2013/08/21 14:35:06
(BOBXNEVo)
受精までの記憶。
大学最後の夏に住宅改修工事のアルバイトに借り出された家がA子の本宅だった。
そこでA子を視て間もなく思わず声をあげてしまった俺を視て、怪訝な顔をしたA子もすぐに驚きの声をあげた。
抱き合わんばかりに再会を喜び合う中で涙さえ溢れさせたA子の顔が蘇る。
この頃の俺は中学時代から30センチほど背丈が伸び、スポーツ好きで筋肉質の引き締まった身体をしていた。
髪の毛が短く、容姿のイメージはボクシング金メダリストの村田選手といったところ。
工事仕事後に親しく会話する中で、父親の会社の取締役を務めているが体調を崩して暫く休んでいること、親の薦めに従って結婚した夫と反りが合わないこと、後継ぎを産まなければならない立場でありながら夫婦揃って不妊症ぎみであることなどを打ち明けられた。
それを聞いた俺は、さして深い考えも無く「もう少し待ってくれれば、僕がA子さんのお婿さんに立候補したのに」と口走った。
その言葉にA子が何と答えたかは記憶が定かではないが、一瞬目が輝いたような記憶が残っている。
その数日に親しく会話した時だったと思うが、A子が30歳まで妊娠しなければ精子バンク活用してでも妊娠を目指す約束になっていると打ち明けた。
そして何と、俺に子種を提供してほしいと申し入れてきたのだった。誰の子種か知らないで妊娠したくないし、俺なら元気で可愛い男の子を授けてくれそうだから、と。俺は気持ちの整理をつけるまで少し時間はかかったが、A子の真剣な念いに応えてやらねばならないとの結論に達した。
次の排卵日まで一週間ほどしか時間がなかったが、俺は可能な限り妊娠の確率が高まるセックスの仕方を勉強した。専門家の医者にも聞いた。子だくさんの大学教授にも聞いた。
間もなくの排卵予定日、俺はA子にあることを申し入れた。子供がほしいと心底願いながら夫婦のセックスをしよう、と。
俺は心の底からA子を妻として愛し、知る限りの性技を駆使して彼女を絶頂に狂わせていると、子宮がついに開いた。まさに教えてもらった通り。
亀頭冠がすっぽり子宮に呑み込まれた瞬間、俺は一週間溜めておいた子種を一気に放出した。その夢のような感覚の中で、俺は受精させる悦びのような不思議な感情に包まれたことを覚えている。
但しそれ一度ですぐ妊娠するかは不明だった。が、その結果は数週間も経たずにA子から知らされた。生理が来ないと。
妊娠を悦ぶ家族や友人知人達は皆精子バンクの子種による妊娠と思い込んでいる。今も変わらず。