2010/01/14 04:02:48
(1jbEcLpS)
「最高の思い出4」
フユミ「…ユイ、元気なくなかった?」
りょう「えっ、いつ?」
フユミ「最近。」
りょう「いや~あんま気付かなかったけど…何かあった?」
フユミ「…うん、…彼氏と別れたんだって。」
りょう「!!!……マジっ?…なんで?」
フユミ「よくわかんないけど、ユイの方から別れたんだって。………」
その後もフユミが何か喋っていたが、頭に入ってこなかった。
もし告白するなら、タイミング的には今しかないよな。とにかく踏ん切りをつけたかった。
最低な考え方だとは思うが、ユイに対しての未練をなくして、早くフユミと付き合いたかった。
そのためだったらできそうな気がした。なんていうか、断られてもフユミがいるみたいな。
今まで自分の人生でまさか告白する日がくるとは思ってもいなかった。次、ユイと入る日にしよう。
3日後くらいだったと思う。
ユイといっしょだった。
確かに、なんかいつもと違ってた。なんか考え事してる感じ。
告白は帰る直前にしようと決めていた。それまでは普段通りにしていたかったので、いつもみたいに他愛ないことで話し掛けた。
りょう「あー、なんか食っときゃよかったな。お腹すきすぎて、気持ち悪いんだけど…」
ユイ「あはは。…倒れてもほっとくから。」
(……やっぱ、いつもと違うな…元気ないのか?)
だんだん時間が近づくにつれて、心臓がバクバクしてきた。さっきまで余裕だったのに…
23:00。鍵を閉めて、二人きりになった。二人とも無言だ。
ヤバイ、告白ってこんなに緊張するのか……できるか?
お金を数えおわり、着替えも済ませ、いつもならすぐ帰っているのだが、今日はロッカーをがさごそしたり、入念に手を洗ったりして時間を稼いだ。
ユイはとっくに準備できている。
ユイ「まだ?」
りょう「いや、もう終わる…」
(やばい、どうしよ……)
りょう「あ、あのさぁ………」
ユイ「なに?」
りょう「……ち、ちょっと休んでかない?」
休むってなんだ?休んじゃダメだろ。別れ際に言うんだから。
ユイ「……いいけど…」
りょう「……………………」
ユイ「………何か喋ってよ。」
りょう「えっ…あっ、うん。………なんかあった?……元気なくない?」
(…やべっ、いきなり聞いちゃった。)
ユイ「………別に……」
りょう「…そっ、そうだよね。……」
ユイ「…………りょうって、フユミ好きでしょ?」
りょう「!!……なんで?」
ユイ「………フユミといると楽しそうだし。フユミとは話して帰るんでしょ?」
りょう「……いや、…まぁ話すこともあるけど……あれは……」
ユイ「フユミ、りょうのこと好きみたいだよ。」
りょう「!!!……そうなの?」
ユイ「…………私帰るね……」
りょう「……ち、ちょっと待って!」
(…なんか怒ってる?)
ユイは止まらない。……帰っちゃった…。
結局、この日告白できなかった。最悪だ。でも、次は絶対言おう。
次ユイといっしょになったとき、気まずくてほとんど話さなかった。
幸い、週明けで混んでいたのでレジに没頭できた。
(…今日は雰囲気とかもういいや。絶対言おう。)
閉店した。二人とも無言。
帰りの準備も終わった。帰るだけ。
りょう「…………あ、あのさぁ…話したいことあるんだけど…」
ユイがこっち見る。
顔が引きつる。ユイを直視できない。体が震える。声が震えそうだ。もう震えてもいいや。
りょう「……あの……俺………ユイのことが好きなんだ!付き合ってください!」
(……言っちゃった…)
ユイ「…………」
(………やばい、何も答えてくれない。)
ユイ「……………いいよ。……私もりょうのこと好きだよ。」
(……………えっ!……………)
りょう「……えっ……いい…の?」
ユイ「うん。」
ユイが笑ってる。かわいい。
本当にびっくりした。笑ってるユイの顔は今でも覚えている。
なんて言っていいかわからず出た言葉が「あ、ありがとう」だった。
告白したあとのほうが心臓がバクバクしてた気がする。
そのあと何も話さなかった。ユイも話し掛けてこなかった。でも気まずさはなかった。
別れ際
りょう「じゃぁ、お疲れ。気をつけてね。」
ユイ「うん。じゃあね。」
笑顔がかわいかった。
なんか不思議だった。実感がわかないというか、付き合うってこんなもんなのかって思った。
今まで死ななくてよかったな。生きてりゃいいことあるって案外ホントだな。
何といっても、童貞喪失の確約がとれた。しかも、相手はあのユイだ。3ヶ月後くらいには済ませたいな。2回目くらいのデートで手をつないで………
その日はいろいろ考えて眠れなかった。
ユイと付き合うことになってから、初めてフユミと入った日。
(……フユミは俺とユイが付き合いはじめたの知ってるのかな?…)
ユイがフユミは俺のこと好きだって言ってたことが気になった。
フユミと会ってすぐわかった。
(……聞いたんだ…)
フユミはいつもと様子が違っていた。が、俺はなるべくいつも通り振る舞おうと思った。
フユミもいつも通りしようとしてるのだが、どこかぎこちない。
そんなフユミを見て、すごくかわいそうになった。こんな自分のことを好きになってくれたのに、自分のせいで辛い思いをしている。
今まで俺がどんなやつだったか知ったら、きっと好きになんてなってくれないだろう。
ここで、働いている自分の姿だけを見て好きになってくれたんだと思うと、彼女を騙している気がして辛かった。
閉店して、作業も終えた。
フユミが口を開いた。
フユミ「……ユイと付き合うん…でしょ?…………よかったね……」
りょう「!………うん……」
フユミ「…………………」
りょう「…………………」
支度を済ませ、帰ろうとした時だった。
フユミ「………私……りょうのことが好きなの…」
りょう「えっ!……………」
顔を赤くして、泣きそうなフユミがじっと見てくる。
りょう「……ありがとう。すごいうれしいよ……」
フユミ「…………」
りょう「でも、俺ユイのこと好きなんだ。………だから…ごめん…」
嘘をついた。俺はフユミのことも大好きだった。でも、ユイを裏切れない。
フユミ「…ごめんね………でも、りょうのことがすごく好きなの………」
じっと見つめてくるフユミ。距離が近い。
頭がパンパンだった。何も考えられなかった。フユミをぎゅっと抱き締めたかった。
フユミを見ると目を閉じて、体重を少しこっちに預けるのがわかった。
(……これって…………)
そのままフユミと唇を重ねてしまった………