目覚ましの音に気付き、寝不足の重い頭で目覚めてみれば、オカンはまだ腕の中。
目覚ましを止めるオレの気配に気付いたようだが、起きる様子はなし。
チンコはまだギンギンで爆発寸前の状態。
気付かれないようにそろそろとベッドを抜け出し、「今日、どうすんだ?」と訊いてみれば、布団を頭から被ったまま「寝てる・・・。」と、元気のない返事。
取りあえず、トイレに入って夕べの余韻を思い出しながら、一発抜くことに。
寝息を確かめながらチンコを擦りつけまくってた。
よく襲わなかったもんだと、自分で自分を褒めたくなる。
理性は限界に近かったが、そこはそれ、やはり家族だからそんな対象にしていいはずがない。
しかし、その夜からオレの中でオカンという生き物が、女という物体に変わりつつあったのは事実。
ベッドにもぐったままのオカンを残して、ひとまず出社。
会社から昼休みに親父へ電話をかけると「しばらく頼む。」と責任放棄。
予想通りの返事に呆れはしたが、てめえなぁ、と言わなかったのは、もう少しオカンと一緒にいたい気持ちが強かったから。
それにしても妹の同級生じゃねえか!?
いくら飲み屋でバイトしてたからって、手を付けていいわけねえだろ?
まだ二十歳だぜ。
60近い親父のやんちゃぶりに呆れもしたが、同時に思ったのは、オカンはずっとあの親父の相手をしてたんだよな、ってこと。
歳はいっているが、いかにも好色そうで脂ギッシュなハゲ頭。
絶倫をイメージすれば、まさしく親父の顔が頭に浮かぶ。
そんな感じ。
きっと、すげえのしてたんだろうなあ、とか考え出したら、妙に興奮とかもして、昼からは仕事にならんかった。
仕事を終えて、帰りに酒を買ってからアパートに帰宅。
玄関を開けると、いい匂い。
「あ、お帰り。」
と、流しの前から出迎えてくれたオカンは、夕べと違って嬉しそうな笑顔。
ハッとするほど綺麗に思えたのは、いやらしい気持ちで見ていたからじゃなく、はっきりと化粧をしていたから。
なぜか若々しい恰好までして、ひらひらスカートの裾も膝小僧よりかなり上だった。
そんな服持ってんだ・・・。
オカンの意外な姿に呆気にとられたのは確かだが、綺麗な女に出迎えられて嬉しくないわけがない。
妙に機嫌がよくなって、オレまで笑顔。
ああ、ずっとこのままいてくれねえかな、なんて、学生の頃は、ババアとか呼んでたくせにあっさり考えを翻す。
視点を変えれば、印象も変わる。
この時だけは、オカンが傍にいてくれることが嬉しくてならなかった。
「あんた、冷蔵庫の中全然ないね。何食べて生きてんの?」
この夜は、久しぶりにオカンとふたりだけの食事。
「お酒ばっかり飲んでないで、ちゃんとご飯も食べなさいよ。」
相変わらず口を開けば小言ばかりだが、そんな言葉でさえ素直に耳に入ってくるのが不思議だった。
「適当なもの買っておいてあげたから、ちゃんと自分で作って食べるのよ。」
「え?帰んのかよ?」
今にも帰りそうな言い方に、咄嗟にオカンを見つめていた。
オレが慌てたように言ったからか、オカンも少し驚いたらしい。
「あんたが迷惑じゃないなら、しばらくいるけど・・。」
オレの目を覗き込みながら確かめるように訊いてきたのは、様子を探っていたのかもしれん。
「どうせ帰る気もないんだろ?」
素直じゃないから、こんな言い方しかできない。
「あんただって、ほんとは帰って欲しくないんでしょ?」
勝ち誇ったように訊いてきた。
「別に・・・。」
どうしても素直になれない自分に腹の中で、氏ね!って、言いました・・・。
「どうでもいいけど、あんな人のところに帰るくらいなら、まだアンタかまってたほうがマシよ・・・。」
なんだそりゃ?オレは玩具かよ?
なら、かまってくれよ・・。
なんて言えるわけがない。
その夜は、メシが終わるとやっぱり晩酌。
オカンも付き合い、えらい勢いで飲んでいた。
「大丈夫かよ?」
「なにが?」
「いや・・・飲み過ぎ。」
「シラフじゃバカになれないでしょ!」
バカの意味がわからん。
ある程度まで酒が回ってくると、オカンはやたらと、にやりにやり。
「へへ・・・一緒にお風呂入ろっか?」
唐突に言い出した。
「ああ!やだよ、あほ・・。」
千載一遇のチャンスを自分で棒に振るアホ。
「なに言ってんの?お母ちゃんのおっぱい、また見たいでしょ?」
この時点で、すでに完全な酔っぱらい。
「夕べ見せてもらいましたから、もう結構です。」
「なに?せっかく見せてあげるって言ってんのに、見たくないの?」
オレをからかって、楽しんでるようだった。
んで、大きなため息を吐いたあとに言ったんだ。
「なんだ、お母ちゃんに欲情してるかと思って、楽しみにしてたのに・・・。」
腹の中を見透かされたようで、ギョッとしたのは言うまでもない。
「な、なにを、アホなことを・・・。」
ものの見事な慌てっぷり。
「気付いていないとでも思ってるわけ?」
「な、なにが?」
「夕べお母ちゃんにしたこと・・・。」
じっとオレを見つめてた。
しっかりと気付かれてた。
こんな状況で口に出す言葉なんて、なにも思い浮かぶわけがない。
「せっかく、気合い入れてお化粧までしたのにな・・・。」
ぽつりと、つぶやくようにささやいた。
え?どいうこと?
そして、訊いてきたんだ。
「お母ちゃんと、できる?・・・。」
ひどく悩ましい目だった。
それは息子を見る目つきじゃなく、あきらかに男を誘う目だった。
「で・・・。」
子供じゃないんだから、「できまーす。」なんて、答えられるはずがない。
やりたい気持ちは確かにあった。
ほんの少し、何かが後押ししてくれたら、オレはその場でオカンを押し倒してもいただろう。
でも、その時オレが口にしたのは、まったく気持ちとは違う言葉だった。
「で、できない・・・。」
正直なところ、なにをどうすればいいのかさえ想像できなかった。
セックスの知識なんか腐るほどあった。
だが、オカンにだけは、なにをどうすればいいのかさえ、その時のオレには思い浮かばなかった。
オカンだぜ。
オレを生んで育ててくれたオレのオカンだ。
夢想の中では散々犯したりもしていた。
しかし、夢が具現化されるとわかったとき、それも、すぐ目の前にあって手を伸ばせば届いてしまうと知ったとき、オレはどうすればいいのかわからなくなったんだ。
だから、白旗を揚げた。
俯いたんだ。
オレの答えを聞いたオカンは、寂しそうな目をしながら、じっとオレを見つめているだけだった・・・。
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