毎朝同じ時間に電車に乗り、同じ場所の同じ位置の座席に座り、そして一年が無事に終わる。不思議な事にいつも見慣れた顔があるにも拘らず、日常の挨拶すら無いものです。100キロの遠距離通勤をグリーン車使用している僕は、いつもの座席に座り、顔見知りのアテンダントの朝の爽やか?な笑顔と挨拶に迎えられ、下車駅迄眠りにつきます。今年6月から同じ女性が隣に座る事が、ほぼ毎日続いています。彼女の乗車はだいたい窓側の席がほぼ埋まる頃で、下車は僕と同じ駅です。ごく普通のアラサーという感じのOLさんです。6月以前からたまに同席する事があり、記憶の片隅にはありました。ある日、彼女が下車駅に近付いても、寝たままです。疲れているのかな?と思い、起こしてあげました。何度もお礼を言われ、朝の気分としては、悪いはずがありません。「明日から、僕も起こしてくださいね。」から毎朝デート?が始まりました。でも、昨日までの会話は、下車手前の「おはよう。仕事頑張りましょうね。」判を押したようにこれだけです。でも毎日の中での出来事があります。僕が寝ている間に、隣に座る気配と座ってから直ぐに伝わってくる匂いなんです。たまに座る他の人は、目を開けなくても判ります。髪・メイク・服からそしてこの季節特有の肌から漂う匂いに個性を嗅ぎ分けるのです。腋臭の香ばしい匂いが漂うと理想の物語になりますが、残念ですがそう美味い話にはなりません。それに以前の僕ならば、一週間後に必ずアタックしているのですが、意欲がわかないまま、タイミングを逃した感じになってしまいました。意欲とはズバリ彼女の唾の匂いを嗅ぎたいという欲求です。顔そして特に口元と唾の匂いを連想させるスイッチが入らないのです。普通、意中の女性に対して、断られたらどうしようの感覚でなかなかアタック出来なかったり、諦めてしまう方が多いですが、断られても翌日から挨拶可能なアタックをすれば良いだけですから、僕の回路に電流が流れなかったのですね。僕の彼女の存在ですか?匂いを武器にいろいろな僕の造り出す回路を絶縁してくれているのでしょうね。