「あ~あ、口の周りベタベタじゃないか」
 ウェットティッシュでケチャップ汚れた彩依の口許を拭う。
「あらら、お熱いわね~」

 夕食も済み、一息ついた時、母さんがトンでも無い事を言い出した。
「さぁ、二人とも~お風呂に入っちゃいなさ~い」
「ハ~イ」


「んしょっと…」
 シャツとズボンを脱ぎ、パンツに手を掛けた時…。
「フム、紫織はボクサーパンツ派か…」
「…エッ?」
 そこには裸の彩依ちゃんが立っていた。
「ちょ…ちょ…」
「どうした?早く入らないと風邪をひくぞ」

カッコ~ン…
「フゥ~、気持ちいいな」
 な…何で彩依ちゃんまで一緒に入ってるんだ?
「紫織のママが二人ともと言ったから…」
 だからって…だからって…。
「そうだ、身体洗いっこしよう。出ろ、紫織」
 
カッコ~ン…
「どうした?紫織、身体を丸くして…洗いにくいだろ」
 ど…どうしよう、タオルも持って来て無いし…。出たくても彩依ちゃんが居るし…。
「ほら、次は前だ。コッチを向け」
「い…いいよ、自分で洗うから」
「遠慮するな、ン?どうした、何を隠している?」
 隠す、隠すに決まってるじゃないか!っていうか、彩依ちゃんも隠してよーッ!!

「…?紫織、それ何だ?足の間に付いてるの。ボクには無いぞ?」
「男なんだから当たり前じゃないかー。ていうか、彩依ちゃん、拡げちゃダメーッ!!」

 驚いた事に彩依ちゃんは男女の違いも知らなかった。お父さんは居るけど一度も会った事が無いらしい。
「そうか、男の子には付いてるのか…。じゃあボクはいつ生えてくるんだ?」
 彩依ちゃんは初めて見るオチ○チ○に興味津々で、ずっと突いたり引っ張ったりして、後で母さんに注意されていた。

「あらあら~、本当に仲良しさんね~」
 その日遊び疲れた僕達は同じベッドで手を握り合って眠っていた…。

・・・・

―再び本宮

「本当に懐かしいな…」
 あの日から僕達はずっと近くに居た。思春期を迎え、他の男子にからかわれるのが恥ずかしくて距離を置こうとした時も彩依は自分に素直なまま真っ直ぐ接していた。二人の性別が変わった現在も…。
 
トス…
「…紫…織…?」
 彩依の胸に顔を埋め、ジャケットを握り締める手が、身体が震える。
「……怖い…僕は怖いんたよ、彩依ッ!!」
ポタ…ポタ…
 我慢出来ず、溢れ出した想いが彩依を濡らしていく。
「僕は彩依の"嫁"として女の子に変えられた。その事に不満は無い。でも…彩依に触れる度、触れられる度に僕の心は女の子に染まっていく。そして、彩依が僕を求める程に、求められる程に不安になるんだ!ただの気まぐれじゃないかと、エッチがしたいだけなんじゃないかとッ!」

「…紫織」
 背中に廻された腕が身体をグッと引き寄せる。互いの鼓動が重なる程に…。
「それはオレだって同じだ。紫織は時が経つ程に可愛くなってその存在が大きくなっていく。お前が誰かと話す度に、微笑み掛ける度にオレの中で闇が拡がる。どんなに"オレの嫁"だと叫んでも闇は晴れず、暗い欲望が紫織にオレという存在を刻み付けたい、紫織を穢したいと暴れ回りって、求めずにはいられなくなる!」
 互いを見詰め合う瞳に自分が映る。
「紫織…」
「僕に刻んで…。彩依の言葉で…、その身体で穢して…」
 引き合う様に、それが自然であるように唇を重ねる。
「ン…ンン…」
 絡み合う舌が別れを惜しむように1本の橋が架かる。

「…紫織」
「ン…やっ…だ…駄目…」
 後ろから抱き寄せ、胸元の併せと内股に手が触れた瞬間、紫織が身を屈ませ拒絶する。
「やっぱりまだ怖いか?」
「ううん…違う…違うの」
 上気した頬、潤んだ瞳で呟く。
「僕…着付け出来ない…」
「あ…」


「あー、やっと見付けたぁ!捜したよぉ」
「ったく、どこ行って…」
 絡め合うように握られた手を見て何かを感じ取ったらしい。
「ま、結果オーライかな?」
「宜しいんじゃないの?」

 残り僅かな催しを一同はいつも通りに愉しく過ごした。


―紫織の部屋―
 消灯された薄暗い部屋、窓から射す月明かりが産まれたままの肢体を浮かび上がらせる。
「綺麗だ、紫織…」
「あまり見詰め無いで、恥ずかしいよ…」
 家に戻っても母さんは居なかった。ただリビングテーブルに1枚の書き置きが残されていた。
 丸みを帯びた字で簡潔に一言だけ。

《頑張れ》

と…。余計なお世話を一箱添えて。

「紫織…」
「…彩依」
 二つのシルエットは一つに重なり、静かに横たわった…。




「痛ーーーいッ!!やっぱり嫌ぁーーーッ!!」
ドゴォッ!

 春はまだ遠くにあるようで。
―END―
11/11/01 19:21 (aOaycoNd)
11
削除済
2011/11/02 09:42:26(*****)
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