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キャンプへ行った妻
カテゴリ: 官能小説の館    掲示板名:ノンジャンル 官能小説   
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1:キャンプへ行った妻
投稿者: 不甲斐ない夫
今年の夏、妻がキャンプに行ってもいいか、と訊いてきた。
パート先で企画が持ち上がったらしく、日頃の慰安を兼ねて、バイトの子やパート仲間で行くのだという。
子供たちは夏休みであったし、無理に反対する理由もないので快く承諾した。
キャンプに出掛ける日は、軽装に着替えた妻をパート先の近くまで送ってやったものだ。
ぴっちりとしたホットパンツに小さめなTシャツと、めずらしく肌の露出が多い服装をしていたのが、いささか気になりはしたものの、若い男の子たちも来るというから、老けて見られるのを嫌って若い格好をしているのだろうと、あまり気にも留めなかった。
集合場所に着くと、待っていたのはキャンプ資材を積んだ真新しそうな新型のワンボックスと、バイトの子らしい3人の若者たち。
礼儀正しい青年たちだった。
まだ、大学生だという。
他に車は見あたらず、そこに立っていたのは、妻を含めてその4人だけだった。
「他は、まだ来ていないみたいだな。」
「うん、まだ早いから、これから来るんじゃない?」
パート仲間や従業員たちも一緒に行くのだと聞いていた。
だから、誰もいないのを不思議にも思いもしたが、何食わぬ顔で、そう言った彼女に私はまったく疑問さえ感じていなかった。
「ありがと。もう、いいわよ。」
行ってくるね、と手を振る彼女に笑顔で見送られ、私は、妻を残して家に帰った。

キャンプの予定は3日間。
日頃の妻の苦労をしっかりと肌に感じつつ、その3日間は、子供たちを相手に悪戦苦闘したものだ。
3日目の夕方になって、妻はようやく帰ってきた。
「ああ、疲れた!」と、玄関で荷物を下ろした彼女は、疲れてるわりには、とても晴れ晴れとした表情を浮かべていた。
きっと、仲間といっぱい遊んで、リフレッシュできたに違いない。
家計をやりくりするためにパートをふたつも掛け持ちしている彼女だ。
たまには家族を忘れて気分転換するのもいいことだ、などと、晴れやかな表情を浮かべる彼女を見て、私は心の底から喜んだりしていた。
しかし、よく見ると、妻は怪我をしていて、ひざやひじのあたりには小さな擦過傷が幾つもある。
小さな傷は、ふくらはぎや足の先にも見てとれた。
「それ、どうしたの?」
気になって、訊ねてみたら「ああ、ちょっと転んじゃって。」と、妻は、はにかむように笑っていた。
どれほど羽目を外したのかは知らないが、「歳なんだから気をつけろよ。」と、窘めると「失礼ね。これでも、まだ若いのよ。」と、彼女は勝ち誇ったように笑っていた。

それから一週間ほどが過ぎた頃のことだ。
近くのスーパーで買い物をしていたら、たまたま妻の友達にあった。
ママ友で、長女が幼稚園からずっと一緒だったせいか、私にも気軽に話しかけてくれる、気さくで明るい女性だった。
ノースリーブのシャツを着ていた彼女の肩が、真っ黒に日焼けをしているのを見て「さすがにキャンプに行ったら、焼けてるねえ。」と、私は笑った。
彼女も、妻のパート仲間で、この間のキャンプへ行ったのだ。
すると、不意に彼女が怪訝な顔をした。

「キャンプ?なにそれ?今年は行ってないよ。」

「え?この間、うちの奴と一緒にキャンプに行ったでしょ?それで、焼けてるんじゃないの?」

妻は、彼女も一緒に行くと、確かに言っていた。
だから、安心して、妻を送り出すことができたのだ。

「これ?全然違うよぉ。実家の手伝いに行ってたの。毎日畑仕事させられて、大変だったよぉ。」

訊けば、実家のお母さんの具合が悪くなったらしく、帰省を兼ねて、家族ぐるみで農家をやっている家の手伝いに帰っていたのだという。

「じゃあ、キャンプには行ってないの?」

「行ってないよ。」

「でも、うちの奴が、○○さんも一緒に行くって・・・。」

「そんな話聞いてないよぉ。」

「だって、パート先の慰安旅行を兼ねているから、みんなで行くって・・・。」

言葉が続かなかった。
この辺りから、胸がざわつき始めていた。

「それって、いつぐらいのこと?」

妻がキャンプに行った日を教えてやった。
急に彼女が思案顔になって、不安そうな目を向けてきた。

「あのさ、こんなこと言ったら、なんなんだけど・・・。奥さん、気をつけた方がいいわよ。」

「気をつけた方が、いいって・・・?」

「うん、××さんの奥さんね、職場で意外と人気があるのよ。ほら、スタイルだっていいし、顔も可愛いでしょ?だからね、奥さんに声掛けてるバイトの子が結構いるみたいなの。まだ学生の子が多いから年上の人に興味があるみたいで・・・。奥さんは、相手にしていないみたいだったけど、その時って、ちょうどバイトの子の何人かがキャンプに行くって言ってた日なのよね。だから・・・もしかしたら、その子たちと行ったのかも・・。ああ!これは、あくまでも私の想像だけどね!」

慌てて否定していたが、もはや、私の頭の中には、疑念だけしか渦巻いてなかった。

「私が言ったこと、奥さんには黙っててね。」

まずいことを教えて妻との関係がこじれるのを嫌ったのか、バツの悪そうな顔をして、逃げるように立ち去ろうとした彼女を呼び止めた。

「悪いけど、頼みがあるんだ・・・。」

疑惑は、確信に変わりつつあった。
キャンプから帰ってきた日、妻はノーブラだった。
ふっくらと盛り上がっていたTシャツの薄い生地に、ふたつの小さな突起が飛び出していたのを思い出していた。
ひどく暑い日が続いていたし、日頃からブラジャーを嫌って、家の中では、あまりしたがらないのを知っていたから、さほど気にも留めなかった。
だが、今思えば、若い男たちの前にノーブラの姿をさらすなど、既婚とはいえ、羞恥心がないわけではないのだから、普通ならできることじゃない。
しかし、身体の関係があるなら、話は別だ。
私は、彼女にあることを頼むと、携帯電話の番号を教えて、別れた。

妻とは、結婚をしてから12年になる。
結婚したての頃は、25歳だったから、彼女は今37歳だ。
ふっくらとした顔をしていて、眼尻が下がっているから、年齢よりも幼く見られることが多い。
そのせいか、見ようによっては男好きのする顔をしている。
子供を3人産んでいるわりには、スタイルはまだ崩れてなくて、乳房なども目を見張るほどに豊かな張りに富んでいた。
尻も大きくて、細い身体とのアンバランスが、よく男の目を惹いた。
性格は、これと言って問題はない。
大人しいかと言えば、そうでもないし、かといって、特に口うるさく騒ぎ立てることもなく、毒にも薬にもならない気性をしているから、ことさら不満を覚えたこともなかった。
夫婦仲は、それほど悪くない。
ただ、2年ほど前から、軽いEDになって、夜の生活は、ここしばらくご無沙汰している。
私と妻は、8つ歳が離れていた。
妻も気遣っているのか、無理に求めて来ようとはしないので、申し訳ないと思いつつも、今まで甘えてきた。
だが、可愛がってやらないからと言って、それを理由に妻が不機嫌になることはなかったし、仲違いをしたこともない。
派手なことを好む女ではなかったし、ことさら癖のある性癖を持っているわけでもなかったから、あまり興味がないのだと思っていた。
どちらかと言えば性行為には控え目な性格をしていて、ことさらしたがるタイプでもなかったのだ。
だから、浮気などそれまで一度として考えたこともなかった。
ましてや、妻に変態的な嗜好があるなどとは夢想だにしたこともない。
実に、良き妻であったし、良き母親であった。
私は、心の底から彼女を信じ切っていたのだ。

ママ友の彼女から、携帯に電話があったのは、つい先日の夕方のことだ。
スーパーで会ってから、1週間ほどが経っていた。
近くの喫茶店に呼び出されて、そこで落ち合うことになった。
結論から言えば、クロだった。
それも、開いた口がふさがらないほどの真っ黒だ。

「待ち合わせしたところに3人いたんでしょ?その3人を相手に頑張っちゃったみたいよ。」

アイスコーヒーのストローを口にくわえながら、彼女は呆れたように言っていた。
にわかには信じられない話に、呆然と聞いていたものだ。

「そこに背の高い子がいなかった?その子が、奥さんをすごく気に入ってるらしくて、強引に口説いて、キャンプに行く前から、もう関係はあったらしいわ。私も知ってるけど、なかなかカッコいい子だから、今は奥さんの方が夢中になってるみたい。それでね、その子には、仲の良い子が他に二人いて、奥さんは、その子たちの相手もしてるみたいね。それが、待ち合わせ場所に一緒にいたふたりよ。どうして3人も相手にすることになっちゃったのかは知らないけれど、無理矢理ってわけでもないみたいで、キャンプに行った時も、納得して行ったみたいよ。奥さん、最初から3人を相手にするつもりだったのね。」

冷ややかな目で彼女に見つめられて、思わず頬が赤らんだ。
思わぬ妻のふしだらさと、それに気付きもしなかった自分が恥ずかしくてならなかったのだ。

「向こうに行ってからも、ずいぶんとすごかったみたいよ。最初からエッチ目的だったみたいで、誰も来ないような山奥まで行ったんだって。行く途中も車の中で散々したらしいわ。向こうに着いてからも、ずっと裸で服を着る暇もなかったって話よ。奥さん、休むこともできなかったんじゃない?若い人って、ほんとにすごいし、3人もいたらねぇ・・・。それで、3人いっぺんに相手までしちゃったって言うんだから、ちょっと彼女の性格からは信じられなくて、話を聞いたときには私も耳を疑っちゃったわ。でも、事実らしくて、ずっとそんなことばかりしてたみたい。真ん中の日は、裸の奥さんを山の中に逃がして、強姦ごっこみたいなこともしてたって言うんだから、まったく驚いちゃうわよねぇ。3人で追いかけて、捕まえた人からしたんですって。ずっと、一日中そんなことばかりしてたらしいけど、奥さん怪我とかしてなかった?でも、なんか、私も聞いてて、少しだけうらやましくなっちゃった。ちょっと、憧れたりはするわよねぇ。」

そう言った彼女の瞳には、妖しい光が浮いていた。
あの妻からは、信じられないような話ばかりに、現実のものとして捉えることができず、夢の中で話を聞いているような気さえしてならなかった。
しかし、言われてみれば、確かに妻の手足には、幾つもの擦過傷があった。
あれが地面にひれ伏しながら犯された傷ならば、納得もできる。
だが、アナルまで使わせたなどとは、にわかに信じがたかった。
アナルに触れただけで、嫌がるような妻だったのだ。

「コンドームなんて使わないでしてたって言うから、避妊はどうしたんだろ?赤ちゃんなんかできたら、最悪なのにね。」

おそらく、それはないだろう。
それだけは、確信があった。
私との交渉は、ここのところまったく途絶えていた。
だから妊娠などすれば、すぐに浮気が発覚する。
もし、彼女の話が事実であるならば、おそらくキャンプに行く前から、妻は避妊の準備をしていたのだ。
子供の学校の支度は、必ず前日のうちに終わらせていて、朝になっても、子供たちが慌てふためくことなど、一度もなかった。
何事にも念入りに準備をして、きちんとしていなければ、気の済まない性格をした妻だった。
おそらく、彼女は妊娠することがないように、きっと用意周到に準備をしていたはずだ。
ピルでも飲んでいたのかもしれない。
今夜、タンスの中でも探ってみよう、などと彼女の話を聞きながら考えていた。

「ねえ、ほんとにまったく気付いてなかったの?私は気付かなかったけど、若い子の間では、奥さん評判にもなってたみたいよ。」

彼女の瞳には、非難するような色があった。
正直なところ、性欲というものが失せかけていて、ここのところまったく妻の裸を見ていない。
多少でも、妻を気にかけていれば、もっと早くに気付いていたのかもしれないが、私は、それを怠っていたのだ。
非難されても仕方のないことだった。

「なんかね、その3人のうちのひとりが良いとこの坊ちゃんらしくて、結構いいマンションに住んでるみたいでね、そこをたまり場にして、乱交パーティみたいなこともしてるんですって。それでね、時々は、その3人以外にも、他の子が混じったりしてたらしいのよ。手当たり次第だったみたいね。ほんと、迷惑な話だわ。」

ため息混じりに、ぽつりとつぶやいた最後の彼女の言葉の意味がわからなかった。
淡々と口にしていたが、その時の彼女は、まるで妻を嫌ってるかのようにも思えた。
いったい、妻が彼女になんの迷惑をかけたのだろうか?
同じパート仲間として恥じているのか?
それとも、同性として、妻のふしだらな行為を軽蔑しているのか?
妻と同い年の彼女だった。
歳が同じだったせいか、知り合ってからは、同じ勤め先を探してくるなど、ひどく懇意にもしていた。
だが、その時の彼女は、妻を忌み嫌っているようにも見えたのだ。
そう言えば、一人言のようにしゃべり続ける彼女に、妙な疑問を覚えた。
彼女は、いったい誰から話を聞いたのだ?
まるであたかも自分が見てきたように話をしているが、それはいったい誰に教えてもらったことなのだろう?
それを考えると、不思議でならなかった。

「ねえ、ところで、それは誰に聞いたの?」

疑問が、口をついて出た。
彼女は、迷惑そうな顔をしながらも、あっけらかんと答えた。

「私のカレから・・・。私も奥さんと同じで、あの職場に若いカレ氏がいるの。奥さんを気に入ってる子と仲が良いから、頼んで全部訊いてきてもらったのよ。それを、あなたに教えてあげてるの。」

予想もしなかった答えに息を飲んだ。
彼女も、浮気をしていたのだ。

「でね、訊いてよ・・・。」

急に眉根をしかめ、不機嫌そうな顔つきで身を乗り出してきて、彼女が続けた。

「あなたに言われてから、すぐにカレに聞いたんだけど、なかなか教えてくれなくて、おかしいな、とは思ってたのよね。でも、やっと昨日白状して、なかなか教えてくれなかった理由がわかったわ。実は私のカレもね、その子に誘われて、今言ったマンションに、行ったことがあるんですって。それでね、あなたの奥さんとしてきちゃった、なんて言うのよぉ。挙げ句にすごく良かったなんて言うもんだから、もう腹が立っちゃって。あなたが、しっかりと奥さんを見ていないから、私まで嫌な思いしちゃったじゃない。」

怒ったように告白されて、ようやく疑問が解けた。
そうか、彼女は男を寝取られたと思っていたから、妻を快く思っていなかったのだ。
まさか、妻が彼女の男まで相手にしていたとは思いもしなかった。
それにしても、なんと言うことだ。
あの妻が、次々と若い男たちに体を開いているの言うのだ。
まさに彼女が言うように手当たり次第ではないか。
だが、聞けば聞くほど、あの妻が、そんなことをしているなど、にわかには信じがたい気持ちが強くなっていき、戸惑いさえ覚えた。
それは、おそらく事実なのだろう。
わざわざ私を呼び出してまで、嘘を教えるメリットが彼女にはない。
むしろ、浮気の事実さえ教えてしまったデメリットに、真実味さえ感じてならない。
きっと、彼女の言っているとおりなのだ。
妻は、次々と若い男たちに身体を与え、そして喜悦の声を上げて悶えているのだ。

「これから、どうするの?」

塞ぎ込むように黙り込んでしまった私に、彼女が苛立つように訊ねた。
答えなど求められても、すぐには返答などできそうになかった。
どうしても信じられなかったし、信じたくもなかったのだ。
その時、不意に彼女の携帯が鳴って、彼女は慌てたように小さなバッグから携帯電話を取り出すと、耳へと当てていった。

「うん・・・うん・・・わかった。すぐ、行くね。」

携帯を畳んだ彼女は、実に嬉しそうな顔をしていた。

「カレが迎えに来てくれたみたいだから、もう行くね。」

「彼?」

「今言った、若いカレ氏。浮気した罰に、今から遊びに連れて行ってもらうの。」

「えっ?これから?子供たちはどうするの?こんな時間から、いったいどこへ行くって言うの?」

本当なら、主婦である彼女は、夕げの支度にいそしんでいる時間のはずだった。
私の問いに、彼女の目が意地悪そうに輝いた。

「そのマンションに遊びに行くのよ。今日は、早くに仕事が終わったから、子供たちは、旦那が見てくれてるわ。たまには、私だって息抜きくらいさせてもらいたいわよ。」

「えっ!?」

露骨に乱交をしに行くと告げたのだ。
そのマンションは、乱交パーティのたまり場だと、彼女自身が言っていた。
予想もしなかった返事に、ただただ驚くばかりだった。
息抜きにしては、ずいぶんと艶めかしいことだ。

「じゃあ、行くね。」

立ち上がって、すぐさま背中を向けようとした。

「あ、それとね・・・。」

不意に振り返った彼女が、ひどく暗い目で私を見つめてきた。

「奥さんのことは、黙っていた方がいいかも。騒いでも何もいいことはないわよ。どうせ、遊びなんだし、向こうだって本気にはならないから、子供のことを考えたら、何も言わないで好きにさせてあげてた方がお互いのためだと思うわ。きっと、すぐに飽きちゃうだろうしね。それに、××さんだって、ずっとしてあげてなかったんでしょ?やっぱり、問題はあったと思うのよね。奥さん、ずっとこぼしてたもの。だから、少し遊ぶくらい大目にみてあげなきゃ。本気にならなければいいんだし、奥さんもバカじゃないから、それくらいわかってるわよ。」

妻を引き合いに出しているが、それは彼女のことも黙っていろと、暗に告げているように聞こえてならなかった。
若い男に弄ばれながら、喜悦の声を上げる妻のふしだらさが、大したことではないのか?
呆然としている私を尻目に、彼女はスタスタと歩いて店を出ていってしまった。


目の前で、話を聞かされても、にわかには信じがたい。
とても、浮気ができるような女ではなかったし、そんな気配など、これまで一度として感じたことはなかったのだ。
だが、あの奥さんが嘘をついているとも思えない。
やはり、妻は浮気をしているのだろうか?
しかし、乱交だと?
山の中で、強姦ごっこをしていただと?
あの妻がか?
キャンプから帰ってきた後も、いつもとまったく変わらない妻だった。
家事も手抜きすることなく、きちんとこなしていた。
相変わらず明るく笑うし、家族にも優しかった。
彼女は、彼女のままであって、ずっと良き妻であったし、良き母親であったのだ。
とても、ママ友の奥さんが言っていたようなことをしていたとは、到底思えない。
乱交までした事実を、あれほどうまく隠せるのなら、妻は、まさしく悪魔だ。
仮にそれがもし事実だとして、これからどうする?
離婚するのか?
3人の子供の面倒は誰が見る?
三女はまだ幼い。
長女にしたところで、まだ手の掛かる年頃だ。
思春期になって、いよいよ扱いづらくなってきた。
そこに、離婚話など持ち上がったら、いったいあの子はどうなってしまうのだ?
仕事にしたってそうだ。
今は、出世レースの大事な時期だ。
もし、離婚の事実が判れば、管理能力を問われるだろう。
私に不利益が働くのは、目に見えている。
浮気をしていようが、していまいが、選択肢など残っていないような気がした。
それに、私自身が、まだ妻を愛していた。
この事件が発覚するまで、なんの不満などもなかったのだ。
確証があるわけではない。
疑いがあるだけだ。
信じたくない思いが強すぎて、無理に信じ込もうとしていた。
キャンプだって、あれから仲間が来たのかもしれない。
ママ友の奥さんは、私をからかっただけなのだ。
気さくな彼女は、よく人をからかって楽しむところがある。
もう少し妻を信じてみよう。
無理にそう思い込みながら、私は家へと帰った。


玄関を開けると、ちょうど出掛けようとしていた妻と、ばったり出くわした。

「ああ、あなた、帰ってきたの?よかったぁ。ちょうど今、電話しようと思ってたとこなの。」

携帯電話を手にしていた妻は、いかにも助かったといった顔をして、明るい笑顔を向けてきた。

「え?なに?どうしたの?」

小綺麗に着飾った服を着て、丁寧に化粧をしていた。
強めの香水の匂いが、やけに鼻をくすぐってならなかった。

「あのね、ごめんなさい。また急にパート先から電話が入っちゃって、夜のシフトに入ってくれないかって、頼まれちゃったの。人がいなくて大変みたいで・・・。悪いけど、ご飯の用意はしてあるから、あの子たちに食べさせてあげてくれない?」

パートに出掛けるだけなら、そんなに着飾ることはない。
ずっと、気にはなっていた。

『あら?外に出るなら、これくらい普通よ。あなただって、自分の奥さんが綺麗に見られた方がいいでしょ?』

そうやって、いつも言いくるめられてきた。
私は、ずっと騙されていたのだ。
もはや、疑いの余地はなかった。
妻はふたつのパートを掛け持ちしている。
ママ友の奥さんと一緒に勤めている化粧品の配送センターの他に、深夜まで営業している大手焼き肉チェーン店の清掃婦もしているのだ。
通常なら、どちらも子供が学校へ通っている昼間だけだが、ここのところ、焼き肉屋の方が、突然、夜間のシフトが入れることが多くなっていた。
それを疑問に思ったことは、一度もなかったが、嘘だったのだ。
ついさっき別れたばかりのママ友の奥さんは、これからマンションに行くと言っていた。
そのマンションに待ち構えているであろう男たちと、息抜きと称した乱交を愉しむのだ。
おそらく妻も、その乱交に加わる。

「12時前には帰れると思うから。」

まだ6時にもなっていなかった。
つまり、これから5時間以上も、妻は何人もの男たちに弄ばれるのだ。
返事も待たずに、妻は、急ぐようにハイヒールに足を入れていく。
表情に悪びれた様子はない。
口元に微笑まで浮かべていた。
そんなに若い男はいいのか?
私の知らない妻が、目の前にいた。

「じゃあ、お願いね。あなた♪」

見事なまでに屈託のない笑みを残して、妻は、嬉しそうに玄関を出て行った。
きっとママ友が来ることは知らないはずだから、驚くはずだ。
だが、何事もなかったように、彼女たちは明日もパートに出掛けていく。
そして、今夜を境に、ふたりはより親密になっていくことだろう。
そうなったら、もう、私には、真実を知る術がなくなる。
口裏を合わせるようになるからだ。
胸の奥で、何かがすっぽりと抜け落ちたような感覚を覚えてならなかった。
私は、ぼんやりと玄関に佇みながら、妻の運転する軽自動車のエンジン音が遠のいていくのを、黙って聞いていた・・・。

2011/08/21 01:49:24(95m0bXiu)
62
投稿者: 不甲斐ない夫
妻からメールが来たのは、午前中のことだ。
出社して、仕事に取りかかろうとしたときに、突然届いた。
妻は、いつものようにパートに出掛けていたが、それが終わり次第、サトシと一緒に家に戻るという。
慌てて、体調不良を理由に、自宅へと戻った。
妻たちが帰宅したのは、12時を少し過ぎた頃だった。
いつも利用する軽自動車のエンジン音が聞こえ、急いで2階へと駆け上がった。
子供たちが使っている遊び部屋には、比較的大きなクローゼットがあり、そこに隠れた。
決定的な現場を押さえて、サトシを追い込むつもりだった。
二人は、家の中に入ってくると、すぐに2階へと上がってきた。
まっすぐに長女の部屋に向かい、妻が証拠と称する、長女の下着の有無を確かめに行ったようだった。
部屋中のドアというドアは、開放してあったから、格子造りのクローゼットからは、二人がどこに向かうのか、手に取るようにわかった。
また、長女のベッドを使って、二人がやり始めたら、どうすべきか迷ったが、それは希有な心配に終わった。
二人は、長女の部屋から、すぐに出てくると、そのまま夫婦の寝室へと向かったようだった。
すぐに踏み込むつもりはなかった。
他の男にやられている妻を見てみたい露悪趣味にも駆られていた。
しばらく、そのまま10分ほどの時間を、じっと待ち続けた。
寝室のドアは、締めてしまったのか、それらしい声も音も聞こえてはこなかった。
時計の針の進むのが、ずいぶんと遅く感じられて、その間も妻は奴の玩具にされているのかと思うと、鼻白むことではあるが、正直興奮を覚えてならなかった。
時計の針を確認し、辺りの気配を探ってから、ようやくクローゼットを出た。
足音を忍ばせながら、寝室に向かうと、かすかにドアの向こうから、妻の喘ぐ声が聞こえてきた。
妻には、いつも通りやれ、と言ってあった。
私に、聞かせたい気持ちもあったのかもしれない。
サトシ君、サトシ君と、情感たっぷりに喘ぎながら、妻は、ドアの向こうで細い声を出していた。
ベッドの軋む音が大きくなり、やがて妻の喘ぐ声が、絶息するような途切れ途切れのものに変わってから、ドアノブに手を掛けた。
下げるだけで解錠されるドアノブは、ほんの少し下げただけで、すっ、とドアを開かせた。
軽く押してやると、そのままドアは音もなく流れていき、開かれた視界の中に二人の姿が現れた。
妻は、大きく足を拡げきっていた。
サトシは、妻のひざの裏に手を入れて押し拡げながら、背中を立てて、眼下に妻を見おろしていた。
ゆっくりではあったが、叩きつけるような腰の動きだった。
緩慢に突いては、喘ぐ妻に頭上から罵声を浴びせかけた。
「おら・・・気持ちいいか?メス豚・・・。」
私の妻をメス豚と呼んだ。
それを聞いた瞬間に、私の中で、こいつは殺してしまってもかまわない存在になった。
「お願い・・もっと気持ちよくして・・・何でもするからもっと突いて・・・。」
時折、深く突き入れては、思い出したように止まる。
焦らして、それを眺めながらサトシは楽しんでいるのだった。
はしたない妻の言葉には、正直、息を飲んだ。
こんな淫らな言葉を口にするような女ではなかった。
いつもの通りにやれ、とは言ってあった。
つまり妻は、いつもこうして奴らを喜ばせているわけだ。
「ケツなんか振るんじゃねえよメス豚・・・。大人しくしてねえと、やらねえぞ・・・。」
「あっ!いやっ!・・。」
不意にサトシが抜いたようだった。
妻は、慌てたように腰をくねらせた。
それでももらえないとわかると、しがみつくようにサトシに胸を合わせていった。
その時、サトシの肩越しに、妻と目があった。
「あっ・・・。」
妻は、ばかみたいに口を開いただけだった。
妻が急に止まったのを見て、サトシが怪訝そうに、こちらを振り返った。
「よう。」
不思議なほどに、気持ちは冷静だった。
足は震えもしなかった。
入り口に背中をもたれさせ、腕を組みながら、二人を眺めていた。
まったく、免疫とは恐ろしいものだ。
目の前で、赤の他人に妻を抱かれていても、今までの経緯があっただけに驚くはずもない。
「だ、誰?・・・・」
その時のサトシの顔は、なんと言葉で表現していいかわからない。
驚いたような、今にも泣き出しそうな、そんな不思議な顔だった。
「そいつの旦那だよ。」
その言葉を、サトシは理解したかどうか。
「そ・・そうなんですか?・・。」
おかしな受け答えだった。
「どうした?先を続けろよ。」
私の露悪さにも拍車が掛かっていた。
そのまま続けるのなら、それを眺めているのも面白いと思った。
サトシは、突然のことに、状況をまったく理解できていなかった。
きっと、今までこんな状況に追い込まれたことがなかったのだろう。
それだけ、奴らは狡猾にやっていたということだ。
パニックを起こしていたサトシは、不思議な行動に出た。
信じられないといった顔をしながらも、また、私の言うがままに妻の上に覆い被さっていったのだ。
腰を、二、三度動かした。
そして、思い出したように、また身を起こすと、泣きそうな顔で私を見つめた。
「あ、あの・・これはですね。その・・ぼ、僕が悪いわけじゃなくて・・あ、奥さんが・・・奥さんの方が僕を誘ってきたわけで。・・だから、その・・・僕が悪いわけじゃないんです・・・。」
最後は、媚びを売るように笑みまで浮かべていた。
それを聞いた瞬間に、脱兎のごとく駈け出して、奴に襲いかかったのは、言うまでもなかった。

妻が慌てて止めに入らなかったら、私はサトシを殺していたかもしれない。
ベッドの上に駆け上がるなり、奴の髪を掴んで、床に叩き伏せていた。
そのまま、何度も顔面を床に叩きつけ、奴の顔は血塗れになった。
きっと、鼻は折れたことだろう。
妻は、慌てて私とサトシの間に身体を入れると、身を挺してサトシの上に覆い被さり、奴をかばった。
「サトシ君!大丈夫?!」
不安そうに向けていた目は、演技だけとは思えなかった。
「なんでこんなことするんだよぉ・・・。俺が、何したって言うんだ・・・・。」
妻の身体の下で脅えながら、奴は、涙まで流して、恨みがましそうな目を向けていた。
その目を見た瞬間に、反射的に、もう一発殴っていた。
「もう、やめて!」
妻の怒声に、あきれた気持ちにもさせられた。
妻は、必死にサトシをかばっていた。
私を愛してると言いつつも、妻にはサトシもまた大事なのだ。
それがわかって、面白くなかった。
呼吸を整えて、荒ぶる気持ちを抑えた。
妻は、子供をあやすように、大きな身体を縮こませて震えているサトシを気遣っていた。
妻が、奴らを子供だと言っていた理由が何となくわかった。
間男と言えば、昔なら死罪にもあたる重罪だ。
発覚すれば、姦淫した妻と、戸板一枚を背中合わせに挟んで縛り付けられ、生きたまま川に流されることになる。
裁きによって決められた罪ではなく、妻を奪われた夫が、当然の権利として認められた、言わばリンチのようなものだ。
それだけ、人の妻を奪うというのは、昔から禁忌とされてきた。
だが、それが、こいつ等にはわからない。
ほんの少し、子供が悪戯をした程度でしかない。
人様の女房を弄び、玩具にしたところで、それは奴らのとって遊びでしかないのだ。
だから、殴られても、殴った方を非難することができる。
悪いことをしているなどという意識が、まったくないからだ。
しかも、反撃を受ければ、抵抗することもせず、脅えているだけだ。
あきれすぎて相手にする気にもならなかった。
怪我の手当をするために、妻が奴の手を引いて、1階へと下りた。
サトシは、もう泣いていなかったが、反撃する意志もまったくなさそうだった。
それよりも、これからどうなっていくのか不安でならないような顔だった。
私と目が合うと、逃げるように避けた。
妻の目の前で、これからの話をしたくはなかった。
「出掛けてくる。」
サトシの襟を掴んで立たせた。
そのまま、玄関へ向かっていこうとすると、慌てて妻が追ってきた。
「わ、私も一緒に行くわ。」
思わず振り向きざまに、妻の頬を叩いていた。
妻に手を上げたなど、初めてのことだった。
彼女が心配していたのは、私だったのか、サトシだったのか?
おそらく後者であったろうと思う。
それだけに、苛立ちが募っていた。
苛立ちが、反射的に腕に伝わった。
「お前は家に居ろ。もうすぐ子供たちが帰ってくる。母親なら子供たちの面倒を見るんだ。」
私の気持ちがわかったからか、それとも、初めて私に殴られて驚いたからなのか。
強く睨んでそう言いつけると、妻は、打たれた頬を手のひらでかばいながら、泣き出しそうな顔で小さく頷いていた。


密室に閉じこめるつもりはなかった。
それでは、相手の気持ちを引き出すことができない。
脅えている相手ならば、なおさらだ。
近くのファミレスに二人で入った。
意外な場所に連れてこられて、サトシ自身も、意外そうな顔をしていた。
目の縁や、唇の端には紫色の痣が目立ち、鼻には、大きな絆創膏が貼ってあった。
「あとで、医者に行けよ・・・。」
飯を注文してから、タバコに手を伸ばし、それを吹かしながら言った。
さほど痛がっている様子でもなかったから、鼻は折れていないのかもしれなかった。
サトシは、狐に摘まれたような顔をしながら、小さく頷いていた。
私は、何も語らずに、苛立ちながらタバコを吹かし続けた。
こちらから問いかけたのでは、相手に自由な解答をさせることになる。
本音を引き出すためには、常に向こう側から発言させなければならなかった。
「あの・・・。」
しばらくの間は、俯いたまま黙っていたが、やがて沈黙に堪えかねたようにサトシが口を開いた。
私が、何を考えているのかわからない。
それを確かめなくては、不安でしょうがないのだから、向こうから口を開いていくしかないのだ。
「なんだ?」
短く答えた。
相手にできるだけ、話しをさせるつもりだった。
「これから、どうするんですか?」
「どうして欲しい?」
「警察にでも、行くんですか?」
「なぜ、そう思う?」
「いや、すごく怒ってるみたいだから・・・。」
「もちろん怒ってるさ。」
「あの・・・。」
「なんだ?」
「警察に行くつもりなら、やめた方がいいですよ。」
「なぜ?」
「その・・こんなことは言いたくないけど、お宅が不幸になりますよ。」
「なぜだ?」
「ビデオ・・。」
「あ?」
「奥さんのビデオが・・・あるからです。」
その時だけ、サトシの目が光ったような気がした。
「それで?」
そんなことは折り込み済みだ。
「いや、だから・・それがご近所にでも出回ったら・・困るかと・・。」
私が驚かなかったのが意外だったのだろう。
サトシの目に、また不安の色が浮き始めた。
「それは、脅しか?」
「いえ・・そうじゃないですけど・・・もし、そんなことになったら困るだろうなあ、と思って・・・。」
はっきりとは言わないが、らしきことは匂わせる。
もっとも狡猾で、卑怯なやり方だ。
「君は意外と頭が悪いんだな。」
毅然として言った。
「なにが・・ですか?」
「妻と関係したくらいなら犯罪にはならない。立派な離婚の原因にはなるがな。だが、脅してその事実を隠蔽しようとしたら、これは間違いなく脅迫だ。これで、君は今日だけでも二つの罪を犯したことになる。」
「二つ?二つって、僕は脅したつもりもないし、独り言を言っただけです。それに、もうひとつの罪って、なんですか?」
「家宅不法侵入だよ。私の家に黙って入ったろ?」
「そ、それは、奥さんがいいって言ったから!」
「まあ、落ち着けよ。大きな声を出すな。それでなくとも君は目立つんだから。いいか?これだけは言っておくぞ。俺に脅しは通用しない。妻のビデオをばらまくというならやればいい。その代わり、こっちも反撃するぞ。まず妻を脅迫して姦淫を強要した事実を訴える。次にそれを達成するために不法侵入し、家族に危害を加えようとしたこともだ。何年かかろうが、徹底的にやる。しかも、君だけを集中的に狙う。妻を当てにしているなら、あきらめた方がいい。君と家族、あいつがどちらを取るかは明白だ。だからこそ、今まで家族にばれないようにやってきたし、私とも別れなかった。だが、それが白日の下にさらされた今となっては、君たちに脅されて隠し事をしていた事実に脅えることもない。堂々と私の味方につくことになるだろう。」
半分は、はったりだった。
いざ、裁判となったら、果たして妻がどちらの肩を持つかは、まだ私には、はっきりとはわからなかった。
身を挺して目の前の男をかばっていた妻の姿がある。
天秤は、どちらに傾くか、まだ五分五分と読んでいた。
「僕だけを狙うって・・・。」
「君たちは、3人いるのだろう?3人で妻を犯していた。だが、狙いを付けるのは君だけだ。」
「どうして!?」
「私の妻をメス豚と呼んだからさ。」
そうだ。こいつは妻をメス豚と呼んだ。
それだけでも万死に値する。
「そんな・・そんなこと僕だけじゃないですよ!」
「だろうな。だが、ターゲットになるのは君だけだ。大人の怖さを教えてやるよ。それなりに著名な弁護士も知っている。徹底的にやって、君だけじゃない。君の家族も同じ目に遭わせてやる。一生を潰してやるよ。」
「そんな・・・。」
途方に暮れた顔だった。
「家族だなんて・・・家族は関係ないじゃないですか!?」
「私も家族だが、大いに迷惑しているぞ。あまつさえお前等は、私の娘にまで手を出そうとした。」
「それは・・・それは、ゲームですよ。本気じゃなかった。あくまでゲームだったんです。本気でそんなことをしようなんて思ってなかった。」
「たとえゲームだろうが、私の娘にそういったことを仕掛けようとしただけで犯罪になるのさ。そうだ。これも立派な犯罪だ。またひとつ前科が加わったな。」
動じない私の態度に、打つ手を失ったような顔だった。
注文したメニューが運ばれてきても、サトシは、俯いているだけで、口を付けようとはしなかった。
「あの!」
ほとんど飯を食い終えた頃に、ようやく口を開いた。
「か、金を上げます。それで、どうですか?慰謝料として、あなたにお金を差し上げます。それで、和解ってことで、どうです?」
うまい具合に条件を提示してきた。
向こうから先にそれを口にしてしまえば、あとは操るなど思いのままだ。
「金?君は貧乏学生だと聞いたぞ。そんな金があるのか?だいたい、幾ら払うつもりだ?」
「か、金は、友達が出してくれます。もちろん、僕も働いて返します。金額は、あなたの気の済む金額を仰ってください。」
友達とはテッペイのことを言っているのだろう。
こんなことになっても、自分で解決の道を見つけようとはせずに、友達頼みだ。
やはり、こいつ等はガキだ。
額面を言うつもりはなかった。
それを口にすれば、今度はこちらが脅迫罪に問われかねない。
「誠意を示すというなら、君が金額を提示しろ。」
あくまでも、向こうに言わせなければならなかった。
苦渋に満ちた顔をしていた。
浮気の慰謝料など、こんなガキどもにわかるはずがない。
「ご、五十万なら、どうですか?・・・。」
金額の少なさに思わず声をあげて笑いそうになった。
「話にもならんよ。」
「だ、だったら、百万なら、どうです?」
精一杯譲歩したという顔だった。
それが、この子供の限界なのだろう。
「今時離婚の慰謝料でも、それ以上の金を出す。貧乏学生の君に、そんな金が払えるとは思えんよ。」
しれっと言ってみせた。
途端に奴の顔つきが変わった。
「だったら!どうすればいいんですか!?教えてくださいよ!」
顔を赤くして、私を睨みつけていた。
自分が悪いことをしておきながら、抜き差しならなくなったら、すぐに逆ギレだ。
今のガキどもの顕著な傾向だった。
「そう声をあげるな。警察を呼ばれたら困るのは君だぞ。」
途端に、サトシは、おどおどと周りに目を走らせた。
「いったい、どうしたら、勘弁してもらえるんですか!?」
身を乗り出して、小声で話しかけてきた。
いい加減うんざりという顔になっていた。
これ以上追い込めば、コントロールが難しくなる。
「鼻から金など欲しくはない。だが、このままでは君を許すことができない。」
「だったら、どうすればいいんですか?」
「今から、俺の言ったとおりにしろ。結果次第では、君を許してやる。」
「何を・・すればいいんですか?」
まだ、不安そうな顔だった。
「簡単なことだ。他の二人を、マンションに呼び出せ。そこで、決着を付ける。」
意外な返答に、サトシは、口を開いて私を見つめていた。

11/09/06 21:11 (ockjiKX.)
63
投稿者: 無名
ドキドキしますね。前回から待っていただけのことがありました。
続きを期待しています。
11/09/06 21:46 (nbecJ/tg)
64
投稿者: 通行人
主さん上手いですね!たまたまかも知れませんが、投稿のタイミングが絶妙です。フィクションであれ、ノンフィクションであれ、他の投稿者の期待が高まり、先を知りたいストレスを感じた時に投稿するタイミングが良いです!
更に、不甲斐なかった主さんの怒りを爆発させる内容が、一段と良いですね!
今後、初めて主さんにぶたれた奥さんの心情や子供達の生活を入れつつ、ガキ共への復讐が完結するのか、実はまだ奥さん自身が手の内を見せてないのか、主さんの手の内が深いのか、期待が高まります。
非常に楽しみです!
11/09/06 22:57 (uTZM5x9R)
65
投稿者: (無名)
最高の展開になってきましたね!
ガキどもがこの先一生怯えて生きて行かなければならない用な復讐を期待しています
それから、嫁は仲間になれと言っているみたいだか
それでは、主さんがガキどもと同じになってしまうから、それだけは止めてください
いつの時代も、親父は子供たちのヒーローなんだから
11/09/07 07:01 (FlXYzbmu)
66
投稿者: (無名)
嫁の出方が気になりますね。主さんを裏切るのか?はたまた、寝返るのか?
非常に興味深いです。
たぶん裏切るんだろうな?と思いますが…
何にせよ、幸せな家庭には戻れないですね!

11/09/07 09:29 (UJ/7vneb)
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