山菜採りの大好きな実兄の嫁さん栄子に誘われ、別に興味ないまま付き合う。
一時間も山の中を歩くと、へとへとに疲れてしまった。
『しょうがないわね、男でしょう』
と笑いながら栄子が言う。
『こんな所に来るって事が無いから、もう足が言う事を聞いてくれない俺も、もう歳だわ』
『あらっ!そんな事言ったら私の方が、弘さんより年上だから』
確かに私は39歳で栄子は42歳であった。『今年は、いつもの年より遅いみたい…ここで休憩してお昼にしましょうか』
ビニールシートを敷き栄子が用意をしてくれた、おにぎりを口に運ぶ。
家でも時々は食べるが、こう言う場所で食べる、おにぎりは格別な味だった。
『ねっ、美味しでしょう』
栄子は笑いながら言う。
『これは、ちょっと内緒で持って来ちゃった』
悪戯っぽく笑うとリュックの中から缶ビールを取り出す。
『乾杯』
何とも言えないビールの苦みが喉を通り過ぎて行く。
栄子の顔が直ぐに紅く染まっていく。
『あんまり飲めないけど、こんな所で飲むのは格別』
栄子が言う。
疲れた身体で飲むビールに私も、ほんのりと気分が良く成って行く。
時折、緩やかに風が吹き抜け最高に気分が良い。
実兄や互いの家族が居る中では、なかなかこうして話す機会もなく、今日は栄子も気持ちが緩んだのか、色々と話し始める。
雑談が弾む中で
『弘さんの所は子供は、もうつくらないの?』
と言い出す。
『息子には可哀相かも知れないけど、あいつ一人で十分だよ、義姉さんは未だ頑張ってるのかな?』『家はもう駄目よ、あの人も全然そんな気が無いみたい』
『そうかぁ』
『弘さんは子供はつくらないにしても明美さんとは仲良くしてるんでしょう』
『いや、最近は、とんとご無沙汰だね』苦笑いで言う。
人里離れた、こんな場所で話して居ると何となく実兄の嫁と解って居ても、おかしな気分に成るものであった。
肩を並べるように座る栄子の横顔を見ると普段とは違い、偉く艶っぽく見えてしまう。
『最近は全然ないの?』
私が聞くと、栄子は軽く頷き
『無い無い、最近どころか、もう何時だったか忘れたくらいよ』
笑いながら答える。『俺もだわ』
『明美さんとはね、でも他の女性とはあったりして』
からかう様に言う。『それも無いなぁ、誰か居たら良いのに…って考えたりして』
冗談ぽく言う。
『義姉さんは兄貴以外に誰か居るの?』『居る筈が無いじゃない』