ではご忠告通りこっちに書きますね。私の退院の日が決まった。 固定型の重たい石膏のギプスから取り外し可能なファイバーグラスのサイズの小さいギプスに変わり、この後は通院で治療する。「リョウともあと2日でお別れかぁ、チョットは寂しい気持ちになるもんだなァ」奈々が私に言った。「いろいろお世話になった。ありがとね」互いに年頃になってあまり話をしなくなっていた従妹とまた親しくなれた事は収穫だった。 私は奈々を食事に誘おうと計画していた。「奈々、お世話になったお礼に美味しいものをご馳走したいんだけど、時間取ってくれないか?」「 おっ、ラッキー! どこ行くの?」「新宿のスペイン料理のお店。 俺も行った事ないんだけど美味しいって評判なんだ」「へぇ~、美味しいものって学校前の三浦屋のヤキソバか、来々軒のタンメン位だと思った。リョウがそんな処に誘ってくれるなんて初めてだね、楽しみだな。」やった! 奈々はあっさりOKしてくれた。普通なら車で行くのだが、両手首が完治してないので電車で行く事にした。 デート当日、駅のプラットホームで奈々を待っているとナースの時とは違う普通のオシャレなお嬢さんが小走りに近寄ってきた。「俺の為に随分めかしこんでくれたな」「リョウの為じゃないよ。久しぶりに東京に行くからチョットだけオシャレしたんだよ」特急の座席に並んで座ると普段は男っぽい体育会系の奈々から女の子の香りがした。 私達の食事の予約は夕方だったので、東京ドームシティで待ち時間を楽しんだ。ドームシティのお化け屋敷では物音がする度に奈々は私にしがみ付いた。 女の体特有の柔らかい感触だ。嬉しい感触だ。 デートの時のお化け屋敷とは使い古された作戦だがホントにうまくいった。 その後、夜景の美しい高級なレストランに行き 美味しい食事をしたのだが、私は目の前にいるカワイイ女性に味なんかどうでもよかった。「あー、今日は良く笑ったねぇ、楽しかった!!本当にありがとうね、リョウ。」と奈々が言った。私は時計を見ながら「帰りの《あずさ》は新宿発9時だから...」そこまで言うと突然奈々が 「リョウはどうしても今夜戻らなくちゃいけないの? なんで泊って行こうって言わないの?」と聞いてきた。 衝撃的なセリフだった。 確かにワインを結構飲んだが酔っぱらっている訳ではない。 私は驚いて「え? いや、そんな事は…。 第一、お前、明日の仕事は?」としどろもどろになってしまった。 そして色々と考えた。なぜなら私は奈々と東京に出掛ける事を自分の母親、それに奈々の家のオバちゃんにも話していたからだ。 そして奈々んちのオバちゃんとウチの母ちゃんは実の姉妹だからだ。 母は、奈々と出掛けるという事に「まあ,めずらしい」と笑ったがまさか2人で泊りがけだとは思ってない筈だ。 2人で一晩過ごしたなんて知れたら親戚会議にかけられる。 ああいう田舎はそういう噂が広まるのは風よりも早い。だから回答が遅くなってしまい、そして奈々が怒った声で言った。「 もういいよ! 急いで帰ろう。ゴメンねリョウ、私変な事言っちゃった。」完全に機嫌を損ねた。 焦った私は後の事など考えずに、「俺こそゴメン、泊っていきたいよ、もっと長い時間、奈々と一緒に居たいよ」奈々は小さく頷いて少しだけ笑った。でもこんな時間から当日の新宿のホテルはどこも満室で結果、新大久保の連れ込みのホテルに入った。「こんな所でごめんね」 エレベーターに乗って部屋に向かったが奈々は喋らなくなっていた。緊張しているのだろう。だから…。だから初めて
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