夏(18)
俺の初体験は18歳の夏であった。相手は熟女とは言わないでも年上であった。
この時の初めての年上女性体験がこの先の人生に影響を及ぼしたのか、俺は一度ですら同級生や年下と付き合った事がない。
親からの最後の支援で大学へ行かせてもらった俺。全てが新しい環境で心は踊っていた。自転車通学から電車通学へ。制服ではなく私服通学。授業は自分で選ぶ単位制。大したレベルの大学ではなかったが、それでも大学生気分に満喫出来ていた。
だが同時にコンプレックスも持っていた。
俺の周りの友人知人は次々に運転免許や自動二輪免許を取得し、大学の中にも「モテ格差」というものが自然と構築されていった。
金がある。免許がある。一人暮らしをしているの3点セットを持つ者と持たぬ者の格差は明確であり、そして俺は持たざる者であった。
その時代、俺たちの価値観の中で「どうやれば効率よく金を稼げるか?」という問題においては答えは一つだった。それは「住み込み」である。いや時代背景を考えれば「リゾートバイト」と言った方が適切な表現であろう。
リゾートバイトでは、基本的に「住」と「食」は完全にサポートされている。「衣」ですらバイトの制服があるので普段着を数枚持っていけば事足りるっていうところか。
またリゾートバイト地は都会ではない場合が殆どで、金を使う場所がない。何もせず働いてたら自然と金が貯まっていくと評判だった。
そしてなにより、、、「出会い」である。
2018年当時のリゾートバイトは会社そのものが出会い要素を全面的に出していた。まるて今のマッチングアプリのCMのような構成で「リゾバで出会いました!」みたいな幸せカップルをアピールしているのである。
「金」「免許」「住まい」そして「出会い」を持たない俺がリゾートバイトに行かない理由はまったくなかった。そして俺は大学生の長い2ヶ月の夏休み、初めてのアルバイト、初めてのリゾートバイトへと進んでいくのである。
リゾートバイトには夏は海、冬はスキー、一年中はホテルや保養所と相場がきまっている。
そこで夏のリゾートバイトで俺が選んだ先は、少数で運営している有馬の温泉旅館であった。沢山の人が働く海でのバイトは結局、、、また持たざる者としてその中で埋もれてしまうと思ったからだ。
そして俺は夏休みの開始当初から、新幹線と私鉄を乗り継ぎ指定された駅まで行くと駅には所長夫婦が車で迎えに来てくれていた。
須藤(所長夫婦がバイト一人の為に来るとはねぇ、、よほど少数でやってるのだな)と感じた。
俺が有馬温泉を選んだもう一つの理由は先輩からのアドバイスだった。「リゾートバイトには当たり外れがある。もしハズレ引いた場合、速攻で「飛べる」ように公共機関まで近い場所がいい」と言ってたからだ。
そしてその日から、俺のリゾートバイト生活が始まった。
温泉旅館は概ね以下のようなスケジュールで運営されていた。
5時30起床
6時出社
6〜7朝食準備
7〜9朝食配膳
9〜11昼食準備
11〜14昼食配膳
14〜16休憩
16〜17夕食準備
17〜20夕食配膳
20〜21後片付け
終了
このほかのにも施設の清掃などもあるが、これらを早番、遅番で分担しやがらアルバイトをこなしていくのである。そう考えれば一日中コレをやっている社員からすればまことブラック企業であった事だと思う。
だが俺はこの仕事がとても向いていた。主にレストランの配膳担当として入った俺ではあったか、料理の名前や意味由来などもすぐ覚えたし2週間掛からず俺は配膳の仕事はマスターした。所詮はバイトの仕事だからね。
すると門前係長から、「須藤君は今の仕事ならものたりないんじゃない?中居やってみる?」と抜擢されたんだ。
須藤「中居?それって女性の仕事なんじゃ?」
門前「今どき職業に男も女もないよw」
須藤「中居と今の配膳係は何が違うんですか?」
門前「レストランは一般のお客さんしかこないからね。中居はレストランじゃなく特別予約してる個々のお客様の担当スタッフというのかな。お出迎えからお見送りまで。全てサポートするんだよ」
須藤「俺なんかにできますかね?」
門前「無理にとは言わないよ。考えてみて。時給も上がるしさ。あと、、、仕事が楽になるよw」
(なるほど。確かにそうかもしれない。レストランでの配膳はまるで工場の流れ作業のような側面があり、接客業なんて言えたものじゃない。
だが中居の担当制での仕事ならレストランみたいな慌ただしい仕事ではなくなるだろう。責任は重くなるかもしれないが。よし。やってみるか。)
そして俺は中居を初めて見ることにしたんだ。
中居の仕事も大した事はなかった。ただ不特定多数か、それとも特定の顧客かの違いで基本的なサービス内容は同じ。客が食べに来るか、中居が持っていくか。そして食事や部屋のグレードが高くなってるくらいだった。
そこで、、、お待ちかね。今回の夏18のヒロインである、「雅さん」(29)との出会いが待っていたのである。
では今回の流れなんだけど、まず初めに「結果」から書くのもありかと思っている。
読者の方には俺の拙い夏シリーズを読んでくれた方もいるとは思うが、今まではミステリー小説みたく、徐々に全貌が明らかになる構成で話してきた。
だがここからは最初に全貌を話し、それから何も知らない俺が少しずつ真実に近づいていく様を描ければと思う。
まず初めに、俺は雅さんを初めてみた時、(可愛いし綺麗だなぁ、、)と思った。それは当然でもある。不細工との出会いを書いていくほど俺も数奇者ではない。
そもそもバイト先の温泉旅館の中居の仕事なんて地元の中高年のパートのオバサンが主体であり、若い人なんて皆無であった。だが俺は雅さんの若さだけでなく中居としての所作、振る舞い、話し方、和風の髪型や化粧の全てに至るまで(これこそが日本の女子)と猛烈なまでに憧れの念を覚えた。
だが、結果なんだけどこの雅さんは一言で言うとパパ活ヤリマン。。。。だったのだ。
そんな形で雅さんを「清楚な和風美人」と信じ込み彼女と同じ空間で仕事をし少しづつ距離を縮めていった。
だがそんなある日、俺を混乱させ訳がわからなくらるような重大事件が起きたのである。
休憩室での会話
雅「須藤君、今日は夜なんか担当もってるん?」
須藤「いや。僕の担当は昼に帰ったので夜はフリーです。だから配膳回されるかもしれませんね」
雅「空いてるんやね。だったら私のサポートお願いできる?」
須藤「上がオッケーというなら」
雅「リピーターというか常連なんだけどけっこー酒飲む人たちでさ。一人だとしんどいんよね」
須藤「常連さんですか」
雅「毎回接待で使ってる感じかな」
須藤「わかりました」
こうして俺はこれで何度目になるだろうか、雅さんのサポートにつく事になったんだ。
そして客室が夕食開始の19時に合わせて配膳やビール、日本酒の準備し客が観光から帰ってくるのをフロントで待機。
そして客が現れたら荷物を受け取り部屋まで誘導。そして「お食事の準備を始めさせて頂きます。」と厨房からカートに乗せて食事を運んでいくんだ。
あとは客が飲み食いしている時間をいつ呼ばれてもいいように待機するか、、あるいは客からのおこぼれを飲ましてもらい話し相手になるからは中居の自由、いや特権か。
だがそこで俺が見たものは、、もはや中居なんかではなく、、キャバクラ。いや、、、キャバクラでも生ぬるい。そんな光景が待っていたんだ。
まずそこにいた3名の客たち。ヤクザではないのは確かだ。温泉街にせよ宿泊施設にせよ地域柄かもしれないが、反社会勢力お断りの風潮がかなり強いと聞いている。だが彼らの風貌はヤクザとは言わなくても金融業者か不動産か、、堅気には見えなかった。すくなくとも「カネ」にまつわる仕事をしているのは会話の中から感じ取れた。
そして、この旅館を使用し、わざわざ雅さんを指名する理由もすぐにわかった。
雅さんはオッサン連中に(まずは多少と言っておく)多少のお触りを許可し、、内緒でチップを貰っているという関係だったのだ。
雅「サポートの須藤君にもちゃんとチップくれるお客さんだから。多少のことは見逃してあげてね。わかった?」
と予め言われてたのだがその意味がすぐにわかったんだ。
宴会が開始すると嵐のようにビールの空き瓶が出てきて、それの片付けと新しいビールを運ぶのに奔走した。それから俺は焼酎芋割り、俺は麦の冷や、俺は日本酒と言われた通りの酒を運び序盤はてんやわんやだった。
一方、雅さんは忙しくする俺を手伝いもせず、オッサン達に酌をして接客しているのである。
須藤(これじゃまるでキャバクラのボーイじゃねーか)とは思ったが仕方ない。
この時、俺は何度も何度も部屋と厨房を往復したのだが、部屋に入る度に状況が派手になっていってるのである。
最初は雅さんは男3人を相手に変わりがわり横に座って酌をしていたかと思いきや、オッサンの膝の上に座って自分も料理をつまみ始めているのである。
また厨房に走る俺、追加の天ぷらや刺身と酒を持って走って部屋に戻っていく。
するとオッサンが背後から雅さんの胸をモミながらヘラヘラと話してるのである。
雅さんは嫌がる気配なし。どころか「もー後輩の前でお触りしちゃダメですよぉん♪」なんて猫撫で声を出しているのである。
するとオッサンの一人が「さっきから君もご苦労さんやな」といって3万円を握らせてきたのであった。その時、雅さんの目線が(わかってるな?)と言わんばかりに鋭い眼光で俺を見てきたんだ。(要は口封じといったところか)
俺はどうしたらいいのかわからなかった。社会のシステム、大人の世界を知らない俺は目の前で起きている現実にどう対処していいかわならなかった。
もし、雅さんが嫌がってるのなら俺はこのお触りの事実を上司に報告し、然るべき対応をしなければならない。
だが、合意の上でやっているのなら、、あの憧れの雅さんに対する幻滅と、客室から口止め料を受け取り性接待の片棒を担いでいる事になるのである。
この複雑な気持ち伝わるだろうか、伝え切れるだろうか。
そして部屋を何度も往復しただろうか。オッサン連中は料理と酒はもうさすがに満足したのか、雅さんと話だけをする状態になっていった。料理が落ち着くと俺は本来の業務、つまり待機である。本来なら部屋の外にある中居の待機場所という内線電話が通じた場所があるのだが、俺は(雅さんを一人にはしておけない!)という妙な正義感からから、「何かあればすぐ参りますので」と一礼して部屋から出ると、フスマ一枚を隔てた外で正座をしてお呼びがかかるのを待つのである。
すると、雅さんとオッサン3人は俺が部屋から出て行ったんだと思ったのだろうか。いや、そう思うのは勝手なのだが、少なくとも俺は「外にいます」と言ってないし、こんな状況を知っておきながら部屋を後に出来るほど無責任無関心ではなかった。
(何かあれば雅さんを守るために飛び出さないと!)という正義感こそが俺をフスマ一枚隔てた場所で待機させたのだ。
だが俺という邪魔者がいなくなった事でさらに状況はエスカレートしていった。
最初の頃は話し声など聞こえていたのに、急に静かになったんだ。すると
「ダメ、、、」
「あっん!」
「ダメですよぉ、、、!」
「あはっ!!」
とモゴモゴしたオッサンらの声の中に雅さんの声が聞こえるのである。
俺は緊張がピークになった。
俺は聞き耳を立てている訳じゃない。状況が状況だけに、万が一の時の時の為に待機場所を普段と違う場所にしているだけなのである。
だが、このフスマ一枚をほんの数センチ横にズラすだけで中が見渡せるのであった。
だがそれをしてバレてしまえば、まるで覗いているような格好にもなる。
須藤(雅さん、、なんでこんな事してんだよ!!)俺はやりきれない気持ちになった。初恋といってもいいレベルまで恋し憧れた女性が、実は今で言うパパ活女子だっただなんて。
俺は意を決した。
須藤「失礼しまーす。あいたお皿下げにきましたー」
と、堂々と襖をあけて入ってやったんだ。
すると雅さんは作務衣の上着こそ着ていたものの、あずき色の作務衣のズボンは膝まで脱がされておりオッサン連中の一人からパンツの上から指マンされている構図だったんだ。
雅「きゃ!」とすかさず脱いでいた作務衣ズボンで隠す雅さん。そして一瞬、騒然となるオッサン連中。
オッサンA「この子は身内なんやな?」
雅「はい。一応言うてます。お礼もくれるし見逃しときやーって」
オッサンB「さっきワシがサンマン包んだらうけとってましたわ」
オッサンA「焦ったわwいきなし入ってこられるんやもん」
須藤「すみません、、、驚かせてしまって」
雅「片付けとかいいから。もう行って」
須藤「はい」
そして俺はまた元の廊下で待つ事にした。するとオッサン連中は俺に余計な水をさされたのか、、「ほな始めよか」といって更に奥の別室へと入っていったんだ。
どうやら、廊下の向こうは座敷。座敷のさらに向こうは寝室となっていた。
そして、このオッサン連中の接待というのは、なにもオッサンが3人係で雅さんを輪姦しようというのではなく、、あくまで絶対を受ける側に対する特別サービスである構図だった。
廊下にいる俺からは、明らかに接待をする側のオッサン二人の声と、接待をされる側のオッサンと雅さんの声が離れたのが感じ取れた。
そして程なくして、、部屋の中には、、
雅「あん!あん!あん!あん!あん!あん!あん!あん!!!!」という雅さんの喘ぎ声と、、。
パンパンパンパンパンパン!!という振動音だけが響いていった。