未だコーヒーだけで何も食べて無いんだけどと言うと
「パンで良いぃ?」
返事をしながら、おふくろの後ろ姿を確りと目で追う。
普段だったら顔を見合せながら話す事も多いのに今朝は視線が合うのを避けるように、不自然に背を向けて居る、おふくろ。
出されたパンを食べながら
「昨夜の事を不倫とか浮気って言うんだろうなぁ初めて、あんな場面を見てしまった」
独り言のように言うと、瞬間の間を置き
「他人の車の中を覗くなんて悪い事だよ、中の人の顔が見えなかったから未だ良いけど、見られた人には迷惑かも」
「え~!あんな場所で、あんな事してる方がおかしいと思うけど」
「他人様だって都合が有ってかも知れないから、例え見えたとしても知らぬ振りして通りすぎるもんじゃ」
「そりゃ無理だわ、あの場面を見て見過ごす事は出来ないわ」
「厭らしい子ね」
「最後、あの人のを飲み込む時の表情が良かったわ、おふくろ」
一瞬、おふくろの表情が固まる、
「あんた、まさか」
「うん」
おふくろの表情は一瞬にして変わり落胆の表情を浮かべる。
どう弁解しようか?と考えてるのか、おふくろの表情と、そわそわと身体を揺らし焦っているのが解る。
「部屋で思い浮かべ何度も一人で射してしまったわ」
焦る、おふくろに追い討ちを掛けるように話す。
観念したかのように
「で、母さんにどうしろって言うの」
震え声で言う。
「いゃ別に、どうして欲しいなんては思わないけど親父は知らないよな」
小さく頷く。
「いつから、あの人と?」
暫くの沈黙の後に、おふくろは重い口を開き始めた。
親父が会社を今のところに転職をして、暫くしてから親父から常務を紹介されたらしく、常務の奥さんも交え何度か食事をして、その内に家に電話が入るように成ったらしい。
それから時々、昼御飯を誘われ親父の上司と言う事も有り断り切れずに食事を付き合い、携帯の方も交換したとの事。
そうやって時々、食事の付き合いが始まり、気付くと常務の存在が、おふくろの中で膨らんで居たらしく、食事の後を誘われた時に、魔がさした様に受け入れてしまったとの事。
昼間の明るい時間に車でホテルに入る時には、顔から火が出るくらいに恥ずかしかったと…おふくろにしたら結婚して初めての事だったらしい。