私は家屋の排水管経由で汚物採取するのが専門だが、「窓等を締めて(締め切って)排水を流す」住人の方が圧倒的に好きだ。
トイレの窓しかりお風呂の窓しかり、開けっぴろげたトイレや入浴するような家は遠慮している。
(まぁ全開に近い家には年頃の標的も住んでいない訳だが)
そんな中、歯科医の娘さんが2人で同居していると聞いた物件を知った。しかも歯科医のパパが娘のために戸建てを新築したという。さながら年頃の娘達のために新生活を送らせるためにパパからのプレゼント、ということか。
現地外観は50坪程度の2階建ての上品なもの。防犯カメラやセンサーライトも散見され、駐車場は3台分程度。
なによりポイントは「LDKの窓以外、小窓が少ない」というもの。
階段やクローゼット位置と思われる採光用の小窓は分かるが、なぜか浴室、トイレのルーバー等が見当たらず、壁が多い。
まさか今日日、農家のような離れた便所や近所の銭湯を使う訳でもあるまい。ましてや、「かわいい女の子はオシッコやウンコをしないし、いつでも清潔」という昔の迷信どおりなんてこともあるまい。
調べてみると、最近の戸建ての中には窓を設置せず24時間最新の換気扇で対応している物件もあるんですな。
理由は「防犯上、換気効率、間取り関係、強度、建築費」といったメリットが。まぁ、大事な娘を住まわせるんだ。おそらく「覗き」や防犯上の窓無しということの理由が大きいのだろう。
事実、彼女達は明らかに車を使用。不在の時も在宅している時も窓やサッシを開けているのを見たことが無いし、付近からの観察でも他の家族が長居したりや彼氏を連れ込んでいる様子(←これ重要)もない。
まさに私好みの『完全閉鎖の家』だ。
しかし、絶対に『完全閉鎖の家』なんてものはない。夜間、覆面で玄関のセンサーライト覚悟で敷地に侵入し地面を辿るとやはりある、「おすい(汚水)」「うすい(雨水)」の配管塩ビ蓋(ます用フタ)。
外壁とトイレ、浴室の位置から推測し汚水フタを順次開けていくと・・、ありましたー!「ウンスジ」とこっぱり付いた「トレペ残骸」が。
茶色の筋を擦って臭いをかぐとやはり『臭い』。観察で拝見した20代の素敵な外観とは裏腹に「くさいものはくさい」。
あわせて、キッチン用よりも汚れが少ない排水溝も確認。明らかに浴室からの配管。
トイレと浴室付近は壁ばかりで防犯カメラも見当たらない。「覗き」目当てならこれで退散だが、私の場合はここからが本領。
偵察時に写った防犯カメラの日から半月おいて、今度は(カメラの無い)側面の塀から潜入。いつものように“パッ”という照明ONのドキドキ感は無いが、キッチン含め3カ所のフタを開けておき、配管からの排水音でひたすら待つ。
時間は22時台。車は姉妹分があり、在宅は間違いないようだが、窓はサッシで完全閉鎖されており、夜間でも照明の漏れは階段用の細い窓からしか窺えない。『外からの潜入を“完全シャットアウト”した』造りに大いに興奮する。
なぜなら『“屋内から出すもの”には面白いほど「セキュリティが働いていない」からだ。
例えば換気扇やエアコン室外機からの熱交換の排気、配管からの排水、ゴミ出しの日など・・。
ほどなくして『ゴオォォォォ~』と音が響いてくる。トイレからの配管だ。
ライトを点けて管内を覗き込むと、結構な勢いで流水が。どうやら内側ではなく外壁沿いにトイレは位置しているようで管からの距離は近い。
初っ端はオシッコ。トレペは上質な香りつきのダブルロール。100Φ径なので小さなボトルしか入れられないが、ほとんどが水で黄色さと尿臭は皆無(T_T)。
トレペだけ口へ放り込み浸みた水を飲み干す。
別の管からは泡の水。キッチンからだ。流水は緩く、キッチンが屋内の内側にあることが推測できる。
あまり興味はない配管だが、妙にヌルヌルするのは油を紙類に吸わせて燃ゴミとして処分せず、そのまま流しているように思われる。
下水道の敵め・・。少しすくって飲んだあと、7つ道具のうち、タオルを配管にネジ込んで詰まらせてみる。
しかし洗い物が少なかったのか、こちらは残念ながら込めた排水管を満水にできず、キッチンを修羅場にすることは(今日)できなかった・・。
次は浴室。しかし、キッチンにしろトイレにしろ壁ばかりで照明予測ができないから世話が焼ける(笑)。
姉妹どちらかは分からないが、ホッコリ暖かいお湯が暫く流れたあと、しばらくして上品なシャンプーとコンディショナーの香りが管内から漂う。
泡立ったお湯をすくって飲んで堪能していたところ、トイレ配管からまたも「ゴオォォー」と流水音。
またもオシッコ。「さぁ貴方。ゆっくりさせないわ。飲みなさい♪」とばかりに水とトレペが「ドバドバ」と屋内から放出されてくる。
入浴中の姉妹どちらかの反対側からのプレゼントだ。急いでトレペを口に放り込みつつ、浴室からの配管に濡れタオルをねじ込む。
浴室配管の外壁から聴診器(←通販であり)を当ててみると、浴室もトイレ同様に壁沿いにあるようだが判然としない。
ただ、地面から2mあまり上にある換気扇排気口から『エー!なにこれー!?』と女性の叫び声があがり、おそらく詰めたタオルが効いてきた模様。
その後しばらく沈黙していたが、「もぉーー、なにこれーー、流れんっーー!」と、焦りの色が換気扇口から窺え興奮は最高潮に。
世間知らずの姉妹達なら屋内ばかりに気をとられ大丈夫かと思うが入浴していない方の姉妹に外の様子を見に来られても厄介なので、タオルをズッポ抜く。
『ドダアァァァァーーーー!』と凄い勢いで配管から湯が突き抜ける。いかに高級な建材だろうがセキュリティ万全だろうが「穴を塞ぐと詰まる」という古来からの常識はそのままだ。
放出されつづけるお湯のうち、2L分をミニジョウゴ+ホースで抜き取りバッグへ。
多少コンクリ床を濡らしてしまったが、入浴中の彼女にしてみれば問題はいちおう解決。今日出てきて配管周辺チェックすることもあるまい。
長居は無用、と今日は現地を後にした。