大技
僕の答えにガッカリした『あいこ』は、僕の背中から離れて、またイスにドッカと腰を下ろしました。その時、イスと『あいこ』が妙に『生々しい音』を鳴らしたので、何気にチラッと横目で見ました。
すると、ロングワンピースに包まれて隠れていたはずの『あいこ』の足が、剥き出しになっているのに気が付きました。
『あれっ!?』
良く見たら、お尻まで丸出しにしてイスに『直座り』してました。さっき僕の上に飛び乗った、あの短時間と言うか一瞬で、ロングのワンピースをなぜか捲り上げたみたいでした。
「つまんねぇ~事、覚えてんじゃねぇ~~~よっ! で~~~っ? 他にはぁっ!?」
僕が『驚愕』と『動揺』をしているのに何の反応も無く、『お尻丸出し』をしているのに何も臆する事も無く、『悪魔』は平然と尋問を続けてきました。でも僕は、小麦色の足が目一杯放り出されている事の方が気になって、記憶を上手く『検索』出来ませんでした。
「い、今まで…、家に彼氏とか、連れて来た事もありませんよ?」
悲しいパンチラウオッチャーの僕は、逃れられない習性でノーパンだと分かっていても、頻繁に足を組み替えてイラつくJKのデルタ地帯に、パラダイスを探していました。
「ああ~~~っ!? 何だよ…、何にも頼りになんねぇ~なあ~~~、お前ッ!?」
「…ごめんなさい。」
「弟だろぉ~~~!? それも姉ちゃんとヤッちゃう~っ! ヘンタイのぉ~~~!?」
中2の傷付きやすい『ガラスのハート』をブチ破るような言葉を、また『悪魔』にぶっつけられました。
「あ、ハイ、すみません…」
「『まさみ』の事、もっと、ちゃんと、毎日見てろよぉ!」
「えっ!? ………そんなに、興味ないですよ…。」
「お前………、ヤッちゃってるくせに、何が『興味ないですよ…』だっ!?」
今さら、『近親相姦しちゃったのは、「物の弾み」です』と暴露したところで、到底『コイツ』には理解されないだろうし、また変に勘違いされて怒らせたりすると厄介なので、僕は黙って脇腹を蹴られました。
「あぐっ!! ううっ、いえ、その…」
「姉ちゃんの事、好きなんだろぉ~~~っ!?」
「ええっ!? う~~~ん…、どっちかって言うと…、そんなには…」
「ふざけんなよ…」
やっぱり『コイツ』にも、近親相姦をヤッてしまうような男には、常日頃から近親者に対して抱いている『歪んだ愛情』があると言う、『常識的』な『偏見』があるようでした。
「あっ! す、す、すすっ、すみませんっ!! ごめんなさいっ!!」
「好きだから、ヤッちゃったんだろ?」
「う~~~~~ん。………ち、違います…。やっぱり。」
僕は、少なくとも『コイツ』に感じるような『幸福感で満たされたい欲情』を、姉に対しては抱かなかったので、『あいこ』の言う『性行為のために抱く愛情』は、僕は感じていないと断言出来ると思いました。
「………、分っかんねぇ~ヤツだなあ~っ、お前っ!!」
何が解らないのか、それが解りませんでしたが、『あいこ』は僕の頭を『パコーン!』と殴りました。殴られた拍子に、また『あいこ』の股間でパンチラを探してしまいました。
「ああ~、時間の無駄だった! 『ともスケ』ごときに頼った、あたしがバカだった…」
『あいこ』は物凄くイラつきながら立ち上がって、イラつきながらも注意深く、ワンピースの裾をスルスルと落としました。
「『ともスケ』は、よくよくあたしをビチャビチャにしたいらしいな?」
立ち上がった後のイスを見て、『あいこ』がウンザリと言った感じで言いました。僕も起き上がって見てみたら、イスに『あいこ』のお尻とマンコの跡が、何かの水分で出来てました。
『あいこ』はひとつデカく『はっ!!』と溜め息を吐くと、『マンコ拓』の着いたイスの隣に座りました。僕もそのイスを挟んで静かに腰を降ろしました。やけに広く感じるコインランドリーの中で、洗濯機とエアコンと自販機のモーター音だけが、元気良く陽気にリズムを刻んでいました。
組んだ膝の上に右肘を付いて、その肘を頬杖にして『あいこ』は難しい顔をしてました。エアコンに煽られて茶髪が結構なびくのに、ピクリともしないで固まってました。それが意外とずっと続いたので、
『もしかして、寝ちゃった?』
と思って、僕はそっと『あいこ』の表情を盗み見しました。
久々にマジマジと見る『コイツ』の『スッピン』は、険しい表情の割に、なぜか息苦しかった僕の胸をホッと楽にさせました。僕は『コイツ』の『スッピン』を見てる内に、昔の人見知りの激しかった頃の、『あいこ』がしてた『しかめっ面』をぼんやりと思い出していました。
僕が『コイツ』と初めて会ったのは、小学校に入る前でした。と、僕は記憶しているんですが、『あいこ』に言わせると『あいこ』が小学校に入る前だったそうです。そうなると僕の記憶と2年もの開きがあります。
姉に連れられて来たと言ってましたが、とするとバカはまだ小1だったので、『あいこ』の家までの結構な距離を、行動が不安定で無責任極まりないヤツが、幼い僕を連れながら誠実に正確に辿り着けるとは『経験上ありえないと確信出来る』ので、僕の記憶の方が正しいと思います。
にぎやかで楽しい『あいこ』のお兄さんたちとは、ほんのちょっとしか遊んでもらった事が無かったのに、僕は良く覚えています。でも、その側に必ずいっしょに居たはずの『コイツ』が何をしていたのかは、あんまり記憶にありません。
思い返すと小さい頃の『あいこ』は、消極的で『前に出たがらない』子でした。いつも誰かの後に引っ付いていた印象があります。その『星飛雄馬の姉ちゃん』状態だった『コイツ』を思い出すと真っ先に出て来るのが、この『しかめっ面』です。
女の子なのに全然笑ったりしなかったんで、『何なんだろう? この子…』と、いつも僕は不思議に思ってた記憶があります。
あのまま『前に出たがらない』、『引っ込み思案な女の子』のままでいてもらえたら、僕たちはきっと一人の被害者も出る事のない、平穏無事な日常を『送れたんだろうな…』と思いました。
今さらですが、何で『コイツ』は、『こうなっちゃった!?』んでしょうかっ!?
思い出にふけりながらぼんやりと『彼女』を眺めていたら、僕の眼球スレスレの、ホントに睫毛に触ろうかと言うくらいの位置に、『ヤツ』の『チョキ』がピタリと止まっていました。
それに気が付いた瞬間のあまりの恐ろしさに、僕は『ビクッ!』とも動けずに、カチンコチンに凝固させた上半身を『ゆ~~~~~っくり』と後ろに傾けました。
すると目の前の『チョキ』が一瞬で消え失せて、今度は僕の鼻の穴を目掛けて、『チョキ』が『アッパー』で飛び込んで来ました。ガッツリ突っ込まれた『鼻フック』で、僕の上半身は『グイ~~~~~ッ』と元に引き戻されました。
「イダダダダダ………ッ!」
恐ろしい事に『コイツ』は、『しかめっ面』の『考える人』の形のまんまで、僕を『ノールック』で『目潰し』と『鼻フック』をかまして来ました。もう『ちびりそう』なんて生易しい反応じゃ済まなくて、前後の括約筋を全部解放してしまいそうでした。
それだけでも十分『お腹一杯』の恐怖だったのに、今度は『どうしたら、そんな事が出来るのかっ!?』解らない『左ジャブ』を、僕の顔の左右交互に、それも耳元ギリギリで、身も凍る風切り音を立てながらマッハで往復させました。
僕は『猛獣』に『どう料理されるのか分からない恐怖』を、フルコースで堪能させられてました。『ナイフ投げの的』みたいにされてるので、逃げるどころか身震いさえ出来ませんでした。
脳みその中でかいた、1リットルくらい冷や汗が落っこちて、チンポと肛門からダダ漏れ寸前になっていたら、表の駐車場に小型車が強引に入って来たのが見えました。直ぐさま入口の方から、毎度お馴染みのご陽気なメンズが、ご陽気に声を掛けてきてくれました。
「ちぃーーース! 僕のハートも洗っちゃって、くれちゃっティーーーす!」
この時ほど、この方たちがいつもチャラチャラと街中を流してて、『良かった~』と思った事はありませんでした。僕は『ジャブの的』から解放されました。
この格好の『あいこ』には、どのチャラ男にも『ルアー効果』が働くみたいで、僕の存在をガン無視で近寄って来ました。『チクりん』には『貞子』呼ばわりされましたが、やっぱり『結構、イケてるよな?』と改めて自信が持てました。
姉から借りたロングのワンピースは、さらに『ルアー効果』をアップさせるみたいで、チャラ男は勇敢にも危険地帯へドンドン踏み込んで来ました。スケベな期待を顔面いっぱいに『剥き出し』にして、茶髪のJKの顔を覗きたがってました。
その茶髪で隠れたこっち側では、『不敵』で『不吉』な笑みを浮かべた『猛獣』が、静かに間合いを計っていました。ところが後一歩と言う所で、後から入って来た二人目のチャラ男が、まだ入口近くにいたのに遠目からピンチを見事に察知して、
『うわーっ!!』
と、叫び声を上げました。
後ろの仲間がダッシュで逃げ出したのを、取り残されたチャラ男も気が付いて振り返りました。次の瞬間、振り向いた体勢のチャラ男の身長が、いきなり伸びました。
『えっ!?』
僕は驚いて自分の目を疑いました。さらに驚いた事に、チャラ男の顔が逆さまに見えたと思ったら、チャラ男の両足が宙に跳び上がりました。
『浮いたっ!?』
何が何だか解らずに、ただビビりまくってる僕には、一連のチャラ男の動きはスローモーションのように、ゆっくりと見えていました。が、チャラ男の背中に白いワンピース姿の『猛獣』が、ガッチリと抱き着いているのが解ると、そこから一気に標準スピードから早送りで、チャラ男が真っ逆さまになって頭から床に落っこちました。
「うぎゅっ!!!」
逆V字に開脚したチャラ男の背中から、白いロングワンピースが綺麗な『ブリッジ』を作っていました。『ヤツ』がチャラ男に『ジャーマン・スープレックス・ホールド』をキメた事を理解するのに、僕は時間がかかりました。