2018/09/23 19:02:50
(nbeSiX9B)
平日に美晴さんが有休を取ったことがある。
大学の行事で俺と正樹の二人が、ちょっとした出番があったからだ。
「あ~やっとおわったよ~・・・ったく話長いから、肩こってこって」
正樹が伸びをしながら言う。
「はは俺も~」
軽く相槌を打つ。
「まったくどうして先生ってのは話が長いかね~」
正樹が文句を言っている。
その向こう側に、美晴さんが車を止め、少し控えめに手を振っている。
俺はそれが俺に対してだと気付き、ドキン・・・と、していた。
なぜなら、手を振る美晴さんの顔が、俺には恋人に対するような顔に思えたからだ。
「あ・・・っと・・・正樹、おばさん・・・が」
俺は動揺を隠して気付いてない正樹におばさんの存在を伝えた。
「え?、あ!」
ようやく車の直前で気付いたみたいだった。
「ホントに母さん迎えにきたんだ!」
「だってせっかく母さん、お休みだし~晴れ姿、見ておこうって」
ニコニコ笑顔で美晴さんは息子に対して言う。
それは、先程見せた女の顔ではない、完全に母親の顔だった。
「それにしても・・・フフッ馬子にも衣装ってね」
美晴さんは俺たちのスーツ姿にからかう様に言って来た。
「・・・だってさ」
と、正樹が俺を肘で軽く押しながら言ってくる。
「お前のことだろ?」
と、俺も言い返す。
美晴さんは、そんな俺たちを見て、ケラケラ笑っている。
傍から見ると息子と母親と息子の友達。ただそれだけの関係にしか見えないだろう。
しかし、その友達の母親と・・・・・・俺は男女の関係を持っている。
決して知られてはならない。秘密の関係。
「でもわるいね、母さん、俺、このあと約束があるんだ」
正樹が突然、そんなことを言い出した。
「え?何それ?」
美晴さんも聞いてなかったようで、腑に落ちないようだった。
「ヤボ言わないでよ、へへっ、デート」
そう言うと正樹は、車が止まってる進行方向とは逆に歩き出す。
「もう」
そう言う美晴さんに正樹は振り返る。
「まぁ~誠でも送ってやってよ、じぁね」
よろしくといった感じの軽く手をあげる動作をしてあるいて行ってしまった。
「~んだよ・・・正樹・・・せっかく、お母さん来てくれてんのに・・・」
俺がそう言うと美晴さんは、俺の方を少し頬をピンクにして言った。
「でも・・・よかったかもね」
「え?」
どうしてか判らない俺。
「おかげで、ゆっくり・・・フフ・・・」
そう言う美晴さんの顔は、母親の顔から女の顔になっていた。
「二人っきりで・・・」
俺を見る美晴さんの顔は、早くも蕩けていた。
「・・・あは」
そう言うのが俺は精一杯だった。
「・・・じゃあ、行こっか♪」
美晴さんは運転席に乗り込みながら、俺も車に乗るように合図した。
「・・・うん」
俺が車に乗ると、すぐにエンジンがかかり、ブロロロロッと走り出した。