嘲笑
『可哀相な人』と乾燥機に入れた洗濯物をほっといて、『あいこ』はフラッとコインランドリーを出てしまいました。タ〇コが切れたからです。この頃の『コイツ』は、朝から晩まで『オールタイム』&『オールラウンド』で煙を吹かしていました。
僕はガンジーの様に『非暴力』、『無抵抗』の主義ですが、『不服従』が出来ないダメなヤツです。『猛獣』がちょこっと動かしたアゴにさえ逆らえずに、トボトボとくっついて行ってしまいました。ごめんなさい。
またコンビニの店員さんに異様な緊張感を強いながら、『コイツ』は買い物を始めました。頭がバカになってしまった僕は、『ツナマヨ』と『綾鷹』をカゴに入れてしまいました。もう同罪です。
中2の無力なガキには、もう何の勇気も残っていませんでした。ハッキリ言って自暴自棄になっていた僕は、心に虚しさだけを抱いてコインランドリーに戻りました。すると、なんと幸運な事に『可哀相な人』は、もういませんでした。
『よっ、よっ、よよ、良かった~~~。生きててくれたんだ~~~、あの人ぉ…。』
そう思った途端、僕の全身から力が抜けて、その場にへたり込んでしまいました。『柳沢慎吾が両手を回転させるネタ』にも発展してなかったので、ひとつ罪を逃れる事が出来たと思ったら、涙がこぼれてしまいました。
「何、やってんだ、お前?」
コインランドリーに入るなり、倒れて転がって泣いている中2を、『白い猛獣』が冷ややかに見下ろしました。
「あの人…、大丈夫だったんですね?」
「はあっ? 何、言ってんだぁ、お前?」
「生きてたんですね…?」
僕を怪訝そうに眺めながら、また眉間にシワを集めていた『あいこ』は、一瞬、咥えたタバ〇を落としそうになるくらいポカンと口を開け、下唇に引っ付けてプラプラ揺らしてました。
それを『ぷっ』と勢いよく吹き飛ばすと、肩を大袈裟に揺すり出して、コインランドリー内に笑い声を響かせ始めました。
「あはっ、あはっ、あはははははははははっ! ナニ? あはあは、『ともスケ』、お前、あはははっ、あっ、アタシがっ!? あはっ、あーーーはっはっはっ、ははははははははははははーっ、アイツを、あはっ、ヤッちゃったってーっ!? あはははははははははっ、思ってたのぉ~~~? あーーーはっはっはっはっはっ!!」
完全に『バカにした目』で僕を見下しながら、『コイツ』は信じられないくらい楽しそうにゲラゲラと笑いました。状況を正確に把握していなかったのは『お前の方』だったと教え込むみたいに、明るい笑い声が僕の全身をグサグサと突っつきまくりました。
「チャラ男ごときに、あたしがマジギレして、本気出すって~~~ぇ? あははははっ!」
よっぽど僕の無駄な心配振りが、バカバカしくて面白かったらしくって、『コイツ』が思いっ切り笑ってるところをしばらくぶりに見ました。お腹を抱えて身体をよじってると、やっぱり白いワンピースが、なまめかしくエッチなボディラインを強調しました。
「お前、たまには面白い事言うな?」
散々僕をバカにして笑ったら、ご機嫌になったらしく、箱から一本引っ張り出すと、満足げにタ〇コを咥えてチャチャッと火を付けました。付けるや否や、すぐさま『ハフゥ~』っと白煙を放出しました。
「どうして、あんな酷い事が、直ぐ出来るんですか?」
「はっ!? 『酷い』? 『ともスケ』、お前…、そりゃあ、お前が『酷い』! 酷い勘違いだ!」
「えっ!? なっ、なぜですかっ!? どこがですかっ!?」
僕が食ってかかると、『コイツ』は横たわる僕の間近でウンコ座りになって、深々と吸い込んだ副流煙を『バフゥ~~~っ』と吹き掛けました。物凄く煙たい霧の向こうで、マンコが柔らかく笑ってました。
「いいか~? お前が思ってるような『酷い』コトな~んか、アタシは一個もヤッてな~い! むしろ、酷い目に会ってるのは、ア・タ・シぃ~の方!」
「意味が分かりません!」
「バ~カ! お前が隣にいるのにガン無視で声掛けて、あわよくばだまくらかして掻っ攫って、ナニしようってヤカラに絡まれたんだぞ!」
僕もちょっとは、チャラ男たちの図々しさに、イラッとしていましたが、それでも、あんなデンジャラス極まるマネは、人として、それより何よりJKとして『ヤッちゃいけない』と思いました。
でも当然ですが、僕の『彼氏として心配してる』思いは、全く『彼女』には伝わりませんでした。
「それに、最初っから、アタシに『遊んで』もらいたくって、アイツらは寄って来たんだから、アタシが『遊んで』やったまでだよ。遊んでもらったんだから、アイツらは文句言えた義理じゃねぇ~よ!」
こんな事は屁理屈だって事くらい、中2の僕にでも分かります。『違うだろっ!!』と彼氏の立場で、彼女の間違いを糾してヤルのが『筋』だとは思いました。…思いましたが、
「…んだろぉ~!?」
と、顔の間近で『猛獣』に凄まれたら、
「…はい。」
としか言えませんでした。『力こそが正義』とは思いたくありませんでしたが、あまりに無力な中2には、『これが「世の中」と言うモノなんだな』と、思うより他はありませんでした。
「ど~でもいいコト、心配しやがって。あははっ、あたしだって、そんなにバカじゃないよ~~~。安心しろって!」
『コイツ』はご満悦で僕をからかいながら、冷や汗ベッタリの僕のおでこを、ペタペタと叩いてました。すると、
「………でもさぁ~、」
と一言呟くと、ピタッと手を止めて、僕のおでこをちょっと押しました。
「…ヤル覚悟は、いつでも持ってるからな。覚えとけよ…」
『猛獣』の前脚が頭蓋骨を震わせて、直接脳ミソに刻み込むような低音は、僕の前頭葉を甘納豆みたいに萎縮させました。自発的な思考が停止した中2の夏に、この時、マジで『地球の停止する日』が訪れました。
乾燥機が止まって『あいこ』は中を覗きに行きました。洗濯物を摘んだりしてたら、いきなり『8万円のワンピース』を脱ぎ始めました。僕は飛び起きました。
「な、な、なっ、何やってんですかーーーっ!?」
「見りゃ分かんだろ? 着替えだよ。」
と、またビックリさせられてる僕を尻目に、『あいこ』は下着を一枚も着けていない事なんか、何のお構いも無く全裸になってしまいました。スニーカーまで脱いでしまったので、マジで素っ裸でした。
「『ともスケ』~っ!」
と、普段通りの調子で僕に声を掛けて、ポイッと『8万円』を投げ渡してきました。僕が空になったビニールバッグに入れようとしたら、『入れるなよ』と止められました。
『8万円』に汗染み(と言うか『エロ染み』)が出来るから『ダメ』と言う事でした。さっき僕を『拷問』した時、お尻まで出してワンピースを捲り上げたのは、僕のビチャビチャだった背中で、『8万円』に染みを着けないようにする為だったみたいでした。
「『ともスケ』~~~っ!」
僕がワンピースの始末にアタフタしてたら、また『あいこ』が呼びました。ハッキリ言って『外』なのに、ハッキリ言って『もろ見え』なのに、テーブルの上に乗っかると、『もろ出し』で股間を思いっ切り広げました。
高く上げた左足の足首を上下にコキコキ動かして、『早く来い』と『早く履かせろ』を同時に急かしました。
僕はもっとアタフタして、乾燥機の中から『あいこ』のパンティーを探しました。探し出したヤツを履かせてやろうとしてるのに、『あいこ』はわざわざテーブルの上でピーンと『V字開脚』をして、僕の手が届かない位置まで爪先を上げて、履かせ難いように邪魔をしました。
『バカじゃねぇ~のっ!?』
僕が苦労して小麦色の『赤ちゃん』の足にパンティーを通して、太股の真ん中辺りまでずり下げて来ると、『赤ちゃん』は僕の両肩に踵を乗っけて『グイッ!』とお尻を持ち上げました。踵が肩に食い込んで物凄く痛かったんですけど、ちゃんとお尻まで通して上げました。
「つ~ぎっ!」
僕は取りあえず『あいこ』の裸を隠したかったので、ホルターネックのキャミを取り出しました。ところが『コイツ』は僕がキャミを掴むと、『チッ、チッ、チッ』と舌を鳴らしました。
内心、『何、考えてんだよ~!?』と『呆れるわ!』&『焦るわ!』でしたが、黙ってホットパンツを取り出して、また同じように履かせて上げました。『コイツ』もまた同じように、無意味なフットダンスで無駄に手間を掛けさせてくれました。
「お前さぁ~、アタシの胸、どう思う?」
「えっ? 『どう?』って??」
「あんまり、おっきくないだろ?」
僕が早く隠したいオッパイを触って、『あいこ』が僕の感想を聞いてきました。見せびらかしたいほど立派なモンじゃないけど、隠したいほど粗末なモンでもないので、ちょっと自信無さげに聞いてきた『コイツ』に、
『(おっきくなる)可能性は、否定しないんじゃねぇ~のかよっ!?』
と、ツッコんでやろうかと思いました。
「おっきくないですね…」
と、聞かれたから素直に答えてみただけなのに、『チッ!』と舌打ちされて、案の定、機嫌が悪くなりました。
「でも、嫌いじゃないです。」
「何だっ!? その、上から目線はっ!?」
「いやっ、あの、その…、好きな形です。」
僕は一瞬、『ジャーマン』を掛けられる最悪の展開を想像しました。でも『あいこ』は自分からテーブルを下りると、僕の前を素通りして、最後は自分でキャミを着ました。
「ふんっ! エロガキ。」
コンビニの前で待ち伏せしてた時の格好に戻った『コイツ』は、コンビニで買ったメイク用品と合わせて、スッピンから応急処置するみたいに顔を作り出しました。
「お前、1万貸しな?」
「ええーーーっ!? 何でですかっ!?」
「アタシに、『野外露出』させたから。」
「たっ、たっ、たっ、た…」
僕は『頼んでねぇーよ!』と力強く言い返したかったんですが、肺から息がやって来ませんでした。これから僕の『負債』は『いくら増えるんだろう?』と不安になっていたら、いつもの『危ないヤツ』の顔が戻って来ました。
「じゃ~、お前、帰れ。」
「へっ!?」
「もう、イイわ。疲れた。」
言うや否や、散々僕を振り回してきた『ヤツ』は、僕の方を見向きもしないで入口のドアを押してました。突如、拘束から解放された僕が、安堵と落胆と放心を、脱力感で『小籠包』にされた全身で味わってると、
「あっ! 忘れた…」
とか言って、入口を出かけた『身勝手の塊』が、また僕の所まで戻って来ました。
そして、いきなり頭突きを一発『ゴンッ!』とかますと、激痛で思わず目をつぶった僕に、物凄くタバコ臭い口をくっつけて『チュー』をしてきました。
「やっぱ、ワンピはクリーニングだな~? お前、出しとけよぉ。じゃあな~~~。」
僕はあまりの激痛に萎縮するどころかムカついたので、帰ろうとする『ヤツ』を捕まえて、こっちからもういっぺん『チュー』をしてやりました。『自信が無い』とかほざいてたオッパイも、『ギュウギュウ!』揉んでやりました。
また頭突きの一発でもかまされるかと思いましたが、『あいこ』はちょっと長めに、僕の唇と舌を吸ってくれました。