私は静岡県の温泉で仲居をしております。
時々明らかに母子と思われるお客様もいらっしゃいます。
私どもの旅館はそれほど高級でもなく部屋数もそこそこ多いので、人目を忍んで来られるお客様には好都合なのだと思います。
また、お食事が部屋食ではないのですが客室ごとの個室料亭で摂っていただくスタイルですので、部屋食のように仲居がお食事の時にお部屋にはいることもなく、食堂のように食事で他のお客様と顔を合わせることもないのが喜ばれる理由にもなっているようです。
母子のお客様の7割くらいは、単にお母様を旅行に連れて来てあげたり、息子さんとただ単に温泉を楽しんだりする普通のお客様です。
でもそれ以外の3割くらいは、母子で愛し合っていらっしゃる方々です。
夜、何があったかは朝お布団を上げるときに必ずわかります。
大概わからないようにお布団やシーツをきれいになさっていますが、シーツの皺や乱れはごまかせません。
私たちは一目見ればわかります。
それにゴミ箱に捨てられたティッシュやゴムの入っていたパッケージなどでもはっきりとわかります。
そういう母子のお客様はよく人目の少ないところでは手をつないでいたり、ぴったり寄り添うように歩いていらしたりします。
先週末、とても印象に残る「母子のお客様」がいらっしゃいました。
お母様はほっそりとしたおきれいな方で40代後半くらい、息子さんは大学生で就職はもう決まっていらっしゃるようでした。
お二人がお帰りになるときにお部屋の上がりにお履き物を揃えているときでした。
お部屋の中の会話が聞こえてしまったんです。
「ゆうべ宿してしまったかもしれないわよ」
「だったら僕は嬉しいよ」
「、、、、、うん、、私も嬉しいかも、、いいの?」
「当たり前だろ」
お帰りになった後、ゴミ箱を見てしまいました。
大量のティッシュは濃厚なあの匂いを放っていましたが、ゴムはありませんでした。