姉は中学から水泳部に入り学校でも人気者だった。
俺はそんな姉のいる同じ水泳部は避けて陸上部に入ったが
いつもカッコイイ姉の事が自慢で憧れてもいた。
同級生の何人かは姉の事をきれいだなぁとか水着姿が
エロいなぁと俺を冷やかしていた。
なぜかその頃そいつらにむかついていた事を思い出す。
空港で待ち合わせてツアーの人達と合流し、あっという間に
韓国釜山に到着した。
二泊三日のツアーだけどその旅行代金の破格の安さにびっくりした。
初日だけは添乗員同行で仕方なく買い物ツアーや観光に連れて
行かれてそれなりのお土産物を買わされた。
ツアーの人達には俺たちは夫婦と映っていたようだ。
姉もそれなりに人前では弟の俺を「みのるさん」って呼んでいた。
時には他の夫婦がしているように腕も組んだりして姉弟の夫婦旅行
を楽しんでくれていた。
夕方になりようやくツアーから解放されロッテホテルに入った。
姉はこの釜山ツアーも二回目でホテルに着いて、部屋に入るなりプールに行く、
と言いだした。
16Ｆの部屋の窓から見れば眼下のプールには薄暮の中、老夫婦らしき二人が
いてプールサイドを歩いていた。
6月の後半で寒くはないが梅雨模様で少しどんよりとして雨粒も落ちて
来そうだった。
「みのる、今から泳ぎに行くよ、はいこれ持って来て」
「ホントに今から泳ぐの！何？それ？」
「みのるの水着、買ってきてあげたから、、さ、４Ｆのプール受付に行くよ」
「姉ちゃんは相変わらずやなぁ、めいっぱい楽しむんやなぁ」
「当たり前やん　ロッテホテルのプールで泳ぐのは予定のスケジュールに入ってんの、
旅行は目いっぱい楽しまないとアカンのっ、・・さ、行くよ」
「あっ、それと何回も言うけど　今日と明日は　姉ちゃんじゃないよ“かず“って呼んでね、
ふたりだけの時もかずって呼んでね」
「ハイハイ判りました、じゃお供します、行きましょうか、かず・・」
「ＯＫよ、行こう！」
・・・「つづく」