あれは、俺が小学5年の夏休みで母方の実家に
母41歳と二人で帰省した時の話だ。
俺には、父43歳と母と2歳上の姉がいて併せて4人家族
その年の初めに、父方と母方に不幸があったため
新盆参りで姉は父と二人で父方の実家に、俺は母と
二人で母方の実家に行くことになった。
母方の実家は大きな農家だ。
家は都会には無い大きくて部屋数も沢山あったように
記憶している。
実家に着くとばあちゃんと実家を継いでいる
母の兄42歳夫婦が歓迎してくれた。
歓迎を受けた後、早速じいちゃんの新盆飾りをしてある仏壇に
線香を手向けた後、近くにある墓地へ向かった。
墓地では、墓参りの人が何人もいた。
その人の中に母が久し気にあいさつしている男性がいた。
どうやらその男性は、母の幼馴染のようだった。
ひとしきりお互いの近況など、話していたようだった。
墓参りも終わり、夕食が済んで風呂も入り就寝する部屋に
入り母が布団を敷き終わると、明日は朝早くから親戚の人が
沢山来て法要があるから、早く寝なさいと言われ俺は
母の言う通り布団に入った。
母はばあちゃんと、兄さんと明日の話があるからと
部屋を出て行った。
俺は、長旅もあって直ぐに寝てしまった。
暑さで寝苦しい夜だった事を覚えている。
母は父と結婚する前まで、実家の敷地にある離れの部屋を
使っていたらしい。
その部屋は、ばあちゃんが何時も掃除をしていたらしい。
だから、母が住んでいた時とほぼ同じ状態だったようだ。
俺は、寝入ってからどのくらい経ったかわからないが
寝苦しさと尿意で目が覚めた。
実家の明かりはほとんど消えていた。
便所に行くのが怖かったので、部屋のサッシュを開けて
庭に向かって用を足そうとした時、母の離れの部屋の
灯りが点いていたのでサッシュの下にあったサンダルを
履いて母の部屋に行った。
近づいて行くと母の声がして男の人と何やら話しているのが
分かった。
母の兄と話しているのかと思いながら母の部屋のサッシュに
耳を当てて聞いた。
母は楽しそうに笑いながら男の人と話をしていた。
俺はその男の人の声を聞いて母の兄では無いと察した。
庭で用を足して部屋に戻ろうとした時、母の部屋の灯りが
消えた。母が離れの部屋を出て母屋に来るととっさに思い。
急いで戻ろうとした時〇〇さん会いたかったと男の声、私もです
と母の声…
え?と思いそっとサッシュのガラスに耳を当てた。
暫く聞いていると母の喘ぎ声と何とも言えない男の唸るような
声が聞こえてきた。
俺は聞いてはいけないことだと思ったと同時に何とも表現し難い
感情と共に罪悪感を覚えた。
聞いていた時間は10分程度だったと記憶しているが
実際の時間の感覚は今も覚えていない。
俺は寝床に戻り布団に入ったがあまりの衝撃で暫く
寝付けなかったことを良く覚えている。
翌朝目が覚めると母はばあちゃんと兄嫁と朝食の支度を
していた。
10時から法要があるのでその準備もしていたようで忙しそうに
立ち回っていた。
親戚が集まり法要が始まった時、俺は衝撃を受けた。
昨夜離れの母の部屋で聞いた声が静まり返っている
法要の場で聞こえている…
そして、墓参りで母が久しく話していた男の人だった。
それは、母の幼馴染でもあり菩提寺の住職だった。
あの日の事は今も脳裏から離れないが…
母に確かめる事もしなかった。
その母も父も住職も
もう…この世には居ない。