俺27歳、元嫁24歳で結婚して、1年は毎晩セックスしてた。
休日は朝から晩までヤリまくってた。
元嫁に生理が来ると、手コキで抜いてくれた。
それも亀頭中心の焦らしをされて、我慢汁ダラダラ流しながら涙目で腰をカクカクさせてた。
「イカせてくれ~」
と懇願する姿を見て、ニヤニヤしてた。
そして、思い切り竿をこすられて大暴発、大量射精を元嫁に観察されて、羞恥にまみれた。
結婚2年目の9セックは、週5回くらいに落ち着いてきたし、ヤリまくるというより、抱き合って愛し合うようなまったりしたセックスになっていた。
そして結婚して3年目、俺が激務の職場に異動になり、毎晩帰りが遅くなった。
選択だけでなく、二人でやってた料理や、俺が担当していたトイレやバスルームを含めた家の掃除も元嫁がするようになり、セックスは日曜日だけになった。
土曜日は疲れて10時くらいまで寝てて、元嫁と触れ合う時間が減っていった。
元嫁だって仕事してるから疲れてるのに、俺のほうが忙しいからとだらけてた。
でも、収入は3割増しになって、経済的なゆとりはできた。
元嫁が少しずつおかしくなっていたのは感じてた。
毎晩遅くて疲れている俺に相談できず、何かを一人で抱え込んでいたようだった。
そして、元嫁が離婚届と「ごめんなさい。さようなら。」の書置きを残して出て行った。
元嫁にメールを入れたが返事はなく、元嫁の実家に連絡を入れたが帰ってなかった。
不思議と驚かなかったが、何もやる気が起きなくなった。
休日の家事も最低限、食事を作る気にもなれず、外食かコンビニ弁当になった。
仕事も、何のために頑張っているのかわからず、上の空になることが多くなり、ミスが目立って迷惑をかけるようになった。
休日、まとめて洗濯しようとしたら、俺は洗濯機の使い方を知らなかった。
どの洗剤を、どこに入れるのか、柔軟剤?どうすりゃいいのかわからなかった。
今度は俺が壊れてきた。
我慢できずに元嫁の職場を訪ねたら、辞めていた。
涙が止まらなかったが、諦めて離婚届を出した。
「今までありがとう。さよなら…」
と言いながら…
俺も仕事を辞めた。
そして、東京を見限って田舎へ帰った。
田舎で似たような仕事に就き、収入は最高額の時の半分になったが、東京より生活費も安く、妙なプレッシャーもないから精神衛生上は良かった。
帰郷して1年の頃、元嫁元気かな…なんて思っていた頃、俺の職場に元義父が訪ねてきた。
そして、指輪を俺に渡し、元嫁が亡くなったことを告げた。
元嫁、余命宣告をされてたけど、俺に言えずにいたみたいだった。
俺に悲しい思いをさせまいと、黙って離婚を決意し、一人身の回りを整理して山間の病院で余生を送っていたのだ。
意識が混濁する少し前、親へ連絡したようだった。
そして元嫁は、両親と兄夫婦、甥っ子姪っ子に看取られて、この世を去った。
俺が、元嫁の変化に気づいていれば、いや、気づいていたのに放置しなければ、元嫁は俺の手を握りながら逝けたと思うと、涙が止まらなかった。
俺は田舎で再婚して四十路のオヤジで、9歳と6歳の娘の父親になっている。
今年、元嫁の十三回忌だった。
俺は今の嫁に元嫁のことは話してあったから、元嫁の十三回忌に上京した。
法事に顔を出しに行ったんじゃなくて、元嫁と暮らしたアパートの前に佇んで、元嫁との思い出に浸った。
元嫁と歩いた路地を歩き、元嫁とよく言った店で?んだ。
そして夕方、法事が終わった元嫁の眠る墓に出向き、選考と花束を手向けて手を合わせた。
「俺の嫁として、見送ってやれなくて、ごめんよ。さよなら…」
直接伝えることができなかったお別れを言った。
去り際に「さよなら、あなた…」
と聞こえたような気がして振り返ったら、元嫁がほほ笑んだような気がした。
でも、その元嫁の顔は、おぼろげだった。
もう、元嫁の顔すら、記憶が薄れていたことに愕然としながらも、もう一度お別れを言って駅に向かった。
車窓に映る四十路オヤジになった俺の顔を見て、歳を感じた。
今でも元嫁を好きだと思っていたのに、顔を思い出せなくなっていることが悲しかった。
そして、元嫁と暮らした3年間が、遠い昔になっていることを悟った。