もう20年ちょっと前になるか、俺がまだ小学校に上がりたてのガキだったころの話。
俺は現在は都内住みだが、故郷は「ど」が付くほど山奥の田舎で、実家の有る村は人口600人弱、200世帯有るか無いかのレベルだ。街灯も少なく夜は真っ暗で、隣の家まで50メートル以上は離れてる。
俺の爺ちゃんは当時60代半ば、同年代婆ちゃんは既に末期の糖尿病と認知症で特介の老人ホーム。爺ちゃんは専業農家で1人果樹園と田んぼを管理していた。
母はバツ2の41、パチンコ中毒のバカ男と離婚して実家に戻ったばかりだった。俺が小さかったこともあり、母は実家で専業主婦として家事や、たまに婆ちゃんのところへ行って世話をしたりと、実質的に爺ちゃんの収入で生活していた。
そんな生活が二年くらい続いた頃か、婆ちゃんが遂に糖尿病の合併症で逝ってしまった。家族は皆覚悟していたため、それほど重い空気にはならなかったが、亡くなってから数ヶ月経つと、やはり爺ちゃんは少し寂しそうだった。
ある日、俺が学校から帰ると母も爺ちゃんも家に居て、何故かやたらと機嫌がいい爺ちゃんが小遣いを千円くれて、遊びに行って来いと、俺をはやし立てる。
少し気味が悪いような気もしつつ、千円札の嬉しさに踊らされた俺は、チャリンコをすっ飛ばして遊びに出た。数時間後に何を見るかも知らずに。
つづく