私は大学時代を、北日本のある街で過ごしました。
八畳一間、家賃四万、一応台所とトイレ風呂付きのボロアパートでした。
大学一年の夏、私が実家に帰省し、再びアパートに戻ってくると、空き部屋だった隣りに、新たな住人が入ってました。
挨拶が書かれていたメモ書きと、粗品が新聞受に差し込まれていてわかりました。
隣りだし、一応こちらからも挨拶しとこうと思い、私は隣りのチャイムを鳴らしました。
「は~い」
出てきた人は、なんかやつれたおばさんっぽい人でした。
いくら部屋着とはいえ、着ている物もヨレヨレで、普通チャイム鳴らされ急いで出てきたって、なにかを羽織るとかするもんだと思ったくらい、ヨレヨレでした。
ちょっと挨拶と話しをし、もう一人、娘もいますんでと聞かされました。
それから何日かして、私がバイトからの帰り、もうすぐアパートってときに、自転車に乗って、私の横を通り過ぎて行った女の子がいました。
するとアパートの階段下に、通り過ぎて行った女の子が、自転車を納めていました。
もしかして隣りの娘さんってこの人?と思い、私は近寄り、隣りに住む野田と言いますと挨拶をしました。
その女の子は自己紹介をしました。
「鈴木瑞穂と言います。中学二年です。よろしくお願いします」
言葉は非常に丁寧だったのですが、態度がなんかやる気ないと言うか、投げやりと言うか、そんな感じでした。
正直、お母さんのやつれたヨレヨレ姿、娘さんのその態度、好印象は持てず、どうでもいいや、そう思っていました。
お隣さんですから、行き会えば挨拶を交わすくらいの程度が、半年ほどたちました。
私がバイトから帰ってくると、アパートのすぐ横にある公園に、隣りの瑞穂がブランコに座ってました。
北日本の冬ですから、かなり寒いのに、なぜ?と思いました。
でも私は、どうでもいいやと思っていたので、声かけることもなく、そのままにしてました。
それから度々、瑞穂が夜公園にたたずむのを目撃するようになりました。
雪が降るある夜、また公園に瑞穂がいました。
さすがにちょっと今夜はと思い、声をかけました。
「寒いでしょ?なぜ家に入らないの?」
「今ちょっと家に入れないから」
私は家に入れない理由がわからない、でもこの雪降る中、そのままにはしておけず、私は自分の部屋に、瑞穂を誘うと、瑞穂は今まで見たことがない、笑顔を私に見せ、ついてきました。