六月二日 曇り
あの屈辱の日の翌日の午後、勤めに出ている筈の娘婿から私の携帯にメー
ルが入った。
公民館で仕事中の時だった。
（近くまで来てるので家に帰ってくるように。三十分で着く。あんたを抱
く）
私は激しく狼狽した。
無視したい気持ちだった。
昨夜のおぞましい出来事はただの過ちとして忘れ、これ以上の繋がりを持
つべきではないと、心の中で激しく自らを叱咤したのは嘘ではない。
しかし、私は急用ができたといって公民館から外に出た。
自宅までは自転車で五分もかからない。
胸の動悸を激しくしながら、私は玄関に入りまんじりともしない息苦しい
気持ちで居間に座り込んでいた。
玄関横の駐車場に車の止まる音がした。
玄関のドアが開いて人が入ってくる気配がした。
スーツ姿の娘婿がつかつかと居間に入ってきた。
「近くの得意先に来てね…お義母さんを抱きたくなって」
緊張して正座している私のすぐ近くで、立ったままネクタイを緩めながら
彼は平然とした声でいった。
「宏さん…お、お話が…ううっ…な、何をっ…」
私が睨むような目で顔を上げた瞬間に、彼が素早く上体を折り曲げてき
て、いきなり私の唇を塞ぎにかかってきた。
「ううっ…むむぅ」
私は目を大きく開けて身を捩じらせ、そこから逃れようとした。
居間の畳の上で揉み合いが続いた。
血に飢えた獣の前で、老齢半ばの女一人の力は無力に近かった。
数分後、私は居間の畳の上で衣服の大半を剥ぎ取られ、仰向けにされて娘
婿の屈強な裸身の下にいた。
スカートもショーツもすべて剥ぎ取られてしまっていた。
体を覆い被せられて、両手を押さえつけられて、私は彼の荒々しい口吻を
受け続けてた。
体だけでなく気持ちまで麻痺状態になるくらい長い時間、唇を吸われ続け
た。
そして娘婿の体が私から離れた時、私にはもう抗いの気持ちの大半が失せ
てしまっていた。
唇を吸われ、舌を口の中に捻じ込まれ自在に弄ばれ、首筋から剥き出しに
された乳房までを舐めつくされ、私の体の奥底にある女としての官能の炎が
昨夜と同じように、意思とは裏腹にじわじわと泉の水のように湧き出てきて
しまっていたのだ。
慙愧に堪えない思いだった。
帰ってくるのではなかったという悔恨もあった。
そんな不覚な思いを凌駕するくらいに、娘婿は丹念に時間をかけて、同じ
箇所を執拗に狡猾な舌と指で責めたててきているのだった。
一時間ほどの時間が経過して、私と娘婿は私の寝室にいた。
布団を敷かされたのは私だった。
布団の上で娘婿が胡坐をかいて正座していた。
その上に正対するようにして、全裸の私が密着しながら跨って腰を深く沈
めていた。
娘婿の固い屹立に、私は下のほうから体の中に突き上げられていた。
「ああっ…ああ」
私は声を上げて悶えていた。
娘婿のがっしりとした肩に両手をしがみつかせるようにして、おぞましく
も観念の咆哮の声を上げさせられ続けていた。
こんなはしたない体位で抱かれるというのも初めての体験だった。
私の女としての理性も、人としての良心も、いまは木っ端微塵に打ち砕か
れてしまっていた。
娘婿に没頭したいというのが、その時の正直な感想だった。
そうして最後には布団に仰向けにされて、私は娘婿に思うさまつらぬき通
され、ああ、ああ、と熱く高い喜悦の声を上げさせられ、熱い迸りを体の奥
深い部分に受け、意識を深く遠のかせられたのだった…。
「これからはお義母さんとは呼ばない。夏子だ。いいな」
娘婿が家を出て行く時にいったその言葉に、私は小さな声ではいと頷い
た…。
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